MAGIC STORY

異界月

EPISODE 09

『異界月』のデベロップ

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『異界月』のデベロップ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年7月1日


 皆さんこんにちは! プレビュー・ウィーク真っ盛りで、私はみなさんが今まで見てきたものに興奮してくれていることを願っています。このセットには「合体」のように、デベロップ・チームだけでなくクリエイティブ、枠のデザイン、デジタル、ルール管理のチームにとっても達成が困難だった、たくさんの要素があります。特に合体は作るのにとても手のかかったメカニズムであり、我々がイニストラードに戻ってきたクリエイティブ的理由の1つです。私は我々がこれを考えだしたのと同じぐらい、皆さんにはこれを見てプレイして興奮してほしいと思います。

 今回の「Latest Developments」では、異なるメカニズムである「増呪」を用いた、かなりエキサイティングなプレビュー・カードをご紹介します。ですがその前に、皆さんに『異界月』のデベロップ・チームをご紹介しようと思います。

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サム・ストッダート/Sam Stoddard

 私です! このセットは『マジック・オリジン』に続いて私がリードを務めた2つ目のエキスパンションです。

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デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys

 デイブは『イニストラードを覆う影』のリード・デベロッパーで、『異界月』デベロップ・チームの次席者です。デイブは現在のデベロッパーの中でエリック・ラウアー/Erik Lauerの次に多くのセットでリードをを務めており、私が頼れる豊富な経験を持っています。デベロップ・マネージャーとして、彼はまたセットへの取り組み方とチームのメンバーとのつきあい方に関して、私が教わるべき知識も持っています。さらに、『イニストラードを覆う影』のリード・デベロッパーとして、我々はこの2つのセットが本当に合体するよう、ともに取り組むことができます。あと彼は《物騒な群衆》の再録を私のところから盗っていったので絶対に許しません。

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ブライアン・ホーレー/Bryan Hawley

 ブライアン・ホーレーはデザイン・チームから引き継ぎでデベロップ・チームにやって来ました。彼はこのセットにとても興奮しており、そしてすごいデザインを考えだすために多大な時間を費やしました。このチームにおける彼の役割の1つは、我々がデザイン・チームの目標を保つようにすることです。ブライアンは開発部内でいくつもの立場があり、その中には我々の照合を全てを管理している人、というものも含まれます。『異界月』で合体カードの奇妙な動きを印刷することの全ての問題において、彼はまさしくチームの宝でした。

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ジャッキー・リー/Jackie Lee

 ジャッキーはこのセットのデザイン・チームのメンバーでした。彼女はカードを作ることに加えて、大きなデザイン・チームの要望がセットの変更に際して維持されるようにする役割がありました。ジャッキーはカラー・パイに関する多くの力強い意見を持っていて、それはこのセットにとって重要なものです。我々が『異界月』のような、通常より物事を暗く歪めようとするセットに取り組んでいるとき、そのカラー・パイは恐らく向かうべきではない方向に歪む傾向にあります――そしてジャッキーは我々が変な方向へ向かわないようにしてくれました。

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メリッサ・デトラ/Melissa DeTora

 このセットに取り組んでいたとき、メリッサ・デトラは一番新しいデベロップのインターンでした。最近のプロツアーを経験した人間として、彼女の役割の1つはこのセットのカードの強さについて極めて現実的でいることでした。長い間デベロップをしてきた人が、物事が機能しているかどうかに対して少し無関心になったり、自分自身に嘘をついてしまうことは容易に起こります。メリッサのように、強さの検査ができて基本的にこの部屋で最強の人がいることは、セットをデベロップするときに我々が正しい決定を下せるようにする助けになります。メリッサがほんの数日前にこのビルに戻ってきたことに私はとても喜んでいて、彼女がカードをボツにするのをまた見ることを楽しみにしています。


 さてチームのことはこのくらいにして、今度は実際のセット、そして今回のプレビュー・カードについてお話しします。それではいってみましょう。

増呪

 このセットをデザインから引き継いだとき、我々はエルドラージがこのセットで何をするかについては多くの答えを持っていましたが、イニストラードの人々が何をするかについてはあまり持っていませんでした。引き継いだときのこのセットは《物騒な群衆》によく似たメカニズムがあり、それには十分な斬新さがありませんでした。私はそれをボツにして新しいものを探しました。

 現出につながるアイデアはかなり早く思いつきましたが、そのメカニズムに合ったものを確定させるのはとても困難でした。何度かの繰り返しを経た後――実際に機能するものは1つもありませんでした――私は助けを求めました。

 デザイン・マネージャーにしてこのセットのアドバイザーであるマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebと話し、私はなんとかイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerによるこのセットのための新しいメカニズムを探すミニチームを得ました。彼が考え出したメカニズムそのものは結局どれも実際には使われませんでしたが、この訓練は周囲のセットにあるメカニズムに基づいてこのセットにどのようなメカニズムが求められているかを表す素晴らしい仕事をしました。イーサンは双呪を提案し、それは楽しいメカニズムでしたが、このセットにピッタリと合うものではありませんでした。私は2つより多い選択肢を持つ双呪のバリエーションを思いつきました。

 最初のバージョンのこのメカニズムは白と黒だけにあり、2つの陣営が協力していることを表していました。白いカードは全て(ライフを払うような)「黒い」追加コストを持ち、黒いカードは(自分のクリーチャーをタップするなどの)「白い」追加コストを持っていました。これは興味深いアイデアでしたが、これでは十分な数のカードを作ることはほとんど不可能でした。

 我々はまた増呪を赤に移すことにも興味を持ちましたが、現在の実例では実際に良い方法がありませんでした。これらのカードのクリエイティブ的要素の多くは残ったままですが、カード自体は極端に広がりすぎるのではなく、それらの求める追加コストを見つけ出す方向へ向かいました。

 それでは、このセットの増呪で最もエキサイティングなカードの1つをご覧ください。《集団的蛮行》です。

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蛮行の力を制御する

 《集団的蛮行》の各効果自体は少し弱め(特に2マナ域としては)ですが、追加のモードを選ぶごとにカードを1枚捨てるトリックは多様性に富んでいます。-2/-2修整はスタンダードのクリーチャーを、何でもとはいきませんが、多くを除去することができます。この《強迫》はプレインズウォーカーを落とせませんが、ほとんどのデッキに多くのタイミングで十分な対象があります。そしてあなたは基本的に対戦相手から2点ドレインするためにカードを1枚使いたいとは思わないでしょうが、ただダメージレースから抜け出したいときもたまにはあるでしょう。

 これらは単なる魔除けの使い方です。《集団的蛮行》が真に輝くのはモードを複数用いたときです――そして他の魔除けとは違い、これはあなたが投資に見合うとみなしたものは全て使うことができます。

 このカードが真に輝くのはカードを捨てることを有効に活用したときです。一番分かりやすいのはマッドネスでアドバンテージを取る方法です。3ターン目に《集団的蛮行》で《薄暮見の徴募兵》を-2/-2して、《癇しゃく》で《森の代言者》を除去し、《強迫》効果で《集合した中隊》を落として対戦相手を出し抜くことができます。ゲームの後半では余った土地や複数のマッドネス・カードを投げつけることで、似たような恩恵を得て1ターンに大きな動きを起こすことができます。

 分かりやすいマッドネスの利用以外で考えてみると、《集団的蛮行》 はおそらく昂揚に基づいたアグロ・デッキで最も強く、『異界月』にはそれを支援するカードが多く存在します。3~4ターン目に昂揚を達成するカード・タイプを自然に墓地に送るのは難しいかもしれませんが、《集団的蛮行》は土地やエンチャントを捨てることによってとても簡単に昂揚を達成します。これは大きくなったあなたのクリーチャーの道を開ける助けになり、そして対戦相手の手札からそれらを除去するための《衰滅》や《石の宣告》を叩き落とすことができます。

 私が《集団的蛮行》について最も好きなことの1つはこのカードを正確に使うための技術の高さです。スタンダードのシーズンが進むにつれて、我々はカバレージのときにプレイヤーがこのカードを使う決断に関する議論を多く見かけることになるでしょう――その多くはゲームの大きな分岐点となるでしょう。

 対戦や盤面の状態を読みきって2枚目のカードを捨てて2点ドレインを決断することは多くはないでしょうが、接戦を制する助けになります。我々は《マーフォークの物あさり》を使うかどうかほどこのカードに関する議論を多くは見ていないかもしれませんが、私はこのカードの各モードを使うときに関する多くの議論があるのではないかと思っています。全てのカードがこれと同じレベルの柔軟性と選択肢を持っていないことは重要だと私は思いますが、何枚かこういうものを作ることは競技マジックにとって素晴らしいことだと思います。

 今週はここまでです。次回は『異界月』全体が明らかになっているはずなのでプレビュー・カードはありませんが、どのようにしてこのセットが作られたかに関するさらなる考察をお送りします。

 それではまた次回お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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