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怪物化した接合者

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怪物化した接合者

Chas Andres / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年11月17日


 私が今までにプレイした中で一番馬鹿げたマジックのゲームは何年も前に校庭に降りていってやったやつだ。私と友達はあのころ取り付かれてたんだ――最後の授業が終わった瞬間にカードをシャッフルし始め、バスが私たちを置いてけぼりで出発しようとしたときに初めてカードを片付けた。

 私は《惑乱の死霊》や《シヴ山のドラゴン》で勝つ強力なデッキをいくつか持っていたが、お気に入りで使い込んでたのは私が見つけられた限りで最も馬鹿げたクリーチャーの束だ。《ブラッシュワグ》。《羊術師》。《オークの司書》。そしてもちろん《ゴブリンの雪だるま》。

 私のバカデッキは決して――文字通り――1ゲームも勝てなかった。それはいつもは私の邪魔にはならなかったが、ある日、私は7時間目の数学から抜け出してその得難い勝利を得ようと決心したんだ。残念ながら、事態は最初から悪く、さらにどんどん悪くなっていった。私の《Chaos Harlequin》がやられると、私と《ゴブリンの雪だるま》対致命的な強さの《マハモティ・ジン》の勝負になった。

 死が確実なものとなり、私は唯一残された方法で反撃した――ズルだ。ポケットのペンに手を伸ばし、そして《ゴブリンの雪だるま》のテキスト欄に「飛行」と書いた。私は「ジンをブロック」とできる限り最も落ち着いた声色で対戦相手に伝えた。

 「雪だるまは飛べねえよ」と彼は返事して、私のカードをつついた。

 私は手を伸ばしてペンで雑な丸っこい昆虫の羽を書き足した。「今飛べるようになった」

 「もういいよ」と言って相手は続けさせた。「じゃあ《Dwarven Sea Clan》で2点飛ばすから」

 「やだ」 私は笑って《ゴブリンの雪だるま》に「プロテクション(ドワーフ)」と書きなぐった。

 そのゲームは馬鹿馬鹿しい笑い合いへと変わり果て、私が《》に怒った顔を書いてそれに39点のパワーを与えて勝利のために殴ったときに終わった。これが私がこのデッキで勝った唯一のゲームで、そして今でもこれがこのような方法で起こったことに誇りのようなものを抱いている。能力とそれをカードにつけるためのクリエイティブな言い訳をリアルタイムで考え出すのは楽しいことだ......たとえそれがルールに反した何かであったとしても。

 幸運にも、『Unstable』はそれと同じことを、倫理的な問題を起こすことなくさせてくれる。では私のプレビュー・カード、〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉を見てくれ。

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 〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉はトンボの羽がついた《ゴブリンの雪だるま》じゃないかもしれないが、そんなにかけ離れているわけでもない。このロボットに吊り下げられた狂った装置を見てくれ! これら全てが既存のキーワードと一致しているわけではないが、何を表しているかを考えるのは楽しいことだ。

 このゴブリンのパペットは対戦相手を威嚇するためにあるのだろうか? このペイント(マジックのペイント?)は〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉をフェイズ・アウト可能にするのだろうか? この望遠鏡はこの大胆で小さな構築物に到達を与える助けになるのだろうか?

 〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉が一度に10のことを行うことを想像するのはこのカードの最高に楽しい部分の1つで、私はみんながお気に入りの〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉が動いているところをアートにして送って来てほしいと願っている。

 君の〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉をそのポテンシャルに見合うようにすることは興味深い挑戦になるはずだ。対戦相手が呪文を唱えたときに新しいキーワード能力を思いつかないといけないだけではなく、同じキーワードを2回使いまわすこともできない。これにはキーワードの修飾が含まれていて、つまり2種類の違うプロテクションを与えることも、転生4と転生7を同じ日に与えることもできない。

 またその場ですぐに役立つキーワードを思いつくのは簡単そうに見えて難しい。〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉の名前さえ意図的に君の追跡を撒くように意図されてデザインされている――接合の能力は他の能力によってすでに+1/+1カウンターがクリーチャーに置かれているときだけ有用で、そして怪物化は起動型能力でそもそも選ぶことが不適正だ。公平のために言うならば、〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉は〈破壊不能の滅殺者/Indestructible Annihilator〉よりは覚えやすい名前だ。

 もし君がマジックのよく知られていない事実に関する知識をひけらかしたがるような人物なら、〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉はその夢を叶えてくれる。選択肢の1つはシンプルに始めることだ。『Unstable』には分かりやすくて強力なキーワード能力を持ったクリーチャーが何枚かある。〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉がこれらの能力のどれかを持っていても構わない。

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 また君は変な方向へ直行してもいい。バンド? 側面攻撃? ランページ? それらは全部準備ができているが、君のロボットにそれを与える前に挙動を確認しておくことをお勧めする。

 〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉はうまく扱えばかなり強力になるが、私がこのカードを気に入っているところはあらゆる求めに対応できるその柔軟性だ。私が少なくとも1回は〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉に有害な、もしくは使えない能力だけを与えるゲームをすることを保証しよう。私の〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉を殺さずにどうやって悪くするのか? 防衛は序の口、累加アップキープはかなり酷そうだ、そして変異はこれが表向きで戦場にあるなら何もしないだろう。

 〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉は君の行動のフレイバーを正当化しなければならないあらゆるゲームにおいて完璧なカードでもある。この構築物に畏怖と賛美と武士道を持っているように見せるものは何だろうか? 私には分からないが、天使に祝福されて侍の道を学んだ恐るべきロボットの物語を作ることにワクワクしている。

 君が〈怪物化した接合者/Modular Monstrosity〉をプレイすることを選んだとしても、私が古い《ゴブリンの雪だるま》でやったのと同じぐらい楽しめることを願っている。マジックの素晴らしいフレイバーの馬鹿げた面を受け入れることが時には楽しいことだってあるんだ。

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