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Making Magic -マジック開発秘話-

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こぼれ話:『破滅の刻』 その2

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年7月31日

原文はこちら

 先週、『破滅の刻』に関する諸君からの質問に答え始めた。良い質問が非常に多かったので、今週もその続きになる。

 ナーガやジャッカルについて、部族カードやシナジーを作ることは検討しましたか?

 一番最初から、ゾンビの部族がこのブロックで登場することはわかっていた。猫の部族もデザインのかなり初期に登場した。他の部族カードは途中でたまたまできたものだ。ナーガやジャッカルの部族についてとりたてて検討したかどうかは覚えていないが、デザインや初期のデベロップで作られ、その後でセットが進化していく中でボツになっていたとしても驚きはしないだろう。

 私のソーシャルメディアのアカウントで、最近、プレイヤーが部族をどれほど愛しているかがわかってきている。そこで私は、さらなる部族テーマや1枚だけの部族カードについて検討すべきだと考えている。すでにブロックごとにいくらかはするようになっているが、基本線としてはまだ低すぎるのではないかと考えているのだ。我々の部族サポートのレベルについて、また増やすべきか、増やすとしたらどれぐらい増やすべきかどうかについての諸君の考えを是非教えてくれたまえ。


 新しい次元と古い次元、どちらのセットのほうがデザインしやすいですか?

 それぞれにそれぞれの難しさがある。

 新しい次元の難しいところは、すべてを一から決めなければならないということである。どんなクリーチャーがいるのか、どんなゲームプレイなのか、メカニズム的中心は何なのか、その世界から感じ取ってもらいたい情緒は何か。まったくの白紙というのは楽しくもあるが、同時に恐ろしくもあるのだ。例えば、アモンケットでは、我々はエジプト風世界を掘り下げることができたし、ニコル・ボーラスの心理についてもいくらか掘り下げることができた。

 これらの新しいひらめきから導かれるものは楽しいものだったが、同時にストレスのたまるものでもあった。新しい世界には、再録セットに比べてはるかに多くの行き止まりがあり、作り直しや推敲が多く必要となるのだ。独自性を決める中では、様々なことを試し、反復工程を経て少しずつまとめていくことが必要なのだ。

 古い次元の難しいところは、多くの前提が残されていることである。従わなければならない期待が大量にあり、過去の経験がまるで亡霊のように頭上に吊るされているのだ。プレイヤーが覚えている通りの世界を提供しながら、同時に新しい革新の方法を見つけなければならない。もっとも複雑な部分は、プレイヤーによってその世界のどの断面を楽しんでいたかが違うということであり、誰もが再録を望むものを再現することは不可能だということである。また、あまりにも多く変更し過ぎると、プレイヤーは自分の好きだった世界が変わってしまったと不満を持つことになる。これは複雑なバランスなのだ。

 さて、質問されているのはどちらが難しいかである。どちらかを選べと言われるなら、新しい次元だと答えよう。古い世界にも色々な問題はあるものの、少なくとも道標になるような成功や失敗の例が残されているのだ。


 《永遠衆の墓所》はとてもおもしろいと思います。このサイクルが完成する可能性はありますか?

 興味深い質問である。前提なしで言えば、あり得ると答えよう。将来、弧(カラー・ホイールにおいて並んでいる3色)を軸にしたセットが作られたときにこのサイクルをする計画がある。これはシンプルで実用的だ。ただし問題になるのは、このカード名である。アモンケット世界やストーリーに密接に関連している。つまり、将来サイクルで登場することはあるだろうが、青黒赤のカード名は変わる可能性がある、ということになる。


 馬やスフィンクスの部族は将来どうなりますか? それ以外では『アモンケット』ブロックは大好きです!

 私は、部族サポートを3種類に分類している。

 1つ目が特筆的サポート/significant supportである。これらは、我々が部族を使うことに利益を日常的に与えている部族のことである。この好例が、特徴的部族と呼んでいる、それぞれ対応する色で恒常的に登場する種族のクリーチャー・タイプのことである(人間、マーフォーク、ゾンビ、吸血鬼、ゴブリン、エルフ。黒は2種いる)。その他に、しばしばサポートされる職業のクリーチャー・タイプ(兵士、戦士、ウィザード、シャーマン、クレリックなど)が存在する。この1つ目の分類には、現在進行形でサポートする計画があるクリーチャー・タイプが含まれる。1枚だけであるにしても、3~4年に一度は登場すると考えられる。

 2つ目は臨時的サポート/occasional supportである。これらは、その色の理想を示すレアとして登場する象徴的部族(天使、スフィンクス、デーモン、ドラゴン、ハイドラ)である。また、時々部族サポートをするのに足りるだけの量で印刷される部族(ミノタウルス、蛇、猫など)もこの分類に入る。この2つ目の分類には、量は少ないが現在進行形でサポートする計画があるクリーチャー・タイプが含まれる。これらは7~8年に一度登場すると考えられるが、1枚だけの場合もある。

 3つ目は散在的サポート/sporadic supportである。これらはほとんど部族を使うことの利益がないクリーチャー・タイプのことである。たまには餌を与えることもないわけではないが、期待すべきものではない。

 『アモンケット』ブロックには、ゾンビ、猫、スフィンクス、馬の部族が存在する。ゾンビは1つ目の分類で、猫とスフィンクスは2つ目の分類(猫は人気があるのでいつか1つ目の分類になる可能性はある)、馬は3つ目の分類である。


 なんでプレインズウォーカーでなくゾンビを飼育してたんですか?

 プレインズウォーカーを作るよりゾンビのほうが簡単だからである。誰でもゾンビにすることはできる。灯を持つものしかプレインズウォーカーになることはできない。もしボーラスがゾンビでなくプレインズウォーカーを飼育しようとしたら、という寸劇を見てもらおう。

ニコル・ボーラス:戻ったぞ!

スカラベの神:おかえりなさいませ。60年ぶりでしょうか。

ニコル・ボーラス:例の計画はどうなっている?

スカラベの神:大成功です! 予定よりも進んでおります。

ニコル・ボーラス:それは重畳。私の軍勢を見せてもらおうか。

スカラベの神:もちろんです、こちらへどうぞ。

 ニコル・ボーラスはスカラベの神に案内されて部屋に入る。

ニコル・ボーラス:これだけか?

スカラベの神:はい!

ニコル・ボーラス:2人だけか? 私の軍勢はわずか2人のプレインズウォーカーだけだというのか?

スカラベの神:人口比での平均は1.3人です。2人いるというのは至上の幸運かと。

ニコル・ボーラス:我がマスター・プランをわずか2人のプレインズウォーカーで実行しようと? この部屋にいるのはわずか4人、バスケットボールのチームも組めんわ!

スカラベの神:プランの中にバスケットボールがあるなら、《蝗の神》に手伝わせましょう。空を飛ぶのがルール違反でなければ、彼のダンクシュートは絶品です。

ニコル・ボーラス:2人しかいないのだな? 2人しか!

サムト:そんなに叫ぶのなら、出て行かせてもらうわよ。


 そんなところで。


 緑白の猫の伝説のクリーチャーというのは検討しましたか?

 していない。その理由は2つある。1つ目が、このブロックで猫の部族について私はかなり期待していたが、他の何よりも机上の空論に終わっていた。大テーマにする意図は全くなく、プレイヤーの中には軸にするものもいる、ぐらいの少ない量だった。2つ目が、我々は伝説のクリーチャーをストーリーから作ることが多いが、猫はストーリー上で重要ではなかった。エジプト風フレイバーという以外の意味は持たなかったのだ。何枚か作った猫の部族カードへの反応が非常に良かったので、将来、緑白の伝説の猫を作る可能性は高まった。


 ボーラスはあなたを永遠衆の一員として迎えようとすると思いますか?

 私はひどい永遠衆になることだろう。まずもって、私は非常に小柄だ。このビデオは見たことがあるかね?

 ボーラスが我々の中から誰かを迎えるとしても、フランネルを着た男ではないだろう。小さな空間に入れるような必要があるのでなければ、身長制限に引っかかる自信がある。

 2つ目に、私は戦えない。物理的な意味では。議論ならできる。論争は苦手ではないが、ボーラスがゾンビ・兵士に求めているのはそれではないだろう。

 3つ目に、私はそもそも試練に向かったりしない。何年も費やして体を鍛え、死に挑んで、達成したら殺される。ハンガー・ゲームのほうがまだマシ、お断りだ。体を鍛えるのはともかく、最終的に死ぬようなことがない程度にするだろう。

 4つ目に、私が危機に際したらきっと灯が点り、どこか彼方の平和な次元にいることだろう。今までマジックの舞台になったことのないような平和な次元だ。


 開発部は《破滅の刻》のようなストーリー上象徴的なカードが《信義の神オケチラ》や《栄光の神バントゥ》を殺さずに《熱烈の神ハゾレト》を殺すようなフレイバーにならないようにどれぐらい考えていますか?

 《蠍の神》が《信義の神オケチラ》や《栄光の神バントゥ》を殺すほうが《破滅の刻》が訪れるよりも前なので、私はそのストーリー的な展開は問題ないと判断する。《熱烈の神ハゾレト》については、死んだふりをしていたのでボーラスは気づかなかったのだ。

 我々はカード間の相互作用をストーリーに合ったものにしようとしているが、ゲームプレイが100%ストーリーの流れに合ったものにならなければならない、ということではない。可能ならそうするが、ゲームプレイを良くするためならストーリーのすべての側面が再現される必要はないことがあるのだ。


 アモンケットを破壊することで、どうしてボーラスは再び最強の存在になれるんですか?

 なれない。それでは、ボーラスの計画は一体何なのか。それはいい質問である。諸君みんなに論じてもらいたいものだ。現在進行系のストーリーを描く上での方針として、ずっと短い時間の利益を見せることにしている。マジックの古いストーリーの中で、解決するのに10年以上もかかるような流れがありうるのだ。我々はすべてをさらけ出すようなことはしないようにしている。ボーラスには計画があり、それは将来のセットで明らかになるだろう。ただし、今から10年先、という話ではない。


 なぜ《永遠の刻》は青なんですか? 私には全体リアニメイト呪文に見えるんですが。

 色の評議会がカードを見て、それがカラー・パイ上認められるかどうかを判断するとき、彼らはそれぞれのカードを4段階で評価する。1が、カラー・パイ上、その色の通常の範囲内に存在するカードである。2は、いくらかはみ出ているが、そのセットにおいて筋が通っている。3は、いくらかはみ出ていて、そのセットにおいて筋が通っていない。最後に4が、カラー・パイ上でその色の範囲を明確に逸脱している。一言で言えば、1は「通常」、2は「許容できる曲げ」、3は「許容できない曲げ」、4は「折れ」である。

 《永遠の刻》は、2と3、つまり許容できる曲げと許容できない曲げの区別の好例である。伝統的に、青は墓地にあるクリーチャーを操作しない色である。通常は、インスタントやソーサリーやアーティファクトを戻せることがあるだけだ。不朽を作ったとき、記憶の問題とカウンターの問題を解決するために、カードがそのクリーチャー・カードのコピーであるクリーチャー・トークンを作ることにした。クローンは完璧に青なので、不朽は青の側に押されることになったのだ。

 『破滅の刻』で、我々は不朽にひねりを加えて永遠を作った。また、永遠衆の軍団をボーラスの3色(青、黒、赤)に関連付けた。《永遠の刻》は本質的に、自分の墓地にある全てのクリーチャー・カードを永遠するものである。永遠能力は青でもある。永遠衆の中には青もいる。死体をクローンするのはある意味青である。今回に関しては、このメカニズムは青でも筋が通るのだ。ただし、これと同じ呪文を他のセットで作ろうとしたら、それは2ではなく3になり、印刷することはないだろう。

 つまり、これは青が黒の範囲を扱ったものであるが、このセットにおいては筋が通る方法でそうしているものなのだ。


 なぜ献身が『破滅の刻』『アモンケット』にも存在しないんですか?

 デザインの初期にすることの1つが、そのセットで使える再録メカニズムのリストを作ることである。平均すると、各ブロック1つほどのメカニズムを再録しているが、筋が通るならさらに多く再録したいと考えている。献身は再録すべきメカニズムのリストにはなかったと思う。その理由は以下のとおりだ。

1. フレイバーがそぐわない

 献身には自分の利益のために他人を生け贄に捧げるという要素がある。ボーラスの計画の怪しい部分は、ナクタムンの人々が喜んで自身を生け贄に捧げるようにしているというところである。

2. メカニズム的に充分なサポートができない

 献身は部族メカニズムである。『アモンケット』ブロックにはいくらかの部族要素は存在するが、部族ブロックではない。献身を使うのに充分なサポートがある部族はゾンビだけであり、ゾンビはボーラスの求める最終状態であり生け贄に捧げたいものではないのだ。

3. 特に人気があったわけではない

 メカニズムを再録する上で重要な部分は、プレイヤーがもう一度見たいと思っているものをマジック世界に戻すようにするということである。献身は『神河謀叛』で初めて使った時にそれほど好評だったわけではないので、再録する可能性も低くなる。


 ボーラスが再びクリーチャーになることはありますか? それとも、今後は必ずプレインズウォーカーでしょうか?

 プレインズウォーカーを表す伝説のクリーチャーは、灯が点る前、あるいは灯を失った後、原則としてプレインズウォーカーでないときにだけ使うという規則がある。神になった《歓楽の神、ゼナゴス》のような例外はあるが、一般には、プレインズウォーカーである登場人物をカードにする場合、プレインズウォーカーにする。


 テーマを強調するために、グリクシス・カラーの多色カードをもっと印刷しなかったのはなぜですか? 《荒廃稲妻》や《苦悶のねじれ》などが思いつきます。

 以前、色の不均衡を試したことがある(『トーメント』と『ジャッジメント』が最大の例である)。そしてわかったのは、利点よりも問題のほうが大きいということであり、それ以来我々は色を大体均等に保つために尽力しているのだ。これはボーラスのセットなので、彼の色(青、黒、赤)にいくらか寄せたいとは考えたが、暴走しないように細心の注意を払った。3柱の昆虫の神々の存在によって強調しているのが、ボーラスの影響を強調する上で最善の方法だと思われる。

刻は来たれり

 残念ながら、今日はここまで。この2週間のさまざまな質問を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、1つ1つの質問について、あるいはこのセット全体の大きな問題についての諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、猫がカバンから飛び出す日にお会いしよう。

 その日まで、ボーラスの望みがあなたとともにありますように。

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