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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アグロ・デリリウム(黒緑昂揚)(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アグロ・デリリウム(黒緑昂揚)(スタンダード)

by 岩SHOW

 ここ最近のスタンダードのプロツアーの結果は、その後のスタンダードのメタゲーム(デッキの流行)に多大なる影響を与えている。「アブザン・アグロ」「ダーク・ジェスカイ」「緑白トークン」「バント・カンパニー」などなど......TOP8まで勝ち上がったデッキがそのまま環境末期まで活躍し続けるパターンが続いてきた。

 ではプロツアー『カラデシュ』はどうか。何年ぶりかというコントロールデッキ同士の決勝戦、制した八十岡選手の「グリクシス・コントロール」は専用デッキ過ぎて同じレベルで使用できるプレイヤーが存在せず(アメリカのトッププロ、ゲリー・トンプソン/Gerry Thompsonもお手上げだったようだ)、まあこれが流行らないのはしょうがないというか当然というか。ただ現状、環境を支配する強さを見せているデッキは、このプロツアーのTOP8まで勝ち残れなかったデッキであるというのがこれまでと違うなと。

 そのデッキは「黒緑昂揚」。このデッキは《霊気池の驚異》を用いたデッキを苦手としており、これが大挙して押し寄せたプロツアーでは白星を重ねることができなかった。しかし《霊気池の驚異》デッキはその他のデッキを相手にした時には脆く、特に打ち消しを使用するコントロールデッキと《呪文捕らえ》まで擁する「青白フラッシュ」には手も足も出ない。ゆえに、プロツアー後は全く結果を残せず、対照的に「青白フラッシュ」は環境で最も安定して強力なデッキとして流行りに流行りまくるという展開に。

 そして、この環境に溢れた「青白フラッシュ」と相性の良い「黒緑昂揚」がプロツアーの雪辱を果たさんと増殖。先日行われたグランプリ・ワルシャワ2016では優勝こそ逃すものの、TOP8に6名を送り出すという進撃っぷりを見せつけた。このメタの流れ、面白いね。

 さて、ワルシャワで勝ち上がった6つの昂揚デッキだが、この中に他5つとその内容を異にするデッキがあったので、今日はそのリストを見てみよう。「アグロ・デリリウム」とでも言おうか、攻める昂揚デッキをご覧あれ。

Oleksii Riabokon - 「アグロ・デリリウム」
グランプリ・ワルシャワ2016 8位 / スタンダード (2016年10月29~30日)[MO] [ARENA]
8 《
6 《
4 《花盛りの湿地
4 《風切る泥沼
1 《進化する未開地

-土地(23)-

2 《節くれ木のドライアド
4 《残忍な剥ぎ取り
4 《導路の召使い
4 《地下墓地の選別者
3 《ゲトの裏切り者、カリタス
4 《新緑の機械巨人

-クリーチャー(21)-
4 《顕在的防御
3 《ウルヴェンワルド横断
2 《闇の掌握
1 《殺害
4 《密輸人の回転翼機
2 《最後の望み、リリアナ

-呪文(16)-
1 《不屈の追跡者
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
2 《死の重み
1 《自然のままに
3 《精神背信
2 《垂直落下
1 《闇の掌握
1 《人工物への興味
1 《知恵の拝借
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス

-サイドボード(15)-

 このデッキは、実はプロツアーの段階で存在していた。初日全勝を飾った"E Fro"ことエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichが使用していたデッキが、このガンガン殴る昂揚デッキを選択していた。彼はこのプロツアーのスタンダード・ラウンドにて8勝1敗1分けという素晴らしい結果を残しており、もしTOP8に進出していたらもっと早い段階から強い注目を浴びていた可能性はあったなぁと。それではデッキの内容を見ていこう。

 まずはアグロ(前のめりに攻める)デッキの根幹であるクリーチャーから。どのタイプでも「黒緑昂揚」はやはり《残忍な剥ぎ取り》から始まるもの。「平成のタルモゴイフ」なんて言われたりもするが、打撃力のみならず疑似的なアドバンテージを取ってくるところも加味すれば本家タルモを越えているとすら感じることもある。

 始めは2マナ2/2と標準的でも、これの攻撃を通してしまうと一気に墓地を肥やして、あれよという間に4/4へ成長。ドローの質も良くなり、他の昂揚カードもサポートするという鬼神の如き活躍だ。剥ぎ取りはトランプルを持っているのが素晴らしい。《闇の掌握》などを絡めれば、高タフネスのブロッカーが構えていても貫通してダメージを与えて能力を誘発させることが可能だ。昂揚デッキのこれの枚数が4枚を切ることは、特にアグロ型に関しては絶対にないと言い切れる。

 同じく2マナ域を担うのは《導路の召使い》。エネルギーという回数制限付きのマナクリーチャーであり、3ターン目以降の展開を円滑にするとともに最低限のパワーで殴りにもいける。パッと見、回数制限もなく昂揚により接死持ちとなる《死天狗茸の栽培者》でも良いんじゃないか?とも思えるのだが、召使いはタフネス2なのが環境に合っているため、こちらが優先されているようだ。タフネス1は《スレイベンの検査官》の攻撃すらブロックできず、《最後の望み、リリアナ》でプチッと潰されるのが辛い。

 厳密に言うとクリーチャーではないが、《密輸人の回転翼機》を採用しているのがこのアグロ型の特徴。これと《残忍な剥ぎ取り》でガンガン殴って墓地を肥やしてやろうというわけだ。これをより効果的に運用するために、1マナの搭乗員として《節くれ木のドライアド》が採用されている。昂揚達成後は相討ち要員として地上を見張ってくれることだろう。

 《ゲトの裏切り者、カリタス》は相も変わらずの支配力を誇る。《秘蔵の縫合体》が何度も帰ってくるということを防げるのも大きく、絆魂によりアグロ同士のダメージレースを制する。

 それらのクリーチャーをまとめてワンランク上に引き上げるのが《新緑の機械巨人》だ。トランプル、飛行、絆魂とキーワード能力を持った連中をガッチリと強化して、一気に押し込んで勝利しようというものだ。序盤、《最後の望み、リリアナ》が手札にあるのであればこのカードは墓地に置いてしまっても構わない。剥ぎ取りや回転翼機で埋めて、一早く昂揚達成を目指そう。しかる後にリリアナで回収し、ゲームを決めるのだ。横並びと相性が良い能力なので《地下墓地の選別者》を使ってクリーチャーを展開していくべし(このカードは1/1トークンを生み出すので回転翼機とも相性が良い)。

 呪文はシンプル。インスタント除去に《最後の望み、リリアナ》、昂揚後は《Demonic Tutor》と化す《ウルヴェンワルド横断》というコントロール型とも共通の呪文セットに加えて......《顕在的防御》をしっかり4枚採用。

 呪禁を与えることでクリーチャーを護り、最後の数点を押し込むパンプアップとして優秀な最新鋭の《巨大化》系呪文だ。しつこいようだがトランプル・飛行・絆魂持ちとこれが絡むとバカにならない。対戦相手が緑黒の土地と《密輸人の回転翼機》を展開してきたら、除去の使用タイミングに気を付けよう。インスタントや瞬速持ちだからと言って対戦相手の攻撃に合わせて使用すると、思わぬ追加ダメージを受けることになる。同じ1対1交換になるのであれば、自分のターンで使ってせめてダメージを抑えよう。もちろん、緑マナが立っていないタイミングを狙うべきだが、1マナなので構えるのも簡単だしブラフも容易ときたもんだから、厄介なものである。

 どっしり構える《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を優先したコントロール型か、《新緑の機械巨人》で殴り切るアグロ型か。自身が臨むトーナメントではどちらが勝ちを重ねられるのか、吟味したうえで楽しいゴルガリライフを送ってもらえると、いちゴルガリ団員としては嬉しいね。

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