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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:モダンアーキタイプ特集 第8回 「BG系」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:モダンアーキタイプ特集 第8回 「BG系」
by 岩SHOW
(ノックする音)
あぁ、入って良いぞ。おぉ君か。どうした、今日はモダン・ブートキャンプは休みだぞ。なに、聞きたいことがある? 熱心だな! どうした、難しいことはわからないかもしれないが何でも聞いてくれ。......ふむ、なるほど。良い質問だ。よし、今日は自主練の日としよう、やる気のあるヤツを集めてグラウンドに集合だ! 神戸に挑む初心者をモダン・ウォリアーへと導く連続企画モダン・ブートキャンプもいよいよ大詰めだ!
(30分後)
皆よく集まってくれた、まずはそのやる気に感謝したい。今日は「BG系ってなんですか?」という質問に答えるために特別授業だ。BG系、という言葉を耳にしたことがある者は挙手してくれ......うむ、ありがとう。BGというのはマジックをやっていれば目にすることのある文字列......RUGやBUGなどと同じ、マジックの5色を示す頭文字の組み合わせだ。BlackとGreen、黒緑だ。BG系、ということは黒緑のデッキにいくつか種類があって、それらには共通点があるということが......皆にはもうわかるかと思う。では、それらの共通点を記すので、しっかり覚えておくように。
- 手札破壊で相手の思うように動かせない
- その間に《タルモゴイフ》で殴る
以上だ。......あぁ、言いたいことはわかる。だが、これは事実。1ターン目《思考囲い》or《コジレックの審問》からの2ターン目《タルモゴイフ》という動きをベストムーブに据えた、中速デッキ。この共通点を持ったデッキを「BG系」と呼ぶんだ......まあ厳密に言えばもっといろいろあるかもしれんが......デッキリストを見て迷ったら、ここに挙げた3種類のカードがあるかどうかを見てくれればよい。あったら大体BG系ということだ(例外もあるがな!)。
モダンにおけるBG系の歴史は長い。特に《死儀礼のシャーマン》《血編み髪のエルフ》が使用できたタイミングでは、環境のベストデッキはこのBG系に属する「ジャンド」だった。黒赤緑、攻撃的な3色を用いた中速デッキで、アドバンテージの取り方がえげつなかった......今思い出しても身の毛がよだつぞ! モダン・ウォリアー候補生の諸君はこの時代を知らないだろう......世の中には知らなくてもいい、体感しなくてもいいことがある。
まあ、上記の2枚が禁止されても「ジャンド」は有力なデッキの1つとして環境に残り続けている。在りし日のような最強デッキではないが、全天候対応型のデッキとして愛好家を中心に使用され続けている。
2 《沼》 1 《森》 2 《草むした墓》 1 《血の墓所》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《新緑の地下墓地》 4 《血染めのぬかるみ》 1 《樹木茂る山麓》 4 《黒割れの崖》 4 《怒り狂う山峡》 -土地(24)- 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 2 《漁る軟泥》 2 《大爆発の魔道士》 2 《高原の狩りの達人》 -クリーチャー(14)- |
4 《致命的な一押し》 4 《コジレックの審問》 2 《思考囲い》 4 《終止》 1 《突然の衰微》 2 《コラガンの命令》 4 《ヴェールのリリアナ》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(22)- |
3 《台所の嫌がらせ屋》 2 《雷口のヘルカイト》 2 《外科的摘出》 2 《集団的蛮行》 2 《神々の憤怒》 1 《コラガンの命令》 1 《大渦の脈動》 1 《ムラーサの胎動》 1 《魂の裏切りの夜》 -サイドボード(15)- |
赤と黒が合わさることで軽量除去が分厚くなる。このリストでは採られていないが、多くの場合は《稲妻》を採用している。確かにこのカードはメタゲーム次第じゃ役に立たないこともあるので、トーナメント当日にどんなデッキが増えるかを読みながらデッキリストを記入すると良い。あのカードはプレイヤーに撃ってライフを詰めることができるのも魅力だからな。
このリストは《死の影》《タルモゴイフ》のようなダメージ除去で墜とせないクリーチャーが多いことを睨んでの《致命的な一押し》&《終止》という徹底して破壊する構えだ!
同じく除去であり、アドバンテージ源でもある《コラガンの命令》が使えることも赤を選択したことの利点である。
2点ダメージという除去としては最低限の数字しか持っていないが、追加で手札を1枚捨てさせるかアーティファクトを破壊するかクリーチャーを1枚墓地から回収するか......そんなオマケがついてくるのだからたまらないな。「トロン」のようなデッキと相対した時には《大爆発の魔道士》を回収しながら手札破壊でもしてやろう、うまいことハマれば心を折ることができるぞ!
BG系の基本は《タルモゴイフ》で殴ることだと教えたが、もちろんそれだけで勝てるほどこのゲームは甘くない。他にもダメージ源(洒落た言い方をすれば「クロック」だな)が必須になってくる。赤を3色目に迎え入れた場合、《高原の狩りの達人》などは良い選択肢となるな。
「ジャンド」のセールスポイントでもある《闇の腹心》によって擦り減ったライフを癒してくれて、単体除去1枚で処理されてしまわないトークン生成能力、そして変身すれば相手のライフもクリーチャーもゴリゴリと削り取っていく......理想のフィニッシャーだ。クリーチャーならば、《オリヴィア・ヴォルダーレン》も強烈に盤面を支配してくれるので採用されていることがあるな。
また、《反逆の先導者、チャンドラ》はモダンでも最強クラスのプレインズウォーカーで、生き延びれば本当に無茶苦茶してくる危険な1枚だ。これを用いることができるのも「ジャンド」を使う理由としては十分に足るものだ。
自分より速いデッキは除去でいなし、遅いデッキは4マナ以下のパワーカード群で押し切る......「ジャンド」というデッキの雰囲気が伝わってきたかな?
2 《沼》 1 《森》 1 《平地》 2 《草むした墓》 1 《神無き祭殿》 1 《寺院の庭》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《湿地の干潟》 3 《花盛りの湿地》 3 《乱脈な気孔》 -土地(22)- 3 《貴族の教主》 4 《タルモゴイフ》 3 《残忍な剥ぎ取り》 2 《漁る軟泥》 2 《包囲サイ》 -クリーチャー(14)- |
3 《致命的な一押し》 3 《流刑への道》 3 《コジレックの審問》 3 《思考囲い》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《突然の衰微》 4 《未練ある魂》 1 《大渦の脈動》 3 《ヴェールのリリアナ》 1 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(24)- |
3 《大爆発の魔道士》 2 《台所の嫌がらせ屋》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《真髄の針》 1 《集団的蛮行》 1 《部族養い》 1 《安らかなる眠り》 1 《原基の印章》 1 《石のような静寂》 1 《失われた遺産》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
時間がないのでチャキチャキ行くぞ! 続いては「アブザン」だ。黒緑そして白からなるこのデッキは、「ジャンド」に比肩するパワーカードの塊だ! パッと見てわかる特徴として、「ジャンド」では見ることのない《貴族の教主》が採用されていることがまずわかることだろう。
これを1ターン目に唱えて、生きてターンが返ってくれば先手と後手がひっくり返る。手札破壊などで常に1マナ分多く動きたいBG系にとって、これはありがたい限りなんだ。たかが1マナだからって侮るなよ! それに教主には賛美能力がある。これで《タルモゴイフ》同士のお見合いなんかを突破可能だ。「アブザン」を使うのであれば、教主を3枚採用することを私は強く勧めるぞ!
白と黒が共存するデッキであれば《未練ある魂》も忘れちゃいけない。カード1枚で4体の1/1飛行を得られる、ちょっとした壊れカードだ! これもマナを食うので、教主と併せて使いたいな。
「アブザン」の方は「ジャンド」よりも墓地を重視する傾向にある。《残忍な剥ぎ取り》の能力でライブラリーから墓地にカードを落とし昂揚を狙う構築が多く見られるが、これも《未練ある魂》あってのこと。ライブラリーを掘り進めつつ、盤面にクリーチャーを追加していく......この流れるようなムーブに手札破壊と除去を添える、それが「アブザン」の基本戦術だ。
昂揚達成のために何らかの工夫がされているリストが多く、《ミシュラのガラクタ》なんかが人気だがこのデッキではより実用性を重視して《虚無の呪文爆弾》を採用しているな。「ドレッジ」などのデッキに刺さればラッキーというところだろう。
白の呪文は他に《流刑への道》がある。これも《稲妻》や《終止》に比肩する低コスト優秀除去だな。そしてサイドボードに《石のような静寂》なんかの強力な対策カードも取れるのは素晴らしい。
実際この部分で差がついているのか、あるいは「ジャンド」よりも万人向けなのが良いのか、「アブザン」はBG系の中でも最も好んで使われている。《包囲サイ》連打という奥の手もあるし、より楽に勝てるのは確かに「アブザン」だ。グランプリに持ち込むデッキとしては申し分なく、かなりアリだな。
2 《沼》 2 《森》 2 《草むした墓》 4 《新緑の地下墓地》 2 《湿地の干潟》 1 《吹きさらしの荒野》 4 《花盛りの湿地》 3 《風切る泥沼》 3 《幽霊街》 -土地(23)- 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 3 《漁る軟泥》 1 《永遠の証人》 1 《不屈の追跡者》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー(15)- |
2 《ミシュラのガラクタ》 4 《コジレックの審問》 2 《思考囲い》 2 《致命的な一押し》 1 《ウルヴェンワルド横断》 4 《突然の衰微》 2 《集団的蛮行》 2 《大渦の脈動》 3 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(22)- |
1 《不屈の追跡者》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《殺戮の契約》 2 《外科的摘出》 2 《強迫》 1 《集団疾病》 1 《ゴルガリの魔除け》 1 《疑念の影》 1 《霊気のほころび》 1 《鞭打つ触手》 1 《大渦の脈動》 1 《最後の望み、リリアナ》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
最後は「BG系特集」という企画で純粋な黒緑を紹介しないわけにもいかないだろうということで、「ゴルガリ・ミッドレンジ」を紹介しておこう。3色じゃないから色事故が少なく、土地から受けるダメージも最小限に抑えられ、うっかり基本でない土地対策に巻き込まれることもない。2色にすることにも利点はあるのだ。
変わらず手札破壊→タルモの方程式が採用されているが、ここでこれまでの全デッキ共通の1枚であり、これも方程式に組み込んで良いんじゃないかというカード、《ヴェールのリリアナ》に触れておこう。
お互いの手札を削っていく[+1]能力と、プレイヤーにクリーチャーの生け贄を要求する[-2]能力、そして対戦相手のパーマネントを2つの山に分け、選ばれなかった方を吹き飛ばす豪快な[-6]能力......どれも強力だ。不利な状態をこれ1枚で有利に持っていくようなカードではないが、五分の状況なら有利に傾け、有利な状況ならそれを固定する、そんなカードだと思ってもらえればと思う。最近では《最後の望み、リリアナ》との併用もメジャーだな。こちらは《未練ある魂》のような小粒のクリーチャーを展開してくるデッキ相手には文字通り無双することだろう。
いずれにせよ《ヴェールのリリアナ》は以前の「ジャンド」が用いていた超パワーカードではなくなっているので(あの時は2ターン目安定だったからな)、久しぶりにモダンをやるというプレイヤーは気を付けてほしいところだな。
さて、今回のトレーニングはこれで終了だ。早いものでこれでモダン・ブートキャンプも8日目。残すところあと2回、最後の追い込みに備えて、今日は早く寝るんだな、モダン・ウォリアーズ候補生諸君。それじゃあな。
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