READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Elf & Nail(過去のスタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Elf & Nail(過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 以前に『カラデシュ』環境のスタンダードのまとめを書かせてもらった。「青白フラッシュ」「黒緑昂揚」「霊気池の驚異」と三つ巴の抗争、この周りにコントロールデッキや機体ビートダウンがうろちょろしているというという形で、さあ『霊気紛争』を迎えるぞ!......となるのかと思いきや。これらのデッキを成立させていた《密輸人の回転翼機》《約束された終末、エムラクール》《反射魔道士》が禁止カードに指定されたことで一転。まっさらな環境となり、ここで活躍するデッキがどういったものになるのか? 読みづらくなった。

 この禁止改定により、これまで活躍の場を奪われていたカード、成立することが難しかったデッキなどが活躍すれば......デッキ紹介おじさんとしては嬉しい限りだ。どんなデッキがプロツアー前後に登場するのか、今から楽しみだ。

 さて、上記のデッキがキーカードを失ってその姿かたちを変えることを余儀なくされたわけだが、過去にも同様に禁止改定により変化・消滅を免れなかったデッキはもちろん存在した。スタンダードにおける禁止カードで最もインパクトがあったのは......個人的には《頭蓋骨絞め》の時かな。

 『ダークスティール』にて登場したこの装備品、これは完全に「ぶっ壊れ」カードだった。装備したクリーチャーが死亡するとカードを2枚引く。この能力を、装備品自身の+1/-1という修整で能動的に誘発させていく。小型クリーチャーを展開してはプチッと潰して2枚ドロー。これを繰り返しているだけで手札は尽きることなどなく、底知らずのリソースで攻め続けることができた。

 アーティファクト・クリーチャーに装備させて《電結の荒廃者》に食べさせるなんて動きは......思い出すだけでも頭が痛い。このカードがスタンダードにおける(当時)5年ぶりの禁止カードに指定され、消滅したデッキは数知れず。僕のお気に入りだった「Elf & Nail」も、このカードに依存しているところがあったので......消えてしまったなぁ。

Craig Krempels - 「Elf & Nail」
アメリカ選手権2004 優勝 / スタンダード (2004年6月18~20日)[MO] [ARENA]
15 《
1 《
4 《樹木茂る山麓

-土地(20)-

4 《極楽鳥
4 《ワイアウッドの共生虫
4 《ぶどう棚
2 《ワイアウッドの伝令
4 《ヴィリジアンのシャーマン
4 《ウッド・エルフ
2 《映し身人形
3 《トリスケリオン
1 《クローサの拳カマール
1 《ダークスティールの巨像

-クリーチャー(29)-
4 《頭蓋骨絞め
4 《花盛りの春
3 《歯と爪

-呪文(11)-
2 《忘れられた古霊
1 《トリスケリオン
2 《隔離するタイタン
4 《酸化
4 《紅蓮地獄
2 《帰化

-サイドボード(15)-

 「Elf & Nail」はその名の通りエルフを中心として作られたデッキだ。当時は上述の《電結の荒廃者》と《頭蓋骨絞め》のシナジーを親和クリーチャーとアーティファクト・土地などと組み合わせた「電結親和」が環境の中心であった。これに強いデッキでなくては対抗できない、ということで白羽の矢が立ったのが緑。緑にはアーティファクト対策が豊富に用意されており、これらでバキバキ砕きながらコントロールしてやれば有利に立ち回れたのである。

 《ヴィリジアンのシャーマン》というアーティファクト環境における最強の能力を持ったこのエルフを《ワイアウッドの共生虫》で何度も何度も使いまわす、というのがこのデッキのエンジンだ。同じく手札と戦場を行き来させて美味しいエルフ、《ウッド・エルフ》も採用されている。これで《》を戦場にバンバンと並べて、マナを伸ばして大型のフィニッシャー(ゲームを終わらせるカード)に繋げようという魂胆だ。こういう、システムクリーチャーを用いて盤面を作っていくのはシミュレーション・ゲームが好きな人なんかにはたまらないんじゃないだろうか。《ウッド・エルフ》はタフネスが1なので、これを《頭蓋骨絞め》でキュッと絞める。マナも手札もパンパンで、思わず顔がほころぶ。

 《ウッド・エルフ》エンジンに《極楽鳥》《ぶどう棚》のマナ・クリーチャー、さらに《》から生まれるマナを1つ追加する《花盛りの春》という分厚いマナブーストから叩き付けるのは「Nail(爪)」こと《歯と爪》。

 双呪で唱えればクリーチャーを2体サーチして2体手札から戦場に出す、というとんでもないことが狙える1枚だ。このデッキで盤面に送り出されるクリーチャーは、天下御免の打撃力《ダークスティールの巨像》、相手の巨像殺し《映し身人形》、そして《クローサの拳カマール》+《トリスケリオン》のコンビ。

 カマールがその能力で土地を1/1のクリーチャーに化けさせ、それを《トリスケリオン》が撃ち抜く、という動きで同じビッグマナ系のデッキ相手にマナの差をつけて優位に立とうというわけだ。カマールはそのまま溢れるマナを注いで《踏み荒らし》能力でライフを削り切ることもできるぞ。

 不要なマナ・クリーチャーや《ワイアウッドの伝令》などを絞めることで、緑単特有の引きムラを解消、安定した動きが強みのデッキだったのだが......アメリカ選手権2004が《頭蓋骨絞め》の使い納めに。まあ、1枚のカードが環境を支配してるっていうのはよろしいことではないと。かのズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzに「《頭蓋骨絞め》と《減衰のマトリックス》、どちらかが入っていないデッキは(この環境では)デッキではない」と言わせしめたぐらいだったからなぁ。

 まあ、今となってはあれはあれで面白かったよなと。飲みの席で花が咲くから良いじゃない、と思えるくらい前の出来事だったんだなぁと。時の経過を感じるなぁ。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索