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Play Design -プレイ・デザイン-

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スタンダード・フォーマットのバランスを取る

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年9月22日

原文はこちら

 こんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今週はプレイ・デザイン・チームがどのようにスタンダード・フォーマットを形作り、発展させているかについてお話しします。わたしたちはスタンダード・フォーマットをデザインする中で3つの主な目標を持っています。わたしたちがスタンダードに望むのは......

  1. バランス
  2. 多様性
  3. 楽しさ

 取り上げることがたくさんあるので、この記事ではバランスに焦点を当てることにして、他の2つの目標については将来の記事で説明しようと思います。

バランス

 フォーマットのバランスを取る方法はたくさんあり、今回わたしがお話しするのはその中の1つです。

 わたしたちがスタンダードをデベロップするときに強く考慮することの1つはクリーチャーのサイズです。わたしたちはスタンダードでプレイされそうな全てのクリーチャーのパワーとタフネスを注意深く考慮します。加えて、使用可能な除去呪文の影響をどのクリーチャーが受けるかも選択します。

 すべての脅威には対策があるべきですが、すべての対策がすべての脅威に対処できるべきではありません。スタンダードの楽しいところの1つは、あなたのプレイスタイルだけでなく、メタゲームに対応するためにデッキやクリーチャーや除去を変えることができるところです。

除去に対応する

 ここで《衰滅》を例に挙げてみましょう。《衰滅》はタフネス4以下なら何でも一掃できる4マナの全体除去です。これは明らかにスタンダードでのプレイのためにデザインされていて、4ターン目に1ターン目から3ターン目までに唱えられたものを何でも除去できるように用意されていました。

 《衰滅》がスタンダードに存在したので、プレイヤーはどのようなクリーチャーをデッキに入れるかを配慮しなければなりませんでした。盤面を全部《衰滅》で失いたくないプレイヤーのために、使用可能な選択肢が十分あることが重要でした。

 《森の代言者》はそのようなカードの1つです。これは2マナクリーチャーとしてとても優秀なサイズを持っています。{1}{G}の2/3はそれだけではスタンダードでプレイするのに十分な強さではありませんが、遅いゲームにもたらす利点は莫大です。3点目のタフネスは、6枚目の土地が置かれたら《森の代言者》が《衰滅》から生き残れるようにするために追加されました。《衰滅》から生き残るためにタフネスを5に設定されたクリーチャーは、他にも《現実を砕くもの》、《精神壊しの悪魔》、《黄金牙、タシグル》などがいます。

クリーチャーに対応する

 わたしたちがクリーチャーを除去に上手く合わせるように構成するのと同じく、わたしたちは予想以上に対処が難しいことが分かったクリーチャーを倒すために除去を形作ります。

 たとえば、わたしたちは《大天使アヴァシン》をスタンダードで強力なものにするために推して、その結果これに瞬速がつき、そのときにあった除去では対処が困難でした。《衰滅》や他のソーサリー速度の除去は、除去呪文がアヴァシンに影響を及ぼすより前に彼女がヒットすることを意味していました。ターン終了時に彼女を唱え、アンタップして、彼女を守るためにマナが使えるので、わたしたちはアヴァシンがゲームを支配しないようにする選択肢を追加したいと考えました。

 わたしたちはアヴァシンに対する追加の安全装置としてカードを1枚追加することにしました。そのカードの費用対効果はメインデッキで使えるのに十分なものである必要がありました。その加えられたカードが《闇の掌握》でした。

 フューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)でテストしていたセットよりも前のセットにカードを追加したことで、あなたは混乱するかもしれません。フューチャー・フューチャー・リーグは常時少なくとも2つのセット、時にはタイミングによって3つのセットをテストするようになっています。わたしたちは1つのセットをその前後のセットとテストして、カードがそれぞれの環境でどのような相互作用をもたらすか分かるようにしています。なので『イニストラードを覆う影』をテストしているとき、わたしたちはまだ『ゲートウォッチの誓い』のカードを変更できました。

 『アモンケット』スタンダードをテストしているとき、わたしたちはゾンビ・デッキを適正なものにするのに苦労していました。《マグマのしぶき》は《屑鉄場のたかり屋》や他の小型のアグレッシブなクリーチャーに対処できるので多く使われるカードで、ゾンビに対してとても効果的な除去呪文でした。わたしたちはこのデッキの中の重要なゾンビの1体が《マグマのしぶき》から生き残れるようにしたいと考えたので、《呪われた者の王》を2/2から2/3に変更しました。

 時にはクリーチャーがスタンダードのゲームを支配できるところまで行ってしまうことがあり、わたしたちはそれらが使用可能な除去に上手く合わせられるようにする必要があります。

 《栄光をもたらすもの》はその一例です。これはすぐに攻撃し、またクリーチャーを除去します。《栄光をもたらすもの》がタフネス4であることは、これが攻撃する前に《闇の掌握》で除去するチャンスができるので、大事なことでした。わたしたちは同じように《熱烈の神ハゾレト》が使われるようになる強力なものになると予想したので、《闇の掌握》で除去できるようにタフネス4に設定しました。

 先程の《衰滅》の例に話を戻すと、わたしたちが《衰滅》を全てのクリーチャーを-4/-4する4マナの全体除去にすると決めたときに、わたしたちが対応したクリーチャーが何かわかりますか?

 答えはこちら。

安全装置:どのようにして強力なデッキに対応するか

 マジック開発部は数年先のセットを作っています。プレイ・デザイン・チームは、具体的に言うと各セットが発売される1年から18か月前の作業をしています。現実世界のスタンダードの問題に対応することを考えると、それは大変だといえます。プレイ・デザイン・チームは競技とプロ・プレイの豊富な実績を持っているので、わたしたちはどの戦略が強くなるか予想するために自らの経験を活用します。

 わたしたちが現実世界のスタンダードで強くなると予想していたデッキの1つが青赤コントロールです。このデッキには環境最強の全体除去の1つである《破滅の刻》と、これまでで最強のコントロール向けフィニッシャーの1つである《奔流の機械巨人》が入っていました。

 わたしたちはこのデッキが予想よりも少し強かった場合の選択肢があるようにしたいと考え、そしてその役割を埋めるために《殺戮の暴君》をデザインしました。《殺戮の暴君》は速いアグロが多い環境ではプレイしたいカードではありませんが、コントロールがメタゲームのトップにあるデッキの1つである場合、このカードを使うことができます。赤青デッキが《殺戮の暴君》を倒すのはとても困難です。これは打ち消したり対象に取ったりできず、《奔流の機械巨人》を乗り越えて攻撃してきます。繰り返しますが、このカードはいつでもプレイしたいものではありませんが、メタゲームがこれを求めているときはとても強力です。


《殺戮の暴君/Carnage Tyrant(XLN)》 アート:Yeong-Hao Han

まとめ

 スタンダードのバランスを取るための方法の1つは、あらゆる脅威を何らかの方法で対策できるようにすることです。ある脅威は他のものよりも簡単に対策できるべきです。生み出すのに多くの手間がかかる脅威(たとえば高いマナ・コストやデッキ構築上の犠牲が強いられるなど)は対策するのが難しくあるべきです。

 わたしたちはプレイヤーに、メタゲームに応じて対応できる幅広い対策と、プレイされている除去に適応できる幅広い脅威を提供しようとしています。この理念はまだ進行中ですが、『イクサラン』以降ようやくその結果が見え始めてきました。わたしは(原文掲載当時)明日始まる『イクサラン』プレリリースを楽しみにしています。このセットがどのようにプレイされるか見るのが待ちきれません!

 それではまた次回。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)


今週のプレイ・デザイン・チーム

アレン・ウー/Allen Wu著

 コメンテーターとして、イアン・デューク/Ian Dukeは情熱的なバリトンと明瞭な分析で知られています。デザイナーとしては、イアンはその完璧な直感で知られてます。市民としては、イアンはイケメンとして知られてます。でも、個人的にイアンと付き合いがないなら、彼の機転がどれぐらい鋭く磨かれているかは分からないでしょう。

 今日のプレイ・デザイン・チームの話は、FFLでの経験をもとにどのカードを変更するかを議論する定例会議のときのことです。その日の主な議題は、ポール・チェオン/Paul Cheonが作った赤いアグロ・デッキの除去耐性が少し高すぎることが判明したことでした。「ラムナプ・レッド」がスタンダードに現れたように、我々は赤いデッキが強いときは気にせず、それらにゲーム後半の手段を与えることに反対しませんでしたが、ブロックすることが有効な戦略になることを残そうとしました。

 たとえば《アン一門の壊し屋》と《地揺すりのケンラ》はブロッカーを出し抜く強力な手段ですが、《地下墓地の選別者》や《つむじ風の巨匠》のような複数のブロッカーを生成するカードはそれらのカードを押さえ込み、「ラムナプ・レッド」の地上の攻勢を効果的に押さえ込むことができます。

 会議の中で、わたしはポールの赤いデッキを半歩上回る緑のミッドレンジを作ろうとしたけれども、何度も負けたことを訴えました。わたしの指摘は正しかったのですが、骨組みが少しずれてました。FFLでの目的はあるデッキが統計的に強すぎるかどうかを決定することではありません。我々はただ、推している各戦略が必要とする手段を持つようにし、また一線を越えたカードがないようにするだけです。つまるところ誰が勝った負けたは関係ないのです。

 イアンはすぐに飛んできて「気にするなよ、アレン」と励ましてくれました。「この勝ちはみんなのものだよ」

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