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裁きを受けよ
裁きを受けよ
Gavin Verhey / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa
2016年3月22日
「この世界は狂っている」と言う人がいたら、大抵の場合狂っているのはその人の方だ。
だがイニストラード次元はどこからどう見ても狂っている。血染めの天使が空を侵し、かつては守護していた者を引き裂く。かつては腕を組んでともに戦った仲間が、今やその腕を切り落とし合っている。手がかりをたどってこの狂気の解明に乗り出しても、そこにあるのはさらに深い、本物の狂気かもしれない。
簡単に言えば、イニストラードに住むのは難しいってことだ。
アート:Tyler Jacobson |
こんな狂った世界に合うメカニズムはあるだろうか? この世界の狂気を余すところなく表現したものは?
そう、実はぴったりなものがあるんだ。それはもちろん、「マッドネス」さ!
みんなもすでに、「マッドネス」を持ったカードをいくつか目にしていることだろう。(まだ見ていない人は、今すぐカードイメージギャラリーへ見に行こう!)今日はその新作、セミ・サイクルを成すカードの中でも特に魅力的な1枚をご紹介しよう。
今回のセットの「マッドネス」を持つカードの中でも、私が特にお気に入りなのがイニストラードに満ちる狂気をよく表しているものだ。ほら、数学の教授がよく言うだろう。「狂気×狂気=狂気の2乗」というわけさ!
よし、前置きはこれくらいでいいだろう。カードを見てみよう!《アヴァシンの裁き》に備えてくれ!
オーケー、もうちょっとこの狂気を深く感じてみよう。
一見すると、2マナの《二股の稲妻》ってところだろうか。《二股の稲妻》がレガシーにまで活躍の幅を広げているところを見ると、第一印象としては十分及第点だね。
だが待ってほしい。もちろん、これだけじゃないんだ。
《アヴァシンの裁き》は、『イニストラードを覆う影』に収録されるレアの3枚サイクルのひとつだ(「マッドネス」の各色、赤と青と黒にそれぞれ存在する)。それらはマナ・コストが固定されている状態でもクールな効果を持つカードだが、手札から捨てることができればX呪文へと変貌するのだ!
《アヴァシンの裁き》の場合、ゲーム序盤は《二股の稲妻》として使うことができ、後半には《とどろく雷鳴》より強力な呪文となる。ゲーム後半を迎える頃には、何かしらカードを捨てる効果は得られるだろう!
よし、それじゃあ《アヴァシンの裁き》を使っていこう。
こいつは攻撃にも防御にも使える優れものなんだ。
アグレッシブなデッキにおいては、強烈な利点を持った軽い除去として機能する。ゲーム中盤に対戦相手の盤面を一掃して攻撃を通せるだけでなく――相手に直接撃ち込んで止めを刺すこともできる。
コントロール・デッキにおいては、序盤から状況に応じて使える除去として機能し、後半には全体除去としても使えるだろう。赤を含むコントロール・デッキは、少しずつダメージを重ねていって最後は直接火力で勝つというものが多い。このカードはその戦略にぴったりなのだ。
では、現在のスタンダードではそれぞれどのようなデッキになるだろう?
まずはアグレッシブなデッキからだ!
吸血鬼の裁き
前回の『イニストラード』では、5つの主要部族がテーマとなっていた。それは『イニストラードを覆う影』でも同じだ。吸血鬼は変わらず攻撃的な部族だが、今回は新たなツールを獲得している――「マッドネス」だ!
今回のセットには、手札を捨てることで力を発揮する「吸血鬼」デッキを組む手段が多く用意されている。「マッドネス」を最大限に活用すれば、手札を捨てる効果と捨てられた手札のどちらも強力になるのだ!
これからのスタンダードで登場しそうな「マッドネス・ヴァンパイア」デッキを見てみよう。
8 《山》 6 《沼》 4 《燻る湿地》 2 《燃え殻の痩せ地》 4 《凶兆の廃墟》 -土地(24)- 1 《マラキールの解放者、ドラーナ》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 4 《精神病棟の訪問者》 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ファルケンラスの後継者》 4 《手に負えない若輩》 4 《貪欲な求血者》 3 《戦争に向かう者、オリヴィア》 2 《神出鬼没な拷問者》 -クリーチャー(28)- |
4 《癇しゃく》 4 《アヴァシンの裁き》 -呪文(8)- |
このデッキは元々アグレッシブなマナ・カーブを持ちながらも、《ファルケンラスの後継者》や《貪欲な求血者》によって序盤から「マッドネス」を活かせるようになっている。《ファルケンラスの後継者》や《貪欲な求血者》から《手に負えない若輩》へと繋ぐ強烈な動きは、瞬く間に大量のダメージを与えることだろう。(今後のスタンダードでは、この動きに注意しよう!)
そしてこのデッキにおいて、《アヴァシンの裁き》は重大な役目を持っている。こいつは単体除去として使えるだけでなく、放っておけばこちらの吸血鬼が相討ちに取られるような邪魔な軽量ブロッカーを一掃することもできるのだ。吸血鬼の多くはパワー偏重であるため、トークンや2/1のクリーチャーとの相討ちが避けられるのはありがたいね。
そしてゲーム後半には......ドカーン!
《ファルケンラスの後継者》や《貪欲な求血者》の素晴らしい点は、能力を起動するのにマナが必要ないところだ――つまり、《アヴァシンの裁き》を下すときにすべてのマナをこのX呪文に注げるのだ!
このデッキなら、多少マナ・フラッド気味になっても問題ないだろう。突然5点以上の追加ダメージが飛んできたら、対戦相手の守備はいとも簡単に崩れるはずだ。それから、捨てる方法があるならインスタント・タイミングでも撃てることを覚えておこう。
「吸血鬼」デッキを組むなら、可能な限りクリーチャーの比率を多くしておきたい。そのため、止めの一撃にもなり得る使いやすい除去呪文は理想的と言えるだろう。
ここで紹介したデッキは、あくまで最初の一歩だ。まだ君たちが目にしていない素敵な吸血鬼はいくつもあるぞ。今後のプレビューにも目を剥くように注目してくれ!(意識しなくとも、イニストラードでは目を剥くような出来事が常に起こるけどね!)
さて、今度は真逆のデッキも見てみよう。コントロールの出番だ!
狂気の抵抗
一見、コントロール・デッキに大量の「マッドネス」呪文を採用するのは噛み合わないように見える。コントロール・デッキは伝統的に、カードをたくさん引いて対戦相手の繰り出す脅威に対処していくものだからだ。ではカードをたくさん引きつつターン終了時にカードを捨てて「マッドネス」を活かすには、一体どうすればいいだろう?
実はそのための手段は驚くほど多くある。まずは何を差し置いても、この小さなクリーチャーが思い浮かぶね。
好き嫌いはあれど、《ヴリンの神童、ジェイス》はすでに何か月もコントロール・デッキの主力となっている。そこへ「マッドネス」が加われば、彼はこの上ない力を発揮するだろう。
ひとつだけ、大切なことを言っておこう。《ヴリンの神童、ジェイス》で「マッドネス」を持つカードを捨てる場合、それが「変身」に必要なちょうど5枚目のカードなら、そのカードを「マッドネス」で唱えてしまうと《ヴリンの神童、ジェイス》は「変身」しない(「マッドネス」は、捨てたカードが墓地へ行くという通常のプロセスを置き換えてしまうからだ)。君が《ヴリンの神童、ジェイス》を使う側になるか使われる側になるかは分からないけれど、知っておいた方が良いだろう。
さて、《ヴリンの神童、ジェイス》以外にも頼りになるカードはあるぞ。例えば新カードの《熟読》も「マッドネス」と相性抜群だ。
《熟読》はカードを3枚引き、その後1枚捨てる――その捨てるカードが「マッドネス」を持っていれば完璧だ。1枚でドローと「マッドネス」を同時にこなせるのだ!
さらに他にも、「マッドネス」と組み合わせたいカードはいくつもある。これまで幾度となく採用候補に挙がってきた《苦しめる声》は、「マッドネス」の登場によりついにメイン・デッキへの採用を果たすかもしれない。それから《ジェイスの誓い》もまた、カードを捨てることを「強いる」ドロー呪文だ。そして《炎呼び、チャンドラ》も、必要なカードを探しながら「マッドネス」を機能させることができる。新たなスタンダードでは、「マッドネス」を中心にした戦略に様々な選択肢があるのだ。
ではこの戦略の例をひとつ挙げよう。
9 《島》 7 《山》 4 《シヴの浅瀬》 4 《さまよう噴気孔》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《氷の中の存在》 -クリーチャー(8)- |
2 《焦熱の衝動》 3 《苦しめる声》 2 《焙り焼き》 4 《癇しゃく》 1 《巨人の陥落》 3 《炎呼び、チャンドラ》 4 《アヴァシンの裁き》 3 《熟読》 2 《教団の歓迎》 2 《溺墓での天啓》 -呪文(26)- |
このデッキの戦略は、盤面をコントロールして対戦相手の動きを少しずつ阻み、同時にこちらが盤面を築いて、突如として勝負を決めるというものだ。
このデッキの切り札は《氷の中の存在》だ。2ターン目にこいつを出した時点では、対戦相手もほとんど目をくれないだろう。しかしその後、気づけばいくつも呪文を唱えられ――相手は突如として大ダメージを受けることになるのだ。そうなれば相手は守勢に回らざるを得なくなり、あとは火力呪文を投げつけて止めを刺せばいい。
このデッキは打ち消し呪文を使用しない「タップアウト」型のコントロールで、やや攻撃的な形になっている。自分のターンに動くことが多いものの、強力な動きが実現できるだろう。
「この世界は狂っている」
イニストラードに満ちる狂気は恐ろしい――だが君がそれを受け入れれば、狂気に尻込みする対戦相手をすぐにでも恐怖に染め上げることができるだろう。
今回は「マッドネス」を用いた戦略をふたつ紹介したけれど、他にもまだ見ぬ戦略はたくさんあるぞ。青黒の形や、そこに赤まで足した「マッドネス・コントロール」はどうだろう? スタンダードやあるいはレガシーまで手を伸ばして、手札を捨てる効果と新しい「マッドネス」カードを組み合わせると、どうなるだろうか?
これらの命題は、君たちの今後の探求に任せよう。『イニストラードを覆う影』の世界をめぐる多くの「狂った道」を行く君たちに。
今回の記事についてご意見やご質問などがあれば、ぜひ聞かせてくれ! いつものようにツイートを送るかTumblrで質問してくれれば、すべて拝読するよ。
それじゃあ、新たなスタンダード環境でのデッキ構築も楽しんでくれ。またね!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight
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