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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:緑白トロン(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:緑白トロン(モダン)
by 岩SHOW
最強はアメリカにあり。歴代最多プロツアーTOP8入賞を誇る伝説の中の伝説、ジョン・フィンケル/Jon Finkel。あるいは昨シーズン98点というぶっ飛んだプロポイントを獲得してプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldか。同シーズン3プロツアー連続TOP8のルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasも忘れちゃいけない。最強と呼ぶべきプレイヤーたちは、マジックの故郷に住んでいる。すなわちマジック最強国。
しかしながら、この国にはその称号が正式に与えられてはいない......ここ数年は。かつて世界選手権の団体戦とされていたトーナメントは、ワールド・マジック・カップと名を変えて独立したマジックの祭典となった。2012年から毎年、世界中のマジックプレイヤーが一堂に会するこのお祭りで......最強のプレイヤーを擁するアメリカは一度も優勝したことがない。この事態を打開せねば!と毎年、代表選手たちはどの国よりも闘志を燃やしていることかと思うが、今年の大会でもTOP16で彼らの戦いは終わってしまった。来年はさらにギラギラとしたメンバーが、世界選手権も含めれば8年間遠ざかっているマジック世界一の称号を奪還するために熱い試合を繰り広げてくれれば、この祭典ももっともっと盛り上がることだろう。
今回はそんなアメリカチームが選択したデッキのひとつ、「緑白トロン」について紹介しよう。デッキとしては、このワールド・マジック・カップの直前のモダントーナメントであるStarCityGames.com Modern Openで優勝したトム・ロス/Tom Rossの使用したものが原型であると思われる。チーム戦仕様ではなく、通常のモダンで勝つために作られたこの元のリストを見てみよう。
1 《森》 3 《剃刀境の茂み》 1 《低木林地》 4 《ウルザの塔》 4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの魔力炉》 1 《幽霊街》 1 《ウギンの聖域》 -土地(19)- 1 《呪文滑り》 2 《ワームとぐろエンジン》 2 《世界を壊すもの》 2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(7)- |
4 《古きものの活性》 4 《彩色の宝球》 4 《彩色の星》 4 《探検の地図》 3 《流刑への道》 2 《大祖始の遺産》 4 《森の占術》 3 《忘却石》 4 《解放された者、カーン》 2 《精霊龍、ウギン》 -呪文(34)- |
2 《スラーグ牙》 3 《自然の要求》 3 《神聖な協力》 3 《歪める嘆き》 2 《安らかなる眠り》 1 《貪欲な罠》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
トロン系デッキはすでに当コラムでも解説したことがあるので、トロンの基本的なお話はそちらを参照にしていただければありがたい。
モダン環境に早い段階から存在し、デカブツ連打マジック愛好家の欲求を満たし続けている。その時代によって同じトロンでも流行り廃りがあり、青白・青単などを経て現在は赤緑の2色を採用したものが一般的となっている。赤い除去呪文に、緑の土地サーチ&大型クリーチャーというわかりやすい構成で、シンプルながらに強力なデッキとなっている(かの黒田正城も一時期愛用)。
今回紹介するデッキは、赤の部分を白に置き換えたもの。この2016年に入ってからその姿を見かける機会が増え、先日大型トーナメントで優勝を果たしたことで一躍トロンの新定番に躍り出ようか、という旬のデッキである。
赤が白になることで、デッキがどう変化するのか。赤緑型では《炎渦竜巻》が3枚ほど採用されているが、緑白型はこの枠が《流刑への道》に置き換わっている。全体除去か単体除去か。この手のコンボ要素を持ったデッキが対戦相手への対処手段として除去を採用する際に迷うことになる、避けては通れぬ二択。両方!というのはデッキの形を歪めてしまう。特にトロンのような嚙み合わせデッキにとっては、それにより生じるドローの偏りがこの上なく致命的だ。緑白型は横並びデッキよりも、単体で仕掛けてくるデッキに対しての耐性を上昇させている。
それはなぜか? 今のモダンで倒すべきデッキには、そのアプローチの方が正しいという判断からだろう。特に最大の敵となるのは......前回紹介したばかりの「感染」デッキだ。トロンは最序盤、ハッキリ言って無防備そのものだ。「ウルザの」土地を揃えるため、カードを引いて土地を探して戦場に出す。これ以外のアクションは取れない。「感染」側から見ればサンドバッグである。3ターン目に《炎渦竜巻》で全体3点、では間に合わない。《墨蛾の生息地》が殴ってくるのをどうしようもないし。
というわけで、たった1マナで使用できる確定除去《流刑への道》の出番である。これならば、上述の土地揃え中にも無理なく構えることができるし、墨蛾プランにもバッチリ対応。この除去の最大の弱点は対戦相手のマナを伸ばしてしまい、対戦相手の今後のアクションがこちらよりも強力になってしまうという点だが......トロンのマナ生産力にはちょっとやそっとじゃ追いつけっこない。生きてターンが還ってくれば、こちらは7マナ8マナあるいは10マナ以上生み出して、カーンだのウギンだのエルドラージだので圧殺可能なのだ。というわけで、《流刑への道》はこの上なくスマートなチョイスだ。
白を取ったことで、サイドボードに白いカードを取れるのも利点。《神聖な協力》は追加の除去であり、《顕在的防御》などで護られる「感染」のクリーチャーを確実に仕留め、「バーン」を相手にしても除去と回復をこなす優れものインスタント。《安らかなる眠り》は絶賛増殖中の「ドレッジ」に対して致命的な一打である。これさえ設置して時間を稼げれば、後は超ヘビー級のカードパワーがゲームを終わらせてくれる。
墓地対策にはこの定番の1枚に加えて、《貪欲な罠》が1枚だけ取られているのも面白い。ヴィンテージでは割とお馴染みの1枚であり、盤面に対策カードがないのを良いことにたっぷり発掘を行った対戦相手の墓地を総ざらいして絶望の淵に突き落とすことができる。このカードはワールド・マジック・カップでも活躍しており、今後のモダンの定番サイドボードになる可能性もある。
今回は赤緑との違いについて書いたため、細かいお話になってしまったが......要するに3ターン目に7マナ揃えてメチャクチャしたい!という猛獣の心を満たしてくれる良いデッキである。破壊衝動に溢れたら、今こそトロン!
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