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企画記事
多元宇宙ヒストリア 第4回(終):プレインズウォーカー・ヴラスカ
多元宇宙ヒストリア 第4回(終):プレインズウォーカー・ヴラスカ
by Mayuko Wakatsuki
こんにちは、若月です。知られざる歴史を辿る「多元宇宙ヒストリア」。最終回はまもなく始まる『イクサラン』に向け、物語の中心となるであろうプレインズウォーカー・ヴラスカを復習します。「海賊」となる(???)前の彼女はどのような人物であり、これまで何をしてきたのでしょうか?
1.ゴルゴンとは
多元宇宙において、ゴルゴンは稀な存在です。のたうつ触手や蛇の髪、見た者を石へと変化させる凝視。その恐ろしい能力を考えるに、数が少ないというのはありがたいことだと言わざるを得ません。現在その姿が確認されている次元はドミナリア、テーロス、シャンダラー、ラヴニカ。中でもテーロスには毒と薬の知識を統べるとともに、「ゴルゴンの母」と呼ばれる神が存在します。
一方で、非常に多種多様な種族が都市生活を営むラヴニカ次元。ここではありとあらゆる知的種族が他の世界にはない形で都市に適応しています。例えば天使も銀行口座を所有してギルドからの給金を受け取り、ハーフデーモンの現場監督が建設を指揮し、ケンタウルスは文字通り身一つでタクシーを営む。ですがそんなラヴニカにおいてさえゴルゴンは滅多に地上に現れることはなく、ゴルガリ団の支配区域である地底街にてひっそりと生きています。
ラヴニカの有名なゴルゴンとしては、かつて「石の死の姉妹」と呼ばれる三姉妹がいました。彼女らはゴルガリ団の先々代のギルドマスターだったのですが、エルフの女司祭サヴラとの政争によって二人が死亡し、残った一人もそれ以来姿を見せていません。
ゴルゴンのプレインズウォーカー、ヴラスカもまたゴルガリ団に所属しています。「暗殺者」として時折ギルドの仕事を請け負いつつも、ギルドの内部政治には特に関わっていません。ゴルガリ団は生と死の循環を信奉し闇に生きるギルドですが、だからこそ寄る辺のない者や踏みにじられる者に決して背を向けないことを誇りとします。ギルドの一員として認められているヴラスカですが、真にゴルガリ団をどう考え、その中で何を成そうとしているのかは現在のところはっきりしていません。
2.ヴラスカの来歴
ラヴニカ次元は常に十のギルドとともに。その世界に生きる者の定めでしょうか、ヴラスカもギルドと関わらずにはいられない人生を送ってきました。ラヴニカという世界やギルドのあり方も含めて解説します。
ラヴニカでは、十の「ギルド」が都市生活においてそれぞれの役割を果たしています。ギルドとラヴニカ市民の生活は切っても切り離せません。例えば天才科学者集団であるイゼット団、これは市民生活に接する部分では都市の各種インフラ設備の維持管理を担います。拝金主義のオルゾフ組は宗教的な面が強いながら、一方で商業や金融システムを管理しており、上で述べた「銀行」もオルゾフ組が運営し各ギルドが利用しているものです。
そしてその平和的(?)共存を可能としているのが、一万年前に創設されたギルド間不戦協定魔法「ギルドパクト」です。製作者はアゾリウス評議会の最高判事アゾール一世、そして当時のギルドマスター全員が血の署名を交わしました。これによってギルド間の全面戦争は防止され、以来十のギルドは時には友好的に、時には小競り合いをしながら繁栄を享受してきました。アゾール一世の名は今も「アゾールの公会広場」、全ギルドの中立地帯であり活気溢れる公的広場に残されています。
ですがギルドパクト設立一万年を祝う万年紀祭前夜のことでした。ラヴニカの支配を欲したディミーア家のザデックとアゾリウス評議会の大判事アウグスティン四世の周到な策略によってその不戦協定魔法ギルドパクトが消失し、ラヴニカはしばしの混乱期に突入しました。
ある時、アゾリウス評議会がゴルガリ団の地底街の一画を掃討しました。その逮捕者の中には一人のゴルゴンが含まれていました。目隠しと猿轡をはめられた恐ろしい姿に、ゴルガリ団の囚人も彼女からは距離をとりました。狭い建物に押し込められ、とはいえアゾリウス兵の監視は僅かな人数。囚人達は暴動を起こし、その中でゴルゴンを武器として利用しようとします。ですが彼女はアゾリウス兵に抑え込まれて殴りかかられ、その戦闘の中、命の危険からプレインズウォーカーとして覚醒し、その場を脱出したのでした。
しばし時が過ぎ、アゾリウス評議会の官吏が奇妙かつ猟奇的な方法で殺害されるという事件が立て続けに起こります。それこそ、復讐のためにラヴニカへと戻ってきた彼女、ヴラスカの仕業でした。あの掃討作戦に関わった全ての者に「それに値する死を受け入れ」させるために。そして他者から見ればどこか歪んだ正義感で復讐を続ける彼女は、やがてアゾリウス評議会からの重要指名手配人「見えざる者」としてお尋ね者とされてしまいました。
一方でギルド間の不仲は、ラヴニカに住むまた別のプレインズウォーカーによって修復されます。いつからか第十地区の各所に現れた謎めいた印を調査していたジェイス・ベレレンは、それが全ギルドの領域を通る謎の力線、「暗黙の迷路」と呼ばれるものであることを突き止めました。それはギルドパクトの魔法が失われた時のために備えられていた、言うなれば「安全装置」。全てのギルドが協力して迷路を解くことでギルドパクトが再生し、だがそうでない時は......「至高の評決」が下されるのだと。
そしてイゼット団のギルドマスターであるニヴ=ミゼットの主導にて、暗黙の迷路争奪戦が開催されました。ジェイスは友人にしてセレズニア議事会の走者イマーラ・タンドリスを助ける形で迷路を駆け、更には卓越した精神感応能力を用いてギルド走者十人の争いを調停します。その功績によって彼は迷路そのものに認められる形となり、ギルドパクトの魔法が復活して再びラヴニカ次元に一応の平和がもたらされました。
ですが一つだけ、以前のギルドパクトとは決定的に異なる点がありました。それは形のない魔法ではなく、人の姿をとっているということです。ジェイスが、ギルドパクトとなったのです。
ヴラスカは独自の情報網を用いてジェイスを調査し、彼がプレインズウォーカーであることやその来歴を把握しました。ヴラスカにとっては、余所者である彼がギルドの上に立つというのは許しがたいことでした――例えその本人が全く思いがけずその体現となり、不承不承受領し、悪戦苦闘しながら日々業務をこなしているのだとしても。
同時に、元々ギルドパクトの魔法はアゾリウス評議会が作り上げたものです。その体現となったジェイスはヴラスカが敵視するに十分でした。彼女はプレインズウォーカーだけが察する方法でジェイスへ伝言を送り、呼び出して脅迫します。目的は、ジェイスを従わせてギルドパクトを支配し、ラヴニカという都市を手にすること。そしてギルドを無力化し、ギルドマスター全員を殺害すること......ですがその声明はジェイスの魔法によってギルドの頂上会談へと送られていたのでした。存在を把握され、また野心を多くのギルドや市民へと暴露されたことを知り、ヴラスカは一旦引き下がらざるを得ませんでした。
それでもヴラスカは諦めず、ジェイスがラヴニカから離れてエルドラージを対処している隙に行動を起こしていました。帰還した彼に補佐官ラヴィニアが報告した所によれば、アゾリウス評議会の有力議員数人が「石化されていた」......。ジェイスはしばしギルドパクトとしての業務に忙殺されることから、ゲートウォッチの同僚であるギデオンに彼女の調査を託しました。その後イゼット団のプレインズウォーカー、ラル・ザレックによれば彼女はいずこかへ旅立ち、その行き先は不明......とされてきました。が。
何と「ヴラスカ海賊団」を率いて「恐竜と戦っている」!!!???
ラヴニカで暗殺者稼業を続けていた筈の彼女がまさかの転身。一体何があったというのでしょうか? 開始前から謎だらけ、Magic Story『イクサラン』編は来週開始です!!
(終)
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