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『霊気紛争』一問一答

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年2月17日

原文はこちら

 こんにちは、そして「Latest Developments -デベロップ最先端-」へようこそ! 今回は一問一答への質問をTwitterで募集したので、今回はそれにお答えしていこうと思います。

 来週は一問一答をやりますぞ。答えてほしい質問があれば教えてください。


 デベロップは(補助的な製品と通常のブロックの両方で)『統率者』にどのように関係していますか?

 『統率者』セットにはデザインとデベロップの両方のリードがいます――ビリー・モレノ/Billy Morenoは『統率者(2013年版)』、イアン・デューク/Ian Dukeは2014年版、ベン・ヘイズ/Ben Hayesは2015年版と2016年版を担当しました。このチームはデザイナーとデベロッパーと社内のあらゆるところから来た人たちで構成されています。デベロッパーは全てのカードのコストを適切なものにする責任を背負う傾向にあります。

 なぜモダンでカードを解禁するのではなく禁止し続けるのか?

 モダンの禁止リストにあるカードの多くは、そのフォーマットの多様性を広げるのではなく狭めるので禁止されています。《垣間見る自然》のようなカードを加えることはこのフォーマットにデッキを1つ加えるのではなく、他の多くのデッキを競技レベルから抹殺してしまう可能性があります。このフォーマットが大きくなるにつれて、私は禁止カードリストのカードの一部をこのフォーマットに再び加える余地があると考えています。理由は明らかだと思いますが、禁止リスト全体を見渡してどのカードが今後2年間で解禁されるかをランク付けするのは良いことだとは思っていません。しかしヒントを1つ出すなら、私は《頭蓋骨絞め》についてはすぐにそうなるとは期待していません。

 スタンダードでのバランスを気にしなくていいなら、セットはどのように違うものになるの?

 かなり違ってきます。『コンスピラシー』で我々がどのようなことをしたか見ることができますが、それはスタンダード向けにバランスを取っていません。我々はメタゲームを気にする必要がありません。個別のカードがどれくらい支援されているかや、その周囲のセットによって傷つけられているかを気にする必要がありません。そのセットは多かれ少なかれ単体で存在するようになります。

 そのセットの大きな問題はそれがどれだけリミテッドに基づいているかです。この点で全ての補助的な製品は大きなリミテッドの構成要素を持っていて、私はそれが常に進歩していると想定しています。これは最も大きな違いが見られる可能性がある場所です。『コンスピラシー』のように、スタンダードで見かけることのないセットである可能性が高いでしょう。十中八九は多人数戦専用要素です。

 ラヴニカを舞台にしたブロックで一番好きなメカニズムとその理由は?

 進化です。私はこれが興味深いクリーチャーを作るのに素晴らしい仕事をしていて、そしてそれが基本的にとても楽しいものであると思っています。シミックのクリーチャーが変なパワー/タフネスを持っていることは、それらが実際に奇妙な生態をしているので楽しいことです。このメカニズムは、これらのクリーチャーを期待通りの変でクールなものにする、本当に良い仕事をしました。

 《水蓮の花びら》の新バージョンをスタンダードに入れるために「修正」する方法はありますか? それを0マナのままにする方法はありますか?

 方法はあるでしょうか? 多分あります。その価値はあるでしょうか? 多分ありません。《水蓮の花びら》の効果は縮退したデッキをパワーアップさせるために存在しているので、我々が実際にスタンダードで運用したいものではないと私は思います。このことは2つある可能性のうち1つにつながります。我々は何もしないカードか、もしくはスタンダードやモダンで環境を壊してしまうカードのどちらかを長い時間かけて作ることになります。私はこれが時間の良い使い方であるとは思いません。我々は新しいモックスやロータスに取り組む時間を用意できるかもしれませんが、それらはより印象的なボーナスをもたらすので、カード・パワーの面でもう少し柔軟性があると思います。

 オンラインで実装するためにカードに変更を行う必要がありましたか? この要素を考慮していますか?

 年間通してかなりの数がありますが、現在我々はそれらを過程の初期に把握する良い仕事ができています。《死者の王、ケルゥ》は最終的にデジタルの厳しいユーザーインターフェース上の問題を抱えていたので変更された1枚です。それだけでなく、我々はカードの重要でない部分を削除してクリック回数を減らすためにセットに目を通すことをよく行います。たとえば、どのプレイヤーも対象にできるカードは対象を選ぶ必要があり、クリックが1回増えます。対戦相手だけを対象に取る場合、1対1のゲームではクリックが1回減ります。このような小さな積み重ねが「Magic Online」のプレイ時間を1ラウンドあたり数分ずつ早くしています。

 開発部内で『カラデシュ』に相手のエネルギー・カウンターに干渉するカードを印刷することについて何か議論は行われましたか?

 はい、そして最終的に我々はそれをやらないことに決めました。我々は、一つの大きな効果を使うためにエネルギーを貯めても、対戦相手がエネルギーを奪い去ってしまうだけになるゲームプレイは望んでいませんでした。エネルギーを適正なものにするのには長い時間がかかり、そして我々はプレイヤーがこのメカニズムを正しくプレイすることに大きな懸念を抱いていたので、エネルギー貯蔵所に干渉する手段を作ることはリスクが大きすぎると感じました。

今のスタンダードにデベロップの視点から何か1つ変更を加えられるとしたら何?

 機体のパワー/タフネスをもっと下げて、能力を増やすでしょう。私が構築フォーマットで一番楽しいと思う機体は《耕作者の荷馬車》です。このマナ能力がこれの強さの大きな部分を占めているという事実は、これに搭乗し続けられないところでも本当に大きく遅れをを取らないところにあなたを留めていると思います。

 1年前(かそこら)では明らかではなかった、今現在君の学んだ最大のデベロップ上の教訓は何だい?

 楽しいカードやメカニズムのための時間は必ず後でやってくるということです。これは初めてのセットを仕上げた人は自然に気づくことだと思います。結局のところ、最初のセットをリードしたときに次があるという保証はどこにもないのです――なので今までに持っていた全ての良いアイデアをそのセットに入れて、将来のセットに何も残さないという内面的なプレッシャーが掛かることがよくあります。

 事実、担当するセットに合わないクールな個別のカードはたくさんあります。単発のクールなデザインとしてそれを投げ捨ててしまうよりも、実際に役割を果たせたり、もしくはそれを基にしたサイクルやメカニズムにできる後日にとっておくほうが大抵良い結果になります。それが私に起きたのは、『マジック・オリジン』で穴埋めから送られてきた単発のデザインがあったときでした。

〈ジェイスの聖域〉
{1}{U}
エンチャント
あなたのコントロールするプレインズウォーカーは「[+2]:カードを1枚引く」を持つ。

 本当に素敵なカードですが、明確に強いわけではありませんでした。これはクールでジョニーな事柄をプレインズウォーカーで行うことができましたが、それらにはこのような分野での支援を多く必要とはしない傾向にあります。[+2]能力で素早くプレインズウォーカーの忠誠値を上昇させることはクールでした。最終的に、『ゲートウォッチの誓い』の誓いサイクルのために同じデザイン空間にエンチャントが必要だったので、このセットからこのカードを取り除くように要求されました。最初は悲しくなりましたが、このサイクルが1つのブロックを超えて続いているという事実は、この判断が正しかったことを明らかにしました。

 過去数ブロックで脅威と解答の振り子は脅威のほうに振れすぎていて、それは戻ってきますか?

 はい、私は我々が脅威の方向へ強さだけでなく、除去耐性についても振れすぎていると確信しています。除去耐性のある脅威がいくつか存在することは重要だと思いますが、それらにはある種のコストが必要であり、そして近年そのコストを低くしすぎたと思います。それはパワーやタフネスの点かも知れませんし、もっと狭いデザインかもしれませんが、何かにする必要があります。同時に、我々は解答を少し弱くしすぎました。《致命的な一押し》が示唆しているように、我々は振り子をもう少し中心に戻そうとしています。たどり着くまでにもう少し時間がかかりますが、我々はその方向へと向かっています。

完成版のデザインに近いカードでテストしてるのはデベロップのいつごろですか? 完成版のデザインでどれぐらいテストをしていますか?

 「テスト」がどのフォーマットのことかによります。リミテッドは構築フォーマットよりも早く「確定」される傾向にあります。デベロップ・チームが1つのセットに1年かけているとすると、そのセットの80%は最後の4か月ぐらいには完成版に近いものになっています。最後の1か月で我々は最後の10~15枚のカードを適正なものにするために変更を加え続けています。

 リミテッドでは、我々が完成版でドラフトをしない可能性はかなり高くなります。最後の数回のリミテッドのプレイテストで少しの変更しか行われないかもしれませんが、ドラフトをし続けていれば何かを変更する可能性があります。どこかの時点で切り上げる必要があります。

 そのセットに変更を加え終わった後でも、それが一般の人の目に触れる前に、我々はそのセットのプレイテストを続けます。たとえば現在、秋の大型セットの完成が間近に迫っています――我々はそれらのカードのタイプセットに多くの時間を必要とします。フレーバーテキストやカード名、アートを仕上げ、それをローカライズに送ります。我々はそれらの過程が始まった後でも緊急の変更を行うことがある程度できますが、我々はさらにそのセットをプレイすることで今後数か月でそれについて多くのことを学び続け、強すぎるかもしれないと懸念するカードに対しての解答を作る機会を得るでしょう。

 1つのブロックの各セットで異なるチームがいることの利点や必要性は何ですか?

 理由のほとんどは、実際にセットを作るのにかかる時間と労力によるものです。大型セットのリード・デベロッパーは約1年間、会議の主導、社内の他の部署のやり取り、全てが滞りなく進むようにすることを担当します。彼らが複数のセットをリードすることは、その労力が2つに分かれてしまうことになるでしょう。またその2つのセットのデザインとデベロップの時間はかなり被っています――なので小型セットは1年丸々ではなく9か月「だけ」しかかからないかもしれませんが、発売時期の実際の差は4か月近くしかありません。両方のセットを1つのチームで行うと、時系列に巨大な変更が行われる可能性が高いでしょう。

 加えて、新人がデザインとデベロップの両面でカードを考えることは良いことです。我々が発見してきたように、単に1つのチームに人を増やすと効率は良くならず、逆に悪化するところまで行ってしまいます。2つの小さなチームを作ることで、それぞれ自分の担当するセットを可能な限り最高のものにすることに焦点を置くことができるようになります。

 あなたが思い出せる中で脅威対解答のバランスが最も取れていたスタンダードはどれですか?

 最近のスタンダードでは私は『イニストラード』『ラヴニカへの回帰』期の大ファンです。《スラーグ牙》のような強すぎる脅威はいくつかありましたが、アグロ、ミッドレンジ、コントロールの存在を可能とする強力な除去も多数存在しました。

 私は『神河物語』『ラヴニカ:ギルドの都』期のような古いスタンダード環境も本当に楽しんでいましたが、高レベルなプロ・イベントの相対的欠如によってそれほど圧力がかかっていなかったことを考慮すると、実際にどれぐらい良かったのか判断するのは私には困難です。このセットが実際にとても良くバランスが取れていたとは思いませんが、チーム共同デッキ構築・スタンダードのプロツアー予選が最も広くプレイされたイベントであることが、このフォーマットを実際よりも健全に見えることに大きく関わっていました。

 過去のフォーマットで強いと思っていたのに活躍しなかったカードは何? どうしてそれらは期待したほど影響を持たなかったの?

 いくつか挙げていきます。

『タルキール覇王譚』:《凶暴な拳刃》。《ティムールの魔除け》の遅い時期の変更と、いくつかのアブザンの強化で他の氏族よりも弱くなってしまいました。

『ニクスへの旅』:《予言の炎語り》。このカードは当時のフォーマットに全く向いていませんでした。これが出たときに強かったデッキは極めて除去に偏重していて、戦場に出たターンに何もしない3マナのクリーチャーはお呼びではありませんでした。またこれは単純に《森の女人像》、《世界を喰らう者、ポルクラノス》、《波使い》に対して有利ではありませんでした。

『戦乱のゼンディカー』:《マラキールの解放者、ドラーナ》。彼女は優れた評価を得ていましたが、実際にスタンダードで居場所を見つけることはできませんでした。彼女はスタンダードの吸血鬼デッキの先鋒となる可能性を持っていましたが、しかしより強力な吸血鬼デッキは横に並べる戦略よりもマッドネスに重点を置く傾向にありました。彼女は4ターン目に《血統の呼び出し》で手札をダンプしたい状況で、そうしたときはとても強力でした。

 「Magic Story」の重要度が増して、ストーリーの瞬間を描いたカードをスタンダードでプレイアブルなものにするような圧力は存在しますか?

 これは近年の課題でした。最初のころは物語のポイントのカードを強力なトーナメント・カードにすることに重点が置かれていましたが、我々はそれから逆行し始めています。これらのカードはクールであるべきですが、楽しいカードをトーナメントに向かって推すほうが、推しているカードをトーナメントで使って楽しいものにするよりも良いでしょう。時には、物語の瞬間から楽しいデザインが――少なくともスタンダードで人々がそれをたくさん唱えてほしいと思う割合で出てこないことがあります。


 今週はここまでです。記事で読んでみたいアイデアがあれば、それらを私に送ってください。来週はさらなるデベロップの舞台裏についてお話します。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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