MAGIC STORY

ラヴニカへの回帰

EPISODE 04

世紀の実験

読み物

Uncharted Realms

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世紀の実験

Jenna Helland / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2012年9月12日



アート:David Rapoza

 トレンズは彼の内配列ゴーグルを曲がった鼻に乗せた。おはよう、実験日和だ! 大気中を漂ってきた三次元視覚ダストのもやの中でまばたきをして、彼は鼻孔からそれを大量に吸い込んだ。トレンズは東側の壁を完全に占領する彼のマナ貯蔵機械、磁力ニトロ酸化装置から漂ってくるくすぶる金属の匂いを楽しんだ。

 愛情をこめて「空のコップの列」とトレンズが呼ぶ見捨てられた建物の塊、それを見下ろすひびの入った窓から早朝の太陽が顔を出した。彼は数ヶ月に渡って瓦礫を素手で取り除いているセレズニア伝道師達の献身的なお喋りへと手を振った。この調子ならば102.7年後には、彼らは新たに発生させる共同体のためにギルドの新たな樹を植える素晴らしい場所を空けることができるだろう。

 トレンズは隙間風の入る彼の仕事場を眺めて、喜びで爆発しそうだと思った。何マイルも離れた第十地区のどこかで、火想者はニヴィックスにあるその高巣でくつろぎながら、きっと百万もの考えを同時に巡らせている。トレンズは願った、ニヴ=ミゼットが瞬きほどの時間の中に熟考するほんの少しの物事を、自分の心に保っていられるようにと。

 外部特例実験のための場所として、トレンズはニヴ=ミゼット自身から都市でも辺鄙な地域を授けられていた。彼はまだ一人前の化術士となる以前、ニヴィックスからサンホームの門へと至る霊気作動トンネルを創造した時からそのドラゴンの注意を引いてきた。最近、火想者はトレンズへと個人的課題を授けていた。それは彼を、自身では決して見いだすことはなかったであろう方向へと導いた。そうだ、壮大な事が起こっていた。そしてトレンズは最後に眠ったのはいつだったかを思い出せない。目を閉じることに悩むには、単純にやるべき事が多すぎた。

 そして今日は実験の日だ! トレンズは真実の卵の殻を砕き、それを主の掌へと捧げるのだ。トレンズは完全対爆ヘルメットの紐を結び、全方位電子スコープを顔まで下げた。彼はスコープで部屋をぐるりと見渡し、その途方もない細部に驚嘆した。アーチ形の天井に沿って、石工の忘れられた指紋がついている。昨日の血斑が彼の強化靴の爪先に点々とはねている。トレンズは小さな細部を愛していた。それは全て、何かを足して素晴らしいものにしてくれる。

 危険のない実験から導かれるものは何もない。爆発とはまさに燃えさかる精神が生み出す芸術だ!

 彼は歪んだ床板の上を歩き、磁力ニトロ酸化装置の前に立った。彼自身が設計した元素処理装置だ。小さくも完璧。もしそれがペットの鼠であったら、彼はその小さくふかふかな耳の間に口付けをしただろう。トレンズは幸せの溜息をついた。もしこれが思考力を持っているならば、私はずっと何をしていたんだろうな。彼は幸福に考えた。

 世紀の瞬間がやって来た。彼は4つのテストを絞り込んだ。そしてそれぞれが可能性の花を咲かせている。全てが高巣へと運ぶべき、極めて貴重な情報の宝石を生み出すであろう。だが正しいのはただ一つ。どれだ? トレンズ氏よ、賢く選択するのだ!

高層反停滞室
空間的外部フラクタル化装置
強熱式ジオロメーター
神経系分離制圧器
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