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『アモンケット』のデベロップ

Dave Humpherys / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年4月4日

原文はこちら

 『アモンケット』のデベロップ・チームは大きなものでした。さまざまなタイミングで数人が参加したり離れたりしましたが、以下の全員がチームで重要な役割を果たしていました。ブライアン・ハーレイ/Bryan Hawley、イアン・デューク/Ian Duke、エリック・ラウアー/Eric Lauer、ジャッキー・リー/Jackie Lee、アリ・レヴィッチ/Ari Levitch、キンバリー・クレインズ/Kimberley Kreines、ティム・アーテン/Tim Aten、モンス・ジョンソン/Mons Johnson。

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ブライアン・ハーレイ/Bryan Hawley、イアン・デューク/Ian Duke
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エリック・ラウアー/Eric Lauer、ジャッキー・リー/Jackie Lee
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アリ・レヴィッチ/Ari Levitch、キンバリー・クレインズ/Kimberley Kreines
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ティム・アーテン/Tim Aten、モンス・ジョンソン/Mons Johnson

 私にとって、これはスタンダードで使える中で7個目となる、私がリード・デベロッパーを務めたブースターです(うち1つは共同リード)。そして、このセットは『マジック:ザ・ギャザリング ― コンスピラシー』以外で初めて、新しい次元を私がファンやプレイヤーの皆さんにお披露目する機会となりました。

 このセットにはテーマやサイクル、メカニズムが詰め込まれています。そして、それらを一貫した方法で作ったつもりです。デベロップの視点から、それらについて説明していきましょう。

神々

 『テーロス』の神々で、掘り下げるべきデザイン空間の基本線が定まっています。昨日のマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの記事で、神々のさまざまな側面と、それぞれをどう分解して使いたいものにしているのかを検証しています。

 『テーロス』のリード・デベロッパーを務めたエリック・ラウアーが、『アモンケット』での神々のデザインをどのように進めるべきかについて素晴らしい指針を示してくれました。神々を使うことに最適化したデッキ構築やゲームプレイをすれば、非常にインパクトの強くなるカードを再び作ることができました。

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 『テーロス』においては、神々全てが信心の数という同じ条件を満たせば全能力を使えるようになっていました。今回はそれと対照的に、『アモンケット』の神々にはその特性を際立たせるようなそれぞれの目標が定められています。そして、セット内に少しだけ、その目標を達成する助けとなるカードが入っていて、それぞれの神の目標を軸とした新しいデッキを作れる可能性があるようになっています。多くの場合、この目標はいずれにせよプレイヤーが望みうる、しかし戦略によっては通常あまり望まないことと密接に関わっています。

 これらの神々のような破壊不能クリーチャーには、もちろんデベロップ的な危険があります。『テーロス』では、信心を達成しているカードを除去すれば、直接神々に対処する必要はありません。『アモンケット』では、神々は自ら条件を満たしに行くことができ、対戦相手の側にいるといらいらするような不可避性があります。それらのカードの起動型能力は、デッキ内の他のカードを使って条件を満たすことが第一で、それができない場合のバックアップとして位置付けられるような強さになるよう調整しています。

余波

 『アモンケット』は一時期墓地関連のセットとして計画されていました。そのため、墓地に注目した別のブロックである『イニストラードを覆う影』ブロックと同じスタンダード環境に存在するというやりにくい状況になっていました。いつもどおり、『カラデシュ』ブロックには、昂揚などの前のブロックの墓地戦略が支配的であったり問題があったりする戦略として長く生き残った場合に備え、墓地戦略「対策」のカードがデザインされていました。『アモンケット』でしうることに足を踏み入れないように慎重に、そして後知恵で言えば不正確に、していたのです。

 今後、セットのテーマや危険な戦略への回答を入れるのはもっと近い時期にしています。それと同時に、今後は、今回のようにセットのテーマが大きく重ならないようにする方法を探すことにしています。関連した話をすると、今後、最近見たものよりも強いアーティファクトへの回答となるカードが登場することになるでしょう。

 余波は、カードを2回使うことができるというフラッシュバック系のデザイン空間を扱うメカニズム2つのうち1つです。デベロップ的には、こういったカードは引いたカードですることがなくなってきたときに2回目の使用をするように最適化されているべきだと感じることが多いのです。

 これらの余波カードは事実上、素早く続けてプレイすれば一番うまく働くように意図されていることが多い2つのデザインが含まれています。つまり、プレイヤーがデザイン上それらのカードに含まれているコンボをできるようにマナ・コストが非常に重要になりました。同時に、効果がワンツーパンチにならないときにも楽しいデザインを探しました。

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 これらのカードは、7年前にウィザーズに入ってからデザインできたカードの中で一番楽しめるカードでした。ダグ・ベイヤー/Doug Beyerたちクリエイティブや開発部の面々は、それらに魅力的なカード名をつけてくれました。私が思いついた名前が緑の余波カードに固定されていたのも面白かったことです。特に、分割カードのような選択したくなるようなものではなく、墓地では次にできることを示せるようにカードを配置できるようにするという、今回の機能のための難しい条件を果たすカード枠を作り上げてくれたリズ・レオ/Liz Leoに感謝です。

 余波は各色に均等に存在しています。

不朽

 不朽を持つカードの、クリーチャーをミイラ化したゾンビとして戻す能力は、エジプト風世界に非常に似つかわしく思えました。デベロップがデザインから受け取ったものをそれほど進化させる必要はありませんでした。各クリーチャーのミイラ化した姿を示すということにした時点で、トークンの表現をどうするのが最適かに関するいくつかの小さな問題がありました。これらのカードに関する最大の課題は、他の墓地関連戦略との関連にありました。

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 フォーマットを、デッキと手札全てを墓地に送り込み、肥大化した墓地を扱うだけで、毎ターン引くカードはどうでもいいような環境にしたくはありませんでした。このセットを手がけていた時点で、その種の効果で強力な《過去との取り組み》のようなカードは充分存在していたので、自分のライブラリーを削って極端に活用したときにのみこれらのカードを輝かせるようなカードを追加したくはありませんでした。

 一例を挙げれば、私は特に試練とカルトーシュに関連したカードとして《神々との融和》を再録候補として見つけました。しかし、これは非常に危険だと判断されたので、その代わりとなった似たカードを見かけることになるでしょう。

 先に2回使えるカードの目標として言ったとおり、多くの不朽クリーチャーの1回目の効率がいいようにしています。そして不朽コストはほとんどの場合、ゲーム後半でのもうひと押しになるようにしています。これには特記すべき例外として非常に過激な不朽コストを与えたものが少なくとも1つあります。

 フラッシュバック・カードと違い、これらのクリーチャーは墓地に行く方法を見つけなければなりません。つまり、不朽コストをいくらか優秀なものにすることができます。また、戻すのにマナのコストがかかることから、不死や頑強と違い、そのクリーチャーの1回目のときのコスト比も優秀にすることができるのです。

 不朽は白と青が中心です。

督励

 ここまでの2つのメカニズムは、墓地からカード・アドバンテージを得られるようにゲームを長引かせる方向に働きます。もう1つ、今度はすべての取りうる戦略が長期戦を目指すものにならないように引き戻すメカニズムがあるようにしたいと考えました。また、アモンケットで試練に挑戦する修練者を表すメカニズムも必要でした。督励メカニズムはデザインの後期に作られたもので、登場人物が非常に英雄的な努力をするということにまさにふさわしいものに感じられたのです。

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 デベロップの初期には、プレイヤーが盤面を見て「攻撃するのは意味があるかな」と考えたとき、「ない」という答えになる状況があまりにも多くのゲームで生じていました。督励のような戦闘メカニズムを加えることで、この答えをより望ましい「ある」というものに変えることができることがよくありました。

 もちろん、そのクリーチャーは次の2ターンの間ブロックできませんし次のターンには攻撃もできませんが、少なくとも局面を進めることはできますし、闇雲に戦場を複雑にするよりも相打ちを取っていくほうがいいと考えるようにはなります。

 このメカニズムは《蜘蛛の掌握》のようなカードと欠点を避ける単発的な方法とを組み合わせてもとても面白いものでした。警戒を与えるのは、少なくともリミテッドでは、楽しいというよりずるいと感じられるものでした。そこでこのセットでは、誰もが安定する対抗策があっても《永遠の見守り》とのコンボを構築で考えるだろうとわかっていましたが、このセットにはそういうカードはあまり入れませんでした。

 督励、それに不朽もいくらかそうですが、それらのために切り抜き型のカウンター・カードを作り、それをパックに入れるという試みを提案しました。アンタップしないということを覚えておくだろうと考えることはできましたが、何ゲームも観察した結果、記憶の助けになるものがあったほうが良いと考えました。

 督励は白、赤、緑に多く存在します。

サイクリング

 サイクリングの採用を提案したのは、確か、エリック・ラウアーだったと思います。提案理由の1つは、彼が先週サムがプレビューしたサイクリング2色土地を作りたかったことでした。サイクリングへの反対意見の1つが、能力名があまりフレイバー的でないことです。少なくとも、開発部のメンバーの何人かの中では、サイクリングはこの過酷な世界にいくらかふさわしいと感じられていました。

 さらに、『イニストラードを覆う影』ブロックとの相互作用によって昂揚に最後の見せ場を与えることができるといういいタイミングでもありました。究極的に、サイクリングだけでなく『イニストラードを覆う影』ブロックでマッドネスのためにカードを捨てられるようにデザインされたカードと組み合わせて、カードを捨てることによって利益を得られるようにしました。

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 サイクリングは、経験豊富なプレイヤーに比べて初心者プレイヤーに人気がないメカニズムです。何かの効果を持つ呪文を捨てて他の不確定なカードを引くというのは、多くの新規プレイヤーにはいい行動、正しい行動だとは感じられないのです。これが、このメカニズムを最近使っていなかったもう1つの理由です。とはいえ、このメカニズムを楽しむ多くのプレイヤーのことを知っています。さあ、どうぞ。

 モダンはこれらのカードにかなり影響を与えました。特に、《死せる生》デッキに良すぎるものを与えないようにするという意味でです。

 サイクリングとそれで利益を得るカードは、青と黒に多くなっています。

 エジプト風次元に碑がなかったらどうなるでしょう。デベロップが受け取ったのは、完成された碑がいくつかと、かなりの作業が必要な碑がいくつかでした。レンガが必要です。ラクダも助けになるでしょう。

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 実際のところ、これらの碑はどれも、手がけるのが非常に楽しいものでした。碑を作っているときは、それに挑むときの適正な比率と、その神秘を完了させた時に得られるものを決めるということが課題でした。完成した碑(それぞれの神に関わる碑も含む)もとても楽しいものになりました。これについてはイーサンの記事をご参照ください。

 どの色でも碑を上手く使うことができます。

ゾンビ(ミイラ)

 『イニストラードを覆う影』のゾンビ・デッキに、このセットで新しい道具が加わります。この部族は黒と白で中心となっていますから、どの色のペアを中心にするか考える必要があるでしょう。もしかしたら黒単色にすることもできるかもしれませんよ。

カルトーシュと試練

 クリエイティブ的には、試練を達成した修練者は対応するカルトーシュを授かります。つまり、この2種類のカードがこのセットに入るのであれば、そこにはメカニズム的繋がりが望まれることになります。

 本当にいろいろなことを試した後で、それぞれのカルトーシュをクリーチャーにエンチャントするオーラにして、+1/+1とキーワード1つ、それに戦場に出たときの効果があるようにしました。一方、試練は戦場に出た時に効果を発生させるエンチャントにしました。カルトーシュが戦場に出たとき、自分の試練が全て手札に戻るのです。

 メカニズム的には、私の考える限り、カルトーシュは試練の完了を示します。試練は完了していますので、手札から試練を唱えることで試練を再び始めない限り終わったままになるのです。

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 特にリミテッドで、これらのカードはこのセットに大きな夢を見せるようなコンボ要素を加えます。

 カルトーシュと試練は、すべての色で働いています。

-1/-1カウンター

 -1/-1カウンターを使うことはあまり多くありません。私がデベロップで関わる中ではこれが初めてです。この次元の過酷さを表したいと考えたら、-1/-1カウンターがぴったりでした。-1/-1カウンターのいい使い所を見つけるのは難しいことです。

 このメカニズムで「全体として楽しい」、つまりテーブルの両側の感じる楽しさの合計がプラスになるようなところを見つけるのには手間がかかりました。-1/-1カウンターの最も強力な使い方は、クリーチャーを除去することです。クリーチャーを殺せないときにも、実際に戦場に-1/-1カウンターが残るので、理論的には満足できます。

 このことから、生き残るような高いタフネスを求めるようになり、最終的には戦場に優秀な0/1や1/2をばらまくことになります。そうなると、それは+1/+1カウンターを使って大型クリーチャーを作るセットに比べて「全体として楽しい」でしょうか。それは評価によりますが、異なったものであり、ファンもいます。ほとんどのセットでは+1/+1カウンターを使うことができます。

 クリーチャーを確実に殺すようなカードを作りたいとすれば、-1/-1カウンターを使うことはすべての色で扱える強力なメカニズム空間です。それはつまり-1/-1カウンターを使う色には普段はないような追加の除去が与えられるということになります。

 萎縮はミイラの設定とテーマ的にぴったりです。デザインは萎縮を使おうと思っていましたし、それには充分な理由がありました。しかし、萎縮はこのセットに存在するさまざまなキーワード能力以外のキーワード能力で、デベロップ側ではプレイ体験を向上させることに取り組んでいました。

 萎縮クリーチャー対低パワー高タフネスのゲームは膠着状態になる傾向にありました。高パワーあるいは正方(パワーとタフネスが等しい)な場合、萎縮を持つことでいくらかコスト比を悪くする必要があるとすれば、萎縮クリーチャーは同程度以下のマナ・コストのクリーチャーと相打ちになることが多くなります。構築ではブロックすることが減り、相手のデッキに-1/-1カウンターへの対策方法が入っていることが多くなるので、萎縮の価値は低くなります。

 デベロップの初期に起こったこれら様々なことに気づき始めたので、私は他の新しい-1/-1カウンターの使い方を探し始めました。そして、内部のレア投票において評価の高かったあるカードからひらめきを得ました。それは、自身に-1/-1カウンターを置き、それを毎ターン取り除いて効果を発生させるものでした。デザインは-1/-1カウンターを自分のクリーチャーに置くということも掘り下げていました。相手のクリーチャーに-1/-1カウンターを置くほど無慈悲なことがあるでしょうか。自分のクリーチャーに置くとしたらどうでしょう。

 素晴らしいことに聞こえませんか。

 聞こえない。

 それなら、この欠点のおかげでコストが非常に優秀なクリーチャーというのはいかがですか。

 まだ足りませんか。

 クリーチャーに-1/-1カウンターを置くことで利益をもたらすカードがあるとしたらどうですか。

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 -1/-1カウンターの数に応じた効果を生じさせるクリーチャーがあって、これらの効果を持つクリーチャーかどうかを問わず-1/-1カウンターを置けるとしたら。

 これらのカウンターを飽きたクリーチャーに置けたとしたら。《スレイベンの検査官》などは。もう役に立ちませんよね。それに-1/-1カウンターを3個置いて、2マナ4/4のようなものを得ようとは思いませんか。あるいは、死亡したときに何かをするようなクリーチャーにカウンターを置くかもしれません。どちらにせよ生け贄にするものを対象にすることもありえます。ちょっと卑怯に聞こえますね。少しボーラスと付き合いすぎたようです。

 まだですか。おそらく1か月以内にはお分かりになるでしょう。私はここで示された選択肢を楽しみ、ゲーム中に賢いと感じることを見つけ、そして相手のクリーチャーの性質に振り回されることなく自分のクリーチャーを軸に組み上げることができました。

 心配しないでください。もちろん、-1/-1カウンターの入ったセットなのですから相手のクリーチャーに置くようなカードも大量に存在します。この空間を掘り下げることは『アモンケット』のカードの種類を釣り合わせるということです。

 もしあなたがリミテッドのファンなら、《華麗な苦悶》を楽しみにしてください。

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 古き良き日を懐かしむ皆さんは、色の変わった《不安定性突然変異》だと評価されるかもしれません。

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 このセットの多くのカードの着想を産んだカード、《媒介者の修練者》です。これのカウンターは自分に載せたい状況が多いでしょう。それでも、もうマナは必要ないという状況もあるでしょう。

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 -1/-1カウンターのカードは緑と黒に集まっています。


 お読みいただきありがとうございました。『アモンケット』のプレリリースは4月22~23日です。お楽しみに!

――デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys

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