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Making Magic -マジック開発秘話-

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「賭けてみるか、エーテルパンク?」 その2

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年10月3日

原文はこちら

 先週から、『カラデシュ』のカード個別のデザインの話を始めた。話すべき内容が多いので、今週もその続きをすることにしよう。

《洗練された鍛刃士》《ギラプールの案内人》

 『イニストラードを覆う影』で、我々は新しい回避能力の潜伏(潜伏を持つクリーチャーは、それより大きなパワーを持つクリーチャーによってはブロックされない)を試した。常磐木能力になる可能性があるものとして観察していたが、うまく行かなかった。潜伏についての話し合いから、開発部は他にありうる様々な回避能力についての議論が起こった。その中で提案されたものの1つが、開発部内で「威圧/Daunt」と呼ばれたもので(「パワーが2以下のクリーチャーによってはブロックされない」)、結果として『カラデシュ』の2枚のカードに採用されることになった。このメカニズムの将来については私もわからないが、この結果を見るのは楽しみである。これはトランプルのような雰囲気があるが、文字数は少なく、理解するのもずっと簡単なのだ。

《天才の片鱗》《放埒》《霊気との調和》《シャイラ専有地の賢者》

 もともと、すべてのエネルギー・カードはエネルギーを供給し、使用していた。リミテッドの調整をしている間に、もう少しエネルギーを供給する手段が必要だと気がついた。これらのカードは、このセットに少数だけ存在する、エネルギーを使用する方法を持たない、エネルギーを供給するだけのカードである。これらはエネルギーを使わない場合にも有用な基本的効果を持ち、リミテッド向けの作りになっている。興味がある諸君のために添えるなら、エネルギーを供給せずに消費だけするカードというのは存在しない(PAX Westで行われた「PAXでカードを発明しよう」でそういうカードが1枚作られたが、それは別の話だ)。

《光り物集めの鶴》

 メカニズムを探していた間に、メカニズムの1つをアーティファクト中心のものにするべくかなりの時間をかけた。結局のところ、このブロックはアーティファクトの要素が濃いのだ。我々は、アーティファクトがゲームプレイ上の意味を持つようにしたかったのである。エネルギーは『カラデシュ』において重要な意味を持ち、工学という考えの中心にアーティファクトを置いたセットには相応しいメカニズムに思えた。機体もフレイバー的に、この世界にまさにふさわしかった。製造は+1/+1カウンターとアーティファクト・クリーチャー・トークンという2つのテーマを補強していて、このセットのテーマには自然に見えた。問題は、このどれもアーティファクトに焦点を当てていなかったことである。

 もちろん、機体はすべてアーティファクトで、製造はアーティファクト・クリーチャー・トークンを生成するが、これらのメカニズムはどれもアーティファクトをコントロールしているかどうかを考慮しない。結局、我々は、そういったメカニズムなしでも「アーティファクト関連」のテーマを成立させられると判断したのだ。カード1枚1枚を注意深くデザインすることで、テーマを濃く存在させることができた。《光り物集めの鶴》は、このセット全体で散在するそういったカードの一例である。

 これをここで取り上げたのは、セットの枠組みはメカニズムによって規定されるという思い込みが非常によくあることであるとわかっているからである。実際は、『カラデシュ』が示した通り、メカニズムは必ずしも必要ではないのだ。

《楕円競走車》

 すべての機体の中で、最も変更の少なかったものがこれである。もとは〈激速火炎車/Blisteringly Fast Firecar〉という名前だったこの機体は、最終版と初期版の差が非常に小さかった。6/1でトランプルと搭乗1(当時は、合計パワーが1以上のクリーチャーをタップするのではなく、クリーチャー1体をタップするという意味だったが)を持つ。最初、速攻を持っていなかったのは、当時は機体すべてが速攻を持っていたからである。機体は戦場に出たターンから攻撃できたのだ。これはカードパワーの問題から、デベロップ中に変更された。このカードはフレイバーを維持するために速攻が与えられ、ほぼ最初にデザインされたとおりの動きをするようになったのだ。

《パンハモニコン》

 『カラデシュ』プレビュー記事の第1週で言ったとおり、私はショーン・メイン/Shawn Mainと共同でこのセットのリード・デザイナーを務めた。彼と私は週に1回会い、デザインの進行についての感想を交換していた。ある週のこと、ショーンは奇妙でデッキ作成の軸になるようなアーティファクトが足りないと思うと言ってきた。『カラデシュ』はアーティファクト・ブロックであり、ショーンは(当然ながら)プレイヤーはジョニー(ジェニー)向きのアーティファクトが大量にあることを期待しているはずだと言うのだ。私はそれに同意し、いくつかのデザインをまとめることを申し出たのだった。

 私の目標は、我々が求めている奇妙な雰囲気を持ち、同時にこのセットのテーマとうまく噛み合うカードを作ることだった。そのために、2つめの目標は可能な限り微妙にしたかったのだ。そこで私は、カード名をどうしたかは覚えていないが、とにかく大量のカードを作っていった。

 《パンハモニコン》は、「戦場に出たとき」の能力を持つカードが大量にあることに気づいたことから作られたものである。低レアリティのエネルギー・カードのほとんどは、戦場に出たときの効果でエネルギーを得る。製造は戦場に出たときの能力だ。戦場に出たときの能力を持つアーティファクトも多い。このセットには戦場に出たときの能力が多いのだ。いや、ほとんどのマジックのセットには戦場に出たときの能力が多いが、『カラデシュ』はメカニズムやアーティファクト・テーマのためにさらに多くなっているのだ。そして私はものごとを倍にするのが好きだ。それなら、戦場に出たときの能力を倍にするカードを作らないわけがない。

 このカードがデベロップ的に問題かどうか、あるいはテンプレートの範囲内で書けるかどうかはわからなかったが、私はこのカードに一瞬で恋に落ちた。このカードが実際に印刷され、私のデザインした中でもお気に入りの1枚になったことは言うまでもなく喜ばしいことだ。どうぞ諸君もこのカードを楽しんでくれたまえ。

《ピア・ナラー》

 私は、ゲームのメカニズムがストーリーを語るのが好きだ。ここで、(『マジック・オリジン』のチャンドラのオリジン・ストーリーの1枚である)《ピア・ナラーとキラン・ナラー》がやったことを振り返ることにしよう。

 キラン・ナラーがいなくなったことで《ピア・ナラー》のコストは1軽くなったが、彼女は努力して強くなり、2人だったときと同じ2/2である。ただし、戦場に出たときに出す飛行機械は、以前2体だったのが(キランがいなくなったことで)1体になってしまった。彼女がアーティファクトを生け贄にして効果を得ることができるのは変わらないが、2点のダメージを対象にしたクリーチャーやプレイヤーに与えるのはあまりにも多くのことを思い出すので他のことを試みることにしたのだ。

 ストーリーについてばらしすぎるつもりはないが、このカードのメカニズムは彼女が現在どうなっているのかを非常に雄弁に語っている。そして、私は、ゲートウォッチの少なくとも1人の親が生きているということに満足している(ジェイスの親が生きている望みはあるが、生きていたとしてもジェイスに彼らの思い出は残っていないのだ)。

《特権剥奪》

 このカードは、その環境に基づいてどのように基本的な効果を調整しなければならないかを示す最高の例である。《特権剥奪》のもとは、《平和な心》だ。再録だったか派生カードだったか、ともかく基本的にはそのクリーチャーで攻撃したりブロックしたりできなくするというものだった。ちょっとした問題があった。ルール上、《平和な心》がついていてもクリーチャーは機体に搭乗できてしまうのだ。結局、このカードは機体が蔓延している『カラデシュ』のリミテッドでは何の役にも立たなくなってしまった。

 ある会議で、我々はこのカードについて話し合っていた。私は、「クリーチャーに非暴力を望む気持ちを起こさせるような呪文を唱えたんだ。そいつらは戦闘に参加したくなくなった。じゃあなんで戦車に飛び乗って運転するんだ?」と言った。その結果、カードにはこの環境のフレイバーに合うように「それは機体に搭乗できない。」の一文が追加されたのだ。

 私は、その存在する環境でだけ筋が通るようなカードを作れたら嬉しいという話をしている。この種の調整は、この問題の小さい版だと言えるが、それでもやっぱり嬉しいものだ。

《サヒーリ・ライ》

 セットの売り出し方を決めるにあたって最初にすることの一つが、「キーアート」をどうするかを考えることである。キーアートとは、最初に提示する画像のことであり、それがそのブロックの雰囲気を決める助けとなるのだ。例えば、『カラデシュ』のキーアートはこれだった。


アート:Chase Stone

 サヒーリが最初に登場したのは、誰をキーアートに登場させるかを決めていたときだった。通常、プレインズウォーカーが登場する。チャンドラは主役で、彼女の物語なので、最初に想定されたのは彼女だった。しかし、問題があった。第1セットではカラデシュ世界の栄光を描きたかったのだ。発明家らしさに注目を集め、不思議な雰囲気と楽観主義を描きたかったのである。チャンドラは発明家でもないし、カラデシュは出身地ではあってもくつろげる場所ではないのだ。チャンドラがカラデシュにいたとき、最後に見たのは彼女の両親が死ぬところ(彼女は母親が死んだと思っている)だった。そして、彼女の灯がともったのは、彼女自身が処刑される直前の瞬間だったのだ。

 ニッサも部外者なので、最高の選択とはいえない。テゼレット(このセットではプレインズウォーカー・カードにはなっていないが、カード化することもできたので候補になっていた)も検討した。彼はアーティファクトには関わっているが、不思議感や楽観主義の申し子とは言えない。ドビン・バーンも検討した。彼はカラデシュ出身ではあるが、我々が望むような発明家らしさは持っていなかった。そうなると、我々が望むようなイメージそのものの新しいプレインズウォーカーを作ることになる。カラデシュ出身で、発明家なのだ。こうしてサヒーリ・ライが生まれた。

 このカードについてもう1つ面白い話がある。それは、彼女の2つ目の能力のことだ。しばらくの間、このセットには『ローウィン』の《熱の陽炎》をもとにした「リバース・エンジニアリング/reverse engineer」の能力が存在していた。

 クリーチャーをコピーするのではなく、リバース・エンジニアリングはアーティファクトのコピーであるトークンを作る。クリーチャーなら速攻を得る。そして、ターン終了時に生け贄に捧げられるのだ。このメカニズムは非常に楽しく、この上なく発明家気分にしてくれるのだが、悪用があまりにも簡単だったのでデベロップ的な判断で取り除かれることになった。サヒーリの2つ目の能力は、このリバース・エンジニアリングの名残りである。メカニズム全体としては壊れていても、プレインズウォーカー1体の持つ忠誠度能力1つとしては問題ないと判断されたのだ。

《自己組立機械》

 開発部では、過去のカードへの郷愁を呼び起こすようなカードを「時のらせん/time spiral」というあだ名で呼んでいる。その名前のセットには、そういったカードが満載されていたからだ。『時のらせん』ほどの量でやることはないが、時々やるのは古いプレイヤーにとっての楽しみになる。《自己組立機械》は『カラデシュ』の時のらせん・カードである。このカードが思い出させるカードが何か、おわかりだろうか?

 このカードだ。

 この時のらせん・カードは、マジックの2つ目のエキスパンション、『アンティキティ』、そしてそのカード《ミシュラの工廠》を思い出させるものだ。このカードは土地で、不特定マナを1点使うことでターン終了時まで2/2のクリーチャーにすることができる。《ミシュラの工廠》は「組立作業員/Assembly Worker」になる。後にクリーチャー・タイプを整理したとき、このカードには自身に影響を与える能力があり、これ1つだけを指すようにする必要があったので、2語をハイフンでつないで1語にする必要があった。現在はこういう連語をハイフンで繋いだクリーチャー・タイプというのは使わないので、今回のこの連語は長年のファンに向けてのイースターエッグに他ならないのだ。

《霊気装置の展示》

 このカードも、単純なカードを調整してそのセット独自のものだと感じられるものを作った最高の例の1つである。ほとんどのセットには、このカードの派生カードが存在する。

 白は小型クリーチャーにもっとも優れた色なので、白には1枚で2体の1/1クリーチャー・トークンを得られるカードがあることが多い。『カラデシュ』では、主な1/1クリーチャー・トークンは霊気装置なので、今回は霊気装置・トークンを出すように変更した。霊気装置は、アーティファクト・クリーチャーであるということを除いて兵士と同じである。アーティファクトに関するブロックにおいてこの小さな変更はかなりの意味を持つので、このカードをインスタントではなくソーサリーにする必要があったのだ。

《競走路の熱狂者》

 操縦士というクリーチャー・タイプは、興味深い出自をしている。通常、我々がセットをデザインする場合、どこかの時点で2色のアーキタイプについて考え始めるものだ。伝統的には、白赤と言えばアグロの攻撃的な戦略の色だが、『カラデシュ』では少し違うことができるということに気がついた。機体はメカニズムの1つで、当時は搭乗はクリーチャーの合計パワーではなく数を数えるものだった。従って、(トークンであるかどうかにかかわらず)小型クリーチャーを大量に並べる戦略と機体の相性は良かったのだ。そこで、我々は機体を白赤のドラフト戦略にすることにしたのだった。

 大量の機体を使いたくするために、機体を使うことで有利になるようにする必要があると分かった。機体デッキにはすでに多くのカードが必要だった。機体と、搭乗するためのクリーチャーが必要だったので、我々は機体があると有利になる能力をクリーチャーに持たせることにした。フレイバーの助けを得て、我々はそのクリーチャーを操縦士と呼んだ。興味深いことに、機体の搭乗能力の働きはその後で変更され、ウィニー以外の戦略も可能になった。しかしデベロップはこのテーマを維持することを決め、クリーチャー・タイプとしての操縦士も赤と白に生き残ったのだった。

《亢進するアイベックス》《亢進する亀》《亢進するネズミ》《亢進する地虫》《亢進するサイ》

 メカニズムは2つに分類できる。強く集約していて特定色にしか存在しない(少なくとも、リミテッドのため、低いレアリティでは)ものと、多くの場合はその世界のフレイバーを成立させる大きな要素として、またより多くの空間を占めることができる大きなメカニズムであるがゆえに、5色すべてに存在しているものである。この後者の分類にはある条件が存在する。その条件について今まで語ったことがあったかどうか覚えていないが、私はそれを「導入サイクル/introductory cycle」と呼んでいる。

 導入サイクルのポイントは、それが多くのプレイヤーにとって新しいメカニズムの発見である、ということである。コモンで、5色すべてに存在する必要がある。そして、物事を単純にするため、このサイクルはほぼ同じ動きをするべきである。通常、我々は(今回の「亢進する」のように)命名上の共通点を作り、同じように働くサイクルだということが伝わりやすいようにするのだ。このサイクルの中の1枚の働きがわかれば、他のカードの働きもわかるようになっているのである。

 デザインにおける最初の仕事の1つが、メカニズムを理解して、この導入サイクルを作ることである。最初はそれぞれメカニズムがどちらの区分に入るかわからないので、ほとんどのメカニズムについて作る。重要なのは、最も単純で、最も直接な(そして有用な)そのメカニズムの形を見つけることである。エネルギーの場合は、クリーチャーに持たせて、それのパワーやタフネスを強化するというアイデアが気に入ったわけだ。

 私の記憶が確かなら、このサイクルの最初のバージョンはこうだった。エネルギー・カウンターを2個得る。その後、攻撃時にエネルギー・カウンターを1個支払うことで、ターン終了時まで+1/+1の修整を得る。どこかの時点で、強化が+1/+1カウンターに変わって、必要なエネルギー・カウンターも2個になったのだ。

 このサイクルは、大きなエネルギーの計画を考えることなくデッキに投入できるカードとしていい働きをしている。そして、これをデッキに入れたら、他のエネルギー・カードを入れたくなってくるものなのだ。また、可能な限り直截的になっている。エネルギーは「戦場に出たとき」の能力で得て、特定のタイミングでだけ使うことができるようになっているのだ。こうすることで、プレイヤーは高いレアリティの複雑なものに出会う前に、基本を学ぶことができるのだ。

《つむじ風製造機》

 『カラデシュ』における我々の仕事の1つが、『マジック・オリジン』がカラデシュを紹介したときの前振りにけりをつけるということだった。アーティファクト・テーマがあるのは明白だったが、もう1つ果たさなければならないものが合った。それが飛行機械である。『マジック・オリジン』では、カラデシュを表す青赤のアーキタイプがアーティファクトをテーマとしたものだったが、『マジック・オリジン』にはアーティファクトの枠がそれほど用意されていなかった。この問題を解決するために、アーティファクト・クリーチャー・トークンである飛行機械を生み出す有色のカードを作ったのだ。

 製造を作ったとき、我々はトークンとして飛行機械を作るということも考えた。しかし飛行は強すぎ、プレイヤーはほぼ常に+1/+1カウンターを選ばずにクリーチャー・トークンを出すことを選んでいたのだ。そのため、我々は『カラデシュ』で他に飛行機械を出す場所を探さなければならなかった。《つむじ風製造機》はそのための直截の方法である。『カラデシュ』にはアーティファクトが大量に必要で、またデッキの軸にできるものも必要で、飛行機械を生成するのはフレイバー的だ。つまり、《つむじ風製造機》は当然の選択なのだ。

 どこかで《蜂の巣》がひっそり泣いてるな。

多くの物語

 今週と先週の『カラデシュ』の話を、語ってきた私と同じぐらいに聞いている諸君にも楽しんでもらえたなら幸いである。いつものとおり、この記事について、またこのセットについての諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『カラデシュ』のデザインに関する質問に答える日にお会いしよう。

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