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市川ユウキの「プロツアー参戦記」
市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『カラデシュ』 前編
市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『カラデシュ』 前編
0.挨拶/近況報告
こんにちは、Team Cygames所属の市川ユウキです。
今シーズンも昨シーズンに続き、この「プロツアー参戦記」を執筆させていただく運びとなりました!
これも皆様方のご愛顧あってのもの、こらからもよろしくお願いします。
と、いうことでさっそくプロツアー『カラデシュ』の参戦記を......始める前にご報告がありました!
私市川ユウキ、先月にありましたグランプリ・京都2016、なんとまた優勝してしまいました!
グランプリ・台北2016に続いてTOP8入賞時の連続優勝と、なんとも調子が良いこと。
スイスラウンドの個人成績は7勝7敗と冴えないモノでしたが、
チームメイトの松本友樹さんがエースデッキで堂々の13勝1敗と非常に頼もしく、助かりました。
低マナの無い初手をキープして後手1ドローでスパァン!と今一番欲しいカードを引いてきても表情変えずに淡々とプレイしていて、チームメイトながら横でじっくり見ることはこれまで無かったのでとても新鮮でした。
また、もう一人のチームメイトの瀧村和幸さんは、決勝ラウンドの2回のドラフトで常に強力なデッキを組んでいてこれもまた安心感がありました。
「瀧村君は勝つので、俺が勝てばチームは勝つ。(松本さんのデッキがポンコツだから俺が負けるとチームは負ける)」というのが明確だったので、集中力に繋がりました。
彼のドラフトはいつもシナジーが豊富で機能的なデッキが多く、「ピックとはデッキを構築すること」だと、勉強させられること、感心することが多いです。
と、いうことで頼もしい仲間に支えられて優勝!
チーム戦の優勝はプロポイント6点、またコッソリ取っていたグランプリ・広州2016での3点と併せて9点と、プロツアー前にまさにロケットスタート!
鼻息荒くプロツアー『カラデシュ』への準備を進めたのでした。
1.発売前
環境が新しくなったらまずはマナベースから。
退場されたのは《ラノワールの荒原》などの通称ダメージランドさん。
入場されたのは《花盛りの湿地》などの3枚目まではアンタップで置ける、通称ファストランドさん。
対抗色の2色土地が入退場と、とてもわかりやすい変更。
これはズバリ「環境は早くなるな」と感じました。
2色ビートダウンでの運用はダメージランド、ファストランドともにそこまでの差異は感じられませんが3色以上になると差が出てきます。ファストランドであれば8枚フルの投入も考えられますが、ダメージランドを8枚採用した形は土地から受けるダメージを考慮するとためらわれるものがあります。
また、プロツアー『異界月』で優勝したような「白黒コントロール」などの2色のコントロールでもダメージランドに軍配が上がると考えました。
特に白黒コントロールでは《ゲトの裏切り者、カリタス》や、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》など、盤面を捲り得るキーカードが両方4マナと、ファストランドでの4マナ目の供給の遅れが致命的となります。
3ターン目までににファストランドを消化しておくのがベストですが、《乱脈な気孔》や《放棄された聖域》などの2色タップインランドも多く採用している関係から、序盤に置きたい土地の枚数が多く、それは現実的ではありません。
これは3色のコントロールデッキでも同じことが言えます。
ファストランドは《進化する未開地》や、《大草原の川》などの通称バトルランドとの相性も悪く、重いデッキのマナベース作りは困難を極めます。
2.発売週
そんなこんなでもう『カラデシュ』の発売週。
発売週といえばSCG Open。最近は賞金の増額からか発売週と侮るなかれ、完成度の高いデッキが多く、練習環境の乏しいプレイヤーなどの多くはここで上位入賞したデッキをアップデートして持ち込むことから、この大会がプロツアーの標準となります。
赤白機体
10 《平地》 6 《山》 4 《感動的な眺望所》 4 《鋭い突端》 -土地(24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《無私の霊魂》 4 《経験豊富な操縦者》 3 《模範操縦士、デパラ》 2 《ピア・ナラー》 -クリーチャー(21)- |
4 《石の宣告》 2 《蓄霊稲妻》 4 《密輸人の回転翼機》 3 《高速警備車》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -呪文(15)- |
3 《稲妻織り》 4 《流電砲撃》 2 《断片化》 2 《空鯨捕りの一撃》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
すっごい攻撃的な《前兆占い》である《経験豊富な操縦者》や、《模範操縦士、デパラ》など、『カラデシュ』のカード満載な赤白機体。
前環境の「白単人間」のような立ち位置であるアグロデッキですが、《鋭い突端》や《領事の旗艦、スカイソブリン》などのクリーチャー化カードで全体除去への耐性を持ち、《模範操縦士、デパラ》や《密輸人の回転翼機》などでリソース勝負にも立ち向かえるなど、アグロデッキでありながらさまざまなベクトルでの対処法を迫って来ます。
パッと見は《領事の旗艦、スカイソブリン》が重そうに感じたり、《模範操縦士、デパラ》のスロット、全部《ピア・ナラー》に寄せたほうが良いんじゃないの?とか思ったわけですが、テストプレイしてみるとどのカードの枚数も絶妙に感じられ、優勝するに相応しい完成度だと感じました。
緑黒昂揚
8 《沼》 7 《森》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地(23)- 4 《節くれ木のドライアド》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《森の代言者》 2 《不屈の追跡者》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 2 《新緑の機械巨人》 1 《害悪の機械巨人》 -クリーチャー(19)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《闇の掌握》 3 《過去との取り組み》 4 《密輸人の回転翼機》 3 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(18)- |
1 《膨らんだ意識曲げ》 4 《死の重み》 4 《精神背信》 2 《破滅の道》 2 《餌食》 2 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
今やモダン環境でも使われている《残忍な剥ぎ取り》を主役とする緑黒昂揚。
緑軸の昂揚デッキというと前環境では《約束された終末、エムラクール》などを入れ、ディフェンシブなデッキといったイメージでしたが、今回のリストは一線を画しています。
《密輸人の回転翼機》は攻撃時のルーター能力で昂揚の達成を助けつつ、アーティファクトとしてカードタイプカウントに寄与するなど、まさにデッキの方向性を変えた大型ルーキー。
《密輸人の回転翼機》を動かすために3マナ以下のクリーチャーで13枚前後の搭乗要員を用意する必要がありますが、《節くれ木のドライアド》はその要件を満たしつつ、昂揚したらライフレースに加わってくれるなど、《密輸人の回転翼機》が与えてくれた方向性にマッチしているカードと言えます。
その他《ウルヴェンワルド横断》のサーチ先として採用されている《新緑の機械巨人》と《害悪の機械巨人》も非常に強力なカードで、特に《新緑の機械巨人》は攻勢時の盤面へのインパクトを考えると、デッキの方向性的に昂揚デッキでは《墓後家蜘蛛、イシュカナ》より優先されてもおかしくありません。
赤黒機体
11 《山》 4 《沼》 4 《凶兆の廃墟》 4 《霊気拠点》 -土地(23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《ピア・ナラー》 1 《無謀な奇襲隊》 -クリーチャー(17)- |
4 《焼夷流》 2 《街の鍵》 4 《癇しゃく》 4 《無許可の分解》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《高速警備車》 -呪文(20)- |
1 《無謀な奇襲隊》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 4 《流電砲撃》 2 《稲妻の斧》 4 《精神背信》 2 《血統の呼び出し》 -サイドボード(15)- |
発売前から注目されていた《屑鉄場のたかり屋》を採用した赤黒のアグロデッキ。
赤白機体と比べてデッキに入っているカード単体のパワーが低いこと、友好2色の方がマナベース的に不安定なことからピーキーさを感じますが、決して赤白機体の下位互換ではありません。
カードパワーの低さを《密輸人の回転翼機》、《街の鍵》を軸としたディスカードシナジーで補填しています。
《癇しゃく》でテンポを取るのもよし、《屑鉄場のたかり屋》でアドバンテージを取るのもいいでしょう。
その他、このデッキなら《殺害》に3点が付いてくる環境最強除去《無許可の分解》など、赤白機体には無い非クリーチャーでのダメージソースが多く、盤面を相手に完全に掌握されたとしても勝ち得るプランがあるのが魅力です。
と、いうことでやはり発売週。さまざまなデッキが出て来て
これで環境定義もできるなといったところ。
私の見立て通りアグロデッキが多く、やはり土地まわりは環境の方向性を指し示してくれるなと感じました。
この週はドラフト合宿をしていたこともあり、構築は全くできていませんでしたが、翌週からの構築練習に向けて
これらSCGの注目デッキ、自分が組んだオリジナルデッキと両面で試していく必要があります。
......ん?
な、
なんだこれー!!
と、いうことでうっとおしいまでに画像表示を要求した《密輸人の回転翼機》。
編集の方に怒られるのでこの辺にしておきますが、なんとこのSCGOpenのTOP8での採用数は32枚!
マジックでは同一のカードは4枚までしか採用できませんから、驚くことにTOP8に入賞したデッキ全てが4枚フルで採用したことになります。
非クリーチャーパーマネントでのソーサリー除去耐性、3/3飛行と序盤止めづらいサイズ、アグロデッキ特有の引きムラ・マナフラッドを回避するルーター能力とまさに至れり尽くせり。
赤白機体は《模範操縦士、デパラ》や《経験豊富な操縦者》での強化、緑黒昂揚は《残忍な剥ぎ取り》や《節くれ木のドライアド》の昂揚、赤黒機体は《癇しゃく》《屑鉄場のたかり屋》などのディスカードシナジーで、《密輸人の回転翼機》を強く使うことを軸に構築されています。
環境の中心はデッキでは無く《密輸人の回転翼機》。
「《密輸人の回転翼機》を使うか、《密輸人の回転翼機》を倒すか。」
そんな2択を考えさせられる鮮烈な発売週となりました。
3.プロツアー1週前
SCG Openの結果を元に、各々スパーリング用のデッキや、試してみたいアイディアを持って調整会が行われました。
ちなみに今回はグランプリ・京都2016チームメイトの瀧村さん、松本さんと、いつもプロツアーの練習を一緒にしている二人を中心に調整チームを結成。
他にも同じTeam Cygamesの山本賢太郎さん、覚前輝也さん。
世界選手権2011チャンピオンの彌永淳也さん、プロツアー初参加の若手浦瀬亮佑さん、合わせて7人で調整を行いました。
■《パンハモニコン》
カードの発表当時からこのカードにときめきを感じていた私はこれでデッキを作らざるを得ませんでした。
3 《森》 2 《平地》 1 《島》 1 《荒地》 4 《梢の眺望》 4 《植物の聖域》 4 《霊気拠点》 4 《進化する未開地》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地(24)- 4 《壌土のドライアド》 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《変位エルドラージ》 4 《空中生成エルドラージ》 4 《反射魔道士》 4 《新緑の機械巨人》 4 《希望を溺れさせるもの》 -クリーチャー(28)- |
4 《謎の石の儀式》 4 《パンハモニコン》 -呪文(8)- |
「戦場に出たとき」能力のあるクリーチャーを大量に採用する関係から、前環境のバント・カンパニーと緑黒アリストクラッツの中間のような形をイメージ。
《変位エルドラージ》、《希望を溺れさせるもの》、《パンハモニコン》が揃うと無限トークン&無限マナ&無限タップと、スタンダードでありながら無限コンボも搭載!
アドバンテージを稼ぐクリーチャーが多い関係からリソース勝負にも強く、これは出来たか最強デッキ!
(間に合うわけ)無いじゃん......。
と、いうことで赤白機体にコテンパンにされました。
メインボードで《密輸人の回転翼機》を止められる術が《変位エルドラージ》の起動型能力か《希望を溺れさせるもの》のタップ能力しか無く、それは後半にしか使えません。
ようやく盤面を整えられたか......と思っていると降ってくる相手の《領事の旗艦、スカイソブリン》など、赤白機体の多角的な攻めに敢え無く完敗。
冷静に考えて、4マナで置いた時に盤面に干渉しないカードがアグロ環境で強いわけがないですよね。
□《霊気池の驚異》
5 《森》 2 《島》 1 《山》 4 《植物の聖域》 3 《獲物道》 1 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 4 《進化する未開地》 -土地(24)- 4 《光り物集めの鶴》 3 《導路の召使い》 3 《不屈の追跡者》 2 《世界を壊すもの》 2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(14)- |
3 《霊気との調和》 4 《ガラス吹き工の組細工》 4 《織木師の組細工》 3 《蓄霊稲妻》 4 《霊気池の驚異》 4 《慮外な押収》 -呪文(22)- |
1 《不屈の追跡者》 4 《放浪する森林》 3 《新緑の機械巨人》 1 《取り繕い》 4 《霊気溶融》 1 《蓄霊稲妻》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
私がオモチャで遊ぶ一方、山本さんは遊々亭さんが行っている大会で好成績を残した仲田さんのデッキに手を加えて持ち込んでいました。
《霊気池の驚異》を絡めると最速で4ターン目に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》がプレイできるとあって、環境の最大値はこのデッキかなといったところ。
《織木師の組細工》のライフゲインや、《コジレックの帰還》の通常プレイが効く相手には序盤を凌ぐことが容易で、用意していた赤白機体にはなかなかの勝率。
□《金属製の巨像》
7 《島》 3 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 4 《ウギンの聖域》 2 《発明博覧会》 2 《繁殖苗床》 1 《ガイアー岬の療養所》 -土地(23)- 4 《光り物集めの鶴》 2 《屑鉄場のたかり屋》 4 《鋳造所の検査官》 2 《老いたる深海鬼》 4 《金属製の巨像》 -クリーチャー(16)- |
4 《予言のプリズム》 4 《次元の歪曲》 3 《金属紡績工の組細工》 1 《街の鍵》 2 《面晶体の記録庫》 4 《耕作者の荷馬車》 3 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -呪文(21)- |
2 《難題の予見者》 1 《絡み草の闇潜み》 3 《儀礼的拒否》 3 《否認》 2 《霊気溶融》 3 《焼夷式破壊工作》 1 《慮外な押収》 -サイドボード(15)- |
コンボデッキが大好きな松本さんは《金属製の巨像》デッキに夢中。
《ウギンの聖域》を絡めて0マナで10/10を連打する様は圧巻の一言。
□グリクシス現出
2 《島》 1 《沼》 3 《山》 3 《窪み渓谷》 4 《燻る湿地》 3 《尖塔断の運河》 3 《ウギンの聖域》 4 《進化する未開地》 -土地(23)- 4 《傲慢な新生子》 2 《墓所破り》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《秘蔵の縫合体》 4 《憑依された死体》 2 《不憫なグリフ》 4 《老いたる深海鬼》 -クリーチャー(24)- |
4 《安堵の再会》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《終わりなき時計》 3 《コジレックの帰還》 -呪文(13)- |
2 《膨らんだ意識曲げ》 3 《侵襲手術》 2 《稲妻の斧》 3 《集団的蛮行》 1 《コジレックの帰還》 2 《即時却下》 2 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
同じくコンボデッキ好きな瀧村さんは《秘蔵の縫合体》デッキを模索。
《安堵の再会》は非常に強力なドロースペルですが、《過去との取り組み》や《ウルヴェンワルド横断》などロングゲームに強いスゥルタイ(黒緑青)カラーも検討されました。
4.プロツアー1週前~当日
各デッキの感触を確かめ、プロツアーまでの平日は各自Magic Onlineを用いての感想、結果の報告。私は他のチームメイトの意見を聞きつつ、色んなデッキを回していました。
□緑黒昂揚
評価......×
赤白機体の《密輸人の回転翼機》には《闇の掌握》が最適な回答です。
他にも《蓄霊稲妻》などが候補に上がりますが、《経験豊富な操縦者》と《模範操縦士、デパラ》、それに《無私の霊魂》を擁する赤白機体の《密輸人の回転翼機》には3点ダメージでは信頼に足りません。
また《最後の望み、リリアナ》は《無私の霊魂》、《経験豊富な操縦者》、《模範的な造り手》とプラス能力で倒せるクリーチャーが多く、機体とミシュラランドで劣勢と思われるプレインズウォーカーの中で一際輝く存在でした。
ただ、《霊気池の驚異》デッキには相性は最悪。
クロックもそこまで早くないため、相手が例え多少出遅れたとしても《霊気池の驚異》にたどり着くターンを与えてしまいます。
サイドボード後は《精神背信》や《人工物への興味》などのカードで対応しようと試みますが、そこまで有効的ではないため、サイドボード後も不利な戦いが続きます。
《霊気池の驚異》デッキは正直シークレットテクでもなんでもなく、どの調整チームも考えつきそうなデッキで、かつ環境トップメタと思われる赤白機体にやや有利なため、プロツアーでは相当数いるだろうと考えていました。
そのため、それに不利な緑黒昂揚には魅力を感じず。
□《霊気池の驚異》デッキ
評価......△
一方《霊気池の驚異》デッキはチーム内での評価は上々でした。
赤緑2色にして《安堵の再会》を入れ引いてしまった大型クリーチャーを捨ててドローに変換したり、《荒地》を入れ《残された廃墟》や《面晶体の記録庫》を採用しランプとのハイブリッド型を試してみたりと、さまざまなバージョンが作られました。
ただ、私の中ではチーム内での評価とは裏腹にイヤな予感がしていました。
まずひとつは安定性の欠如。いかにランプとのハイブリッドをしていたとしても《織木師の組細工》や《残された廃墟》など明後日の方向を向き合っているカードを採用している以上安定性の低さを補填しきれていませんし、《霊気池の驚異》にオールインする形だともちろん《霊気池の驚異》を引けなかった場合はゲームに負けることになります。
二つ目はプロツアーでの対策を予感したこと。
前述した通り《霊気池の驚異》デッキはありふれたものであり、事実Magic Onlineでもチラホラ当たるようになっていました。
《儀礼的拒否》は明確な《霊気池の驚異》への回答で、サイドボード後もこちらのアグレッシブサイドになるだろう《難題の予見者》が引っかかってしまったりと、かわし切ることは不可能でした。
またMagic Onlineでとあるデッキが大流行していたことも、私が《霊気池の驚異》デッキを使わないことになる大きな理由でした。
□赤緑エネルギー
評価......○
7 《森》 3 《山》 3 《燃えがらの林間地》 3 《獲物道》 4 《霊気拠点》 -土地(20)- 4 《導路の召使い》 4 《通電の喧嘩屋》 2 《牙長獣の仔》 4 《静電気式打撃体》 4 《逆毛ハイドラ》 -クリーチャー(18)- |
4 《霊気との調和》 4 《顕在的防御》 4 《撃砕確約》 4 《気宇壮大》 2 《蓄霊稲妻》 4 《放たれた怒り》 -呪文(22)- |
4 《ラスヌーのヘリオン》 4 《流電砲撃》 1 《自然のままに》 2 《翼切り》 2 《蓄霊稲妻》 2 《人工物への興味》 -サイドボード(15)- |
まるでリミテッドかと見間違うカードラインナップ。
そんな見た目のチープさとは裏腹にデッキは本物。
《通電の喧嘩屋》や《牙長獣の仔》など与しづらいクリーチャーで《放たれた怒り》を絡めた即死プランをちらつかせながらのビートダウン。
《顕在的防御》がありますから、相手のターンを待っての除去はし辛く、これらのクリーチャーをこちらのターンに除去することになりますが、その度にエネルギー・カウンターが相手に溜まっていきます。
その有り余るエネルギーをもとに場に出る《逆毛ハイドラ》と《静電気式打撃体》はまさに一触即発。
特に《逆毛ハイドラ》はそれだけで除去耐性を持ち、後半にダメージを通してしまったら手札に潤沢にある強化系呪文でワンショットキルを決めてきます。
モダン・フォーマットで例えると「感染」デッキのような立ち位置で、干渉手段の乏しい《霊気池の驚異》のようなコンボデッキはキルターンでも一手遅く、まさに赤緑エネルギーは他のコンボデッキを刈り取るデッキでした。
環境の除去の弱さが追い風となり、見た目よりずっと対処に困る赤緑エネルギーはプロツアー本番でも一定数いると考え、《霊気池の驚異》デッキに加え《金属製の巨像》デッキはサイドボードも含めて打開できるプランが作れなかったため使う気が起きず。
サイドボードカードの弱さ
今環境は《天界の粛清》や《自傷疵》などの色対策カードが無く、全てのカラーリングがサイドカードに乏しいです。
この他にも「ティムール現出」などさまざまなデッキもチームで試しましたが、「メインは悪くないですがサイドボードが弱いです」という報告が上がることが多かったです。
「メインボードの強さはどのデッキもどっこいどっこい、サイドボードの強いデッキで出たい」
と、調整の終盤は考えるようになりました。
その乏しいサイドカード環境の中で《儀礼的拒否》と《集団的蛮行》はとても魅力的に見えました。
《儀礼的拒否》は前述しました通り《霊気池の驚異》デッキへの最高の回答です。
その他《金属製の巨像》デッキにもさながら1マナの《対抗呪文》といった形で、環境に一定数いるコンボデッキ2種に明確に効きます。
また《集団的蛮行》は赤緑エネルギーへのアンチカードと言えます。
「-2/-2」モードで《通電の喧嘩屋》と《静電気式打撃体》に対処でき、「ディスカード」モードで対戦相手の手札の強化呪文を捨てさせることができます。
この2枚、特に《集団的蛮行》は複数のモードを選択する際手札を捨てないとといけないため、使えるデッキは限られてきます。
これらのカードを使えるデッキと言えば......?
といったところで前編は終了!
後編はプロツアーで使用したデッキの解説から、大会レポートをお送りしたいと思います。
お楽しみに!
市川
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