READING
翻訳記事その他
ジェイスとヴラスカを使いこなそう
ジェイスとヴラスカを使いこなそう
Sam Stoddard / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa
2014年3月3日
『デュエルデッキ:ジェイス vs ヴラスカ』特集記事へようこそ! この製品は、私が『デュエルデッキ:英雄 vs 怪物』の制作を経てふたつ目に手がけたデュエルデッキです。ウィザーズ・オブ・コースト社が送るデュエルデッキという製品を受け取る側として毎回楽しみにしていた私ですが、今はこうして直接携わることになり、とても嬉しく思っています。私は『デュエルデッキ:ジェイス vs チャンドラ』をだいたい100ゲーム以上遊びました。そして、「ふたつのキャラクターが過去の様々なカードを駆使する、楽しく奥深いマッチアップを作り出そう」という試みにすっかり夢中になったのです。
この春に発売するデュエルデッキでは、ひとつ前のブロックに収録されているプレインズウォーカーからふたりが主役に選ばれます。しかし『ラヴニカへの回帰』の前に『デュエルデッキ:イゼット vs ゴルガリ』(青赤 vs 黒緑)を手がけ、『テーロス』の前には『デュエルデッキ:英雄 vs 怪物』(白赤 vs 赤緑)に取り組んでいたため、私たちは壁にぶつかりました。最近の製品と色の被っていないプレインズウォーカーが、《思考を築く者、ジェイス》だけになってしまったのです。とはいえ、問題ばかりではありませんでした――おかげで『ラヴニカへの回帰』ブロックの物語の中心人物であり、ラヴニカ次元を象徴するキャラクターを再び取りあげる機会がやって来たのです。いずれにしても、デュエルデッキのシリーズ内で同じプレインズウォーカーを取りあげるというのは、そのうち起こることでした――私たちが紡ぐ物語には主役となるレギュラー出演のキャラクターたちがいて、彼らに見せ場を作ってやるのは至極当然のことなのです。
そして残るプレインズウォーカーのうち、ジェイスと好対照なのがヴラスカでした。テーマ的にも構成的にも、彼女がぴったりだったのです。ヴラスカはその色こそゴルガリに分類されますが、彼女の持つキャラクター性はゴルガリ・デッキのスタイルとはそれほど噛み合いません。例えばラル・ザレックとイゼット・デッキ、ドムリ・ラーデとグルール・デッキのようにはいかないのです。また、ジェイスとヴラスカの戦いは「調査の達人であるジェイスと影に潜むヴラスカの対立」という構図に光を当てやすくなります。
今回のデュエルデッキをジェイスとヴラスカに決めると、私はクリス・ミラー/Chris Millar(彼がデュエルデッキ・シリーズのデザインをすべて手がけています)に基本的な概要を伝えました。しばらくすると彼はデッキリストを送ってくれて、私のデベロップが始まったのです。
ヴラスカ・デッキの構築
11 《沼》 9 《森》 2 《汚れた森》 1 《ゴルガリのギルド門》 1 《ならず者の道》 -土地(24)- 1 《鼓動の追跡者》 1 《影小道の住人》 2 《門を這う蔦》 1 《死の頭巾のコブラ》 1 《朽ちゆくヒル》 1 《リバー・ボア》 1 《酒場の詐取師》 1 《殴打蔦の葛》 1 《第6管区のワイト》 1 《オーランのバイパー》 1 《オラン=リーフの出家蜘蛛》 1 《サディストの穴開け魔道士》 1 《石板通りの悪漢》 1 《落とし悶え》 1 《石載りのクロコダイル》 1 《死体の交易商人》 1 《ただれ皮の猪》 1 《街道筋の強盗》 1 《カビのシャンブラー》 1 《ネクラタル》 1 《荒野の収穫者》 1 《酸のスライム》 1 《よだれ垂らしのグルーディオン》 -クリーチャー(24)- |
2 《悲劇的な過ち》 1 《惑乱の雲》 1 《湿地での被災》 1 《夜の囁き》 1 《貴重な発見》 1 《力の消耗》 1 《最後の口づけ》 1 《刺し傷》 1 《地下世界の人脈》 1 《忌まわしい光景》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 -呪文(12)- |
ヴラスカは地下世界の女王であり、暗殺者たちと契約を結び彼女の敵を排除します。彼女自身で暗殺する気やその能力がないわけではありません――ただ、すべてをひとりでやる必要がないと考えるだけです。彼女が手ずから命を奪おうと決めたなら、この広い多元宇宙にも彼女の視線から逃れることのできる場所は無いでしょう。
《夜の囁き》 アート:John Severin Brassell |
ヴラスカ・デッキを手がける上で私が重視したのは、「ゴルガリ・デッキ」にならないようにすることでした。むしろ昔ながらの「The Rock」や消耗戦を仕掛けるデッキにするつもりでした。ヴラスカはアドバンテージを得るのに墓地を使うのではなく、手札破壊や2対1交換で優位に立つキャラクターです。ジェイス側と比べてはるかに強力な除去を持ち、「陰鬱」でアドバンテージを奪うのです。
ヴラスカ・デッキにはライフを支払う効果が散見されます――《朽ちゆくヒル》や《夜の囁き》(これらには今回のデュエルデッキに合わせて新規イラストが用意されました)、そして《地下世界の人脈》は、ジェイスとのカード・アドバンテージの勝負で鍵となるカードですが――それには代償が伴うのです。ヴラスカ側は《最後の口づけ》や《石載りのクロコダイル》、《街道筋の強盗》でいくらかのライフは調達できますが、ジェイス側が積極的にプレッシャーをかけてライフを支払わせない、というのも難しいことではないでしょう。
ジェイス・デッキの構築
21 《島》 2 《ハリマーの深み》 1 《戦慄の彫像》 -土地(24)- 1 《時間人形》 1 《ジェイスの幻》 1 《幻影の熊》 2 《クロヴの霧》 1 《霊気の想像体》 1 《都市内の急使》 1 《夢で忍び寄るもの》 1 《霊気の達人》 1 《マーフォークの道探し》 1 《海門の神官》 1 《秘密を盗む者》 1 《古術師》 1 《幻影のドラゴン》 1 《永劫の年代史家》 1 《影武者》 1 《力線の幻影》 1 《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》 1 《ジェイスの精神追い》 1 《遍歴のカゲロウ獣》 -クリーチャー(20)- |
2 《思考掃き》 1 《外出恐怖症》 1 《乱動への突入》 1 《記憶の欠落》 1 《禁制》 1 《差し戻し》 1 《閉所恐怖症》 1 《支配魔法》 1 《捕海》 1 《命令の光》 1 《召喚士の破滅》 1 《未来予知》 1 《ジェイスの創意》 1 《呪文ねじり》 1 《思考を築く者、ジェイス》 -呪文(16)- |
『ローウィン』で初めてその姿を見せて以来、ジェイスは大きな変化を遂げてきました。もうチャンドラ・ナラーとの敵対関係は終わり、彼はより良い結果を出すために他のプレインズウォーカーと協力することの大切さを学びました。彼は今「生けるギルドパクト」としての大きな責任を担っていて、ラヴニカ次元の内からも外からも襲い来る脅威から次元を守るという大切な役目があるのです。
《ジェイスの幻》 アート:Johann Bodin |
ジェイスのようなキャラクターを再び取りあげる上で私が重視したことのひとつは、『デュエルデッキ:ジェイス vs チャンドラ』での彼のデッキから方向性を変え過ぎないようにすることでした。《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》や《遍歴のカゲロウ獣》といった「待機」クリーチャーのように、元となるデッキに含まれていた要素を残すように意識してきたのです。また、それと同時に、ジェイスのキャラクター的な変化をお見せすることも大切にしました――そこで「変異」を持つカードを抜き、イリュージョンの部族要素を少し加えました。
このデッキは開発初期の頃、もう少しライブラリーを削るカードやそれで利益を得られるカードが入っていました。ヴラスカのデッキが墓地を利用するものではなかったため、裏目にはならなかったのです。しかしながら、それにテストプレイヤーたちが物足りなさを感じていました。そこで私は、テンポと打ち消しを駆使する伝統的なコントロール・デッキ寄りの方針をとり、ヴラスカの強力な呪文を制する形にしました。《記憶の欠落》や《呪文ねじり》といったライブラリーを削る効果と面白い相互作用を起こすカードは残しつつ、《ジェイスの幻》と《都市内の急使》は枚数を減らしました。また、デッキ内の打ち消し呪文は、確定カウンターよりも一時的なものや状況を選ぶものを多く残すことにしました――《対抗呪文》ではなく《差し戻し》や《禁制》、《記憶の欠落》が採用されているのは、そのためです。これでジェイス・デッキはより狡猾さを増し、彼の捉えどころのないキャラクターは初めて彼を見たときからさらに洗練されることでしょう。
マッチアップ
デュエルデッキを手がけるとき、私はふたつのデッキが序盤にも終盤にもそれぞれの戦略を持ち、それらの対決が戦略的に深いものとなるよう心がけて作っています。今回のマッチアップで用いるメカニズムを選ぶ際には、序盤にも終盤にも使える「キッカー」を両方のデッキに採用しました。私は大きなアドバンテージが生まれる7ターン目を迎えるまでに決着がつかないよう、強く配慮したのです。その代わり、両デッキともどこからでも巻き返せるようにしてあります。
私はジェイス側をガチガチのコントロール・デッキに仕上げるのではなく、極めてテンポ寄りに作り上げようと努力しました。ヴラスカのデッキに採用された呪文は、そのひとつひとつがジェイス側にとって対処しにくいものばかりです。そのためジェイス側は、除去と打ち消しを適切なタイミングで使わなければいけません。《記憶の欠落》や《差し戻し》は「陰鬱」による追加効果を防ぎ、これがジェイス側の勝利には欠かせないことのひとつなのです。
一方ヴラスカ側にとって目指すべきは、ジェイス・デッキの厄介なカードたちに最大限の仕事をさせないことです。2ターン目《朽ちゆくヒル》はジェイス側に多大なプレッシャーをかけることができ、彼に大がかりな仕掛けを用意する余裕を与えません。さらに、ヴラスカ側はアグロ・デッキとのマッチアップではコントロール的な立ち回りもそつなくこなします。手札破壊と除去の組み合わせでジェイス側の速い動きにも対応することができますし、《荒野の収穫者》や《よだれ垂らしのグルーディオン》といったカードをジェイス側が対処するのは困難を極めるでしょう。
私が制作を楽しんだように、皆さんが今回のデュエルデッキを楽しんでいただけたら幸いです。皆さんからのフィードバックを心待ちにしています。
ではまたの機会にお会いしましょう。
サムより(@samstod)
RANKING ランキング
-
戦略記事
とことん!スタンダー道!ゴルガリ・ランプと『ファウンデーションズ』の注目カード(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
戦略記事
世話人型白単コントロール、『ファウンデーションズ』の注目カードは?(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
戦略記事
今週のCool Deck:イゼット厄介者で機織りの季節を楽しもう(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
広報室
年末はカジュアルにマジックを楽しもう!11月15日より特別なフレンドリーイベント&キャンペーン3種を開催|こちらマジック広報室!!
-
読み物
第50回:『ファウンデーションズ』統率者ピックアップ|クロタカの統率者図書館
NEWEST 最新の読み物
-
2024.11.21戦略記事
とことん!スタンダー道!難解パズルなカワウソ・コンボ(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.20戦略記事
緑単アグロ、原初の王者の帰還!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.19戦略記事
ボロス・バーン:基本セットと火力の関係(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.18戦略記事
世話人型白単コントロール、『ファウンデーションズ』の注目カードは?(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.15戦略記事
今週のCool Deck:イゼット厄介者で機織りの季節を楽しもう(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.15お知らせ
MTGアリーナニュース(2024年11月11日)|お知らせ
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事