MAGIC STORY

ダスクモーン:戦慄の館

EPISODE 12

とある素敵な日に

Seanan McGuire
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2024年8月31日

 

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アート:Sam Burley

 

始まり:第一の扉

 今日のラヴニカは素晴らしい! 太陽は輝き、空は快晴。今のところ何も燃えておらず、異次元からの侵略を心配する必要もない。だがギルドの業務は常に最優先でなければならない。従って……

  • 君がイゼット団あるいはシミック連合の一員であるなら、第二の扉へ進め。
  • 君がセレズニア議事会あるいはグルール一族の一員であるなら、第三の扉へ進め。
  • 君がゴルガリ団あるいはディミーア家の一員であるなら、第四の扉へ進め。
  • 君がオルゾフ組あるいはアゾリウス評議会の一員であるなら、第五の扉へ進め。
  • 君がラクドス教団あるいはボロス軍の一員であるなら、第六の扉へ進め。

 
第二の扉
 

 ニヴ=ミゼットが第九地区のとある中庭で何やら奇妙なことをしている。ニヴ=ミゼットが何か奇妙なことをするというのは目新しくもないが、公共の一帯を占拠し、そこを自分の名において封鎖しろとアゾリウスを説得しているのはちょっと普通ではない。何をしているかはわからないが、おそらく興味深い科学的妥当性があるのだろう。さあ、ドラゴンを煩わせに行こう!

 君はニヴ=ミゼットが謎めいたプロジェクトを進める場所近くの路地に向かった。ボロスの衛兵が任務についており、周囲に目を光らせている。さてどうする?

  • 衛兵の気を散らそうとするなら、第七の扉へ進め。
  • はったりを用いて通ろうとするなら、第八の扉へ進め。
  • 立ち去って一杯のコーヒーを楽しみたいなら、第九の扉へ進め。

 
第三の扉
 

 君はイゼット団が第九地区で何か不自然なことを企んでいるという噂を耳にした。そろそろ現地に出かけて自分で確かめよう。近づくとボロス軍からの警告が目に入り、その区域に死霊エネルギーが存在しているとある。だが何も感じられない。さらに近づくとボロスの衛兵が任務についており、周囲に目を光らせている。これは奇妙なことになってきた。

 爆発や火災は起きていないようだが、その一帯には珍しいほどの人数の研究者がいる。さてどうする?

  • はったりを用いて衛兵を通過するなら、第十一の扉へ進め。
  • 正面から衛兵に立ち向かうなら、第十二の扉へ進め。
  • 立ち去って一杯のコーヒーを楽しみたいなら、第九の扉へ進め。

 
第四の扉
 

 第九地区で死霊エネルギーが急激に増加しているらしい。君は何が起こっているのか見に行こうとしていたところだ。近づいても死霊エネルギーは感じられなかったが、ボロス軍の警告と、その区域を取り囲むように張られたアゾリウスの結界が目に入った。結界は人々を締め出すほど強力ではないが、ほとんどの住民にとっては迷惑だろう。さらに近づくと、衛兵も見張っているのがわかった。

 君のギルドが責められるような死霊エネルギーはここには存在しないと確認できた。だがそんな嘘をつくほど重要なこととは何だろうか?

  • こっそりと衛兵の横をすり抜けるなら、第十三の扉へ進め。
  • 何が起こっているのかと衛兵に尋ねるなら、第十四の扉へ進め。
  • 立ち去って一杯のコーヒーを楽しみたいなら、第九の扉へ進め。

 
第五の扉
 

 イゼット団が第九地区の一部を占拠しており、君はさらに情報を集めるよう依頼されている。彼らが活動していると思われる区域に向かうと、あちこちにボロス軍の印が入った警告が掲げられており、そこには死霊エネルギーが急増していると書かれている。だが何も感じられない。彼らがここで何をしているのかはわからないが、明らかに嘘をついている。

 境界線には衛兵が立ち、君をこれ以上近づかせないようにしている。さてどうする?

  • 先に嘘をついたのは向こうだ。衛兵を嘘で言いくるめるなら、第十五の扉へ進め。
  • ラヴニカの自由市民として通行許可を要求するなら、第十六の扉へ進め。
  • 立ち去って一杯のコーヒーを楽しみたいなら、第九の扉へ進め。

 
第六の扉
 

 第九地区は現在イゼット団の管轄下にあり、君は立ち入りを明確に禁止されている。けれど、たまたまその方角に迷い込んでも誰も怒らないだろう?その辺りにはいい感じのカフェがいくつかある。朝食を食べたいだけかもしれないし!

 ニヴ=ミゼットが一般人の立ち入りを禁止した区域の外には衛兵が配備されている。その中には見覚えのある者もいる。君は……


 
第七の扉
 

 君は素早く考え、通りすがりの商人から鳩の入った鳥かごを購入し、初歩的な投石器をこしらえて衛兵へと放った。衝撃でかごが破裂し、慌てふためく鳩が不意にそこかしこで暴れ、羽が飛び散った。混乱の中をこっそり通り抜けるのは簡単だった。

 その中庭は研究者でいっぱいだった。君は簡単に溶け込み、会話を聞いた。そしてニヴ=ミゼットの注意が制限区域後方の一角にある、とある異変に向けられていることを突き止めた。君は群衆の中を進み、その異変を見つけた。

 扉がひとつ。ただの扉。

 デザインはこの地区にそぐわないもので、誰もそこに近づこうとはしない。けれどそれでもただの扉だ。何がそんなに怖いというのだろうか?

  • 扉に近づく機会を待つなら、第十の扉へ進め。
  • 引き返して一杯のコーヒーでも楽しむことにするなら、第九の扉へ進め。

 
第八の扉
 

 これは科学的試みなのだ!きっと中に入ることができる!君は衛兵に近づき、ギルドの所属を示し、重要な用事があると言って入場を要求する。だが控え目に言って、彼らはそれを疑っている。君を通すことは彼らの指示には含まれていない。君は強く主張するが彼らは拒否する。君の資格は彼らの心を動かすことはできなかった。

 君は衛兵の気を散らす作戦に変更したが、彼らは今や君を監視しており、君は阻止されてしまった。君は連行され、ボロス軍の留置所で一日を過ごすことになった。悲しいことに、君は結末に辿り着いた。

 少なくとも生きてはいる? 再挑戦したいというなら、始まりに戻ること


 
第九の扉
 

 火想者とイゼット団がこれほどの安全対策を講じるほど心配しているものであれば、おそらく君が手を出すべきではない。君は引き返してお気に入りのコーヒーショップに向かい、そこで注文をする。甘いロールパンは焼きたてだ。君は歩道のテーブルに席を確保し、人々が一日を過ごす様子を眺める。本当に素晴らしい日だ。後で作業場に戻って最新の計画に手を加えるのもいいだろう。

 おめでとう!

 君はありふれてはいるが喜ばしい結末に辿り着いた。再挑戦したいというなら、始まりに戻ること


 
第十の扉
 

 一時間ほど待つと研究者たちが交代し、見たところ扉の付近には誰もいなくなった。中庭のここまで深くに衛兵は配備されていない。今こそチャンスだ。君はこっそり近づくが、何も起こらない。ただの扉だ。さてどうする?

  • ドアノブをひねってみるなら、第十九の扉へ進め。
  • 好奇心は満たされた。コーヒーでも飲みに行こうか? 第九の扉へ進め。

 
第十一の扉
 

 この辺りには、身を隠してくれるような自然のエネルギーはあまり存在しない。辺りを見回すと花屋が見つかり、君はそのゴミ箱から枯れかけの花を一抱え集めることができた。魔法のさざ波で花を復活させると、君は衛兵に近づいた。

 「ニヴ=ミゼット様に届け物です」

 君を通していいものか衛兵はわからなかったが、同時にニヴ=ミゼットを怒らせたくもなかった。最終的に君は通された。

 その中庭は研究者でいっぱいだった。彼らが言っていることはどれも訳がわからない。君は彼らの動きを追いかけ、その活動の焦点を見つけた。

 扉がひとつ。ただの扉。

 デザインはこの地区にそぐわないもので、誰もそこに近づこうとはしない。けれどそれでもただの扉だ。何がそんなに怖いというのだろうか?

  • 扉に近づく機会を待つなら、第十の扉へ進め。
  • 引き返して一杯のコーヒーでも楽しむことにするなら、第九の扉へ進め。

 
第十二の扉
 

 イゼット団が何をしているかを知る権利が君にはある。特にこんな人口密集地域で死霊術の活動があると彼らが主張しているならなおさらだ。君は衛兵に近づき、ギルドの資格証明書を提示して入場を要求する。彼らは動じず、立ち去るようにと君に告げた。さもなければ平和を乱したとして拘束せざるを得なくなる、と。

 君は引き返し、はったりを用いて中に入ろうとした。だが彼らは君を覚えていた。君は連行され、ボロス軍の留置所でその日を過ごすことになった。悲しいことに、君は結末に辿り着いた。

 少なくとも生きてはいる? 再挑戦したいというなら、始まりに戻ること


 
第十三の扉
 

 君にできることがひとつあるとすれば、それは隠密行動だ。君は周囲を注意深く観察し、十分に身を隠せる細い影を見つけ、それを伝って明らかに退屈している衛兵の列を通り抜け、その先の中庭に入った。

 一帯は研究者でいっぱいだった。彼らが言っていることはどれも訳がわからない。君は彼らの動きを追いかけ、その活動の焦点を見つけた。

 扉がひとつ。ただの扉。

 デザインはこの地区にそぐわないもので、誰もそこに近づこうとはしない。けれどそれでもただの扉だ。何がそんなに怖いというのだろうか?

  • 扉に近づく機会を待つなら、第十の扉へ進め。
  • 引き返して一杯のコーヒーでも楽しむことにするなら、第九の扉へ進め。

 
第十四の扉
 

 ギルドが教え込んできたあらゆる本能に逆らい、君は正面から近づくことにした。衛兵は君が歩いてくる様子を見ており、何が起きているのかと君が尋ねるとそっけない返事をした。数度のやり取りを経ても、君は結界の理由について何も知ることはできなかった。君は苛立ちはじめた。

 君は一旦引き下がり、何とかして中に忍び込もうとした。だが衛兵は警戒を強めており、君は捕まってしまった。君は連行され、ボロス軍の留置所でその日を過ごすことになった。悲しいことに、君は結末に辿り着いた。

 少なくとも生きてはいる? 再挑戦したいというなら、始まりに戻ること


 
第十五の扉
 

 時に、不正行為以外に選択肢がないということもある。君は衛兵に近づき、書類の不備を解決するために呼び出されたと主張した。彼らは確信を持てなかったものの、君には十分な説得力があり、彼らを通り抜けて中庭に入ることができた。中に入ると、彼らはもはや君を別の誰かの問題とみなしたようだった。監視の目はない。

 至る所にイゼット団の研究者がいて、混乱や不規則な変動について真摯に議論していた。君は彼らの動きを追いかけ、その活動の焦点を見つけた。

 扉がひとつ。ただの扉。

 デザインはこの地区にそぐわないもので、誰もそこに近づこうとはしない。けれどそれでもただの扉だ。何がそんなに怖いというのだろうか?

  • 扉に近づく機会を待つなら、第十の扉へ進め。
  • 引き返して一杯のコーヒーでも楽しむことにするなら、第九の扉へ進め。

 
第十六の扉
 

 君は衛兵へと突進し、ラヴニカの自由市民として入場を要求した。そしてその区域に死霊エネルギーは感知できず、それは彼らが何かを隠している証拠だと主張した。あの侵略以来、そのような隠蔽行為は好ましく思われていない。だが君がとった手法は上手くいかなかった。君はある意味驚いた――あくまである意味。

 君は戦術の変更を試み、公共社会を混乱させているその占有許可を見直すべきだと主張した。だが衛兵は君の意見を受け入れなかった。君は連行され、ボロス軍の留置所でその日を過ごすことになった。悲しいことに、君は結末に辿り着いた。

  少なくとも生きてはいる? 再挑戦したいというなら、始まりに戻ること


 
第十七の扉
 

 辺りを盛り上げて注目を集めたい? それは君の得意分野だ! 大道芸を披露したり、退屈している通行人を腕相撲大会に誘ったりして君はあっという間に群衆をかき立て、やがて陽動にもってこいの雰囲気が確保された。混雑した路地で「火事だ」と叫ぶのは優雅とは言えないかもしれないが、効果はある。また叫ぶことで、取り乱した衛兵をすり抜けるための隠れ場所が確保できるのだ。

 境界線の先の一帯は研究者でいっぱいだった。彼らが言っていることはどれも訳がわからない。それでも君は彼らの動きを追いかけ、気付くとこの場にそぐわないひとつの扉の前に立っていた。一連の空騒ぎの原因は本当にこれなのだろうか?

  • 扉に近づく機会を待つなら、第十の扉へ進め。
  • 引き返して一杯のコーヒーでも楽しむことにするなら、第九の扉へ進め。

 
第十八の扉
 

 君は衛兵に堂々と近づき、馴染みの友達のように挨拶し、何が起こっているのかと尋ねた。彼らは任務の内容について話さないように命じられており、いくら説得しても君にその内容を明かす危険を冒してはくれなかった。君は行き詰まった。

 君は歩き回って群衆を集めようとするが、彼らは君に注意を払っていた。君は連行され、ボロス軍の留置所でその日を過ごすことになった。悲しいことに、君は結末に辿り着いた。

 少なくとも生きてはいる? 再挑戦したいというなら、始まりに戻ること


 
第十九の扉
 

 ドアノブを試してみると、それは簡単に回った。これだけ騒いでおきながら、鍵すらかかっていないとは!

 でもこれは、もしかしたらよくない兆候だろうか?

  • その扉を開けるなら、第二十の扉へ進め。
  • 引き返してコーヒーを飲みに行くなら、第九の扉へ戻れ。

 
第二十の扉
 

 ありえない扉の向こう側にはありえない廊下が伸びていた。この地区をよく知る君は、この廊下が堅い石を突き抜けているであろうことはわかる。だが一見するとそれはありふれた、とはいえ大きな住宅の入り口のように見えた。君はまたあのコーヒーのことを考えるが、その扉は魅力的で、引き返すことはできなかった。

 廊下に踏み入ると、君の背後で扉が勢いよく閉じられた。だが振り返ると、もはやそこには何もなかった――扉があったはずの場所には廊下が伸びていた。無害に、事もなげに。

 君の居場所からは五つの出口が確認できる。どちらへ進む?

  • 君がイゼット団あるいはシミック連合の一員であるなら、振り返って扉があったはずの廊下を進み、第二十一の扉へ向かえ。
  • 君がセレズニア議事会あるいはグルール一族の一員であるなら、左に見える戸口を抜けて第二十二の扉へ向かえ。
  • 君がゴルガリ団あるいはディミーア家の一員であるなら、落とし戸を下りて第二十三の扉へ向かえ。
  • 君がオルゾフ組あるいはアゾリウス評議会の一員であるなら、右に見える廊下を通って第二十四の扉へ向かえ。
  • 君がラクドス教団あるいはボロス軍の一員であるなら、まっすぐに進んで第二十五の扉へ向かえ。

 
第二十一の扉
 

 当初、その廊下は全くもって普通の廊下だった。だが次第に周囲の様子が変化していった。木の壁はガラスに変わり、そのガラス越しに巨大な水槽の内部のような様子が見えた。そこには見るも恐ろしい魚や、言葉では言い表せない形状のものが泳いでいる。死んだような白い目と剥がれ落ちた鱗、捕らわれのリバイアサン。空気は次第に冷たくなり、カビと塩の匂いが漂ってきた。

 廊下の果ては壁になっていて、扉がふたつある。片方には魚の模様が彫刻されており、もう 片方には本の彫刻がある。どちらへ進む?


 
第二十二の扉
 

 扉を抜けるとまた別の廊下が続いていた。だが歩いていくと、緑の芽吹きや土や焚き火の煙の匂いが鼻を突くようになった。更に進むと周囲の壁が消え、果てしない森に変わった。床は土の地面となり、足元には小枝が散らばっていて踏むとザクザクと音を立てた。頭上には、厚いガラス越しに見たかのように少し歪んだ月がかかっていた。

 道は分岐している。左は森の更に奥深くへ、右は小川のせせらぎの音の方向へ。どちらへ進む?


 
第二十三の扉
 

 ぐらつく梯子を下りて、君は一見普通の地下室に入った。どういうわけか、薄暗い空間が四方八方へと広がっている。歩き始めると少しずつ周囲の影が変化していった。蜘蛛の巣で覆われ、まるで自ら動いているかのように見える。床が柔らかくなった――床板が腐敗しているのだ。その隙間から、生き延びるのが大事とばかりに昆虫や蜘蛛やムカデが走り去っていった。

 床は突然、大きな裂け目で途切れた。ロープの吊り橋がそこを横切っている。君はどうする?


 
第二十四の扉
 

 歩いていくと廊下は開け、汚れた白い大理石の壁に囲まれた、広大でがらんとした玄関ホールに君は出た。天井は高いドーム型で、クモの巣が張り巡らされている。床は磨き上げられた石材で、歩くと自分の姿が映るが、それは――おかしい。まるで君が今いる場所から二歩左にいるようだ。君の影も同様に、君の身体と一直線に並んではいない。歪んでおり、光に対して後方まで伸びすぎている。この場所は、おかしい。

 先の壁にはふたつの扉がある。ひとつにはランタンの彫刻があり、もうひとつには蛾の彫刻が。どちらへ進む?


 
第二十五の扉
 

 歩くにつれて空気が熱くなり、床が鋼鉄に置き換わったかのように足音が反響をはじめた。下をちらりと見ると、君は巨大な機械が並ぶ部屋の上、金属の格子作りのキャットウォークを歩いているとわかった。再び顔を上げると壁は消えていた。その代わりに沢山のパイプが遠くまで蛇行し、時折蒸気を噴き出している。ここはあまり安全な場所ではないようだ。

 前方でキャットウォークが二方向に分岐している。どちらへ進む?


 
第二十六の扉
 

 その水面は水草と睡蓮の葉で覆われている。巨大な魚の背中が緑の間に一瞬だけ現れ、そして再び沈んでいった。見えなくなっても、忘れることはない。

 扉はもうひとつだけ、部屋の向こう側にある。どうする?


 
第二十七の扉
 

 本が飾られた扉を開けると、そこは巨大な図書室だった。見えない天井まで本棚が伸びている。この場所で実際に何が起こっているのかを調べられるかもしれない!君は数冊の本を取り出して肘掛け椅子に腰を下ろし、読み始めた。

 空気は静かで涼しく、静寂がすべてを支配する……支配しなくなるまで。しばらくすると、誰かに見られているような感覚が明白にあった。だが顔を上げるとそこには誰もいない。君は本に戻る。

 時間が経ち、ようやく君は立ち上がろうとした――できない。下を見ると、椅子が君の足を飲み込み、胴体へと広がり、痛みもなく少しずつ君を飲み込んでいるのがわかる。君は叫ぶが、誰も来ない。来ることはない。

 椅子が君の腕と手を掴むと本が床に落ち、やがて君の頭も飲み込まれた。まだ目は覚めていて、意識もある。まだ見える。

 君はようやく、ニヴ=ミゼットたちがあの扉を隔離しようとしていた理由を把握した。何も知らない者が次に来た時に警告する方法があればいいのだが。動けさえすればいいのだが。

 君は今や、ダスクモーンの備品となった。

 これが、結末だ。


 
第二十八の扉
 

 森の奥深くへ進むと、風に乗って甘美な鈴の音が聞こえてきた。君はその音を追って空き地に辿り着き、そこでは花と枝を編んで作られた奇妙で美しい人形たちが踊っていた。君は小枝を踏んでしまい、その音に人形たちは踊りを止めて振り返った。一瞬、これは危険なのではと君は思う――だがその後、人形たちはこちらに来るようにと君を手招きした。

 木人は疲れを知らない。君は彼らと共に何時間も踊り、周囲の緑の世界を満喫した。一体が君の耳の後ろに花を挿した。その香りは甘く、うっとりとさせるよう。疲れるまで踊り続けたところで君は満足し、気分爽快に立ち去ろうとした。

 髪から花を取り除こうと手を伸ばし、指にとげが刺さった。血は出ない。君は顔をしかめた。

 枝が骨に巻き付くのを感じた時にはもう遅い。踊りはいつまでも続く。

 君は今やダスクモーンのものだ。木人が君の安全を守ってくれるだろう。

 これが、結末だ。


 
第二十九の扉
 

 水の音の方へ向かったのは正解だった――君は森から抜け出し、遠くへと流れる小川を見つけた。水は澄んでおり、川底の石は浸食されて丸く滑らかになっている。魚が月明かりに照らされて銀色に輝きながら泳いでいった。

 岸辺に奇妙な生き物がうずくまっている。毛皮は色とりどりの縞模様で、角のひとつには沢山の風船が結びつけられている。その生き物は人間のような仮面をかぶっている。どうする?


 
第三十の扉
 

 君は来た道を慎重に引き返し、地下室に戻った。影は今や、目に見えない未知の力で盛んに身悶えをしている。空気は重苦しい。君は廊下に戻る梯子に近づき、もうすぐそこに着くという時、影のひとつが細長い肢を持つ一体の怪物へと姿を変えた。顔は大きく開かれた口以外にほとんど何もなく、沢山の歯が並んでいた。

 君は走ったが、走るだけでは逃げられない。走るだけでは絶対に逃げられない。

 君の悲鳴は誰にも届かない。

 館底種は、優しくではないにしても素早く殺す。ダスクモーンを養うのは、君の肉体よりもむしろ君の恐怖だ。

 これが、結末だ。


 
第三十一の扉
 

 君は橋を渡りにかかる。背後の部屋はすぐに見えなくなり、前方に新たなものは何も現れない。それでも君は進み続ける。胸に恐怖が募りはじめる。ここから抜け出す方法はないのだろうか? 逃げる方法はないのだろうか?

 背後でロープが切れる音が聞こえた時には、安堵したと言ってもいい。橋が落ち、君も一緒に落ちて、腐敗した植物や腐乱死体で一杯の沼へと墜落した。悪臭は言語を絶するほどだ。君はどうにか頭を水面から出したまま、岸まで歩く。岸の土は固く締まっており、心地よくて涼しい。しばしここで休もうと君は倒れ込む。

薄闇の中、背後で何かが動いている。どうする?


 
第三十二の扉
 

 ランタンの扉は居心地のよい渓谷へと続いていた。頭上の空はまるでカンバスに描かれたような、一様で完璧な薄明かり。雲はなく、星もない。渓谷の規模を考えると、これが家の中だというのはありえない。けれど空気は静止しており、空はまるで本当に描かれたもののように人工的で、決して変化しないように見える。緑で覆われた近くの丘陵に小さな家がひとつ建っており、煙突からは煙が漂っている。

 そうしようという気があったわけではないものの君はその家へと歩き出し、すると住人たちが出てきて挨拶をした。彼らは微笑んでおり、瞳はぎらついていた。彼らは花を繋いだ紐で君を飾り、テーブルへと案内した。出されたリンゴ酒は酸っぱいが、蜂蜜ケーキは今まで味わったことがないほど甘い。肉の匂いで胃がむかつく。君はそれを食べない。

 夕食が終わると、彼らは扉に鍵をかけた。彼らは聖書を取り出して君に読み聞かせた。そして君は理解した。ついに、理解したのだ。

 ようこそ。

 君は今やヴァルガヴォスの教団員となった。ここが君の家だ。

 これが、結末だ。


 
第三十三の扉
 

 蛾の扉は繭でいっぱいの屋根裏部屋に通じていた。白く柔らかなその中で何かが身を引きつらせ、恐ろしいものが羽化の瞬間へと向かっている。ここは安全ではない。この家のどこも安全ではないが、この部屋は……飢えているように感じる。ここは、他のどこよりも安全ではない。


 
第三十四の扉
 

 キャットウォークに足音が響き渡ったかと思うと、巨大な姿が蒸気の中から現れた。身長はゆうに7フィートはあり、大柄で逞しいその体格はまるで歩く壁のよう。それは重そうな革のエプロンをまとい、釣り針とねじれたワイヤーの飾られた鋲打ちの革のフードをかぶっている。片方の手につるはしを、もう片方の手には肉切り包丁を持っている。

 まだ君には気付いていないようだ。どうする?


 
第三十五の扉
 

 歩くにつれて空気は次第に熱くなっていった。全身から汗が滴り落ち、呼吸を続けるだけでも一苦労だ。骨の腕を持つ者たちが蒸気の中から現れて君を抱き寄せるが、暑さで弱った君は抵抗できない。彼らは自分たちの主のもとへ君を引きずって行った。主は白い革と銀のスパイクを身につけた、痩せて背の高い人物だ。程なくして、君は叫ぶ方法を忘れてしまった。

 だが彼らは喜んで思い出させようとするだろう。

 剃刀族は獲物で遊ぶのが好きだが、君が仲間になるというなら生かしておいてくれるだろう。どちらにせよ……

 これが、結末だ。


 
第三十六の扉
 

 部屋を横切ろうとすると、巨大な触手が水中から一本飛び出して君の腰に巻き付いた。それは君を引っ張って転ばせ、汽水の中に引きずり込んでいく。叫ぶ暇はない。どのみち叫んでも無駄だ。

 息を吸う間もなく君は沈んでいった。この家に慈悲があるとすれば、底に何が待ち受けているのか見るよりもずっと前に死んでしまうということだ。

 君の骨は波に流されて失われるだろう。

 これが、結末だ。


 
第三十七の扉
 

 用心深く、君はその奇妙な生き物に近づく。生き物はゆっくりと君を振り返る。仮面の下に顔は隠れているが、こちらを見ているような気はする。攻撃的な様子はない。君が近づくと、その生き物もまた近づいた。そしておどおどと、君へと風船をひとつ差し出した。

 しばらくして、君は新たな友達と共に焼け落ちた食料庫で暮らすようになった。家の中をさまようナイトメアは、ほとんどがその場所を避けているらしい。怪物が近づきすぎると君の生き物が、君のけだものが追い払ってくれる。どちらがペットでどちらが飼い主なのかはわからないが、何にせよ君はまだ生きている。そして、イゼット団がまもなく救出隊を送ってくることは間違いない。

 きっと。そうしてくれるはずだ。

 君はダスクモーンに身を委ねた。とはいえ、もっと悪い形でそうなる方法はいくらでもある。

 これが、結末だ。


 
第三十八の扉
 

 君は動かない。背後の物音は徐々に消え、ついには完全な静寂が訪れた。

 泥水が、緩慢な津波のように岸から引きはじめた。見上げると、悪臭を放つ波が凍りついたように君の上にそびえていた。君は動かない。波は崩れ落ち、一瞬で君を飲み込んだ。少なくとも、それは一瞬の出来事だった。

 君の骨は決して見つからないだろう。

 これが、結末だ。


 
第三十九の扉
 

 好奇心は危険なものだ。君は立ち上がり、物音が聞こえる方へと歩いていく。周囲は次第に明るくなり、ぼんやりとした光で満たされていく。音を立てたものの気配はない。それでも君は歩き続ける。

 第四十の扉へと歩き続ける。


 
第四十の扉
 

 足を踏み入れた部屋は広くて風通しがよく、天井は白い蜘蛛の糸で覆われている。何かが罠にかかっている。近くで見ない方がいい。遠くで、羽ばたきのような音が聞こえる。

 手遅れだ。もう逃げられない。もう引き返せない。もう、コーヒーを飲みに行けない。

 光と静寂がすべてを満たす。

 君はヴァルガヴォスの顔を見た。

 これが、結末だ。


 
第四十一の扉
 

 君はじっと動かない。この家の中で狩りをするものは、動くものに引き寄せられるわけではないのだろうか。人影は歩くのをやめた。振動は止まり、それは向きを変えてゆっくりと蒸気の中へと去っていった。君は息を吐く。ほんの一瞬ではあるが、安全だ。

 君は先に進もうとするが、その時キャットウォークの下から手が伸ばされた。君は捕まれ、蒸気が充満する宙へと引きずり落とされた。落ちながらも、君には自分の選択を後悔する時間があった。ああ、後悔は沢山ある。

 そして地面が、炭が燃える果てしない野原が近づき、後悔は終わりを迎えた。

 痛みがないわけではない、けれど少なくとも速やかだった。

 これが、結末だ。

 


(Tr. Mayuko Wakatsuki)

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