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SRAM

Ken Nagle / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年1月2日

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 『霊気紛争』が間もなくやって来ます。《発明博覧会》のすんごい発明品は領事府の目に留まりました。

 邪悪な目に。


《オームズ=バイ=ゴアの邪眼》 アート:Jesper Myrfors

 崇高な発明は、強大な権力のためにより良く活用されることになります。車輪の再発明のために時間を無駄にする必要なんてありません。マジックにおいて、この比喩をもっと正確に言うなら「《羽ばたき飛行機械》の再発明」という感じになります。

 舞台は輝く楽観主義の世界から、大きな紛争の世界へと変化しつつあります。

 通常、リード・デザイナーが担当したセットのプレビュー期間中に特集記事を担当します。『霊気紛争』のリード・デザイナーはマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebです。マーク・ゴットリーブは私の上司でもあります(「私の上司」の仕事に関して、マークにインタビューする必要がありました)。そして、上司として、彼は私にこの記事を書くように指示してきました。なぜなら、私は理論を知っているからです。

 ゴットリーブはそれを盗み、彼自身のものであるかのように発表しようとしました。まるで、《発明博覧会》の審判長、領事府の一員、そしてボーラスの工作員であるテゼレットのように。

 私の卑小な見解では、マーク・ゴットリーブはこの「手法デザイン」に寄りすぎていると思います。私は彼を引き戻しました。上司が言ってきたことを終わらせ、変更が間に合わなくなるまで結果を見せないようにしたことがありますか?

 始めましょう。

SRAM

 さて、私の『霊気紛争』のプレビュー・カード2枚に共通しているのは、SRAMです。「SRAMとは何か」疑問ですよね。

 SRAMとは、スタティックランダムアクセスメモリの略です。これは、CPUキャッシュを保存するためなどに使われます。かつてのファミコンでは、2048バイトのSRAMを使って、ネームテーブルと属性値を保存していました。

 これは私がミシシッピー州立大学でOSについて履修した時に学んだことですが、同じようなカリキュラムがカラデシュ世界でも教えられているに違いありません。特に、『霊気紛争』には新しい種類のSRAMが存在します。ほとんどの新しい技術がそうであるように、マジックにおけるSRAMは正しい相手と組み合わせ、うまくゲームプランを実行すれば素晴らしい利益を生み出すことになります。

上級建設官、スラム

 指示やデータを素早く取り出すのではなく、『霊気紛争』の《上級建設官、スラム》はコントローラーのライブラリーの一番上のカードを毎ターン1枚のルールよりも素早く取り出すことができるようにします。実際、ライブラリーを先進的なアーティファクトやエンチャントで組み立てていれば、あなたのゲームプレイはクロック速度ではなくマナに制約される、逐次化オペコードのようなものになります。

 メカニズム的に言うと、《上級建設官、スラム》は装備品、オーラ、機体でいっぱいのデッキをプレイすることで大きな利益を生みます。伝説のクリーチャーなので、「クリーチャー強化」することにカードを引くという利益がある白単色の統率者戦デッキを作る強い動機付けになります。相手とやり取りもせず相手に注意も払わずに自分の側に強いパーマネントを「組み上げる」のが目的なので、《上級建設官、スラム》のようなカードを「シムシティ」カードと呼ぶことがあります。

白でカードを引くこと

 《上級建設官、スラム》は内部で議論の的になりました。朝食にカラー・パイを食べる男マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは、白のカードに「カードをX枚引く」と書くたびに強く警告してきます。白は伝統上、規則上、実際上、傾向としてカードを引くことが一番苦手な色です(赤には「かき回し」や「衝動的ドロー」、《輪の大魔術師》が増えていますが、白には増えていません)。《上級建設官、スラム》のような白のカードでカードを引く能力は、この主張に挑戦しています。

 一方、オーラや装備品のような特定のカード群を「増大させる」ことで利益をもたらす白のカードは既に存在します。

 白に、強力な小型クリーチャー、強力なトークン生成手段、強力な天使、全体除去のような強力な対策カード、それに強力なカードを引く手段が与えられたら、白には何の弱点もなくなってしまいます。白中心のコントロール・デッキに青のカードを入れる必要がなくなってしまうわけです。

 「白でカードを引くことは悪魔だ」ということをもっとはっきり示すため、ここで「白でカードを引く」カードについてもう1つ裏話をします。『統率者(2015年版)』のこのカードを覚えていますか?

 《砂岩の予言者》は、青の《力の均衡》という呪文を唱えるスフィンクスです。

 《砂岩の予言者》は《暴動の長、ラクドス》を使った統率者戦デッキで優秀ですが、もとは選択肢にはありませんでした。なぜなら、《砂岩の予言者》はもともとタイラー・ヤコブソン/Tyler Jacobsonによるこのイラストに合うように準トップダウンでデザインされたからです。


《払暁の回収者/Dawnbreak Reclaimer(C15)》 アート:Tyler Jacobson

 デザイン上の、カードの「バランスを取る」部分はこのイラストに合っていました。デザインの目標は、統率者戦で「白らしく」カードを引くことで白の「カード・アドバンテージ問題」を解決することでした。もちろん、「バランスを取る」こと、「公平である」ことは白の指針です。結局のところ、白はそれに最も長けているべきなのです。例えば《機を見た援軍》(私のデザインです)を見てみましょう。

 《機を見た援軍》は、ライフとトークン・クリーチャーという、私たちが白の中心だと判断したものを参照します。カードを引くことも、同じようにリソースのひとつに過ぎないのかもしれません。昔の《天秤》はカードを捨てさせていましたね。

 持っているものの数が同じであれば公平ですね。手札にあるカードもそうですね。

 そうではない、とローズウォーターは言いました。提案された「《砂岩の予言者》の天使」は、白のカードにしてはあまりにも汎用的に使えるカードを引く手段だと。

 『霊気紛争』の新カード《上級建設官、スラム》は、「白でカードを引く」デザイン空間にあるので、マーク・ローズウォーターの禁断のメカニズムのはずです。なぜ心変わりしたのでしょう。

 白でカードを引くことを、狭い条件においては認めることにしたのです。もう1つ、相変わらず白の長所を使った形で白のデッキを作る必要もあります。

 もちろん、こういったカードを大量に用いた「コントロール」の《上級建設官、スラム》デッキも作れます。

 私自身、この「除去呪文で白でカードを引く」という悪事を働いています。《三つの夢》は、オーラで味方を強化するようなデッキのためにあるカードですが、私の《霧を歩むもの、ウリル》を使った統率者戦デッキでは、よく《三つの夢》を唱えて《岩への繋ぎ止め》《ドライアドの歌》、場合によっては《義務の誓約》を持ってくるのです。

 私がそうしている理由は、唱える除去呪文が少なければ少ないほど、その強烈さが上がるからです。同じことは白で初めての汎用的にカードを引く呪文でも言えますし、白のアグロ・デッキに白の《マナ漏出》を入れても言えます。

 結局のところ、私たちは高密度で主軸的なオーラ、装備品、機体のデッキは白のカラー・パイにまさにふさわしく、そういうデッキを作ったならカードを引くことができうるようにすることにしたのです。

建設官 - 大きく堂々とした建物を作る人


《感動的な眺望所/Inspiring Vantage(KLD)》 アート:Jonas De Ro

 スラムの「肩書」は上級建設官です。

 ギラプールなどのカラデシュの都市の多くは、大規模で複雑な機械として動いていて、構築や管理のためには専門的な計画が必要になります。そういった巨大規模の管理に特化したドワーフは、建設官と呼ばれます。建設官はマクロ的に働くので、彼らは(装備品、オーラ、機体を組み合わせた)非常に重い機械を使います。

 《上級建設官、スラム》は、都市の複雑な設備基盤を作り上げている無数の部品の調和を保たなければなりません。「大きく考えろ」という標語の示すとおり、都市のいずれの部分でも劣化を見逃せばシステム全体が崩壊してしまう危険があるのです。

 彼はいつでも、脆弱で精巧なヴィダルケン製の歯車造りの道具を口に咥えています。それについて尋ねられて、スラムは「どんな場合でも重要なのは、仕事に最適な工具の選択だ。爪楊枝には、こいつが最適だ。」と答えました。

土木工事での巧技

 私たちは、スラムを都市の設備基盤に関する内部的作業の専門家と位置づけました。都市で必要とされるならどこでも、この地球においてさえどこでも使える専門性を表すことができれば素晴らしいことです。

 そうしてできたのが、このプレビュー・カードです。

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 「巧技」部分は、私がデザイン中に提案したサイクルです。プレイヤーに「発明家気分」を味わってもらいたいので、2つの呪文を組み合わせるというこのアイデアを提案しました。エネルギーもアーティファクトも必要ありません。そのため、このセットに存在する他の発明家気分になれるメカニズムに比べて後方互換性が高いものになっています。私が提案したカードは、{3}{W}{W}で「クリーチャーをすべて破壊する」とマナの不要な4マナ、というものでしたが、その後で『カラデシュ』において《燻蒸》が強力な{3}{W}{W}の白の全体除去になりました。サイクルごとに1枚はトークンを作るものにしなければならなくなったので、今回は土木工事をするために霊気装置を使うことにしたのです。

 《スラムの巧技》を唱えた後で、マナを払わずに《上級建設官、スラム》を唱えるのはフレイバー的に素敵です。リード・エディターのデル・ロージェル/Del Laugelは、巧技サイクルのカードでそれぞれ対応する伝説のクリーチャーを唱えられるようにしました。

 こうして、《スラムの巧技》が1枚のカードになりました。あなたの都市の設備基盤を改善するために上級建設官と霊気装置の助けが必要なら、《スラムの巧技》をお使いください。

今こそその力を取り戻すとき

 さて、監修を受けていない『霊気紛争』のプレビュー記事を楽しんでもらえたでしょうか。今日はスラムという人物と、白でカードを引くこと、巧技サイクル、そしてスタティックランダムアクセスメモリーについてお話ししました。『霊気紛争』についてもっと知りたい皆さんは、店舗・イベント検索で1月14日~15日に『霊気紛争』のプレリリースが行われるお近くのお店を調べましょう。

 またお会いする日まで、あなたのマジックのカードがあなたの巧技を見せますように。

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