MAGIC STORY

ラヴニカへの回帰

EPISODE 01

プレインズウォーカーのための「ラヴニカへの回帰」案内 その1

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The Magic Creative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2012年8月22日

 
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 ラヴニカは都市があまりにも広がっていった結果、世界全体を覆い尽くした次元である。このゴシック様式の尖塔、玉石の敷き詰められた広場、危険なスラム街、そして古えの廃墟は途方もなく多様な種族と文化の故郷となっている。地下を這い動く最小の昆虫から地平線を旋回する威厳あるドラゴンまで、この大都市には途方もない数の住民が存在している。旅人はあらゆるものが売られる露天市場や地平線を見下ろし畏敬の念を起こさせる大聖堂、過ぎ去った古代ラヴニカの考古学的発見を展示するきらびやかな博物館を探索することで一生を過ごすこともできるだろう。あらゆる階層の人々がこの街では見られ、厳格で清浄なるアゾリウス評議会から持たざる者達の混沌としたスラム街まで、そこには鮮明なコントラストが存在する。裏路地の取引、犯罪組織、そして闇市場がラヴニカに繁栄しているが、真の力はギルドにある。

 
平地》 アート:Richard Wright

 十のギルドはラヴニカの力の基礎であり、それぞれが独自性と都市における機能を持つ。ギルドは何世紀にも渡って存在してきた。それらの歴史はラヴニカ次元の支配を得ようと競い合う戦争、術策、政治的策略のもつれからなっている。この世界の未開の地は多層からなる石造物の下に消え、資源は次第に欠乏し、各ギルドはそれぞれの影響力が及ぶ範囲を形成してきた。数千年に渡って、魔法的協定ギルドパクトがこの次元の比較的平和を維持する助けになってきた。だがギルドパクトは無効となり、十のギルドはしばしの間混乱に陥った。だが一万年の間存続してきたギルドの文化と職務という境界の存在は明らかで、十のギルドは再び自己主張を始め、力を取り戻した。しかしながら各ギルド間の緊張は強まり、もめ事の噂はギルドの神聖なる庁舎と無所属市民の質素な居酒屋の両方で聞くことができる。

 
アート:Nic Klein

 プレインズウォーカー、ジェイス・ベレレンはラヴニカを第二の故郷としている。だがこの多様で複雑な次元に引き寄せられるプレインズウォーカーは彼だけでない。テゼレット、野生語りのガラク、リリアナ・ヴェス、ギデオン・ジュラ、そしてチャンドラ・ナラーの全員がこの地の秘密と可能性に引き寄せられて訪れたことがあり、またラヴニカ次元が誇る現地生まれのプレインズウォーカーが複数人存在する。

 平均的ラヴニカ人はプレインズウォーカー達の存在を知らないが、非常に歳を経ている者の中には個人的にプレインズウォーカー達と接触したことのある者もいる。その例がイゼット団のパルンズ(創設者)にしてギルドマスターのニヴ=ミゼットである。数年間の不在の後、その古のドラゴンは高巣へと帰還し、最近は彼のギルドを彼以外に誰も理解しえない研究と計画の狂乱へと放り込んでいる。イゼット団の活動は気付かれていないわけではない――幾多の爆発を見逃すほうが難しい――他のギルドは火想者の狂気の背後にある計画について心配し始めている。

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 マット・セレズニア、自然そのものの顕現であるとされている神秘的意識。セレズニア議事会はそのギルド自身が彼女の声なのだと信じている。ギルドに属する全員はその単一の声の代弁者であると考えられており、彼らの宣託を伝道し構成員を加えることによってギルドを拡大しようとしている。セレズニアの宣託は公的であり個人的でもある。彼らは個々の意識を静めることによって、マット・セレズニアの意識の霊的伝達者を務める「議事会」と呼ばれるドライアドの一団の囁きを知ることができると信じている。ギルドの目的は、個々の構成員の独自性を包含し、彼らを議事会の一部と変えることである。セレズニアの者達はラヴニカ中に分布する小さな共同体、ヴァーナディとして組織されている。それぞれが中心となる樹の周囲に組織され、ドライアドの指導者に率いられている。

セレズニアのギルドマスター、トロスターニ

 トロスターニ、三位一体のドライアドがギルドを統べている。とはいえセレズニアの者達は、トロスターニも究極的にはマット・セレズニア自身の意志に導かれていると言うであろう。トロスターニを構成する三体のドライアドそれぞれの個性はセレズニア特有の価値を体現している。右のドライアドは秩序を体現し、韻律を踏んだ率直な詠唱で話す。左のドライアドは生命を体現し、軽快で抑揚のない声で話す。中央のドライアドは調和を体現し、澄んだ囁き声で話す。それぞれのドライアドがそれら自身の独特な流儀で着飾られており、その瞳は新緑の緑からゆらめく銀にまで変化する。中央、調和のドライアドは滅多に口を開かないが、彼女がそうする時はその忠告は全ての者にとって極めて神聖なるものとみなされる。

 セレズニアの者達は、力はどこか一か所に集中するものではないと信じているが、巨大な世界樹ヴィトゥ=ガジーは今もセレズニアの中心として、そしてギルドの庁舎として機能している。ヴィトゥ=ガジーの幹はラヴニカ中から訪れる崇拝者達にとっての大聖堂に、またギルドマスター・トロスターニとドライアド議事会達の家となっている。

 
アート:Chase Stone

セレズニアの重要地点

象牙の樫

 この巨木はアルビノのロクソドンで構成される戦僧達によって守られている。この僧達は彼らの身分を意味する緑の紋様が描かれた銀の鎧を身につけている。彼らの武器のほとんどは鈍器で、象牙の樫そのものから作られている。その強さ、純潔、そして樫の長命からそれらは神聖なものとみなされている。象牙の樫の微かに光る大枝の間では、誓約と儀式が執行される。婚礼、約定、通過儀礼、そして契約が僧達の保護のもと、樹冠の間で行われる。樹全体を監督するのはトロスロンという武骨なロクソドンの司祭であり、彼はセレズニアが司る自然の世界をギルドが望むよりも外の世界へ向けるという点でセレズニアの標準に少々背いている。これは聖樹ベロコスの彼なりの防衛に表現されている。セレズニアの高位の指導者達はこの樹を彼ら自身のものと主張してやまないが、トロスロンは断固として樹を全てのラヴニカ人へと解放し続けている。ギルドに所属する者も無所属の者も、樹に敬意を払いたいと願う者やその魔法的オーラの特質を利用したいと思う者全てに。

刈り込みの木立、スマーラ

 想像してほしい、極めて気を配って保持されたために全ての植物や樹がその場に根を張り続けながら、刈り込まれ刻まれて他のものの場所を侵食することのない巨大で深い森を。スマーラは瞑想のための広大な庭園で、最も壮大なセレズニアの建造物の幾つかが所在し芸術的な風景を作り出している。スマーラの刈り込んだ木立はラヴニカ中に知られており、それはサドルナという名のエルフ剪定師の傑作である。サドルナの意匠と技術は引っ張りだこであり、セレズニアを越えて他ギルドでも模写・複製されている。

 
アート:Volkan Baga
中央集会場

 これは絡みあった道が大規模に集合し、樹冠の遥か上空へと昇ってきたものである。磨き上げられたビジャン石灰岩(最も純粋で白い)から建造され、中央集会場は陽光を受けて輝いている。その中心には黒花崗岩でセレズニアのシンボルが象眼され、そこではいくつかの重要な宗教的祝祭だけでなく信者達の大規模な集会が開催されている。大抵の日は、集会場はただ市場として、また眼下の美しく刈り込まれた森を破壊することなく物品や巨大な獣を移動させるための公道として使用されている。

セレズニアのクリーチャー達

ワーム

 セレズニアの者達はワームをとても誇りにしている。地上ではラヴニカ人達が忙しく行き交い混みあっているために、地下を旅できることはセレズニアギルドにこの次元での移動力的優位性を与えている。ワーム呼びはそういった巨大な獣達に手綱をつけ乗りこなす技を発見してきたシャーマンの特別な一部門である。ラヴニカでは、ワームは力強く凄まじい勢いで土を排出し、液体に近い状態にすることによって凄まじい速度での移動を可能にしている。シャーマン達はワームに、地下の移動に際して何人かの旅客を乗せることのできる車輪付きの装甲運転台を取り付けている。大抵の場合ワームは防衛に使用され、シャーマンはそれらの運転台の中からワームの動きを指揮する。

 
アート:Volkan Baga
エレメンタル

 セレズニアに属するエレメンタルは通常、根や茨が一つにより合わさって姿を成している。時折大型のエレメンタルは白色大理石の塊や石灰岩の厚板を武器として振るい、また鎧として身に着けている。エレメンタルが十分すぎるほど巨大な場合は、彼らは他の場所へと移動したりヴァーナディを防御するために自身で動くことができるような公共の建築物や寺院としてしばしば使用される。

生ける寺院

 これは地上部の蔦と蔓で建築物をその場に固定するために地下に居住し、生涯のほとんどを建造物の基礎として過ごすために最適な大きさの、巨大な有機エレメンタルである。この建築物はしばしばセレズニアの者達が日常的に使用する寺院や円形観覧席となっている。脅威にさらされた際は司祭やシャーマンが生ける寺院を召喚するとエレメンタル全体が地下から立ち上がり、建造物の塊や破片をその身体に組み込んだまま鎧や武器として用いる。敵を打ち負かした後は、生ける寺院は地下へと戻り建造物を元の場所へと組み立て直す、何も起こらなかったかのように。

 
アート:Chase Stone

セレズニアの哲学

世界魂

 世界魂、議事会の声としても知られるそれはマット・セレズニアの意識のほのかな伝達である。議事会もまたギルド員から経験と知恵を選び、そして伝達する。こうして伝えられる知恵の明晰さは、ギルド員の瞑想の深さとその者のギルドへの奉仕に比例する。死亡した際の魔法的儀式を通じて、そのギルド員の経験全て(霊体)は世界魂へと転送・記憶される。ギルド員の献身が深いほど、世界魂との繋がりも深くなる。最も信心深いセレズニア員の何人かは世界魂への繋がりから計り知れない力を振るうことが可能となっている。

力の誘惑

 理想的な世界の中、セレズニアの者達は彼らの指導者全員を、どれだけ長くその地位にあろうと、誤りを免れないそして死を免れることはできない教師にすぎないとみなしている。しかしながらセレズニアの古老の中には少々自己拡大する傾向にある者もいる。彼らは個人的な野心を抱いた結果、好みのヴァーナディの発展と美に重きを置いている。

 
アート:Ryan Barger
暴力と偽善

 殺生についてのセレズニアの偽善的考えは公然の秘密である。生命の尊厳についての教義から、彼らは厳格な平和主義者であると信じる者もいるかもしれない。それどころか、彼らは戦闘において数えきれない生命を捨てることに何の問題もない。戦闘におけるセレズニアの主要な戦略の一つは、生ける身体の盾を作り出し、巨大なエレメンタルやアバターが現れてひとまとめに破壊するまで敵対者を押し留めることである。戦闘の後、セレズニアでは尊い戦士達の犠牲とあらゆる生命がマット・セレズニアへと帰ることについての、盛大で儀式的な大騒ぎを行う。だが屍の山は覆い隠すには困難な証拠である。

美の守り手達

 セレズニアギルドは自然の、そして構造的な美の守護者である。ヴィトゥ=ガジー内には風景を配置する正しい方法、最適な石、特定の樹木を配列する方法、そして群葉を重ねる最も喜ばしい手法についての、巻物と古写本の全部門が存在する。あらゆる石を清潔に保ち続けることを信条とする者、痕跡を残さずに配置したいと思う者も中にはいるが、その美は生命の重要な価値であるというのは誰もが認める所である。

 
アート:Nils Hamm

他のギルドに対するセレズニアの態度

ボロス:「いずれ彼らは戦いに疲れ果てるでしょう。その時には、セレズニアの優しき抱擁がお待ちしております」

アゾリウス:「いつの日か、彼らはその心を馬鹿げた外面の法から解き放ち、議事会の声に従うことを学ぶでしょう」

ラクドス:「服従するまで、彼らは自制しなければなりません」

ゴルガリ:「あの腐り這いつくばる者達は、虫と死を弄ぶ代わりに我々のやり方からより多くを学ぶことができるでしょうに」

ディミーア:「命の真の贈り物を決して味わうことのない、統率なき殺戮者達からなる幽霊の軍勢です」

シミック:「共同性と憐れみを持たない、生命と自然をねじ曲げる者達は失脚するでしょう」

グルール「なんという無駄......臭くて無意味で破壊的な無駄、それだけです」

イゼット:「一人の過酷なエゴが支配する、悪戯のおせっかい焼き。失敗して破滅なさい」

オルゾフ:「彼らは、その個人的野心という命なき牢獄で迷っているのです」

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