MAGIC STORY

ゲートウォッチの誓い

EPISODE 11

無色を機能させる

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無色を機能させる

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年1月8日


 このカードを皆さんはおそらく覚えておられないでしょうが、内部では実際に一大事になりました。

 これは「無色のマナ1点」ではなく{1}が使われた最初のカードでした。無色マナと不特定マナの間には大きな違いがあるので、これは内部でちょっとした論争を巻き起こしました。しかし結局、外部の人々はこのカードを手に入れ、疑問を抱くことなくこれをその本来の使い方で正確に使うことができました。{1}は不特定マナでもあり、どの色の呪文を唱えるためにも使えることに混乱はありませんでした。それに気がついてから、我々はテキスト欄を大きく節約するようになりました。

 13年間変わりませんでしたが、他の多くの事柄のように、これにもとうとう変更が行われました。『ゲートウォッチの誓い』はコジレックがゼンディカーに与える影響を表す何かを求めていて、そしてこのセットの先行デザイン・チームは無色マナでのみ唱えることのできる呪文を思いつきました。唱えるのに無色のマナを必要とする呪文の能力は簡単でした――我々は「無色のマナを用いてのみ唱えられる」という意味のシンボルのアイデアを考え出しました――しかしそのためには、無色マナと不特定マナは違うということを知らせる必要もありました。

 ある意味ではこれは6色目のマナであるとも言えますが、様々なマナ基盤が既にマジックに存在しています。加えて、既に無色マナをマナ・プールに加えるカードが大量に存在しているので、無色マナでないと唱えられない呪文を機能させるために大量のマナ基盤を作らなくてもよい、という大きなアドバンテージがあります。

 もちろん、基本的に人々は無色マナと不特定マナの違いで混乱するでしょうから、呪文のコストにおける無色マナの全体的な使い方はより複雑になりました。私自身、カードの右上の数字シンボルのことを「無色マナ」だと完全に誤って説明したことがあります。我々はこれまでカードで使っていた古いテンプレートから離れ、そしてテキスト欄に無色マナ呪文をどう唱えるかを正確に伝える何かを書く必要がありました。

{1}から{C}へ

 おそらくこれが、無色マナの導入に関して最も論争が起こった部分です。この過程のとても後のほうでカードの右上に無色マナ・シンボルがつき、そしてこのコストは無色マナでのみ支払えるという注釈文もつけたままにしました――しかし一部の神話レアには全てを載せるのがとても困難でした。さらに、社内の慣れていない人たちとのテストで我々がその人たちに指摘されたことは、新しい無色マナ・シンボルをマナを生み出すカードに使うと、このメカニズムはとても直感的になるということでした。これは我々が話し合った上で、採用しなかったことでした。

 さらに、その人たちが(全体的に)無色マナを生み出すときに、無色マナ・シンボルを使っているときのほうが{1}や{2}を使っているときよりも良い反応を示したこともわかりました。これにより、我々は無色マナについての変更を『ゲートウォッチの誓い』だけでなく、これ以降のマジックの全てに行うという方向に進みました。

 多くの人たちが(私も含めて){C}{C}を出す《太陽の指輪》の画像を見て変に思いますが、我々はもしマジックを最初から作り直すなら、ほぼ間違いなく無色マナと不特定マナの違いを明確にするだろうということに関して意見が一致していて、そしてこの無色マナ・シンボルはそれを行うための完璧な方法です。変更を変だと感じた時、それが正しくないからなのか慣れていないからなのかを知っておくのは重要なことです。これは後者に大きく偏っています。


姿を欺くもの》 アート:Viktor Titov

 この時点で、『戦乱のゼンディカー』に変更を加えることは困難でしたが、不可能ではありませんでした。我々はそれぞれのセットにとって正しい決断を下したいと考えました。『戦乱のゼンディカー』に無色マナ・シンボルを入れることの大きな懸念は、そうすることで『ゲートウォッチの誓い』が提供する最大で最新のエキサイティングな物事を奪い去ってしまうことでした。我々が期待に応えたときに人々は満足するかもしれませんが、それは我々がこのセットに望んだほどのインパクトを持っていないでしょう。

 最終的には、『戦乱のゼンディカー』のエルドラージ・末裔が生け贄で{1}を加えると書いてあり、『ゲートウォッチの誓い』のエルドラージ・末裔が{C}を加えると書いてあることは理想的ではないと分かっていましたが、現実とはままならない状況がたくさんあるものです。我々が行ったことは、『ゲートウォッチの誓い』とマジック全体にとって最良であると感じたことでした。

スタンダードで無色マナを機能させる

 先程お話ししたように、無色マナが来ることは前から分かっていました。これは『ゲートウォッチの誓い』の先行デザインで最初に決まったことであり、我々は『戦乱のゼンディカー』に取り組んでいるときにそれらの呪文を唱える助けになるよう強力な無色の土地が存在するようにしました。

 無色マナをスタンダードで働くようにさせることの課題は、言うまでもなくかなりの期間の中で最強の(そして今までの中で最強だと言う人もいるでしょう)マナ基盤が人々を無色マナに向かわせるのを難しくしているということです。私は人々がジェスカイやダーク・ジェスカイ、ゴルガリ・ジェスカイをプレイしているのを見ると、これらのマナ基盤へ簡単に別の疑似的な色を追加できるのかはとても疑わしいと思っています。

 ペインランドが『マジック・オリジン』に残った理由の1つは、構築フォーマットで簡単に無色マナを供給する簡単な手段を用意するためです。『戦乱のゼンディカー』スタンダードの4色デッキ向けマナ基盤は強力ですが、速度面での欠点も備えています。

 ペインランドはアンタップ状態で戦場に出る長所によって、無色マナを必要とするデッキがアンタップ状態で戦場に出る2色土地にアクセスすることを可能にします。2種の色マナと無色マナをプレイしたいデッキ(赤と黒と無色が均等)の場合、ペインランドはある意味3色土地になります。単色デッキが無色マナを使いたい場合はアンタップ状態で戦場に出る2色土地になり、同じように《精霊龍の墓》や《領事の鋳造所》、《オラン=リーフの廃墟》のような多くの強力なユーティリティ・ランドを使う選択肢があります。

無色カードのデベロップ

 無色マナをコストに含むカードをデザインする上での最大の問題は、おそらく、カラー・パイでの位置づけを考え出すことでした。これはデザインのいつもの仕事の1つですが、これらのカードの場合はどこから始めていいのか分からなかったので、多くの仕事がデベロップに要求されました。

 先述のとおり、スタンダードには多くの無色マナ基盤がありますが、また我々はそれらの無色カードをフェッチランドがスタンダードからローテーションした後に強くなりすぎないような位置にあるようにする必要がありました。デザイン・チームからのアイデアはいくつかありましたが、人々をフェッチランドやバトルランドに頼らない土地のマナ基盤のデッキをプレイさせるために、相当な強化がそれらのカードに必要であるとすぐに分かりました。しかし、間もなくフェッチランドはスタンダードからローテーションするので、我々はそれらを楔のカードがない世界で印刷されるカードよりも強すぎないようにする必要がありました。これはかなりの苦境であったとだけは言っておきましょう。

 その答えは、このスタンダード環境で強力となるカードを見定め、それらのいくつかを無色カードにすることでした。これはカラー・パイの大きな疑問をもたらしました。それが「無色マナ」であるということは何を意味するのでしょうか? これらのカードは何ができるのでしょうか? これらのカードに他の色がすることを他の色より重いコストでさせることもできましたが、それでは人々は他の色のカードを使うだけでしょう。

 そうではなく、この答えとは現実の問題を解決できるデザインをすることでした。例えば、《歪める嘆き》と《次元の歪曲》はどちらも《ヴリンの神童、ジェイス》を除去できます。我々は緑単ランプのようなデッキに、それらの《ウギンの聖域》や《見捨てられた神々の神殿》によってジェイスや他のいくつかの脅威に対処できる能力を与えたいと考えました。同時に、それらのデッキは《世界を壊すもの》のような強力なカードを得ることができました。序盤に相打ちを取りたいデッキは《作り変えるもの》を使うことができます。アグロ・デッキで相手の全体除去に対処できるマナ・カーブの一番上のカードが欲しいなら、《難題の予見者》を試してみましょう。

 カードがするべきことを上手く操作できたなら、今度はそれらのカードに適したデッキを見つける番です。私がスタンダードで現れる可能性が最も高いと思うデッキとして、緑無色ランプ、赤黒無色か黒無色のアグロ・デッキがリストの一番上にあります。また《変位エルドラージ》はトークンを除去したり自分の《包囲サイ》や他のユーティリティ・クリーチャーを明滅したりして、見かけるチャンスがあると思っています。

 いずれにせよ、我々がこれらの無色カードのプレイを機能させるようにしたことを楽しんだのと同じぐらい、皆さんが楽しんでくれるように願っています。私はこれらがスタンダードや、もしかすればより古いフォーマットにも良い影響を与えると信じています。

 今週はここまでです。来週は『ゲートウォッチの誓い』のデザインとデベロップにおける双頭巨人戦の役割についてお話しします。

 ではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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