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開発部の黒歴史・パート3

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年8月22日

原文はこちら

 全ての始まりの時より(または少なくとも長い間)、デザイナーとデベロッパーは議論のために、そしてそのセットのクオリティが改善されることを願ってマルチバースにコメントを残してきました。マジックのカードのほとんどは楽しく、バランスが取れていて、上手く機能します。カードを作るとき我々は適正なパワー・レベルになるよう試みますが、いくつかの方向の間違いが存在するものです。

 例えば......

《憎悪》

瞬殺のテストだ。ドブンの例を挙げると、
1ターン目、《沼》、《沼ネズミ》。
2ターン目、《暗黒の儀式》、《暗黒の儀式》か《魔力の櫃》、これ、相手は死ぬ(5枚コンボ)。
もしくは......
1ターン目、《沼》、《暗黒の儀式》、《暗黒の儀式》、《魔力の櫃》、《冥界の影》、これ、相手は死ぬ(6枚コンボ)。
これのプレイテスト・グループは何回かこの動きをしたが、このデッキはあまり強くなかった。

 というわけで、後から考えればこのデッキの動きはかなり強力だったという意見で一致すると思います。しかし、《沼ネズミ》は使いませんでした。そうです、我々は時々間違いを犯します。幸運にも近年では我々がリスクを冒すのは基本的にもっと楽しいカードなので、もし間違いを犯していたとしても、少なくともゲームが《三なる宝球》、《記憶の壺》、《頭蓋骨絞め》のようなことにはなりません。

 このコラムの前任者である アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe(リンク先は英語)とトム・ラピル/Tom LaPille(リンク先は英語)の両者のように、他のデザイナーやデベロッパーがカードを作っている過程で何を考えているかを解明するために、近年のセットで後から考えて我々の求めた以上に強いカードを見てみることにしました。

 発言者の名はプライバシー保護のために伏せられており、引用文は簡潔さとユーモアのために少し短くなっています。

 今回は開発部の黒歴史・パート3をお送りします。

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《梅澤の十手》

D1 3/25:こいつは相当出鱈目だな。物語に関係あるカードか?
D2 3/31:梅澤は主人公だよ。
D3 4/2:光と煙と巨大化の剣ですね分かります。
D4 4/20:この儀式の雰囲気は黒としてはちょっと面倒だな。どういうフレーバー上の理由があるんだ?
D5 4/28:考えれば考えるほどこれが弱く見えてきた。4マナで最初の攻撃では何もないのは《バンシーの刃》とよく似てて、あれは時間をかければイカれたことになるけどこれはそうじゃない。多分これを強くする必要はないけど、一応言っておこう。
D6 4/30:このカードがヘボいのには同意するし、数字を変更してもっと良くしたほうがいいだろう。儀式をして{R}{R}とか{B}{R}を加えたらどうなる? 蓄積カウンターは他のカウンターよりも『ミラディン』ともっと良い相互作用ができるだろう。
D2:蓄積カウンターにするのは賛成する。さらに一発ごとに2個乗るように。
D1 5/11:これでカードパワー的に全然使えないようには見えなくなった。まだ使えなさそうに見えるが完全に、というわけではない。これを《山賊の頭、伍堂》に使う理由が欲しい。{B}{B}を加えるのはおかしいと思う......
D7 6/30:HSのリクエストで2番目をマナを出す能力から-1/-1に変更。あと装備の注意書きを入れる余地がなくなった。

 6月30日までに、このカードはほとんどデベロップの手を離れてテンプレート処理に入っていました。-1/-1修正を与える能力と、人々がこのカードを倒せないことはちょっと問題であることが分かりました。そしてこの一件以来、我々はテンプレート処理の間に大きな変更をしなくなりました。

《暗黒の深部》

D1 10/20:編集より:文を入れるスペースがないのでマナ能力を完全に取り払いました。
D2 11/11:何でマナ出ないの? これが使い物にならない場合、20/20の無駄遣いに感じられる。飾りとしてマナ能力は好きだ。
D1 11/21:{T}で{1}が出るとは書けるがそれに氷カウンターの能力が加わると収まりきらない。チームはこっちのバージョンの方が好みで、プレイヤーがこれをどう使うか考えるほうが構築フォーマットで実際にこれを相手するよりもはるかに楽しむと予想している。

 《吸血鬼の呪詛術士》や《演劇の舞台》が出る前のこのカードがどれぐらい妥当なカードであったかは驚くべきことです。多分これをタップするとマナが出ることは十分に妥当ではないかもしれませんが、少なくともそれについて議論するには十分でした。

《戦慄の復活》

D1 12/19:{3}{B}{B}から{2}{B}{B}に引き下げ。
D2 1/22: 軽くするのは好きじゃないし、これが我々の作ることができるクリーチャーに与える影響を考えるとリアニメイトを強くしたい理由が分からない。
D3 1/23:これが何かリアニメイトを変えるぐらい十分なパワーアップだとは思わないな。

 違いました。これが何かを変えるところが想像できなかったのです。公正を期すならば、このカードの強さは普通に唱えることではなくフラッシュバックにあったのです。これは大した問題ではありませんでした。たった1つのささいなことを除けば......

《ナルコメーバ》

D1 6/26:これと《ゴルガリの墓トロール》とフラッシュバックの《ゾンビ化》。
D2 7/3:クールなカードだね。
D3 7/9:誰かやってみない?
D4 7/12:《海の鷲》もどきのためにわざわざ面倒なことをする意味があるとは思えないな。

 たとえ何かが変わらなかったとしても、D1は正解でした。時の経過は我々に《海の鷲》もどきのためにちょっとした面倒なことを進んで行う人々がいることを教えてくれました。奈落でクリーチャーベスト10について議論したとき、《ナルコメーバ》はそのリストに入るのか、そもそもクリーチャーとして数えるべきなのか意見が割れました。

《出産の殻》

D1 2/2/2010:この新しいカードは《冬眠の終わり》に似ているが、クリーチャーを生け贄にしなきゃいけない。
D2 5/5:終了ステップに誘発するエンチャントじゃなく{B/P}アーティファクトにした。
D1 5/5/2010:2マナ生物をサクって《詐欺師の総督》を持ってきてこれをアンタップ、《詐欺師の総督》をサクって{2}{G}{G}の総督を持ってくる。
D2 5/5:起動コストにマナをつけたら多くの夢のシナリオがどこかへ行ってしまう。
D1 5/13/2010:起動コストは{G/P}になるかも。
D2 5/21:{2}{G/P}{G/P}、{T}に。
D3 6/8:おー、よさそうだね。:)
D2 6/16:弱体化させる必要があるなら、{3}{G/P}で{1}{G/P}がいいと思うよ。
6/21:{4}{G/P}で{G/P}{T}に変更。

 このカードの最終的なコストが弱体化されたものだと分かって嬉しく思います。私はこれがそのコストでモダンで禁止されていないところは想像もつきません。

《瞬唱の魔道士》

D1 11/29:新バージョン。
D2 11/30:《埋め合わせ》に合わせるためにテンプレートを処理。《グレイブディガー》が対象を選べるのと同じ理由で選べるようにしたが、それについて議論の余地はある。
D3 1/19:このカードは私とティアゴ・チャン/Tiago Chan(訳注:2007年のインビテーショナルの優勝者で、このカードの原案を考えたプレイヤー)の話し合いでは瞬速を持っていることになっていた。私は最初から瞬速がついているものだと思っていたよ。

 うむむ......気まずい。基本的に印刷する予定のバージョンのカードをテストするのがベストです。幸運にも、我々には最新バージョンを印刷したステッカーを作るツールがあるので、将来このようなことは防がれます。

D2 1/27:ファイルの中ではこれに瞬速はついてなかったが、D5が今付け加えた。
D4 2/1:突然、一瞬にしてこのカードはもう最悪じゃなくなった。

 「最悪じゃなくなった」は控えめな表現かもしれません。

《タルモゴイフ》

D1 6/8:[カード名]のパワーとタフネスは全ての墓地にあるカードのカード・タイプに等しい(カード・タイプはアーティファクトかクリーチャーかエンチャントかインスタントか土地かプレインズウォーカーかソーサリーである)。
D2 5/2:「プレインズウォーカー」を他のカードで見るのはすごいな!
D1 5/5:これはクールだ、『Unhinged』から逃げてきた雰囲気がするね。全体的には好きじゃないが。
D3 5/16:D1の『Unhinged』のコメントには同意できないな。この能力は全然『Unhinged』っぽく見えない。「エキスパンション・シンボル」なら同意するけど、以前にもカード・タイプを参照したことはある(例えば『ディセンション』の《肥沃な想像力》)。
D4 8/15:{1}{G}に変更。
D1 8/28:部族を注釈文に追加。

 ああ、この「{1}{G}に変更」をマジックの世界を変えた数多くの発言の中に加えてください。

《血編み髪のエルフ》

D1 8/21:これを構築で使われるようにできないか?
D2 9/11:2/2から3/3に!
D1 9/17:このカードは全体的に病んでる。このレベルのカードはこのセットの構築向けカードトップ5に入ると思う。これのパワーが3なのは好きだが、タフネスが3なのは好きじゃない。これは常に呪文を引いて大抵2マナを作り、これは完全に病んでる。
D2 9/18:3/3から3/2へ。テストは続行。
D1 9/24:テストプレイヤーの会議で2/2に、いいかな?

 あなたの考えているとおり、最終決定は《血編み髪のエルフ》を2/2にする方向には向かいませんでしたが、多分そうなっていてもこれは使われていたでしょう――次の年に、より強力な《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が作られたマナ域です。

 では、その「より強力なもの」について......

《精神を刻む者、ジェイス》

D1 4/22:新しいジェイスだ!
D2 4/27:バウンスをつけるのは多分やり過ぎだろう。しかし奥義は好きだ。
D3 4/30:私が何か見落としてるのならば別だが、この[-1]能力はストーリーを感じないな。
D4 5/1/2009:[-1]を使って、その後[+2]を自分に使っていらないカードを落とすことができる《渦まく知識》と《留意》のコンボだ。この[-1]能力は今までのあらゆるプレインズウォーカーの能力の中で一番ひどい能力だ。

 注目すべきは、このときの[+2]能力が消術ではなく対象のプレイヤーのライブラリーを2枚削るものだったことです。

D2 5/7:これの奥義を「対戦相手がカードを引いたとき、あなたはカードを引いても良い」みたいなのにして欲しい。既にジェイスにはライブラリーを削る能力がある。しかし私は既にある能力を変更しないほうが好みだ。
D1 5/11:ジェイスをアップデート。能力を再発注。新しい書式をつけた。
D4 5/19/2009:ジェイスを4ターン守るのは20点ダメージを与えるよりも大体簡単なので、奥義を目指すプランは妥当な時間だ。
D5 6/15:この奥義はやられると楽しくない。これを倒そうと挑めばライブラリーのカードが少なくなるだろう。手札を貯めると......奥義の前に手札が助けにならなかったなら、後でも助けにはならないだろう。「scoop owl」がゲームを決めることが多すぎる。
D4 6/16/2009:私はこの奥義が打ったら勝ちなところは評価している。《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》は土地を起こせなくして並べることを強いてくるのに全部吹き飛ばすところが酷い。理論的には土地を貯めることでライブラリーを取り戻せるが、それよりカードを片付けるだけになる。
D6 6/19:新しい1番目の能力。ライブラリーを2枚削る。
D6 7/9:奥義を[-8]から[-12]に。

 ギリギリでの変更は上手く機能しません。少なくとも奥義は丸々2ターン遅くなりました。

 《師範の占い独楽》はパート2(リンク先は英語)で取り上げられているので、禁止されていないカード――《相殺》について見てみましょう。

《相殺》

RB 9/12:プレイヤー達に使う気にさせるために2マナ軽くする(今は{2}{U}{U})。
BB 9/19:素晴らしい。
RB 11/21:狭すぎることはない――これは実際にFFLで少しだけプレイされていた。使いやすくすることは望ましくない。
MT 12/19:何かこのカードは窮屈だなあ。

 プレイヤーがそのゲームの残りを窮屈にするために呪文を唱えないようにするなら、多分このカードはそうしていたでしょう。

《苦花》

D1 5/31:これは「{1}{B}、エンチャント。{1}{B}:黒の1/1のフェアリー・ならず者・トークンを戦場に出し、(カード名)をオーナーの手札に戻す。この能力はソーサリーを唱えられる時にのみ使うことができる。フェアリーを3体生け贄に捧げる:対象のクリーチャーを破壊する」だ。

 後から考えると、このバージョンが強かったかどうかは分かりません。

D2 6/1:これは強いと思う。
D3 6/1:もっと重くしないと。全然違うカードだから《闘技場》と比較されるべきではない。
D4 6/1:D5がこれを使って私の命令デッキとプレイして、すごいゲームになった。最初は私の樹上が差をつけて11対19にしたが、2回チャンプしてから複数でブロックしたあと、彼は3点ライフ差で上回った。このカードはこれと一緒にフェアリーまたはならず者のロードをプレイするようにとてもうるさく訴えてきて、そのことは良いことだ。古い《聖なるメサ/Sacred Mesa》バージョンはコントロールで大量のマナがあれば素晴らしい除去になった。この《ファイレクシアの闘技場》バージョンは《闇の腹心》入りアグロ・コントロールのようで、フェアリー(多分ならず者にも)にピッタリだ。このカードが動いてるのを見ると緑を使っている側からも素晴らしいゲームになり、《聖なるメサ/Sacred Mesa》バージョンと比べると天国のようだ。我々は{2}{B}を払うか、フェアリーを公開するか、彼がロードと《霧縛りの徒党》を並べて一緒に相手を倒す時に適正だと思う何かを繰り返し試すべきだ。
D5 6/6:これをプレイしたりされたりして、相手も楽しいけどプレイされるよりプレイするほうがより楽しいと分かった。もちろん私は「悪魔と取引する」カードが大好きだ!

 悪魔と取引することは正しい――とは言え、総合的にこの金利はかなり安いように見えます。

D6 6/8:相手がこれをプレイしているとき、「すごい、競り合っているだけで向こうが自滅するだろう」と思った。《闇の腹心/Dark Confidant》に《ショック》を打てたのに生かしておいた時のことを思い出したよ。でもこれと一緒に(《堕落/Corrupt》を挟んで)《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》と《堕落の触手》をやられるのはちょっと嫌だな......
D4 6/11:......あと《ロクソドンの戦槌》もね!:D

 《堕落の触手》と《ロクソドンの戦槌》だけが《苦花》と組み合わせて問題になるだけだったら良かったのですが。

《思案/Ponder》

D1 10/26:チームが大好きなカード。激突の前のライブラリー調査とそれ以外のどちらでも魅力的な動きをする。
D1 11/30:自分だけを対象にするよう変更。《先触れ》、《血清の幻視》、《手練》と比べて強すぎる。また1ターン目に相手のマナ・スクリューを起こすのが強すぎることも心配だ。チームはもう片方の「どのプレイヤーも対象にできて、ライブラリーの上2枚を見る」調整案ではなくこちらにした。

 対戦相手のライブラリーをいじくって激突をするのはかなりいいのですが、どれだけの卓で《思案》の後で土地が置けなくなるか想像もつきません。そうなれば確実に最悪の時代になっていたでしょう。

《石鍛冶の神秘家》

D1:デベロップは装備品を探してくるコーを求めていた。パワー/タフネスの議論をしよう――0/1は詩的で、1/1はFNMぐらいのパワーだ。
D2 2/19:レアになったのでレアらしい数字が必要ですね。
D3 3/18:正方な数字はレアらしい数字だろうか? 今のこのカードには魅力が欠けている。
D1:これは『ゼンディカー』の装備品を探してくる探索を蹴散らしてしまう。タフネス2は《頭蓋骨絞め/Skullclamp》を使うカジュアル・プレイヤーには魅力的ではないな。多分これは2/1で装備品が出るまでライブラリーを掘っていく、かな? 私は『デュエル・マスターズ』で「{T}、装備品を生け贄に捧げる:カードを2枚引く」を上手く使ったサムライ・デッキをプレイしていたよ。
D1:これは多重キッカーの《鋼打ちの贈り物》でも良かった。白には多重キッカーの(神話)レアが一枚ないんだ。
D4 4/6:もう一味加えよう。
D4 4/16:2マナで装備品を手札から出せるように。

 「もう一味加える」は装備品のコストを踏み倒して出すことです。私は一杯加えるとどうなるのかを見たいとは思いません。

D3 4/30:これには多くの段階を経る課程があって興奮するのが難しいと分かった。
D1 5/26/2009:いいアートだ、私はこのカードに《練達の変成者》と同じようにファンが一杯できて欲しい。我々は『ミラディンの傷跡』ブロックに彼女が影響力を持つように挑むべきだ。

 任務は達成されました。

《精神的つまづき/Mental Misstep》

D1 6/8:これは{U/P}の《魔力の乱れ》だった。《送還》と差し替え。

 ええ、少なくともこれについては神に感謝します。私はこれがレガシーやモダンで禁止されるほど大きな影響を及ぼすとは思っていませんでしたが、これがスタンダードにある年をとても苛立たしいものにしていたでしょう。


 さて、今週はここまでです。私がそうしたのと同じように記憶の小径をたどる旅を楽しんでいただけたなら幸いです。私としてはこれらをもっと行って、最終的に私自身のコメントがこれらの記事で不朽のものになることを楽しみにしています。来週は、『タルキール覇王譚』の最も重要な光景のひとつについてのお話をしようと思います――楔に取り組む時に遭遇するリスクとは何か、そしてどのように我々がそれを乗り越えたかについてです。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サムより (@samstod)

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