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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アングリーハーミット3(ヴィンテージ)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アングリーハーミット3(ヴィンテージ)

by 岩SHOW

 君は「アングリーハーミット」を知っているか。知っている人はマジック歴15年を超えるベテラン選手、知らない人は今知ろう。

 ハーミット=《錯乱した隠遁者》をフィニッシャーとして採用した赤緑のコントロールデッキのこと。《錯乱した隠遁者》はカード1枚でクリーチャーを合計5体展開できる。これにより《ガイアの揺籃の地》は鬼のエンジンと化し、溢れるマナで《すき込み》を唱えたり《マスティコア》が乱れ撃ち!する緑単のデッキ「トリニティ」というものがそもそもあった。

 これを喰らうため、赤い火力と土地/アーティファクト破壊を足したデッキが「アングリーハーミット」である。「アングリー」はカード名などではなく、赤の粗暴さからイメージされてつけられていると伝え聞いている。このデッキはアジア太平洋選手権を制し、当時のスタンダードのメタゲームの中心であった。

 これの同系戦を制するために、タフネスの低いマナクリーチャーを《ぶどう棚》など高いものに差し替え、《錯乱した隠遁者》ではなく《ブラストダーム》に置き換えるなど、徹底的に火力対策をした「アングリーノンハーミット」なるデッキも登場。しかしこのデッキはマナ・クリーチャーが重くなることでデッキがスピードダウンし、そもそも「トリニティ」が得意としていた「補充」に対して不利になる......という、ちょっとした矛盾を抱えていた。マジックのメタゲームというものを学ぶには実に良いサンプルだ。


 君は「アングリーハーミット2」を知っているか。こちらのハーミットは同じ隠遁者でも錯乱している人ではなく、《隠遁ドルイド》のこと。

 起動型能力で基本土地がめくれるまでライブラリーを墓地に置き続けるこのクリーチャーを使って、自身の墓地をどっちゃり肥やして悪さするコンボデッキである。《縫合グール》を釣り上げて大型クリーチャーを餌にしてこれのサイズをパワー20オーバーにして、墓地にある《憤怒》で速攻を与えてワンショットを狙う、やっていることは大味ながら確実性も高くハイスピードで勝負を決められる、恐るべきデッキである。

 《憤怒》と《隠遁ドルイド》が採用されていることで、かつての名デッキ「アングリーハーミット」になぞらえて「2」の名を与えられたというわけ。2とついてはいるが、実際の会話の中ではわざわざ2と言ったりはしない。エクステンデッドの話をしていて、過ぎ去りしスタンダードのデッキが出てくるわけはないからね。あくまで表記の問題。

 このエクステンデッドのデッキはトーナメントを重ねるごとに進化し、最終的には《憤怒》が抜けてしまうことに。別にハーミットも怒ってはいないが、ここで先代デッキを習って「ノンアングリーハーミット2」とか名乗っても、もはやB級映画のタイトルのようでわけがわからなくなる。皆《憤怒》抜きのデッキもアングリーと呼んでいた。デッキの詳しい動きは、過去のカバレージを読んで貰えれば分かりやすいかなと。若かりしころの「世界のKJ」こと鍛冶友浩さんの雄姿を見よ!


 で、今日登場するのはそんなハーミットデッキの最新版。《隠遁ドルイド》を用いるデッキだが、このクリーチャーはそのエクステンデッドでの輝かしい実績を称えられレガシーでは禁止カードに指定されている。そのため、これが使用できる唯一の構築フォーマット、ヴィンテージのデッキを紹介しよう。ヴィンテージでなら、そのライブラリーをすべて墓地に落とす能力も健在。元々クリーチャー除去は手薄な環境なので、各種Moxから1ターン目にポンと置けば2ターン目に無事起動、なんてことも度々あるだろう。では、どうやって勝利するデッキなのか、その全貌を見てみよう。

Gary Freedman - 「アングリーハーミット3」
New Zealand Eternal Weekend Andy Fletcher Vintage Open 優勝 / ヴィンテージ (2016年8月21日)[MO] [ARENA]
4 《Underground Sea
3 《Tropical Island
2 《Bayou
4 《霧深い雨林
2 《汚染された三角州
2 《新緑の地下墓地

-土地(17)-

4 《闇の腹心
4 《ナルコメーバ
2 《隠遁ドルイド
1 《荒廃鋼の巨像
2 《三角エイの捕食者
1 《炎の血族の盲信者

-クリーチャー(14)-
1 《Black Lotus
1 《Mox Sapphire
1 《Mox Jet
1 《Mox Emerald
1 《Mox Pearl
1 《魔力の墓所
2 《陰謀団式療法
2 《思考囲い
1 《Ancestral Recall
1 《渦まく知識
1 《思案
1 《師範の占い独楽
1 《吸血の教示者
1 《通電式キー
1 《Demonic Tutor
1 《Time Vault
1 《Time Walk
4 《黄泉からの橋
1 《修繕
1 《戦慄の復活
4 《意志の力

-呪文(29)-
4 《瞬唱の魔道士
4 《吸血鬼の呪詛術士
4 《イクスリッドの看守
1 《漁る軟泥
1 《三角エイの捕食者
1 《暗黒の深部

-サイドボード(15)-
mtgpulse.com より引用)

 《隠遁ドルイド》をタップするとライブラリーがすべて墓地に落ちて......《黄泉からの橋》が多数墓地にある状態で《ナルコメーバ》たちが戦場に出る。これを生け贄に捧げて《戦慄の復活》をフラッシュバックして《炎の血族の盲信者》を釣り上げる。《黄泉からの橋》を渡って蘇ってきたゾンビの群れに、盲信者が+1/+1修整と速攻を与えるので、これらで殴ってゲームエンド!というデッキ。

 勝ち方はレガシーの「ドレッジ」と同じであるが、わざわざ発掘とかチマチマやらずに1枚のカードで全部落として勝っちゃおうよというのが、なんともヴィンテージらしさが溢れていて好いたらしい。

 「ドレッジ」と違って構築に制限があるわけではない(《隠遁ドルイド》と上記コンボパーツがあれば後は自由)なのも強みで、《意志の力》《思考囲い》といった妨害手段に《闇の腹心》をはじめとした各種ドロー・サーチ系カードでアドバンテージを得ながらじっくり戦うことも可能。以前ヴィンテージの「青黒コントロール」を紹介した時にも出てきた《Time Vault》+《通電式キー》=無限ターンコンボや、《修繕》から《荒廃鋼の巨像》を持ってきて一撃毒殺する勝ち筋もあり、墓地対策をしたからといって勝てるわけではないデッキに仕上がっている。サイドボード後は《暗黒の深部》+《吸血鬼の呪詛術士》コンボまで搭載して、押し寄せる必殺コンボの連打で対戦相手を圧殺しようというプランも取れる。貪欲だ!

 対戦相手も墓地を活用するデッキだった場合、むしろメインの《隠遁ドルイド》コンボを抜いて《暗黒の深部》コンボと《イクスリッドの看守》と入れ替えるなんてプランも。う~ん、このビックリ仰天感はまさしくヴィンテージ!

 《隠遁ドルイド》を用いた動きはこのフォーマットならでは。普段ヴィンテージをやっていて、定番のデッキに飽きた人なんかにもオススメだ。《炎の血族の盲信者》がアングリー要素ということで勝手に「アングリーハーミット3」と呼ばせてもらった。今後もアングリーでハーミットなデッキが出てくるのか? 見守っていきたい所存だ。

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