HALL OF FAME

マーティン・ジュザ

Martin Jůza

選出 2017年
出身 チェコ共和国、プルゼニ
プロツアー・デビュー プロツアー・ニューオーリンズ2008
生涯獲得賞金 【記載なし】
生涯獲得プロ・ポイント 563点

チェコ人プレイヤー初の殿堂顕彰者
選出時点でグランプリ・トップ8入賞は史上最多タイの28回
プロツアー・ベルリン2008から始まり、3度のプロツアー・トップ8入賞達成
最高のリミテッド・プレイヤーとして尊敬を集める
「ドラフト・マスター」の招待枠で世界選手権2017出場

PROFILE

 チェコ共和国のマーティン・ジュザは、プロツアー・ニューオーリンズ2003でプロツアー・デビューを果たした。エクステンデッドで行われたこの大会でジュザを含むチェコのプレイヤーたちは、《修繕》や《ゴブリンの放火砲》が飛び交う中《サイカトグ》を持ち込んでいた。このとき彼は、デッキ構築技術においてもプレイ技術においても、世界との差を痛感したという。

「初戦の相手は『食物連鎖』でした」と、ジュザはプロツアー殿堂まで続く道の第一歩を振り返る。「どういう動きをするのかわからなかった。一度も見たことがなかったんです。まるで準備が足りておらず、何が起きたかわからないまま大会は終わりました。当時私は16歳。初めてのプロツアー参戦は、ただ観光を楽しむだけの旅行になりました」

 ジュザは続く数シーズンも何度かプロツアーへ参加したが、20代を迎える頃には自分の人生におけるマジックの役割について考えるようになった。2007年にニューヨークで開催された世界選手権で好成績を残した彼は、次のシーズンの第1戦、プロツアー・クアラルンプール2008への参加権利を手に入れた。

「この大会へ参加して、ダメだったらマジックをやめようと考えました」とジュザは2008年シーズン開幕の頃の心境を語る。「大会前日は30分しか眠れませんでしたが、トップ8入賞は逃したものの次のプロツアー参加権利を獲得。そこでもトップ8入賞を逃しながら、また次のプロツアー参加権利を獲得。こうして迎えたのが、プロツアー・ベルリン2008でした……」

 プロツアー・ベルリン2008は、マーティン・ジュザが急成長を遂げるきっかけとなった。彼が属するプレイテスト・グループは今大会を席巻したデッキ「エルフ」を見つけ、ジュザは自身初のプロツアー・トップ8入賞を果たしたのだ。

「その頃にはインターネットが普及し始めていて、私たちはプロツアー1か月前に『エルフ』デッキを見つけて盛り上がりました」とジュザ。「早速組んでプレイテストを重ねると、とても強いことがわかりました。間違いなくそれまで使った中で最強でした」

 チェコのプレイヤーたちは最強の武器を手に入れたと喜び、その秘密が他に漏れないよう細心の注意を払った。しかし間もなくして、「エルフ」を見つけたのは自分たちだけでなく、それどころか流行のデッキのひとつであることを彼らは知った。

「必死になって隠したのに、いざプロツアーを迎えると会場を二分する勢力でした。とはいえ結果的に私はトップ8入賞を果たし、その瞬間『私にもやれるんだ』と感じました」

 その後ジュザはキャリアの全盛期を迎え、プラチナ・レベル(プロ・プレイヤーズ・クラブの最高レベルで、すべてのプロツアーへ招待されるだけでなく各イベントで参加褒賞を受け取れる)を維持し続け世界中を旅した。世界中のグランプリでお馴染みの顔となった。殿堂入りの時点でグランプリ・トップ8入賞は28回を数え、これは同じ殿堂顕彰者にして世界中を旅するオリヴィエ・ルーエル/Olivier Ruelや中村 修平と並び、最多記録となっている。

 ジュザはプロツアー・オースティン2009で2度目のプロツアー・トップ8入賞を決めたものの、その後はしばらく決勝ラウンドの舞台に恵まれなかった。そして2016-2017年シーズンが開幕すると、彼は再びマジックとの付き合い方について考えるようになった。彼はプラハで親友とともに脱出ゲームの店を開き、久しぶりにプラチナ・レベル達成を逃した。

 プロツアー『カラデシュ』に先駆けて行われた殿堂セレモニーで、ジュザは同期プレイヤーの渡辺 雄也とオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldの晴れ姿を見届けた。「あとひとつ大きな結果を出していればぜひ君に投票したいんだけど」と言ってくれたプレイヤーたちのことを思った。最高の栄誉を手にしたふたりを見て、まだ学べることがあると気づいた。これまで、ジュザは恵まれた才能に頼ってきた。しかしターテンワルドや同じチェコのルーカス・ブロホン/Lukas Blohonが不断の努力のすえに成功を掴んだ姿を見て、感銘を受けた。

「私に多くを求める人はいませんでした。それなら今年はもう少し努力して、成功を掴めるかどうか見てやろうじゃないかと思ったんです」と、ジュザは殿堂入りへの熱意が芽生えた瞬間を振り返った。「もう少し頑張れば届くと確信していました。もう少し頑張れば、彼らと並んで立てると」

 3度目のプロツアー・トップ8入賞のチャンスは間もなくやって来た。2017年のプロツアー『霊気紛争』で、彼はチームメイトの中でただひとり選択した「ジャンド・エネルギー」デッキと持ち前のドラフト技術を武器に、プロツアー・サンデーの舞台へ歩みを進めたのだ。その1年はグランプリでも大いに活躍し、またプロツアーのドラフト部門でも圧倒的な力を見せつけて「ドラフト・マスター」の称号を勝ち取ると、世界選手権へ招待された。そしてついに、ジュザは殿堂入りの報せを受けた。チェコ人プレイヤー初の殿堂顕彰者になったのだ。

「大きな驚きと喜びに包まれています。言葉もありません。一生ものの賞ですよ」と、ジュザは喜びの声を上げた。「何かを長く続けたことが報われる、最高の賞です。続けて良かったと本当に心から思います」

「挙げればキリがないほど多くの人に助けられてきました」と、ジュザは感謝したい人物について語る。「それでも特に私に大きな影響を与えたのは、ルーカス・ブロホンとラファエル・レヴィ/Raphaël Lévy(彼とはマジック以外でも本当に仲の良い友人になりました)、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa、フランク・カーステン/Frank Karsten、中村 修平、そしてチーム『ChannelFireball』の面々です。誰もが素晴らしい仲間たちで、ひとりに絞ることはできません。それから、ベン・スターク/Ben Starkも個人的なつながりの深い人物です。そしてもちろん、チェコのマジック・コミュニティのみんなにも心から感謝を」

 マーティン・ジュザはこれまでと同じペースでマジックを続けると宣言した。今後も世界中で彼の姿が見られるだろう。彼が掲げていた目標の多くは、殿堂入りへ至るシーズンで達せられた。それでもまだ、彼のTo-Doリストにはひとつ残っているものがある。
「もちろん、プロツアー優勝を目指しますよ」と、新たな殿堂顕彰者は歯を見せるのだった。


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