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ReConstructed -デッキ再構築-

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赤単リマスター

Gavin Verhey / Tr. Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2015年4月28日

原文はこちら

 『テンペスト』『ストロングホールド』『エクソダス』。連続したこれら3つのセットは、マジックのトーナメント・シーンで見うけられた最も重要なセットだ。

 少し考えてみてくれ。時は1990年代後半、あなたはマジック・プレイヤーだ。

 それはまさにデッキ構築に革新が起ころうとしていた時期だった。昔は、大きなトーナメントが開催された時、そのデッキリストをインターネットで翌日に閲覧することもできなければ、翌週のDailyMTG.comの記事で知ることもできなかった。信じられないかもしれないけど、マジックを取り扱う雑誌に掲載されるのを一ヶ月ほど待つ必要があったんだ。アメリカでは、各地域ごとに独自のテクニックが培われていて、他地域のことはせいぜい噂で聞く程度だった。

 しかし、全ては変わった。

 「インターネット」と呼ばれる小さな存在は急速に発展した。1996年から1998年にかけて、オンラインを利用したコミュニティや議論がマジック・プレイヤーに浸透し始めたんだ。掲示板、ニュースグループ、そしてウェブサイトによって、世界は誰にとっても近くて便利な存在になった。マジックのデッキ構築と戦術は、大きな飛躍の時を迎えようとしていた。

 『Tempest Remastered』がMagic Onlineに実装されるわけだが、こういった昔のことを知らない構築プレイヤーにとって重要なのは、この時代のマジックから何を学び取ることができるかだ。


《直観/Intuition(TMP)》 アート:April Lee

 20年を超える歴史を持ち、今なお私たちが遊んでいるこのゲームでは、現在用いられている原理がどうやってできたか、思い出せなくなるものだ。

 そこで今回は、広く浅くではなく、1つの事例をみっちりと取り扱いたいと思う。マジックの歴史の中でも重要な位置を占めるこの時期に、とりわけ大きな革命をもたらした1つのデッキタイプに注目しよう。

 準備はいいかな? よし、では続けよう......


もう死んでるぜ、お前

 はじめにスライがあった。

 今、あなたが考えるスライというものは、おそらく攻撃的な赤のクリーチャーと火力呪文を満載したデッキ、という認識だろう。そしてそれは間違っていない。どんな感じかデッキをイメージしてみてくれ。今のマジックなら《鐘突きのズルゴ/Zurgo Bellstriker(DTK)》や《かき立てる炎/Stoke the Flames(M15)》を使おうと考えるんじゃないかな。

 そのデッキ・イメージはこのデッキとは大違いだろう。

ポール・スライの「スライ」(1996年)
13 《山》
4 《ミシュラの工廠》
4 《露天鉱床》
2 《ドワーフ都市の廃墟》

-土地(23)-

4 《真鍮人間》
2 《Dwarven Trader》
2 《フラーグのゴブリン》
4 《鉄爪のオーク》
3 《Dwarven Lieutenant》
2 《オークの司書》
2 《火の兄弟》
2 《オーク弩弓隊》
2 《Orcish Cannoneers》
2 《チビ・ドラゴン》

-クリーチャー(25)-
4 《稲妻》
1 《黒の万力》
1 《炎の供犠》
4 《火葬》
1 《爆破》
1 《火の玉》
1 《粉砕》

-呪文(13)-
1 《Zuran Orb》
3 《活火山》
1 《弱者の石》
1 《爆破》
1 《火の玉》
1 《粉砕》
4 《魔力のとげ》
2 《鋸刃の矢》
1 《An-Zerrin Ruins》

-サイドボード(15)-

 「スライ」という名称が、デッキを広めた人物の名前から取られていたことは知っていたかな? まあ、実はそうなんだ。

 デッキに入っているカードを確認してみてくれ。様々なカードが散らされている。《稲妻/Lightning Bolt(M11)》はもちろん4枚入っている......しかし《鉄爪のオーク/Ironclaw Orcs(5ED)》や《Dwarven Trader(HML)》で戦闘するのは大変そうだ。(そしてそんなカードが入っている理由だが、このときは『Homelands』からカードを5枚選ぶルールだった、ただそれだけだ。なぜかって? そういう時代だったのさ。)

 ポール・スライ/Paul Slighとジェイ・シュナイダー/Jay Schneiderが取り組んだこのスライ・デッキは、この時代のプレイヤーにとって象徴の1つだった。しかしおそらく、現在の赤デッキにとってより象徴的かつ基礎的な存在になっているのは、次のデッキだろう。

 ポール・スライと肩を並べる存在の、デイヴィッド・プライス/David Priceという名前の男によって、まさに全ては変わろうとしていた。

 デイビッド・プライスは、ポール・スライが用いたものとは少々違う感じの赤単を持ち込み、1997年にアメリカ選手権で6-0した。そして月日は流れ1998年、プロツアー・ロサンゼルスがテンペスト・ブロック構築で開催されるとき、デイビッドはその最大級の舞台に最新の赤単を持ち込む準備を整えていた。

 彼の成績? 優勝したよ。

デイビッド・プライスの「デッドガイ・レッド」
プロツアー・ロサンゼルス1998優勝 / テンペスト・ブロック構築
16 《山》
4 《不毛の大地》

-土地(20)-

4 《ジャッカルの仔》
4 《モグの徴集兵部隊》
4 《モグの狂信者》
4 《モグの略奪者》
4 《峡谷の山猫》
4 《投火師》
2 《ラースのドラゴン》

-クリーチャー(26)-
4 《呪われた巻物》
4 《巨人の力》
4 《焚きつけ》
2 《煮沸ばさみ》

-呪文(14)-

 私が赤単について考える場合、最初に意識するのは常にこのデッキだ。

 《ジャッカルの仔/Jackal Pup(TMP)》と《モグの狂信者/Mogg Fanatic(10E)》、《呪われた巻物/Cursed Scroll(TMP)》に火力の《焚きつけ/Kindle(TMP)》、これら全てをしっかり4枚ずつ投入することで、可能な限りの一貫性をデッキに与えていることがわかる。

 このデッキはどう動くんだろうか? 軽量クリーチャーを展開し、攻撃を仕掛け、そして必要に応じてブロッカーを排除して攻撃のための道を作るんだ。その計画のために、どのようにデッキを構築しているのか確認してみよう。

 その中心となっているのは、「16枚の1マナ・クリーチャー」だ! その全てはメリット能力を持っているか、あるいは《モグの徴集兵部隊/Mogg Conscripts(TMP)》や《ジャッカルの仔/Jackal Pup(TMP)》のように、(その当時にしては)コストに対して優秀なサイズを持っている。

 さらに、ブロック構築だと火力の選択肢は少ないのだが、このデッキは対戦相手の残りライフを確実に削り取れるよう、後押しとなる火力を――《焚きつけ/Kindle(TMP)》、《呪われた巻物/Cursed Scroll(TMP)》、そして《煮沸ばさみ/Scalding Tongs(TMP)》と――10枚採用している。《巨人の力/Giant Strength(TMP)》は当時でも意外な(しかし必要な)選択ではあったが、おそらくもっと広いカードプールで構築するなら、基本的に火力呪文を採用していたと考えられる枠だ。「最後の後押しとなる火力は14枚」と考えられる。

 2枚挿しの最も重いフィニッシャーとして、《ラースのドラゴン/Rathi Dragon(9ED)》もまた相手の最後のライフを削り取る役目を果たす。唱えるためのコストが安いカードばかりのデッキで、もしこれを1枚引きこむことができれば、ゲームを終わらせるためのカードとして極めて高い効果を発揮するだろう。対戦相手は除去が無ければほぼ負けさ。

 そして20枚まで土地を絞ったマナベースにも注目だ。このデッキは軽量クリーチャーを大量に引きたいし、土地を余計に引きたくはない。そしてこれこそ、デッキのカードのほとんどが軽量呪文である理由なんだ。

 さて、20年近く前のこのデッキが、なぜ今関係してくるのか気になっているかもしれないね。どうしてガヴィンおじいちゃんはこんなお話をしているのかな?

 よし、いったん落ち着こう。今までの内容は頭に入っただろうか?

 では、これを見てくれ。

マーティン・ダンの「レッド・アグロ」
プロツアー『タルキール龍紀伝』 優勝 / スタンダード
10 《山》
4 《マナの合流点》
4 《樹木茂る山麓》
1 《森》
1 《奔放の神殿》

-土地(20)-

4 《鋳造所通りの住人》
4 《僧院の速槍》
3 《鐘突きのズルゴ》
1 《激情のゴブリン》
1 《稲妻の狂戦士》
2 《ゴブリンの熟練扇動者》

-クリーチャー(15)-
4 《乱撃斬》
4 《アタルカの命令》
4 《ドラゴンの餌》
4 《稲妻の一撃》
4 《軍族童の突発》
4 《かき立てる炎》
1 《強大化》

-呪文(25)-
4 《大歓楽の幻霊》
4 《焙り焼き》
1 《破壊的な享楽》
1 《洗い流す砂》
2 《ゴブリンの熟練扇動者》
2 《凱旋の間》
1 《ゴブリンの踵裂き》

-サイドボード(15)-

 今までの話のデッキとこのデッキに、極めて長い断絶の期間があるのは間違いないし、今の時代のクリーチャーのほうがやや優秀なのも確かだ。それでも比較検討してみよう。

「13枚の(《奔放の神殿/Temple of Abandon(THS)》を1マナ域としてカウントすれば14枚の)1マナ域」――プライスの16枚に近い。

「16枚の火力呪文」――最後の後押しという分類に《巨人の力/Giant Strength(TMP)》を(半端な方法ではあるけど、ブロッカーを無視して攻撃できるようにするカードという分類として)入れてしまえば、これもまた、プライスの14枚に近い。

「最も重い脅威としての《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster(M15)》の2枚挿し」――対戦相手に除去を迫り、わずかなデメリットしかないという点で、プライスのデッキの《ラースのドラゴン/Rathi Dragon(9ED)》に当たる。

「土地20枚」――18年の隔たりがありながら、全く同じ枚数だ。

 その類似性はかなりのものだ。これらのデッキがやはり関連している、と感じる理由がよりはっきりしたんじゃないかな。

 もうちょっと詳しいことを聞きたいって?

 よし、これを見てくれ。デイビッドがテンペスト・ブロック構築以外でデッキを組んだとき、それは現在の私たちが使う赤単とほぼ同じ......とまでは言わないにしても、より近いものになっていた。

デイビッド・プライスの「スタンダード・デッドガイ・レッド」(1998年)
過去のスタンダード
17 《山》
4 《不毛の大地》

-土地(21)-

4 《ジャッカルの仔》
4 《モグの狂信者》
3 《モグの徴集兵部隊》
4 《投火師》
4 《鉄爪のオーク》
4 《ボール・ライトニング》

-クリーチャー(23)-
4 《呪われた巻物》
4 《ショック》
4 《火葬》
4 《火炎破》

-呪文(16)-
4 《紅蓮破》
2 《ファイレクシアの炉》
4 《ミシュラのアンク》
2 《ドワーフ鉱夫》
1 《ドワーフの秘術師》
1 《拷問室》
1 《オーグ》

-サイドボード(15)-

 11枚の1マナ域クリーチャー。16枚の火力呪文。(さらに4枚の《呪われた巻物/Cursed Scroll(TMP)》。)21枚の土地。

 時代が変わり、最近は《投火師/Fireslinger(TMP)》と同質の強さを持つようなカードはなくなったが、デッキの多くの部分はダンのデッキとそのまま比較できる。

 さて、どうしてそうなるのか?

熱血指導

 歴史を学ぶことそれ自体は良いことだ。だが、私が言いたいのは、これを受けて何ができるかだ。なぜ今になってこの話をしているのか? 何が得られるだろうか? この歴史から何を学ぶことができるだろうか?

 長年に渡ってマジックをプレイしているデッキビルダーの多くが習熟している能力の1つは、デッキのテンプレートを脳内に持っていることだ。私も脳内で、数多くのアグレッシブ・デッキ、コントロール・デッキ、あるいはミッドレンジ・デッキのための見本テンプレートをそらんじることができる。いくつか環境に縛られる要素もあるだろうが、ほとんどの部分に関連するカードを当てはめて、現環境のデッキとして試すことが可能だ。そしてフォーマットの発展に伴い、カードが年々入れ替わっていく中で、歴史を遡ってしばしば良く似た特徴を持つデッキと比較できるようになる――その中でも『テンペスト』は、様々なデッキが始まった場所だ。

 デッキ・テンプレートという先進的発想を持ち出したのはなぜか? それは、その内容をしっかり把握する上で、最もやりやすいデッキの1つが赤単だからだ。

 ここで面白い練習ができる。まず、上記のデイビッド・プライスのデッキを手本とすることにしよう。そして過去10年以上にわたるブロックから2つのブロックと1つの基本セットを選択して、その手本に合わせてカードを選んで投入してみてくれ。必要なのは12枚から16枚の火力呪文、11枚から16枚の1マナ域クリーチャー、そして約20枚の土地、最も重い脅威を2枚、仕上げにその時代最高のカード、あるいは相互作用が極まったカードで整えること、というのを忘れないように。

 このようなデッキなら、基本的にはどこのブロックを使っても組めるはずだ。

 最近、私のTumblrで何回か聞かれたのが、「低コストでまとめた速攻デッキが見受けられないスタンダードでも、軽量速攻赤単デッキならほとんどの場合組めるのはなぜですか?」という質問だ。

 その答えとは? そうだな、念のため言っておくと、他に選択できる速攻デッキに比べて、赤が弱い時期も多かった。それはともかく、質問に答えよう。赤単がいつでも組める理由は、軽量クリーチャーと、最後の一押しになる火力呪文、この必殺の組み合わせを常に持ち合わせているからだ。マジックにおいてこの2つの組み合わせは不変のものさ――《Dwarven Trader(HML)》がありし日からね。これは赤の行いだ。赤が持つ手段なんだ。

 そして今あなたは、より良く構築するためにその赤の手段をどう利用すればいいか、すでに知っている。

 使い古された比喩表現でちょっと偉そうな物言いになってしまうのが申し訳ないけど、この記事における私の目的の1つは、デッキと言う名の魚を提供することではなく、その魚の釣り方を教えることだ。私は、あなたがよりよいデッキビルダーになるための助けとなりたい。そして、あなたがあるフォーマットでデッキを組み始める上で、基本的なテンプレートを学んでおくことは極めて役に立つだろう。この手法に慣れるためには、赤単は手をつけ始めるのに最適なデッキの1つだ。

 あなた自身のためにクリーチャーと火力の方針を復唱しよう。セットの組み合わせに目を通し、そこで赤単が組めるか確認しよう。その構築を練習しよう。そうすればすぐに、どんなフォーマットでも赤単を組めるようになるだろう。

 楽しんでくれ!

迫り来る大嵐

 『テンペスト』は、マジックの歴史において極めて重要なブロックで、その一部として覚えておくべき存在が赤単だ。結局のところ赤単がなければ、マイク・フローレス/Mike Floresが「誰が攻撃する側か?(リンク先は英語)」という記事を執筆する上で、その材料として《ジャッカルの仔/Jackal Pup(TMP)》や《ボール・ライトニング/Ball Lightning(5ED)》を使うこともなかっただろうね。余談だが、この記事を読んだことがない人向けに付け加えると、これは読者にマジックというゲームをどのように捉えるかを再定義させるであろう、必読記事だ。真面目な話、まだ読んでいないなら今見よう。これを読んで自らのものとすれば、ゲームプレイをすぐさま改善できるであろう最重要記事の1つさ。

 もう『Tempest Remastered』から目が離せないね! 今回言及した様々なカードを使えるぞ――赤速攻デッキをドラフトすることもね。加えて、そう、テンペスト・ブロック構築で赤単を相手にぶつけたいなら、これはそのためのものさ。


(以下のデッキ募集部分は、原文・本日(5月12日)掲載分の記事から抜粋・収録しております。 この節の文責・編集 吉川)

 2週間後(翻訳掲載は4週間後)は、幅広いデッキについて見て、語っていきたいと思う。どういうことか? それでは、今回のチャレンジを見てくれ。

フォーマット:お好きなものを!

デッキの制限:好きなフォーマットを選び、そのフォーマットでぜひ語りたいと思うデッキを送ること。加えて、居住している国を記してほしい。

締め切り:5月19日(火) 午前10時(日本時間)

投稿方法・投稿先reconstructeddecks@gmail.com 宛にメールにて。

 デッキリストは、最初の行に「あなたのローマ字氏名+'s+デッキ名(英語)」、それに続いて各行に1種類のカードを、「枚数(半角数字)」+「半角スペース」+「カード名(英語)」の形式で、以下のように入力していただきたい。

12 Mountain
4 Satyr Firedrinker
3 Ash Zealot
4 Lighting Bolt

 カードの枚数と名前の区切りには半角スペース以外のものを使わないでほしい――「4x Lightning Bolt」などのように。整った書式のデッキリストは、読みやすく、このコラムに取り上げやすくなる。書式が崩れたリストはおそらく受け付けられないだろう。(デッキリストを読めないことには、それについて語ることもできない!)

 今回のチャレンジは本当に楽しみだ! 「好きなフォーマットを選んでくれ!」記事なんて「ReConstructed」でやったことがないから、何が来るのか見るのが待ちきれないよ。スタンダードの熱心なファン? スタンダードのデッキを送ってくれ。モダン? それで行こう。レガシー漬け? 1つ分けてくれ! 最高に楽しいフォーマットは200カード・シングルトンだ? ぜひ教えてほしい!

 今週、私はとても多くのものを見ていくことになるだろう。全部見ていくなんて最高だね!

 それまで、この記事についての感想やフィードバックがあれば、気軽に送ってほしい。私へツイートや、Tumblrでの質問はいつでも大歓迎だ。必ず目を通すことをお約束する。

 また次回お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

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