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Beyond the Basics -上級者への道-
破壊不能のひらめき
破壊不能のひらめき
Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing
2017年9月21日
タイムマシンに乗って古き良き時代、2004年へと戻ってみよう。
「Hey Ya!」が洋楽ランキングのビルボート・チャートで1位を取っている。映画館ではまだ「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」が上映中だ。そしてマジックはと言えば、とても人気のあるアーティファクト・ブロックの2セット目が発売されようとしている。『ダークスティール』だ。
プレビューが始まっている。紹介されているカードを見てみよう。
あるカードに気付く。
今まで見た中でもっとも滅茶苦茶なカードだ。
このカードはスタンダードの様相を変え、フォーマットを支配し、ウィザーズは禁止にせざるを得ないだろうと確信する。
こんなカードを印刷しちゃっていいのか!?
そのカードとは、もちろんこれだ。
自己弁護させてもらいたいが、私はこのとき13歳だった。
ふたを開けてみれば、『ダークスティール』にはもっとぶっ飛んでいて、正に禁止すべきものがいろいろと含まれていることが明らかになった。(《頭蓋骨絞め》や《電結の荒廃者》によろしく!)しかし私が《ダークスティールの巨像》に注目した理由の1つは、まったく新しいメカニズムを持っていたからなんだ。そう、破壊不能だ。
当時は、破壊不能は特別扱いされていて、ごく一部のアーティファクトにしか使われていなかった。13年後には、いつでもどこでも採用できる定番の能力として、再生の代わりに破壊不能を用いるようになり、親しまれている!
今やあなたは、あらゆるブロック、さまざまなカードで破壊不能の文字を見るだろう。
私は各メカニズムについて扱う記事をシリーズ化している。(過去のものも見たければ、「飛行という発明」、「先手必勝」、「死の接触」がそうだ。)最後に接死の記事を公開したところ、読者であるマイケル・プーリー/Michael Pulleyから扱ってほしい能力についてのリクエストがあったんだ。
@GavinVerhey Hey I love BTB I look forward to it every Thursday. Have you done Indestructible yet?
— Michael Pulley (@Michaelrp85) 2017年7月20日
そこで今回の記事というわけだ!(というわけで、扱ってほしい題材についての希望があるなら、いつでも気軽に伝えてほしい!)
《ダークスティールの板金鎧》をしっかり身に着け、《勇敢な姿勢》を取ろう――破壊不能の話をする時間だ!
破壊不能の内実
クリーチャーが死なない、というのはどういうことだろうか?
マジックは相互にやり取りすることを元に組み立てられるゲームであり、クリーチャーは登場したり退場したりするものだ。(はいはい、「ストーム」とかのコンボ・デッキがあることは知ってるよ。座っててくれ。)破壊不能はそれを根本からひっくり返す。
過去に扱ったキーワード能力はすべて戦闘にかかわる能力だったが、破壊不能はもっとさまざまなものに関わってくる。過去に扱ったそれらは戦闘中にのみ関係してくるものだったが、破壊不能はそれ以外の状況でもかなり関係してくる。
対処法がクリーチャーや呪文のいずれであっても、こちらのクリーチャーに対処しようとしてくるデッキに対して、破壊不能は強い能力だ。
アグレッシブ・デッキと対戦している場合、破壊不能はゲームを生き残るための素晴らしいブロッカーを与えてくれる。コントロール・デッキと対戦している場合、破壊不能であれば、対戦相手は排除に悪戦苦闘して歯噛みするようなことになるだろう。破壊不能はほとんどの戦略に対して有効なメカニズムだ。
一方で、破壊不能が効果的ではない場面も2つある。
やり取りが起こらないデッキに対して(はい、「ストーム」使いは前に出て)、破壊不能は特に何もしない。そして破壊不能はたいていの場合マナ・コストをかなり増量するものだが、その状況ではおそらく追加されたコスト分の成果を得ることはないだろう。破壊不能はコンボに対して無力だ。
もう1つだが、これまでに扱った他のメカニズムとは異なり、特定の種類のカードに対しては無力なところが問題となる。追放、バウンス(訳注2)、生け贄に捧げる効果、-X/-X修整、それにオーラによる無力化はどれも破壊不能を無視する。《殺害》がそのフォーマットで使える唯一の除去であれば、破壊不能は素晴らしい! 《栄光の刻》や《送還》がよく使われている場合、破壊不能はそれほど良いものではない。つまり破壊不能は、フォーマットによってどれほど強力かが決まってくるということだ。リミテッドであっても構築であっても、それは変わらない。
(訳注2:バウンス/戦場のカードを手札に戻す呪文や能力)
では、破壊不能によって起こるさまざまな状況をより深く調べていこう。
攻撃的な破壊不能
クリーチャーで攻撃することに関する問題点を知っているだろうか? クリーチャーはたまに死ぬんだ。
破壊不能はその問題を解決してくれる!
お互いに4/4飛行クリーチャーをコントロールしているとしよう。ただし、こちらのクリーチャーは破壊不能を持っている。あなたが攻撃的なプレイヤーであれば、対戦相手は効果的なブロックを行えない。クリーチャーを投げ捨てるだけになってしまうからね! この状況ならブロックされても何の問題もない。
破壊不能は、同質の対決をこちらの一方的な勝利へと変えてくれる。
破壊不能は、さらに多くの選択肢や安全確保のもとで攻撃する助けにもなる。例えば、こちらに《双陽の熾天使》と、2体の2/2クリーチャーがいるとしよう。対戦相手は5/5の飛行クリーチャーをコントロールしている。ここで全軍で攻撃すると、対戦相手は4/4をブロックして何も倒せずに終わるか、2/2を1体ブロックして6点のダメージを受けるかを決めなくてはならない。
ほとんどの場合、破壊不能はアグレッシブ・デッキへの恩恵となるが、それはブロッカーを前に攻撃しやすいというだけでなく、除去呪文の影響を受けない、というところからでもある。コントロールやミッドレンジ・デッキがこちらの破壊不能クリーチャーに対処できないなら、例え対戦相手が状況を安定させた後であってもゲームに勝つ素晴らしい手段となるだろう。今のスタンダードで言えば、《熱烈の神ハゾレト》のようなカードをマナ・カーブ(訳注3)の一番重いところに置くのが効果的なわけだが、その理由の1つがこれだ。
(訳注3:マナ・カーブ/マナ域ごとの枚数をグラフにすることで見える曲線)
ハゾレトが出て、破壊不能のクリーチャーを処理する解決策を見つけられないならば、困難な状況に陥ることだろう。
もちろん、破壊不能はクリーチャーにのみ見られる文章ではない――呪文にも書かれるものだ! そしてこれらの性質は全く異なってくる。
これらは、自分のクリーチャーを戦闘から確実に生き残らせるための優秀なコンバット・トリック(訳注4)というだけでなく、除去呪文から守るためにも役立つ。破壊不能を与える呪文には、クリーチャーが除去呪文の対象になった時に生き残らせることができる、という追加のボーナスがあるんだ。
(訳注4:コンバット・トリック/戦闘フェイズ中に、クリーチャーを支援する呪文や能力)
構築フォーマットにおけるデッキ構築という観点から言えば、(環境に時々見られる)全体に破壊不能を与える呪文は、全体除去効果に対して大いに役立つだろう。
クリーチャーを守る呪文はあるが守るべきクリーチャーがすでにいない、という状況にならないよう注意する必要はあるものの、破壊不能はかなり強力だ。それがクリーチャーに直接書かれているとしても、他の方法で能力を与えるとしてもね。
防御的な破壊不能
破壊不能の主な強みはコントロール・デッキに対する部分にある――しかしコントロール・デッキにとっても大きな利点となる!
コントロール・デッキであれば、相手に攻撃を躊躇させて、自分のライフをできる限り守りたいものだ。破壊不能のように、何度もブロックに参加してあらゆる攻撃を諦めさせるクリーチャーがいれば、状況が大きく変わってくることもある。例えば、ケフネトだ。
長期戦でカードを引けるという利点は置いておこう。破壊不能を持つケフネトは、序盤に出して手札を7枚以上にしておけば、ゲームの大部分で相手に攻撃を踏みとどまらせる良い状態を保てる。アグレッシブ・デッキは5/5を叩きのめすだけのクリーチャーを用意できないだろうし、ミッドレンジ・デッキであってもタフネス5を上回るクリーチャーは大抵用意していないだろう。その上、5/5より大きいクリーチャーが出てきたとしても、ケフネトは毎ターンそれをブロックし続けることができる。
加えて、コントロールという観点から言えば、ゲームに勝つ手段の確実化に役立つ。コントロールは、デッキの中身のほとんどを勝ち手段にならないもので埋めることになる。しかし数少ない勝ち手段が破壊不能であれば、他に打つところがなくて余らせていた《削剥》を対戦相手に使われて勝ち手段を破壊されてしまう、という心配は無用だ。厳しい状況から脱出して勝つことにだけ集中すればいい。
相互確証破壊不能
破壊不能について言及する上で触れておくべき、最後の重要な要素は......破壊不能を計算に入れてデッキを構築できるということだ!
何らかの方法ですべてのクリーチャーに影響を与える、というような、お互いのプレイヤーが同じように影響を受けるはずのカードは数多い。まあ、一方には破壊不能がいるわけだが!
例えば、《周到の神ケフネト》と《啓示の刻》の両方を採用したコントロール・デッキを使っているとしよう。その場合、全体除去を打つ時に自分のクリーチャーが失われる心配はない!
これはほんのさわりに過ぎない。もっととんでもない状況も考えられる。より激しい例を挙げるために、『ダークスティール』の時期まで戻ってみよう。《抹消》のある時代だ!
破壊不能を持つクリーチャー(やパーマネント!)とともに《抹消》を使えば、戦場のパーマネントを全て破壊するはずのカードが、自分のクリーチャーだけ残すひどいカードになる。後はやりたい放題だ!
パーマネントに破壊不能を与えることで、さまざまなチャンスを作り出すこともできる。これも全体除去から例を挙げてみよう。《英雄的介入》のようなカードを用いて、《ネビニラルの円盤》に破壊不能を与えると......あとでもう一度使用可能になる!
破壊不能との相互作用を持つ可能性があるものは多種多様だが、破壊不能を与える呪文はとりわけその可能性が高い。あるいは《ダークスティールの城塞》を出して《爆裂 // 破綻》を何度も唱える、なんていうものもある。お気に入りのコンボを見つけてやってみよう!
破壊可能
我々はゲームに変化をもたらすために、少量だけ破壊不能を持つカードを作る。しかし数は少なくとも、使ってみればそこに大きな違いが生まれることに気付くだろう。破壊不能を常に持つクリーチャーは基本的に、唱えるためのマナがかなり増える――しかし惑わされることのないように。これらのクリーチャーはゲームプレイにおいて実際に大きな違いを生み出す......そのためにはしばしば追加のコストが必要になるものなんだ。
さて、破壊不能についての話はこれで終わりだ!
この記事が、破壊不能に関する発想や可能性を広げる助けになれば幸いだ。そしてこれは、マジックでも最も強力なメカニズムの1つだ。うまく利用しよう!
何か考えや提案などはあるかな? ぜひとも聞かせてほしい! TwitterやTumblrで気軽に訪ねてくれてもいいし、BeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールしてくれてもいいよ。
また来週の「Beyond the Basics -上級者への道-」で会おう!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
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