READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青赤エルドラージ(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青赤エルドラージ(モダン)

by 岩SHOW

 こんにちは!岩SHOWです。初めましての方もたくさんいらっしゃると思いますので、まずは自己紹介させていただきます。現在はBIGMAGICというショップで広報やイベント関係の仕事をしつつ、マジック:ザ・ギャザリングのプレミアイベントなどの公式生放送にて司会や実況を何度か担当させてもらっている、岩SHOWと申します。今回、縁あってこのデイリー・デッキという連載記事を書かせていただくこととなりました。バリバリのトーナメントプレイヤー、というわけではない僕としては、まず1週目には最近活躍したデッキを改めて紹介しつつ、慣れてきた2週目以降で自分の好み全開、旬も時系列もない暴走特急としてやっていこうかなと野心を抱いておりますので、お付き合いいただけたらと思います!それでは早速本編、いっちゃいましょう!


 最初に紹介するデッキ、記念すべき先頭打者......ということで悩んだものの、自分が直近で、生で体験した「凄いデッキ」をいっとくしかないかなぁと。あの衝撃は...いつまでも忘れられないなぁ。プロツアー『ゲートウォッチの誓い』優勝者ジャアチェン・タオ/Jiachen Taoが使用した「青赤エルドラージ」を改めてご紹介。

 プロツアー開幕前、1月18日に《欠片の双子》《花盛りの夏》がモダンにて禁止カードに指定される。前モダンプロツアーの優勝・準優勝デッキがこれにて消滅。特に環境の絶対的な存在であった「青赤双子」(※1)がいなくなったことで、モダンのメタゲームは混沌としたものになることが予想された。

(※1:《詐欺師の総督》or《やっかい児》+《欠片の双子》or《鏡割りのキキジキ》の無限トークンコンボを中核に据えたデッキ。青赤の優秀な呪文とクリーチャーで、コンボを決めずともクロックパーミッションとして動いて勝利できる上に、隙あらば4ターンキルを決めてくる、モダンの象徴的なデッキだった。《欠片の双子》禁止により絶滅。悲しみの声をあげたプレイヤーは少なくなかった。)

 それに拍車をかけたのが、『ゲートウォッチの誓い』にて登場した《難題の予見者》《現実を砕くもの》らエルドラージの新顔たち。それまでの8マナ・10マナといった重い連中と違い、4マナ・5マナという現実的なマナコストで、戦闘面で強力・能力も優秀というクリーチャーが登場。これらを《ウギンの目》《エルドラージの寺院》と組み合わせて2ターン目・3ターン目に展開するデッキがはびこるのでは?という予想はされていたが......。

 結果、このエルドラージを全力で運用する「無色エルドラージ」は最も多くのプレイヤーを2日目に送り出した。しかし、それらを薙ぎ倒して優勝したのが、「青赤エルドラージ」である。

Jiachen Tao - 「青赤エルドラージ」
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』 優勝 / モダン[MO] [ARENA]
2 《
2 《蒸気孔
4 《沸騰する小湖
4 《シヴの浅瀬
4 《ウギンの目
4 《エルドラージの寺院
3 《魂の洞窟
1 《宝石の洞窟

-土地(24)-

4 《エルドラージのミミック
4 《空中生成エルドラージ
4 《不快な集合体
3 《エルドラージの寸借者
2 《破滅を導くもの
4 《難題の予見者
4 《現実を砕くもの
4 《希望を溺れさせるもの
4 《果てしなきもの

-クリーチャー(33)-
3 《四肢切断

-呪文(3)-
1 《呪文滑り
3 《頑固な否認
2 《はらわた撃ち
2 《大祖始の遺産
3 《ハーキルの召還術
2 《虚空の杯
1 《漸増爆弾
1 《精霊龍の墓

-サイドボード(15)-

 プロツアー開幕前、一体誰がこのデッキを予想できたというのか?デッキ原案をチームに持ち込んだのはジャアチェン・タオ本人なのだが、皆から「やめとけ」と止められたそうだ。しかし調整していくうちに、デッキの強さが判明し、トップ8に2人を送り出した上に見事優勝と、最高の結果を残すこととなった。

 デッキとしては、他のエルドラージデッキ同様、無色のバケモノたちに加えて「欠色」持ちの青と赤のエルドラージも採用し、クリーチャー33枚という骨太のビートダウンとなっている。このプロツアーでは現地に飛び、日本向けの生放送の実況を担当していた。初日の最終戦、第8ラウンドのフィーチャーマッチでこのデッキが遂にその姿を現した。あの時の現地の空気、ニコ生のコメントの様子は忘れることができない。僕らの認識するエルドラージデッキに入っているはずのない《蒸気孔》がセットされ、《空中生成エルドラージ》《不快な集合体》が展開される光景を見た僕とその時解説を担当していた鍛冶友浩さんは、ゲーム開始時こそ「これって、ドラフトラウンドのデッキかな?」などと冗談を言っていたが......それら、リミテッドでは強いエルドラージたちがジワジワと対戦相手を圧倒し、《希望を溺れさせるもの》がズシ〜ンと着地してゲームに勝利する頃には、すっかりこのデッキに魅了されてしまった。デッキに入っているクリーチャーがすべてスタンダードに存在するもので構成されていながら、使用者4人の初日成績が19勝1敗という輝かしいものだったのも驚きだった。

 対「無色エルドラージ」に長けたエルドラージデッキで、それを実証するかのように決勝ラウンドではChannelFireball謹製の同デッキ(※2)を3連続で斬っている。地上を高タフネスや末裔・トークンで受け止め、飛行とトランプルでダメージレースを制することができるからだ。純粋に戦闘を行えるクリーチャーの枚数に差があるというのも大きい。相手にすると、向こうだけ一方的にクリーチャーを展開してくるなと感じることだろう。

(※2:多数の殿堂入り・プラチナレベルのプレイヤーが所属するマジック界最強軍団ChannelFireballが作り上げ、同プロツアーでトップ8に3名のプレイヤーを輩出したエルドラージデッキの完成形の1つ。ほぼ完全無色のデッキだが、マナブーストとして《猿人の指導霊》まで採用されているのが特徴的。)

 余談になるが、モダンのプロツアーってこのデッキのように青と赤のデッキが優勝している印象が強い。「青赤双子」が2回に「トリココントロール」が1回、そして今回の「青赤エルドラージ」が1回。次のモダンのプロツアーは......スケジュールがこれまで通りにあるとすれば1年後か。その頃にはどんな青赤デッキが優勝を虎視眈々と狙っているのか、今から楽しみである。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索