HALL OF FAME

エリック・フローリッヒ

Eric Froehlich

選出 2015年
出身 アメリカ合衆国、ネバダ州ラスベガス
プロツアー・デビュー プロツアー・ロンドン1999
生涯獲得賞金 【記載なし】
生涯獲得プロ・ポイント 373点

プロツアー・トップ8入賞4回。グランプリではグランプリ・サンノゼ2015優勝を含めトップ8入賞14回。2015年選出の殿堂顕彰者の中で最も高い勝率を誇る。17年におよぶキャリアの中で、2014-2015年シーズンは最高の成績を収めることができた。

PROFILE

今年の殿堂候補者の中で最も多くの票を集めた男は、グランプリ優勝と自身4度目のプロツアー・トップ8入賞を記録に刻みつけて昨シーズンを終えた。アメリカのエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichとマジックとの深い結び付きの始まりは、プロツアーという大会が存在する前にさかのぼる。1994年、当時10歳の彼は学校で他の子どもたちがマジックで遊んでいるのを見かけた。彼はすぐさま家族を頼り、このゲームにのめり込んでいった。

「父に近くのコミック・ショップへ連れて行ってもらい、『リバイズド』のスターター・キットを買いました。当時10歳の私にはルールが複雑すぎましたが、幸運にも父は私が興味を持ったものなら何でも興味を持つ人でした」と、フローリッヒは当時を懐かしむ。「父がルールを読んで、私と7歳の弟に遊び方を教えてくれました。そして近くに対戦を楽しむ小さな草の根大会も見つけました。その後グランプリが始まり、最初期に家からそう遠くないワシントンD.Cで大会が行われました」

 フローリッヒが13歳のとき、北米で初めて開催されたグランプリのジュニア部門へ参加した彼はそこでトップ8に入賞し、自身初のプロツアー参加権利を獲得した。しかしちょうどプロツアーが行われる週末に家族は新しい家へ引っ越すことになり、出場は叶わなかった。それでも彼はマジックの競技的な面に魅せられ、とりわけリミテッドに力を入れるようになった。それから2年後、15歳になったフローリッヒは「Origins International Game Expo」で行われたプロツアー予選で優勝し、プロツアー・ロンドン1999の参加権利を獲得した。

「さまざまな大会を渡り歩き、マジックをたくさんプレイしました。緊張することは一度もなかったです。いくつかの試合やドラフトしたデッキは覚えています。15歳の子どもがアメリカからロンドンへ行ってプレイするなんて、今思えば少し不思議なことですよね。初めてのプロツアーは本当に特別な体験でした。私にとってはプロツアーすべてが特別ですが」自身初のプロツアーの思い出を尋ねると、フローリッヒはそう答えた。彼はデビュー戦で賞金圏内の成績を収めることができたという。「世界最高の舞台で大好きなゲームをプレイした15歳の少年が、何を目標にしていたかは覚えていません。当時何を目指していたかはわかりませんが、賞金をもらえたことがとても嬉しかったのは間違いありません!」

 フローリッヒはその後もリミテッドのプロツアーへの参戦を続け、いつしか招待されないことの方が少なくなった。彼は着実に、自身初のトップ8入賞への道を歩んでいった。最初のチャンスは、プロツアー・ロサンゼルス2001で訪れた。トップ8入賞を懸けた最終ラウンドで、彼は惜しくも殿堂顕彰者カミエル・コーネリッセン/Kamiel Cornelissenに敗れたのだ。

「そこで『次のチーム戦プロツアーで組みませんか?』と彼を誘うと、快諾してくれました。さらにかつてのアメリカ選手権王者でありプロツアー王者のカイル・ローズ/ Kyle Roseをチームに加えた私たちは、7位という結果を出すことができました」と、フローリッヒは回想する。チーム戦での7位はプロツアー・トップ8入賞に含まれないということは付記しておこう。彼が自身初のプロツアー・サンデーを迎えるのはもう少し先のことだ。「高校最後の年を費やして、すべてのプロツアーに出場しました。その結果プロツアー・ニューオーリンズ2001では64位以内に入り、そしてプロツアー・サンディエゴ2002で初めてのトップ8入賞、プロツアー・大阪2002は16位以内、プロツアー・ニース2002は18位という、夢のような1年を過ごすことができました。その後は大学へ進学し、少しの間マジック熱が落ち着いた時期がありました」

 マジックを始めた当初、フローリッヒは常に最強のマジック・プレイヤーたちと出会い、影響を受けてきた。

「同じ地域に活躍が目覚ましかったマイク・ロング/Mike Longがいて、彼と技術を磨きました。とはいえ彼の態度は褒められたものではなく、私は世界最高のプレイヤーであるジョン・フィンケル/ Jon Finkelに憧れました。彼は当時から『覇気にやられる』と噂されていましたが、私は『そんな馬鹿な』と真面目に受け取りませんでした。しかし彼と初めて対戦してみると、その試合の鍵となるカードすら忘れてしまうほど圧倒されました。彼の覇気に呑まれたのです。競技の世界へ足を踏み入れてから、私はカイ・ブッディ/ Kai Buddeやウィリアム・ジェンセン/William Jensen、ボブ・マーハー/Bob Maher、そしてカミエルとジョンのような多くの偉大なプレイヤーたちと競い合い、友好を深めてきました。プレイ・スタイルや視点がそれぞれまったく異なる彼らと出会い、ともにプレイするたびに、新しいことを学んできました」

 5年ほど前に復帰して以降、フローリッヒは最も安定して優れた成績を残し続けるプレイヤーのひとりになった。世界選手権2010、プロツアー『ギルド門侵犯』、プロツアー『運命再編』でトップ8入賞を記録し、トップ8入賞を逃した大会でも安定して上位に名を残している。そうして結果を残し続けるうちに、彼を殿堂入りに推す声は高まっていった。

 ソーシャルメディアで今年の殿堂顕彰についての議論が始まると、最有力候補の一角としてフローリッヒの名前が挙がった。だが投票結果を待つ間は不安でいっぱいだった、と彼は語る。

「楽しい時間ではありました……たくさんの人が殿堂入りに値しない理由を語る一方で、考えさせられる素晴らしい意見を発信する人も多くいました。良くも悪くも、圧倒されましたよ。結果を待つ間は……これは誰もがそうかもしれませんが、待っている時間が一番つらかった」

 そしてフローリッヒのもとへ、スコット・ララビー/Scott Larabeeから殿堂入りの連絡が来た。感極まる瞬間だった。

「殿堂入りを聞いた瞬間ですか? まずは力が抜けるほど安心しました。それからすぐに喜びが爆発しました。マジック・プレイヤーが人生で一番ほしい電話が来たんですから。まさか本当に殿堂入りを果たせるとは思いもしませんでした。過去にも少しだけ記事で書いたことがありますが、マジックは私の世界そのものです。私の人生そのものです。私が今持っているものの多くはマジックがもたらしたものであり、私という人間を作ったのもマジックです。私の人生において最も大切なことで最高の栄誉をいただけるなんて……もう、言葉もありません」

「この殿堂入りは、21年にわたってマジックに関わってきたことが形になったものだと思います。私には心から誇れるものがたくさんあります。誰もが驚く結果を残してきたと思いますし、良い記事を書き、放送席での解説もしてきました。今後もマジック最大のポッドキャスト・グループの一員としてはもちろん、支えてくれたコミュニティにさらなる恩返しをできることが何よりも嬉しいです。それから、長くこのゲームをプレイしてきたことと、いつも正しくあったことが報われて嬉しく思います。私の経歴に不正はありません。いつもクリーンに誠実に、ゲームが正しく進行するよう努めてきました」

 そう語る殿堂選出者は、最後に彼の長いキャリアにふさわしく多くの人の名前が書かれた「感謝したい人物リスト」を読み上げてくれた。

「感謝したい人物を挙げていったら、本当に声がかれますよ。まずはいつも私を支えてくれた両親に。父は私にこのゲームを教えてくれて、子どもの私を世界中どこへでも連れて行ってくれました。彼のおかげで私は競技の舞台でプレイでき、うまくいかないときも心を乱さずにいられました。母は世界で最も献身的ですごい人だと思います。私の決断を100%信じてくれて、どんなときも私の味方でいてくれます」

「それから、マジックで出会った無数の人たちに感謝を。私はマジックを始めて、多くの親友に恵まれました。ウィリアム・ジェンセン、ブロック・パーカー/ Brock Parker、マット・リンデ/Matt Linde、ブライアン・キブラー/Brian Kibler、ベン・ルービン/Ben Rubin、ブライアン・ヘグスタッド/Brian Hegstad、ブレット・シェアーズ/Brett Shears、ジョン・フィンケル、カイル・ローズ、カミエル・コーネリッセン、ボブ・マーハー、デヴィッド・ウィリアムズ/David Williams、ニール・リーヴス/Neil Reeves、ベン・スターク/Ben Stark、カイ・ブッディ、ポール・リーツェル/Paul Rietzl、マット・スパーリング/Matt Sperling、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif、リズ・レンピッカ/Liz Lempicki、パトリック・チャピン/Patrick Chapin。一度離れたのちに復帰してからは、ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasをはじめチーム『ChannelFireball』の見事なプレイヤーたちと出会い、そしてジョン・サソ/Jon Sasoやマシー・スキャンラン/Mashi Scanlan、チーム「Pork Bun Oath」の3人目のメンバーだったポール・チェオン/Paul Cheonとも交友を深めました。それから、マジックのために働いている皆さん――ブライアン・デヴィッド=マーシャル/Brian David-Marshall、リッチ・ハーゴン/Rich Hagon、ヘレン・バーゴット/Helene Bergeot、スコット・ララビー、カバレージ・ライターとしてもひとりの人間としても、素晴らしい人たちばかりです。もちろん、ポッドキャストの相棒マーシャル・サトクリフ/ Marshall Sutcliffeも。そして、私が落ち着きを失ったりソーシャルメディア上で自分をコントロールできなくなったりしたときに声をかけ、なだめてくれた人たち。周りの人を見下して遠ざけようときつく当たってしまったときに、それを笑って受け流してくれた人たち。そして今、私の人生の中心にいるガールフレンドのアテナ/Athena。私に投票してくれたすべての人に感謝を――人生の貴重な時間を使って私のことを称えたり投票を呼びかけたりしてくれた人たち。殿堂投票に真剣に取り組み、時間と労力をかけて本気で考え、正しい判断を下した人たち(これはもちろん、私に投票しなかった人たちも含みます)。世界最高のコミュニティに感謝を。私のファンだという素晴らしい人たちに感謝を。そして、マジック:ザ・ギャザリングというゲームを愛する人たちすべてに心から感謝を。マジックは世界最高のゲームですが、マジック・プレイヤーの皆さんなしにはプロツアーも殿堂顕彰もあり得ません。マジックは私のすべてです。だから、ここまでの素晴らしい旅を支えてくれた皆さんに、本当に心から感謝を伝えたいと思います。ありがとう」

サイト内検索