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Play Design -プレイ・デザイン-

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ブロックの怪物とその避け方

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2018年1月5日

原文はこちら

 「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今週はプレイ・デザインが「ブロックの怪物」――すべての構成要素が1つのブロックで賄われているデッキを説明するために使う言い回しです――を回避する手順についてお話しします。

 1つのデッキの大部分が単一のブロックで構成されている場合、特にそのデッキがそれより後に発売されたカードよりも強力だと、そのデッキは不健全な環境を作ることがあります。プレイ・デザインにおける健全なスタンダードのための目標の1つは、多様性のあるメタゲームを作り出すことです。1つのブロックが強すぎると、ブロックの怪物であるデッキ1つがそのローテーションまでメタゲームを支配し続けることになります。そのようなデッキの存在はトーナメント環境の停滞を引き起こします。

 これから取り上げる2つのブロックの怪物の例は、それぞれ大きく異なる時期のものですが、どちらも同じようなパターンをたどり同じような問題を引き起こしました。

親和

 『ミラディン』が2003年に発売されたとき、そのシーズンの最初のスタンダードのトーナメントは州別選手権でした(州別選手権よ安らかに)。州別選手権は常に新しいカードをプレイする最初のチャンスなので私は楽しみにしていて、やりこみ勢にとってエキサイティングな時間でした。

 私のプレイグループが各アーティファクト・土地を4積みして「親和」と書いてあるカードを全部入れた(《金属ガエル》や《マイアの処罰者》はもちろんのこと、《チス=ゴリアの鱗》のようなカードまで試しました)親和デッキに取り組んでいたことを覚えています。そのデッキのオールスターは《ブルードスター》でした。

 かいつまんで話すと、このデッキは州別選手権でプレイヤーがそれに興味を持ち最高のバージョンを見つけるために反復工程を始めるのに十分な働きを見せました。『ミラディン』シーズンの終わりには、このデッキはトップメタになっていました。

 その後、『ダークスティール』がやってきました。親和は《頭蓋骨絞め》、《電結の荒廃者》、《霊気の薬瓶》のような新しい道具を手に入れました。すでにトップメタであるデッキが新セット発売時に大きく強化された場合、問題が起こる可能性は高くなります。同じブロックに多くのアーティファクト対策があったにも関わらず、親和はこのフォーマットを支配しました。メタゲームには1種類のデッキしかなく、スタンダードは明らかに苦境にありました。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは行動を起こし、そのデッキから9枚のカードを禁止しました。

エネルギー

 エネルギーは孤立的メカニズム(それだけで機能し、そのメカニズム以外のカードの手助けを必要とせず、単一のセットもしくはブロックにだけ存在するメカニズム)です。エネルギーは既存のデッキを強化しませんが、エネルギーのカードだけを使った新しいデッキを作るように促します。ほとんどの場合は孤立的メカニズムは健全ですが、それは他のブロックの支援を必要とするからです。例えばマナ基盤や除去呪文は基本的にメカニズムと結びつかないので、デッキを完成させるためには他のセットやブロックに頼らないといけません。

 しかしながら、エネルギーの場合は話が違ったのです。《霊気拠点》と《霊気との調和》はエネルギーを使うカードを強化しながら強固なマナ基盤を供給しました。《慮外な押収》と《蓄霊稲妻》はエネルギー・デッキ向けの素晴らしい除去呪文で、《稲妻の一撃》や《削剥》のようなエネルギーを生み出さない除去呪文をプレイする理由はありません。

 『カラデシュ』では、エネルギーは強力なデッキでした。『霊気紛争』が発売されたとき、このデッキは親和が昔に受けたのと同じ方法でいくつかの大きな強化を受けました。プレイヤーは時間をかけて反復工程を行い現在の形にたどり着きました。現在、このデッキはこのメタゲーム上で最強のデッキの1つであり、プレミア・イベントを支配しています。


《ならず者の精製屋/Rogue Refiner(AER)》 アート:Victor Adame Minguez

どのようにプレイ・デザインはブロックの怪物を避けるか

 プレイ・デザイン・チームは『カラデシュ』のデベロップ時には存在しませんでした。しかしながら、わたしたちは『カラデシュ』ブロックの間違いを理解し、上記の状況を積極的に避けようとしています。

 わたしたちの目的の1つはメタゲームが時間とともに変化する環境を作り出すことです。最強のカードが全て1つだけのブロックからのものなら、それらはすべて同時にローテーションすることになり、そのデッキは弱すぎてそもそも出てこないか、強すぎてブロックの怪物を作り出すかのどちらかです。ブロックの怪物はその環境の回転を鈍くし、プレイヤーの革新と練り込みの可能性は低くなります。

 強さが複数のセット間に拡散している場合、メタゲームの回転を作り出す可能性が高まります。以下はそれを行う方法の一部です。

種まき

 種まきは未来のメカニズムを1つ前のブロックで強化することを意味する用語です。その一例は『イクサラン』のために種をまいたカードでした。部族に焦点を当てることは孤立的なメカニズムです。部族デッキが部族以外のカードをプレイすることはほとんどないので、わたしたちはプレイヤーが異なるセットからの選択肢を持てるように『カラデシュ』ブロックに部族の種をまきたいと考えました。《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》、《才気ある霊基体》、《不死の援護者、ヤヘンニ》らはすべて『イクサラン』を意識して特定のクリーチャー・タイプを与えられました。

 前のセットで常に種をまくことができるわけではありません。マーフォークも恐竜もカラデシュやアモンケットの次元には現れなかったので、それらを収録することは不可能でした。恐竜はかなり珍しい部族であり、カラデシュやアモンケットではかなりおかしく見えます。マーフォークはそれらの世界に存在できたかもしれませんが、追加されたのが『イクサラン』デザインの後期でした。その部族が追加された時点までにその前の年の世界構築は完了していました。マーフォークのいる世界に作り直すには遅すぎたのです。

 わたしたちが前の年にカードの種まきをした場合、スタンダードのローテーションが起こったときに、自然とデッキがカードを失うということになります。そこには新しいセットのカードを入れる余地が生まれます。例えば、『カラデシュ』がローテーションすると、吸血鬼デッキは《才気ある霊基体》と《不死の援護者、ヤヘンニ》を失います。これによりわたしたちには2018年の秋セット以降に吸血鬼を追加する余地が生まれます。

 プレイ・デザイン・チームはデッキがローテーションするとき、それらが失うカード、ローテーション後にそれらが持つことになる穴を積極的に注視しています。その後わたしたちは次の年のセットでその穴を埋めるためのカードをデザインし、それらのカードは前年のデッキを進化させるだけでなく新しいデッキも出現させることになります。

力の配分

 時には種をまくことが不可能な場合もあります(上記のマーフォークと恐竜の例を見てください)。特定のデッキの種がまけない場合、わたしたちはそのデッキの強さをブロック全体や1年全体に分配します。

 『イクサラン』では、わたしたちはすべての部族に競技レベルのスタンダ―ドのデッキを作るだけの十分な強さを与えませんでした。そうしていた場合、『ミラディン』や『カラデシュ』ブロックで見たのと同じパターンを見る可能性が極めて高くなっていたでしょう。『イクサラン』の部族が想定以上に強かった場合、その後『イクサランの相克』が出た後にトップメタのブロックの怪物ができていたかもしれません。

メカニズムセット1での強さの割合セット2での強さの割合
エネルギー100%50%
親和100%50%
吸血鬼75%25%
マーフォーク50%50%

 この表は1つのブロックに過剰な強さを与えた場合に起こることの例です。エネルギーと親和では、ブロックの第1セットで完成したデッキができていました。第2セットでどちらのデッキもさらに強化されました。第1セットの時点でこれらのデッキはすでに強力だったので、これらのデッキは第2セットでさらに強化されたときに強くなりすぎてしまいました。

 『イクサラン』の部族デッキでは、第1セットにはトップメタのデッキを作るのに十分な数の強力なカードがありませんでした。『イクサラン』で吸血鬼が75%でマーフォークが50%だとしたら、『イクサランの相克』で強力なカードを追加するかなりの余地があります。それらの部族デッキはすべて同時にローテーションしますが、その強さは第1セットですべて現れるのではなく、ブロック全体に分配されています。

 現実世界では、それらの部族は第1セットだけでは十分な強さのカードがありませんでしたが、『イクサランの相克』でいくらか強化されました。吸血鬼は競技の構築フォーマットで戦えるところに最も近く、プロツアー『イクサラン』では白単デッキとしてその姿を現しました。吸血鬼とマーフォークのロードはその部族を大きく強化し、そして私は現実世界がそれらのアーキタイプにどのようなアプローチをしていくのかを楽しみにしています。

 今週は以上です! 皆さんが『イクサランの相克』を楽しんでくれることを願っています。もし何枚かカードを忘れていたり、もしくは単に1か所でセット全体を見たいならカードイメージギャラリーをご覧ください。

 ではまた次回。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)

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