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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:無色エルドラージ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:無色エルドラージ(スタンダード)

by 岩SHOW

 エルドラージとは? 次元と次元の狭間、久遠の闇より来たりし強大なる怪物だ。彼らの特徴は、色を持たぬこと(何体か色付きのドローンがいるが、とりあえず忘れて)。欠色持ちだったり、そもそも完全な無色であったり。エルドラージ・クリーチャーのみならず、それらの持つ能力を表した呪文の数々も色を持たないと、徹底してマジックの根っこの概念である色というものに反発したデザインとなっている。

 『ゲートウォッチの誓い』ではそれまでの超巨大な存在から一転、中型で非常に扱いやすい強力なエルドラージが登場し、モダンを中心にひと暴れ。その後迎えた現環境でも、赤白や白黒といったエルドラージデッキがスタンダードで居場所を確保し活躍している。

 しかし、赤白や黒白といったエルドラージデッキは......本当にエルドラージデッキと呼べるのだろうか? 真のエルドラージ愛好家、エルドリストたるもの、彼らの特性を表現しきったデッキを使ってナンボではないのか?と思ったかどうかは知らないが、Liam Robinsonという一人の男が「これこそエルドラージ」なデッキを体現してくれたので、紹介せずにはいられない。「無色エルドラージ」のご登場だ!

Liam Robinson - 「無色エルドラージ」
Giga-Bites Cafe PPTQ Honolulu トップ4 / スタンダード (2016年4月30日)[MO] [ARENA]
4 《領事の鋳造所
4 《鏡の池
4 《ならず者の道
4 《繁殖苗床
4 《ウェストヴェイルの修道院
3 《オラン=リーフの廃墟
2 《海門の残骸

-土地(25)-

4 《面晶体の這行器
3 《エルドラージのミミック
4 《作り変えるもの
4 《難題の予見者
4 《現実を砕くもの
3 《忘却蒔き

-クリーチャー(22)-
4 《次元の歪曲
3 《歪める嘆き
2 《タイタンの存在
4 《面晶体の記録庫

-呪文(13)-
1 《エルドラージのミミック
1 《忘却蒔き
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
4 《果てしなきもの
2 《タイタンの存在
2 《陰惨な殺戮
2 《存在の一掃

-サイドボード(14)-

 色マナなんて俺たちにゃ不要!ダイヤモンドマークがまぶしい無色マナさえあれば良しッ!見よ、25枚の無色土地の数々を!

 これらの土地は通常のデッキでは色マナを生み出せないというデメリット持ちであるために採用しづらいが、そんなもの端から無色マナしか必要としないデッキにおいては関係なし。各種トークンをばらまいたり、自軍のエルドラージに+1/+1カウンターを置いたり、追加のドロー、呪文のコピー、9/7飛行速攻破壊不能絆魂に変身となんでもござれだ。

 これら無色土地から展開されるのは《現実を砕くもの》《難題の予見者》ら優秀なエルドラージ達。今さら語るまでもないレベルの面々で、特に上記2種と《作り変えるもの》は唱えるのに不特定マナではなく無色マナを要求するために、デッキにおける2・3色目としてカウントされ、扱うにはそれ相応のマナベースを要求されるのだが......何度も言うが、このデッキにおいては彼らを一切の事故無くストレスフリーで運用することが可能だ。

 クリーチャーでない呪文は、除去・打ち消し・マナ加速にドローと、とてもではないが色を持たないデッキとは思えないバリエーション豊富な面々によって構成されている。《歪める嘆き》で《衰滅》を打ち消すなんて、トーナメントで決めたら思わずドヤ顔してしまいそう。

 問題はサイドボードにあり。メインはデッキとして成立するが、このサイドボードの苦しいこと苦しいこと。意地でも無色で組むという気概は素晴らしいが......色がないゆえの限界はここにある。ここは素直に《精神背信》《鞭打つ触手》などの欠色呪文を採用したいところだ。《コジレックの帰還》なんかも良いし、土地の枠に《廃集落》を用いるなどしてデッキにもう少し柔軟さを与えてやるのが良いだろう。そうするとメインから《世界を壊すもの》《希望を溺れさせるもの》なんかを採用できる。

 ただ、無色単にまとめあげたその姿勢は最高だ。まさしく「俺のエルドラージ」感あふれるデッキ。これでPPTQ(プロツアー予備予選)を抜けていれば、もっと話題になってよかっただろうなぁ...ただ、TOP4ってことはあと一歩だったってことでもある。全国のデッキビルダーを志す皆には、いい刺激になったんじゃないかなと。独創的なデッキで勝利するっていう欲求を叶えてくれることもある、けれどそれは簡単なことじゃないっていうマジックのゲームバランスは、本当に素晴らしいものだと改めて思い知らされるのであった。

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