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Latest Developments -デベロップ最先端-

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素晴らしいバニラの材料

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年11月11日

原文はこちら

 こんにちは、そして「Latest Developments -デベロップ最先端-」にようこそ。今回はマジックのあまり(表面上は)エキサイティングでなく、しかしとても重要な部分のひとつ――バニラ・クリーチャーについてお話しします。

なぜバニラは存在するのか

 先週お話しした「完全上位互換」と同じように、バニラは最初から存在しました。『アルファ版』には61枚のレアより下のクリーチャーが存在し、そのうち14枚はバニラでした(防衛を含めるならもう3枚増えます)。もちろん当時は6マナ6/4の斬新さはかなり高く、したがってそれは求められていました。

 それでもこれの重要な部分は、戦場にいて物事を混乱させないクリーチャーがいたということです。常在型能力を持ったクリーチャーが多くいた場合、戦場はほとんどのプレイヤーにとって、たとえそれが経験豊富なプレイヤーであっても複雑すぎるものになり得ます。

 我々はマジックをプレイするときやデッキを構築するときに戦略的な決断を求めています。我々は基本的に決断の数が少なく、しかしそれぞれの決断がより意味深いものであることを好みます。単に攻撃やブロック以外を行うクリーチャーが大量にいることは大きな停滞につながる傾向にあり、小さな決定がたくさんあることはとんでもなく散らかっていてゲームをとてもつまらなくする盤面の停滞を作り出す傾向にあります。全ての条件が同じなら、我々は毎ターン攻撃やブロックをする明解な決定のあるゲームを好みます。

 さて、『アルファ版』には現在とても助けになっている、極めて重要な技術的要素がありませんでした――実質バニラです。戦場に出たときの能力を持ったクリーチャーは、『ビジョンズ』まで実際にマジックの大きな部分を占めていませんでした。それ以前は、クリーチャーはバニラか、タップ能力を持っているか、(頻繁に)少なくとも1ターンに1回は変化する奇妙でもっさりした方法でそれらの大きさを決めていて、頻繁に+1/+1ではないカウンターで記録されていました。

 戦場に出たときの能力は物事をとても良くしました。《大クラゲ》のようなシンプルなカードがマジックの興味深い部分になりえて、戦場に残ったそれで攻撃やブロックができるというシンプルな方法での対戦相手とのやり取りを可能にしました。私は我々がこの技術に遭遇しなかった場合にマジックが現在のものに近いところまでたどり着くことが想像できません。

 しかし我々がここで話すのは実質バニラについてではなく、真のバニラについてです。バニラは攻撃やブロックができ、新しいプレイヤーにマジックを教える手段として存在しています。それだけでなく、これらは各色で想定されるクリーチャーのサイズの基準を設定し、カラー・パイの原理を教えることを助ける素晴らしい役割を果たしています。

 バニラの歴史を見ていくと、各色の優れている点が見えてきます。これははるか『アルファ版』まで遡ります。白はウィニーの色なので最高の1マナバニラである《サバンナ・ライオン》があります。緑はサイズの面で「最強」のバニラである《大喰らいのワーム》を擁します。白、黒、赤には3マナ2/2の《真珠色の一角獣》、《スケイズ・ゾンビ》、《灰色オーガ》がそれぞれいますが、緑には《灰色熊》がいます。これらの各色が2マナ2/2を獲得した一方で、緑はより強力になりました。

 バニラは各色のクリーチャーの強さの基準値を定める素晴らしい役割を果たしています。青と赤のバニラは《丘巨人》や《盲目の幻》や《ゴブリンの長槍使い》のようなものになる傾向にあります(しかし我々は最近リミテッド支援のために赤に灰色熊を与え始めました)。白、黒、緑は全て赤や青よりもクリーチャーの強い色なので、それらのバニラはより強力です――そしてそれらの色には《丘巨人》に多くの利点がついたものや《轟くベイロス》さえもあります。もしあなたが新しいプレイヤーでマジックのパックを6つ開けたなら、そのバニラだけで各色のクリーチャーの強さがかなりよく分かるでしょう。それを真実にすることは、経験豊富なプレイヤーとして、新しいセットを経験するときにあなたの色の働きに関する知識が真実になるということです。

 それだけでなく、バニラは新しいプレイヤーがデッキを構築するときにも素晴らしいものです。バニラの完全上位互換のカードを手に入れたときにどれを入れ替えるべきかを理解するのは簡単です。この学習経験は、新しいプレイヤーが基本を学んだなら、彼らに自分のデッキをアップグレードする方法を教えるためにとても重要です。

リミテッドでのバニラ

 あなたがすでに知っているいくつかの事柄をセットが興味深いものに変更した場合、それは楽しくなるかもしれませんが、ある事柄が毎年ずっとそのままなら、それは基本的に一番良いものです。バニラはその大部分です。

 バニラの強さに関する決まりは色の個性の作成の大きな部分を演じています。我々が各色の最強のコモンを見てみると、緑は本当に強い――つまりドラフトのパックの中で最初の数手目で取るのに値する―――バニラを手に入れている唯一の色です。《ネシアン未開地の荒廃者》、《轟くベイロス》《ホロウヘンジの獣》、《貪爪》などです。典型的な緑のデッキはその他の色のようにトリッキーではないかもしれませんが、ただ大きくあるという良い役目を果たしています。

 一方青はバニラがかなり弱く、機能するためには多くの文章をカードに必要とします。これは全ての背景を踏まえたときに青いカードを強くすることができないということではありません(飛行が大いに役立ちます)が、素の数字で競えるものではないということです。

 期待値を設定するだけでなく、バニラはリミテッドでパックと盤面の総合的な複雑さをかなり低くしながら、プレイヤーに十分な面白さを与えるのに役立ちます。何が起こるにせよ、各リミテッドのデッキの何枚かのカードは穴埋めになります。昔はそれらの穴埋めカードはよく長いテキストが書いてあったのですが、我々は近年そこそこ良いバニラを人々の穴埋めを助けるためにより多くセットに入れるようにしました。

 《暴動の小悪魔》、《高山の灰色熊》、《国境地帯のミノタウルス》はたくさん仕事をするようには見えないかもしれませんが、これらはリミテッドのデッキを大量のシナジーを必要としなくてもゲームに勝てるようにします。赤緑のランプデッキや、青赤の呪文デッキ、もしくは赤白の横に並べるデッキをプレイしているとき、《国境地帯のミノタウルス》はマナ・カーブを埋められる標準以上の数字を持ったクリーチャーになることができます。プレイヤーにおまけつき《丘巨人》をドラフトしてデッキで運用する方法を考える方法を強制するよりも、このような機会を与えるほうが良いでしょう。

 最後の重要なことは、バニラは何かテーマを持っているセットのシナジーを埋めるために、我々が比較的弱いカードを作ることを可能にするという良い役割を果たしているということです。例えば、『イニストラードを覆う影』の《吸血貴族》や《海墓のスカーブ》は強いカードではありませんが、卓を回ってうまく行けばその部族をドラフトしている人々が臨界量を突破することを可能にしました。

 人々が高い頻度で基本的に弱いカードを好まないのは分かっていますが、リミテッド用カードを作ることの大部分は、その弱いカードに生態系の中での居場所があるようにすることです。これは卓を回るけれどもそれを必要としている人のところまでたどり着くカードのとても有用な特性です――たとえそれが必ずしも求められていないものだとしてもです。

 個人的には、私が『イニストラードを覆う影』で組んだどの吸血鬼デッキからも《吸血貴族》を1枚カットしたほうがはるかに満足できたと思いますが、それはあなたが常に選ぶようなことではありません。時にはあなたのデッキが素晴らしく機能して全てがあなたに回ってくることもありますが、時には本当にカードをかき集めて23枚か下手をすれば22枚しか使えるカードがないこともあります。そうなったときに、まあまあ攻撃やブロックができるまあまあな数字のバニラを得ることは、そのドラフトで1-2するか2-1するかの違いになりえます。

構築フォーマットでのバニラ

 構築フォーマットでバニラを見かけることはそんなにないかもしれませんが、時々飛び出してきます。これらが最も現れそうなところは部族デッキか、他の背景のカード――例えばアーティファクト――が影響力を持ったデッキです。

 リミテッドとは違い、構築フォーマットで見かけるバニラは通常よりも少し優れている傾向にあります。《メムナイト》、《今田家の猟犬、勇丸》、《先兵の精鋭》、《長毛のソクター》、《皮背のベイロス》を思い浮かべてください。パトリック・サリバン/Patrick Sullivanは《歩く死骸》をゾンビ・部族デッキでプレイしたことがありますが、それは統計外です。


《長毛のソクター/Woolly Thoctar(ALA)》 アート:Wayne Reynolds

 我々は理由なく多くのバニラを構築フォーマットに入れる傾向にはありません。例えば《長毛のソクター》は、強力なクリーチャーをいつもより格安で提供することによって3色デッキを推すために存在しました。我々はこれを小さいクリーチャーにしてテキストを加えることもできましたが、強力なバニラには素敵でシンプルな何かがあります。《セドラクシスの死霊》や《バントの魔除け》は理解するためにある程度の量の背景が必要でした。競争相手よりも大きいことはかなり魅力的になりえます。

 さて、我々は構築フォーマット向けバニラを大量に作る傾向にはありません。事実我々は《カロニアの大牙獣》よりも優れた数字の緑単色のクリーチャーを何らかの欠点なしでは印刷していませんが、最も優れた数字がバニラにのみあるという何らかのルールがあるわけではありません。《森の代言者》が《カロニアの大牙獣》よりも弱いと主張するのは困難ですが、《カロニアの大牙獣》のほうを運用するときはあるでしょう。そう、緑信心が走り回っているときや、6枚目の土地が期待できないときです。金色のカードはもう少し大きなサイズを持っているので、《羊毛鬣のライオン》のような緑白の3/3におまけが付いたものが見られる可能性があります。

 マジックを長く機能させることにおいての大きな部分は、複雑さを抑制し、可能な限り多くのデザイン空間を開け続けることです。作ることができるカードの枚数は有限であり、セットごとに6~7枚のバニラを含めることは、カードのテキストの種類の総数を増やすことなく素晴らしいゲーム・プレイを作ることを可能にします。多いようには見えないかもしれませんが、年月を重ねるとかなりの量になるのです。

 今週はここまでです。来週はマジックのセットのクリーチャーのマナ・カーブについてお話しします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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