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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 環境の総まとめ:『タルキール龍紀伝』から『マジック・オリジン』へ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 環境の総まとめ:『タルキール龍紀伝』から『マジック・オリジン』へ
こんにちは! 晴れる屋の津村 健志です。
『マジック・オリジン』加入前の最後の大型イベントである、「グランプリ・ブエノスアイレス2015」(リンク先は英語カバレージ)が終了しました。今週はその結果を踏まえつつ、『タルキール龍紀伝』発売後から今現在までのメタゲームの流れを振り返ってみたいと思います。前回の『運命再編』もそうでしたが、最近のセットは環境を激変させますね。『マジック・オリジン』がスタンダードシーンにどのような影響を与えるのか、今から楽しみでなりません!
それでは、まずは現環境の幕開けとなったプロツアー『タルキール龍紀伝』から、これまでのメタゲームの流れを振り返ってみましょう。
~開幕戦で最高の結果を手にした「赤単」~
10 《山》 1 《森》 4 《樹木茂る山麓》 1 《奔放の神殿》 4 《マナの合流点》 -土地(20)- 4 《鋳造所通りの住人》 4 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 1 《激情のゴブリン》 1 《稲妻の狂戦士》 2 《ゴブリンの熟練扇動者》 -クリーチャー(15)- |
4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 4 《軍族童の突発》 4 《乱撃斬》 4 《稲妻の一撃》 4 《かき立てる炎》 1 《強大化》 -呪文(25)- |
2 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《大歓楽の幻霊》 1 《ゴブリンの踵裂き》 4 《焙り焼き》 1 《破壊的な享楽》 1 《洗い流す砂》 2 《凱旋の間》 -サイドボード(15)- |
プロツアー『タルキール龍紀伝』で優勝を果たしたのは、《鐘突きのズルゴ》や《アタルカの命令》などで強化された「赤単タッチ緑」のビートダウンデッキでした。
このプロツアー当時は、まだ《アラシンの僧侶》といった強力な対策カードがほとんど使用されておらず、さらには「赤単」系のデッキが得意とする「エスパー・ドラゴン」の氾濫も助けとなり、見事に栄冠を掴み取りました。
ただし、環境初期のプロツアーで優勝した反動もあってか、このデッキは強く意識される結果となり、その後の大会ではこのプロツアーほどのインパクトを残すことはかないませんでした。その代わりに大きな注目を集めたのが、《龍王オジュタイ》を軸にした「エスパー・ドラゴン」です。
~シーズン序盤を牽引した《龍王オジュタイ》~
3 《島》 2 《沼》 4 《汚染された三角州》 1 《溢れかえる岸辺》 4 《欺瞞の神殿》 4 《陰鬱な僻地》 4 《啓蒙の神殿》 2 《コイロスの洞窟》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(27)- 4 《龍王オジュタイ》 1 《龍王シルムガル》 1 《漂う死、シルムガル》 -クリーチャー(6)- |
3 《思考囲い》 4 《シルムガルの嘲笑》 3 《胆汁病》 2 《予期》 3 《忌呪の発動》 3 《英雄の破滅》 2 《解消》 2 《命運の核心》 4 《時を越えた探索》 1 《悪夢の織り手、アショク》 -呪文(27)- |
1 《層雲の踊り手》 2 《黄金牙、タシグル》 1 《龍王シルムガル》 1 《思考囲い》 2 《究極の価格》 1 《胆汁病》 3 《悲哀まみれ》 2 《龍王の大権》 2 《悪夢の織り手、アショク》 -サイドボード(15)- |
プロツアーで際立った活躍を見せ、その後しばらくの間スタンダードを牽引することになった「エスパー・ドラゴン」。《龍王オジュタイ》、《漂う死、シルムガル》の「呪禁」コンビを、《シルムガルの嘲笑》や《忌呪の発動》でサポートするデッキです。
このデッキの強みは、やはり「呪禁」コンビ、とりわけ《龍王オジュタイ》の対処の難しさにありました。一度攻撃が通ると手札が増え続け、なおかつ除去耐性もあるこのクリーチャーは、このデッキの強さを支える最大の要因でした。世間が「赤単」へのガードを上げたために、「赤単」系のデッキが減少してしまったことも、「エスパー・ドラゴン」の繁栄を後押ししました。
当時はとにかく《龍王オジュタイ》が強く、《龍王オジュタイ》は「エスパー・ドラゴン」だけでなく、「バント(青白緑)・大変異」でもその存在感を遺憾なく発揮していました。
2 《平地》 4 《森》 1 《島》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《溢れかえる岸辺》 4 《豊潤の神殿》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《マナの合流点》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 1 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《羊毛鬣のライオン》 3 《森の女人像》 4 《死霧の猛禽》 3 《クルフィックスの狩猟者》 2 《狩猟の統率者、スーラク》 3 《龍王オジュタイ》 -クリーチャー(28)- |
3 《ドロモカの命令》 2 《見えざるものの熟達》 2 《勇敢な姿勢》 1 《軽蔑的な一撃》 -呪文(8)- |
1 《ドロモカの命令》 1 《層雲の踊り手》 2 《スズメバチの巣》 3 《軽蔑的な一撃》 2 《異端の輝き》 2 《否認》 2 《勇敢な姿勢》 1 《アラシンの僧侶》 1 《垂直落下》 -サイドボード(15)- |
白緑のグッドスタッフに、《龍王オジュタイ》とカウンター呪文をタッチしたのが「バント・大変異」。このデッキは《龍王オジュタイ》の新たな可能性を見出しただけでなく、いち早く《棲み家の防御者》+《死霧の猛禽》ギミックを搭載したデッキとしても、実に革新的なデザインでした。
このまま《龍王オジュタイ》がスタンダードを支配するかと思いきや、下記の2つの理由を発端に、《龍王オジュタイ》の天下は終幕を迎えてしまいます。
ひとつめの項目の筆頭は、「マルドゥ・ドラゴン」です。
~《龍王オジュタイ》キラーとして名乗りをあげた「マルドゥ・ドラゴン」~
3 《山》 1 《沼》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《遊牧民の前哨地》 1 《悪意の神殿》 2 《戦場の鍛冶場》 3 《凱旋の神殿》 4 《コイロスの洞窟》 1 《静寂の神殿》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(25)- 4 《道の探求者》 2 《魂火の大導師》 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《雷破の執政》 4 《嵐の息吹のドラゴン》 2 《嵐の憤怒、コラガン》 -クリーチャー(20)- |
3 《思考囲い》 4 《龍詞の咆哮》 4 《はじける破滅》 2 《忌呪の発動》 1 《コラガンの命令》 1 《残忍な切断》 -呪文(15)- |
1 《龍王コラガン》 1 《太陽の勇者、エルズペス》 1 《思考囲い》 1 《見えざるものの熟達》 4 《神々の憤怒》 2 《骨読み》 1 《コラガンの命令》 2 《前哨地の包囲》 2 《命運の核心》 -サイドボード(15)- |
《はじける破滅》と《忌呪の発動》。《龍王オジュタイ》への最適解を擁するこのデッキは、明確な「エスパー・ドラゴン」キラーとして名乗りをあげました。
また、環境的に《嵐の息吹のドラゴン》が強くなったことも、このアーキタイプが成功を収めた秘訣です。
環境初期こそ《究極の価格》や《英雄の破滅》といった黒い除去カードは環境に溢れていましたが、《龍王オジュタイ》の増加に伴い、それらのカードの使用率は徐々に下がっていきました。
《ドロモカの命令》や《アブザンの魔除け》をものともせず、長期戦になれば《精霊龍の安息地》での回収も見込める《嵐の息吹のドラゴン》は、赤いデッキを選ぶうえで欠かせないカードになっています。
もうひとつの項目である「大変異」軍団の躍進を象徴するのは、市川 ユウキさんのこのデッキ。
~主役の座を掴みとった《死霧の猛禽》~
2 《森》 2 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 4 《ラノワールの荒原》 4 《疾病の神殿》 3 《静寂の神殿》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(24)- 4 《棲み家の防御者》 4 《サテュロスの道探し》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《死霧の猛禽》 4 《包囲サイ》 2 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(22)- |
4 《思考囲い》 4 《アブザンの魔除け》 2 《英雄の破滅》 2 《命運の核心》 3 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(15)- |
3 《アラシンの僧侶》 1 《強迫》 3 《究極の価格》 2 《ドロモカの命令》 3 《悲哀まみれ》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
市川さんがグランプリ・上海2015を制したのは、メタゲームの移り変わりを象徴する「アブザン・大変異」でした。《棲み家の防御者》という頼れる相方がいることも幸いして、この大会が始まる前には、スタンダードの主役の座は完全に《龍王オジュタイ》から《死霧の猛禽》へと移り変わっていました。
《死霧の猛禽》は、その不死身の肉体をもってして、絶えず対戦相手に対処を迫り続けます。《信者の沈黙》や《危険な櫃》のようなカードを使わない限り、この連鎖を断ち切ることは難しく、《龍王オジュタイ》以上に対処が難しい脅威として現環境を支配しています。
市川さんのリストは非常に完成度が高く、現環境の集大成と言って差し支えのない出来栄えだと思います。しかし、ここでメタゲームが停滞しないのが昨今のスタンダードのすごいところ。
ここからは、直近に行われた2つのグランプリの結果と、そこでの最近が顕著だった「緑信心タッチ赤」デッキをご覧いただきましょう。
~メタゲームの終着点・青いデッキの没落の先に~
グランプリ・プロビデンス2015 トップ8 (6月20日~21日開催)
- 優勝・「緑信心タッチ赤」
- 準優勝・「アブザン・アグロ」
- 3位・「バント・大変異」
- 4位・「4色ウィップ」
- 5位・「赤緑ドラゴン」
- 6位・「緑信心タッチ赤」
- 7位・「ドラゴン・大変異」
- 8位・「アブザン・大変異」
グランプリ・ブエノスアイレス2015 トップ8 (6月27日~28日開催)
- 優勝・「アブザン・大変異」
- 準優勝・「緑信心タッチ赤」
- 3位・「マルドゥ・ドラゴン」
- 4位・「マルドゥ・ドラゴン」
- 5位・「エスパー・ドラゴン」
- 6位・「アブザン・アグロ」
- 7位・「アブザン・アグロ」
- 8位・「アブザン・コントロール」
現環境最後となるグランプリを制したのは、「緑信心タッチ赤」と「アブザン・大変異」でした。
「《死霧の猛禽》の隆盛」と「《龍王オジュタイ》の没落」という2つのニュースを受け、メキメキと頭角を表してきたデッキこそが「緑信心タッチ赤」です。最近のプレミアイベントでは必ずと言っていいほどトップ8に名を連ねているデッキであり、今のスタンダードで最も注目度の高いデッキと言って差支えないでしょう。
「緑信心タッチ赤」は、環境初期の頃から「エスパー・ドラゴン」には弱いものの、その他のデッキには強いアーキタイプと位置づけられており、「エスパー・ドラゴン」が急激に数を減らしたこのタイミングで、一気にメタゲームの最前線に躍り出たというわけです。
11 《森》 1 《山》 4 《樹木茂る山麓》 4 《奔放の神殿》 3 《ニクスの祭殿、ニクソス》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 4 《爪鳴らしの神秘家》 3 《森の女人像》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《起源のハイドラ》 3 《世界を喰らう者、ポルクラノス》 4 《囁きの森の精霊》 3 《龍王アタルカ》 3 《女王スズメバチ》 -クリーチャー(32)- |
2 《歓楽者ゼナゴス》 1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(4)- |
2 《スズメバチの巣》 2 《ナイレアの信奉者》 2 《高木の巨人》 2 《垂直落下》 2 《大地の断裂》 1 《歓楽者ゼナゴス》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 2 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
大量のマナクリーチャーと《ニクスの祭殿、ニクソス》。そしてそこから繰り出される《龍王アタルカ》、《女王スズメバチ》のカードパワーは、他のミッドレンジを凌駕するほどの破壊力を誇ります。
このアーキタイプは「最強のミッドレンジ」デッキとして、今現在最も勢いのあるデッキとなっています。前述の通り、「エスパー・ドラゴン」が大幅に減少したおかげで今の地位を手にしたデッキではありますが、カウンター呪文を掻い潜る能力を持つ《起源のハイドラ》であったり、各種「プレインズウォーカー」を駆使すれば、決して勝てないマッチアップということもありません。
また、『マジック・オリジン』で再録が決定した《ガイアの復讐者》は、このデッキにとって最高のサイドボードになるはずです。
このカードは過去にも青いコントロールデッキ対策として重宝されていたカードで、今回もそれと同様の活躍が期待できそうです。個人的にも大好きなカードなので、この再録は嬉しい限りですね。
《ガイアの復讐者》で苦手な青いデッキも克服できるとあらば、このデッキが新環境でも強力なデッキであることに疑いの余地はありません。しかしながら後述する、ある1枚のカードの登場により、「緑信心タッチ赤」は新環境で苦戦を強いられるのではないかと予想しています。
~まとめ・『マジック・オリジン』後の展望~
「赤単タッチ緑」、「エスパー・ドラゴン」、「アブザン・大変異」とメタゲームは推移し、今では《死霧の猛禽》の入ったデッキに強い「緑信心タッチ赤」が一大勢力を築いています。
ただし、「グランプリ・ブエノスアイレス」では「エスパー・ドラゴン」も含めてバラエティ豊かな顔ぶれが並びましたし、多少の良し悪しこそあれど、多くのデッキにチャンスがある混沌とした環境だと思います。
そんな中でリリースされる『マジック・オリジン』で、スタンダードに最も大きな影響を与えると思うカードが〈衰滅/Languish〉です。
このカードの登場は、間違いなく環境を激変させるでしょう。これまでは「環境に4マナの全体除去がないこと」がクリーチャーデッキにとって追い風となっていましたが、今後はそれが実現してしまうのみならず、対戦相手の《包囲サイ》や《黄金牙、タシグル》だけが残るといった最悪のケースまで想定されるのです。
最後に紹介した「緑信心タッチ赤」や「赤緑ドラゴン」、はたまた「マルドゥ・ドラゴン」や「アブザン・アグロ」などなど、〈衰滅〉1枚で壊滅的な打撃を受けるデッキは数えきれないほど。
これにより「エスパー・ドラゴン」や「青黒コントロール」の復権だったり、「アブザン」カラーのデッキの更なる活躍が予想されますし、『マジック・オリジン』後はこのカードを使用した黒いデッキを軸に、環境が形成されるのではないかと思います。
これからもスタンダードに変化をもたらすカードがたくさん登場すると思いますので、近々全カードが発表されるであろうカードイメージギャラリーもお見逃しなく!
それでは、また次回の連載でお会いしましょう。
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