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岩SHOWの「デイリー・デッキ」

2016.12.22

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:パニッシング・ジャンド(レガシー)

by 岩SHOW

 時には常識とされていることを打ち破ることも大切だ。僕が幼少期より敬愛するジャン=アンリ・ファーブルは、昆虫の研究を行う際に、先人たちによって定められた常識を鵜呑みにせずに、徹底的に実物を観察し自分の目で確かめるという手法を取っていた。彼はこうして過去の常識を覆し、知られざる昆虫の生態を明らかにしてきた。

 マジックにおいても、「○○デッキと△△デッキの相性は7:3で○○有利」といったような数々の常識があるのだが、プロプレイヤーの中にはその真逆であると認識している者もおり、実際に一般的に不利とされるデッキを用いてサクッと勝利したりする。構築においても、常識から少し外れたものを1枚採用してみたりすることで、それまで回しにくかったデッキが肌に馴染む、なんてこともあるだろう。今日はそんな、大変革!と呼べるほどのものではないが、独自チューンを施したデッキを1つ紹介しよう。

Lucien Barbou - 「パニッシング・ジャンド」
Swiss Legacy Cup - Grand Final 優勝 / レガシー (2016年12月4日)
1 《森》
1 《沼》
3 《Bayou》
3 《Badlands》
4 《新緑の地下墓地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《燃え柳の木立ち》
3 《不毛の大地》

-土地(23)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
2 《血編み髪のエルフ》

-クリーチャー(14)-
2 《師範の占い独楽》
4 《思考囲い》
1 《稲妻》
4 《突然の衰微》
3 《トーラックへの賛歌》
3 《罰する火》
1 《四肢切断》
1 《コラガンの命令》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(23)-
2 《強迫》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《外科的摘出》
1 《Chains of Mephistopheles》
2 《仕組まれた疫病》
1 《窒息》
1 《大渦の脈動》
1 《毒の濁流》
4 《虚空の力線》

-サイドボード(15)-
mtgtop8.com より引用)

 レガシーにおける青くない中速デッキの代表格「パニッシング・ジャンド(以下ジャンド)」だ。黒赤緑3色のパワーカードを用いてボード(盤面)をコントロールし、クリーチャーで殴る。手札破壊・クリーチャー除去に長け、クリーチャーも軽くて強力。『ラヴニカへの回帰』にて《死儀礼のシャーマン》《突然の衰微》を獲得してから一気にレガシーのスターダムにのし上がり、「奇跡コントロール」とレガシーの人気デッキとしての地位を争っている。

 このリストのどこが一般的なものと異なるかというと......《師範の占い独楽》が採用されている点だ。

 このドローの質を高めるアーティファクト、レガシーでは「奇跡コントロール」や、その他の青いコントロールorコンボデッキに積まれることもあり、決して珍しいカードではない。むしろレガシーのトーナメントに参加してこれを1枚も見ずに1日を終えるなんてことはまずない、そんなレベルのカードである。しかしながら、「ジャンド」のパーツとしてこのカードをカウントすることはほぼない。なかなかに珍しいチョイスではあるのだ。

 そもそも「ジャンド」の強さは、個人的にはアドバンテージの取り方にあると考えている。《闇の腹心》は2ターン目に戦場に出て、対処されなければとりあえずカード1枚は稼いでくれる。ライフと引き換えではあるが、公開されたカードが土地であれば損失なし。パワーが2あるので殴りに行けるのも良いし、ライフがピンチになればブロッカーに回してしまえばよい。

 同じくクリーチャーからは《血編み髪のエルフ》の稼ぐアドバンテージも凄い。続唱能力で捲れるカード次第だが......《トーラックへの賛歌》や《タルモゴイフ》《ヴェールのリリアナ》が飛び出た時は内心ガッツポーズだ。

 そして大方の「ジャンド」に1~2枚採用されているのが《森の知恵》。このエンチャントは毎ターンライフと引き換えに追加のドローか......あるいはそれらを好きな順番でライブラリーに戻してよいか選ぶことができる。最大で8点のライフと2枚ドロー追加までいけるが、そこまですることはそうそうない......しかしできることが強みだ。

 またライフが惜しいのであればトップに戻したうえで《血編み髪のエルフ》で続唱してやれば良いのだ。エンチャントというメインデッキからは対処しづらいタイプというのもあり、いざ割られてしまっても《タルモゴイフ》のサイズアップが見込めるのでそれはそれでというところ。

 このデッキではその《森の知恵》を《師範の占い独楽》に入れ替えている。ライブラリー操作を行えるという点では似たカードではあるのだが、決して同じように扱えるカードではない。

 独楽の良いところは1ターン目に展開できることだ。「ジャンド」の1ターン目の理想的な動きは《死儀礼のシャーマン》or《思考囲い》、後手だった場合は相手のクリーチャーに除去といったところ。これに追加で1マナのライブラリー操作が加わることで、ただ土地を置いてエンドするだけの1ターン目をなくしてしまうことができる。能動的な1マナカードを10枚採用していれば、1枚は引けるだろうと。後半引いてきた時も、次のターンを迎えないと機能しない《森の知恵》と違い、即ライブラリーを操作して、欲しいものがあれば手札に加えることができる。

 さらなる独楽の利点として、《闇の腹心》との相性の良さは皆さんもご存知の通り。「ストラクチャー&フォース(※1)」でも見られたベストコンビで、レガシー的には「ベースラプション」というデッキがこの組み合わせを利用していた。ライブラリーの順番を並べ替えて腹心を安全運用。もし3枚見てすべてが重いカードだったりしたら、独楽のタップ能力を起動して独楽をライブラリーに→腹心で公開してライフの損失を1点に抑える、なんて動きもできる。

(※1:プロツアー解説でお馴染みの鍛冶友浩さんが作成した名デッキ。《師範の占い独楽》《闇の腹心》《相殺》を組み合わせてアドバンテージを取りながらコントロールしつつ、《曇り鏡のメロク》という絶対的なフィニッシャーに繋げる青白黒のパーミッションデッキだ。「ベースラプション」は初期レガシーにて上記の3種の神器+《タルモゴイフ》を用いたデッキ。)

 もちろん、《森の知恵》に劣る点もある。最大のポイントは「マナを食う」これに尽きる。パニッシングの名の通り、このデッキは《罰する火》を《燃え柳の木立ち》で回収して投げつけることでクリーチャーとプレインズウォーカーを処理していくボードコントロールを行っていくのだが......

 何度も何度も《罰する火》を回収しては投げるのにマナを必要とする。1マナでも惜しいのに《師範の占い独楽》にマナを払っていられない!なんて状況も出てくることだろう。そういう時には全自動マナ不要の《森の知恵》の強さを実感することになるだろう。実際問題、多くの「ジャンド」が《森の知恵》を優先しているのはこのためだ。

 ただ「常識的に考えて《森の知恵》!」と思考停止せずに《師範の占い独楽》を採用してみて、中規模のトーナメントで優勝という結果を残しているのは称賛すべきことだと思う。皆も「このカードは個人的に使いにくいなぁ」と思うものがあれば、自分に合うものを探してみるのが良いかもしれない。そこから新しいデッキが生まれるかもしれないぞ!

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