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Beyond the Basics -上級者への道-

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三すくみを崩す

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2017年11月2日

原文はこちら

 石、紙、ハサミ。

 どれを選ぶ?

 この種のゲームは何千年も前から存在し、その起源は古代中国王朝にまでさかのぼる。石と紙とハサミの例えは聞き飽きていると言うなら、ナメクジと蛇とカエルはどうかな? それとも、狐と猟師と庄屋ならどうだろう?

 種類はいくらでもある。ともあれ、その根底にある法則は単純かつ同質のものだ。AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つ。2名が同時に1つを選択すると、どちらかが勝利するか、あるいは引き分けに終わる。

 そして、それは難しい選択だ。最初は対戦相手が何を出すかわからないので、三すくみのどれで行くべきかについての情報がない。石が最も強そうに見えるのでそれを選ぶ可能性が高いとか、新しいプレイヤーは最後に見知ったハサミを選ぶ可能性が高い、と考えることもできるだろう。しかしほとんどの場合、どれが選ばれるかはわからないものだ。


《Scissors Lizard》 アート:Heather Hudson

 三すくみは対戦ゲームをより面白いものにすることがある。しかし、(度合いはあれど)無作為に何かを選ぶことが賢い方法とされるとき、ほとんどの人にとってそれは腰を据えて何時間も遊ぶようなゲームにはならないだろう。

 幸いなことに、マジックの三すくみはそれよりもう少し面白いものだ。

 時々、メタゲーム(訳注1)は3つの上位デッキにまで煮詰まることがある。どのデッキも単体で強く、かなり拮抗した状態で並び立つというものだ。デッキAはデッキBに、BはCに、CはAにほとんどの場合打ち勝つ、というようにね。その状況でどのデッキを使うかを選ばなければならない。

(訳注1:メタゲーム/どんなデッキやカードが流行しているか)

 マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017でもある程度はその状況が見られた。「ラムナプ・レッド」は「青黒コントロール」に対して有利だったが、「ラムナプ・レッド」が不利な「ティムール・エネルギー」に対しては、「青黒コントロール」が有利だった。

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 しかしここでは、有利という言葉が重要となる。

 有利は勝利を確実なものとするわけではない。純粋な三すくみとは異なり、時には石が紙を押さえつけ、その紙の檻をそのまま破ってしまうこともある。

 世界選手権の準決勝でもそれは起こった。ウィリアム・『Huey』・ジェンセン/William 'Huey' Jensenは「ティムール・エネルギー」を用いていたが、そこで青黒コントロールと対峙したにもかかわらず、それを下している。そしてもちろん、「ティムール・エネルギー」は赤単に対して有利ではあるが、どんなに都合よく考えても完全に押さえつけられるものではないだろう。とは言え、そうだとしても、有利であることに変わりはない。

 さまざまな場面でこれをいくらか確認できるだろう。このメタゲームが当てはまっていれば、今週末のプロツアーでこれらの駆け引きが見られるかもしれない(が、見られないかもしれない――この記事を執筆したのは数週間前なんだ)。

 競技的なマジックをプレイする予定があるなら、舞台がプロツアーであってもそうでなくても、どこかでほぼ確実に、このような三すくみに遭遇する。その場合にどうすればよいかを知っておくことは、成功に不可欠な要素となるだろう。

 今日はそれについて扱っていこうと思う。

新しいものを見つける

 このようなメタゲーム環境にぶつかった場合、真っ先に思いつくのは、単純に三すくみを崩すことだ。

 そしてそれには多くの意味が含まれる。3つのデッキそれぞれが、残り2つのデッキに狙いを絞っているとしよう。それぞれが残りの2デッキに用いるどの対策カードにもひっかからない何かを見つけることができれば、その三つ巴の争いを利用することができるはずだ。

 例えば、これら三すくみデッキは、サイドボードのすべてを残り2デッキのために費やしたり、あるいはそれらと戦うためにメインデッキを修正することがある。メインターゲットのみをレーダーに捉えており、他のものに対しての準備がおろそかになっているわけだ。であれば、それらを撃破してしまおう!

 これは無理難題ではなく、過去の大きなトーナメントでも着実に成果を見せている手法だ。私は革新を大いに支持する者なので、この手法を改めて私に売り込む必要はない。しかし、このやり方にはいくつかの危険もある。


《Rock Lobster》 アート:Heather Hudson

 最も重要な問題は、ほとんどの場合、その3つのデッキに比べて弱いデッキで革新に挑むことになる、という点だ。ああ、そのデッキは三すくみのデッキとは別のものだ――しかしメタゲームの頂点にあるそれらのデッキに対して強くないのであれば、別のデッキであるということは有利には働かない。それが既存のデッキの弱いバージョンに過ぎないとすれば、ああ、それが何になるというのか?

 ともあれ、(ここで指標としている、考慮すべき)頂点にある三すくみデッキのうち2つに対しては安定して勝てるデッキに仕上がったとしよう。それでも別の問題がある。あらゆるデッキに勝てるわけではないことだ。

 それらの三すくみからデッキを選ばないプレイヤーもいる。同じように三すくみのデッキのうち2つに勝つことを狙い、別のデッキを組んでくるプレイヤーもいる。どうやってそれらのデッキとやり合うのか? 頂点の三すくみデッキのうち狙った2デッキを打ち負かせるように組み上げるだけでなく、デッキとしての確固たる基盤を持ち合わせていることが重要なんだ。三すくみデッキのうち2つが赤を中心としているからといって、赤のクリーチャー対策となるカードをメインに8枚入れればいい、というものでもない。クリーチャーにあまり頼らないデッキに当たってしまうと、デッキは機能不全を起こしてしまうだろう。

 メタゲームを崩す新しいデッキを組もうと挑戦するのは私も大好きだし、最も刺激的な手段の1つではあるだろう。しかし可能性を見出したそのデッキは、最大限の注意を払って管理しなければならない。それができていると真に確信できた時のみ、この手法は十全な働きを見せるだろう。ともあれ、この手法を機能させることができれば、最も有利な位置からトーナメントに臨めるかもしれない。努力してこれに取り組むことには、それだけの価値があるんだ。

戦況把握

 さて、あなたは頂点にいる三すくみのデッキから1つを選んで戦うことにした。自作のデッキがうまくいかなかったのかもしれないし、単にそのデッキが気になっただけかもしれない。いずれにせよ三すくみからデッキを選ぶことには何の問題もない。それよりも、どうやって他のデッキを打ち倒せばいいのだろうか?

 ああ、まず何よりも、どのような状況なのかを学ぶことだ。


《Face to Face》 アート:Randy Gallegos

 これは私の場合だが、他のデッキとの対戦がそれぞれどの程度の相性なのか、それぞれに安定して勝つにはどの程度の労力が必要なのか、そしてそれぞれを相手にしたときにどうプレイすればよいかについての詳細――これらをまずは理解しておきたい。その対戦は手も足も出ないほど不利なのか、それともちょっと不利な程度なのだろうか?

 そして、その対戦に精通することで相性をどれだけ覆せるかについても確認しておきたい。時には、その対戦への取り組み方から知る必要もあるだろう。

 有名な例として、2002年の世界選手権におけるカルロス・ロマオ/Carlos Romaoのプレイを取り上げよう。彼は対戦相手が唱えるドロー呪文を全く妨害しないというプレイングによって、すべての《サイカトグ/Psychatog(ODY)》デッキ同士の対戦を勝利で終えたんだ。当時の定石であったドロー呪文を打ち消し呪文で迎撃するプレイに走らず、《サイカトグ/Psychatog(ODY)》のような本当に重要な呪文に対してのみ打ち消し呪文を用いる。そのために普段は打ち消し呪文を温存したんだ。

 それぞれの対戦について十分に学び、何が必要かを理解する。そうしたら、変更を加える時だ。

メタゲームに合わせた変更

 変更を加えるために私たちが取りうる主な手段の1つが、サイドボードだ。(あるいは、サイドボードにカードを入れるため、メインデッキの内容を変更するというのもそうだ!)

 サイドボードを用意するときは本能的に、有利なデッキに対して役立つカードを入れる枠は減らし、不利なデッキに対して役立つカードを入れる枠は増やしたい、と考えるだろう。それも当然だ。デッキは安定させたい。

 しかしながら、それはとても危険な考えかもしれないんだ。

 その当然とも思える考えを、誰もが実行しているとしよう。いいかな。そうすると、有利な(はずの)デッキに対して、こちらは何も有効なカードを持っていないことになる......そして相手はこちらに有効な対策カードを持っていることになる! おそらく、この対戦における優位はあなたの手から滑り落ちるだろう。絶対に負けたくない対戦であるにもかかわらずだ。


《Paper Tiger》 アート:Heather Hudson

 そして逆に、苦手なデッキとの対戦で勝てる可能性は、実際のところどれだけ増えているだろうか?

 これはプレイテストや情報収集が大いに関わってくるところだ!

 それがわずかな差であれば、間違いなくサイドボードの枠を割く価値がある。しかしながら、5枚のカードを費やしても15%の勝率を20%にする程度にしかならないのであれば、おそらくそこまでサイドボードの枠を割く価値はないだろう。

 今回のような状況設定で私が好むのは、同系対策用のサイドボードやメインデッキの枠を、いくつか余分に持っておくことだ。

 有利なデッキに対してはうまくやれるだろう。そして不利なデッキに勝つためには、多くの取り組みが必要となる。しかし同じデッキ同士の対戦は、不利なデッキとの対戦とは違い、ほぼ互角なはずだ。おそらくデッキに入っているカードはほとんど同じだろう――したがって、ほんの少しの優位であっても助けになる。数枚の差であっても、大いに勝利に貢献してくれるだろう。

 これらは、別のデッキに対抗するためのカードを用意してはいけない、と言っているわけではない。勝ち目の薄い対戦で優位を取り戻せるよう努力してはいけない、と言っているわけでもない。同系対策は少量で大きな効果を上げる可能性が高い、というだけだ。

 どのレバーを引っ張れば、目的を達成する可能性を最大にまで高めることができるのか? まずはデッキを使い込むことで気づいた内容を信頼することだ。そして、それをもとに判断すべきだ。いろいろと述べたが、ここで伝えたかったことはそれに尽きる。

巡り巡って

 今のスタンダードを勝ち抜くための最良の方法はどんなものだろうか?

 ああ、私は今週末のプロツアー『イクサラン』で、何か新しい変化が起こるところを見られればいいなと思っているよ! 世界最高峰の選手たちが知恵をぶつけ合ってスタンダードを打開する様子を、私も観戦するつもりだ。ここで述べてきた戦術のうちいくつかが用いられるのは確実だろう。

 そこで成功を収めるのは何だろうか? 日本時間では11月3日24時(11月4日0時)から始まる生放送(1日目2日目3日目)をお楽しみに!

 しかしプロツアーの舞台で何が起こるとしても、そこからまた次に向けてこのような形式で取り組めば、問題に対処するためのより良い技術が身についていく、と気付くはずだ。うまくいくことを願うよ。三すくみは難しい状況だ――そして、デッキへの戦術的な変更や練習が大きな影響を及ぼしうる状況でもある。

 今回の記事について何か思ったことはあるだろうか? ぜひとも教えてほしい! いろいろ聞かせてもらえると、とても嬉しいよ。TwitterTumblrでいつ尋ねてくれてもいいし、BeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールしてくれてもかまわないよ。

 また来週会おう。プロツアーを楽しんでくれ!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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