MAGIC STORY

コンスピラシー:王位争奪

EPISODE 07

替え玉

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替え玉

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年8月19日


 こんにちは、そして「Latest Developments -デベロップ最先端-」にようこそ! まず最初に、皆さんに今回プレビュー期間の締めくくりとしてプレビュー・カードをご紹介しますが、セット全体のプレビューはまだです! しかしご心配なく、この週末世界中のお店で行われる『コンスピラシー:王位争奪』のプレビュー・イベントでこのセットについて見ることができます。もしそれに参加できない場合は、ソーシャルメディアをフォローしてそのイベントで紹介されたカードを見ることができます。これはプレビュー・イベントを締めくくるかなり斬新な方法であり、みなさんが楽しんでくれることを本当に願っています。

『コンスピラシー』での複雑さの管理

 マジックのカードをデザインする上での最大の目標のひとつは、長いルール・テキストを用いることなく素晴らしい物語を伝えるシンプルで刺激的なカードを作ることです。初期のマジック、特に『レジェンド』や『アイスエイジ』のカードをを見てみると、フレーバーを完璧にカードに落としこむためだけに書かれた信じられないぐらい長いテキストのカードがあります。例として《Blizzard》を見てみましょう。これは実際の挙動を多く行うのではなくたくさんの指示を書くことによってフレーバーを表そうとしています。これは間違いの極致です。反対に良いフレーバーの極致とは、基本セットの《精神の制御》、《稲妻》、《濃霧》のようなカードです。シンプルで素敵です。

 さて、これらのカードのルール・テキストはマジックが進むに連れて減っていき、我々はこれらをルールの中で機能させることに長けていきましたが、我々は今それを印刷してプレイヤーに見やすく興味深いカードとして提供することができます。『第10版』フォイルの《時間停止》は簡単ではないかもしれませんが、にも関わらず簡単です。

 『コンスピラシー』では多人数戦に対応するためカードの文章量を増やせるからといって、それらは全て多人数戦での規模の拡大や何か他の強くなることを明確に提示する必要があるということではありません。《精神の眼》や《リスティックの研究》のようなこれまでの最も人気がある多人数戦カードの多くはゲーム中のプレイヤーの人数を明確には参照しておらず、人数が多くなれば強くなるだけです。

 陰鬱は初代『コンスピラシー』で明確な理由があって使われました――プレイヤーが多くなればなるほど、その能力の条件が満たされる確率が上がるのです。我々はいくつかのカードを『コンスピラシー:王位争奪』に、この手の多人数戦でより強く、しかしくそ真面目ではないシンプルなテキストのカードをいくつか求めました。それでは《替え玉》をご覧ください。

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 《替え玉》はスタンダードで使えるセットで作れるようなカードです。これは紛れもない真実です。実際、我々は何回もセットにこれ系のものを入れています。このカードはスタンダードで使えるセットにも適応しますが、エキサイティングではありません。このカードが本当にエキサイティングな機能をする環境を作るのは困難です。

 多人数戦向け製品としての『コンスピラシー:王位争奪』のアドバンテージのひとつは、表面上はシンプルで、しかし実際にプレイするととても興味深いカードを作れるところです。これらのカードはこのセットに入ってとても楽しくなりましたが、素晴らしいフレーバーのために巨大なテキスト欄は必要ありません。

シンプルな楽しみ

 新旧両方の『コンスピラシー』での目標のひとつは、ただ複雑なだけのものよりも多人数戦の性質によって興味深い決定を引き起こすカードを(可能な限り多く)収録することです。『コンスピラシー』は通常のセットのように新世界秩序に厳密に縛られてはいませんが、我々はプレイヤーがこれらを理解するのを2倍難しくしたいとは思いませんでした。

 結局のところ、4人でゲームをする場合、戦場に関係するやりとりの数は1対1のゲームよりも多くなるでしょう。それらのやり取りが、多くの盤面での仕掛けよりも楽しいゲームプレイにつながる限りはそれで構いません。

 2つの『コンスピラシー』で秘策カードを使うにあたっての我々の決まりごとは、これらをプレイするのにプレイヤーに対してこのセットに関する知識を要求するような盤面での仕掛けにしないというものです。我々は『コンスピラシー:王位争奪』を一番スパイクなプレイヤーが常に戦場の仕掛けによって利益を得るセットではなく、あらゆる腕前のプレイヤーがみんな楽しめるセットにしたいと思っています。結局のところ、コンスピラシー・ドラフトで勝利するためにはただ1対1のゲームのようにプレイするのではなく、いくらかの無慈悲さと他のプレイヤーとの取引が必要になるはずです。

 これは『コンスピラシー』のカードの多くが文字数が多くないというわけではありません――これらの挙動はルールの感覚的にとても複雑な挙動になることがよくあるのですが、我々はそれを可能な限り軽減するために、人々がその挙動を理解する助けとしてフレーバーを用いています。統治者メカニズムと投票は、どちらもカードに書いてあるルールを説明するのには手間がかかりますが、実際にそのカードをプレイしてみるとかなり簡単な傾向にあります。

 我々は『コンスピラシー』に参加しているすべての人が楽しい経験になることを求めています。願わくば、あなたのゲームが誤解によるものよりも、あなたがプレイヤーとして取った行動で決まってほしいと思います。(その誤解は故意でなければですが――私はカードの外で何かを得ようとしたり、厳密には裏切っていない同盟への裏切りである「誤解した」投票を1度ならずしたことがあります。)

得た教訓

 私はあまり多く『コンスピラシー:王位争奪』をデザインやデベロップ中にプレイしていません――その期間は『異界月』と被っていて、私はとても忙しかったのです。しかし私はこのセットに入らなかったメカニズムを使ったとても印象的なデザイン・プレイテストに参加しました。

 このセットの策略の「ひねった」アイデアの最初のひとつは、達成すると報酬がもらえる密命があるというものでした。基本的に、その条件を満たすと誘発させることができ、そのカードを表にして恒常的なボーナスか呪文の効果のどちらかを受けられます。これは理論的にかなりクールで、人々はプレイしながら興味深い決断をすることになり、密命を達成するために誰かをすぐに殺すことを避けることがよくありました。


替え玉》 アート:Joseph Meehan

 私の最初の密命のプレイテストは、「あなたの左のプレイヤーを殺せ」というものでした。素晴らしい、達成は容易です――ただ殴るだけでいいのですから。というわけで我々はゲームを始め、私の左にいたのは当時開発部のデジタル部門で働いていて「マジック・デュエルズ」のチームメンバーだったデイブ・マーシー/Dave Marseeでした。デイブは本当にこの地球で最高の人です――とても素敵で気さくです。そして私は彼を殺さなければなりませんでした。

 さて、私は第3ターンに飛行クリーチャーで攻撃しました。彼は「えっ、ああ、はい受けます、2点でいい?」と言い、私は追加のクリーチャーをプレイしました。次の私のターン、私は彼のクリーチャーを殺して攻撃しさらにダメージを与えましたが、彼は微笑んでまたそれを受けました。次の私のターンにまた攻撃したときには彼は不満そうでした。デイブは多人数戦が好きですが、しかし私が彼をなぜ狙うのか分からないので不満そうでした。なぜ私がデッキや盤面により大きな脅威を持った他のみんなを無視したのかを。私は彼を殺さなければならなかった理由である密命を表にしました。彼は不幸にも私の隣に座り、そして彼の骨の中から手に入れたのは1枚のカードでした。1枚の、素敵な素敵なカードでした。私はそれを引き、ターンを終えました。

「カード1枚だって!」 デイブは言いました。「それは全部カード1枚のためだっていうのか?」

 私は少し肩をすくめて、「ええ......そうですな、私のカードがやれといったことですぞ。」

 さて、カード1枚は秘策を達成した報酬としてはかなり大きなものです。もっと多くすることもできましたが、手札から何もコストがかからないことを考えると、やりすぎにならないように多くするのは困難でした。

 我々は人々にマジックを変わった感じでプレイしてほしかったのですが、これは結局かなり満足の行かない方法でした。私は政治的駆け引きをあまり気にせず、自分の探索の達成を気にしていました。我々は通常のマジックでは探索をかなりうまく行えて、そして『コンスピラシー』の最高の部分のひとつは、通常のマジックとは大きく異なる探索が課されることです。私が自分のカードに書いてあることだけを行っていた場合のゲームの楽しさの総量は、決して高くありませんでした。

 結局、私はこのようなゲームのせいでこのメカニズムがこのセットの最終バージョンに残らなかったのだと考えています。策略によってゲームのプレイ方法が変わるのは良かったのですが、ゲーム外の楽しい政治的駆け引きを損なわないようにする必要があったのです。

 今週はここまでです。次々回は『異界月』スタンダードのフューチャー・フューチャー・リーグのデッキリストをご紹介します。

 それではまたお会いしましょう。

サムより (@samstod)

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