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Magic Story -未踏世界の物語-

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プレインズウォーカーのための「イクサラン」案内 その2

R&D Narrative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2017年11月8日

原文はこちら

トレゾンの征服

 八世紀前、トレゾンの大陸は多様な国家や都市国家の集合体であり、科学の進歩や芸術の繁栄、賑やかな商業の新時代を満喫していました。ですが遠方の山岳国家にて戦争が勃発したことで、薄暮の軍団が誕生しました。危険な吸血鬼の征服者に率いられ、軍団は容赦なく大陸を総ざらいしました。軍団が大陸で支配を広げるとともに、大勢の難民がその進軍から逃走しました。裕福な海の商人は沿岸の自由都市連合から船出して大胆にもイクサランの大陸へ繰り出し、そこで太陽帝国との交易を確立しようとしました。帝国から拒絶されると、その商人らは海賊行為に転じました。トレゾンは今や完全に軍団の占領下にあり、彼らの居住地は世界の別所にも存在します。今や彼らは過去最大規模の侵略のために海を渡りました。太陽帝国を征服し、海賊を追い払い、その過程で黄金の都の力を手にしようとしています。

トレゾンの歴史

 薄暮の軍団と、鉄面連合を組織する船乗りはイクサランの大陸においては新参者です。とはいえ彼らの古の歴史は、不滅の太陽を通じて太陽帝国や川守りのそれと関わっています。

日の翳り

 不滅の太陽がイクサラン大陸へもたらされる以前、それは元々、後に薄暮の軍団となる人々に守られていました。何世代にも渡り、不滅の太陽は山中の修道院にて神聖なる管理人らの保護下にありました。

 不滅の太陽は宗教的に敬意の対象とはなりましたが、その存在は現地の君主へと国家的な問題において不相応な影響力をもたらしました。嫉妬心が芽生え、修道院は敵対する王の軍から襲撃を受けました。その王は歴史において「悪辣なるペドロン」として伝わっています。ペドロンの軍勢は聖域へ乗り込み、僧らを圧倒し、不滅の太陽を手にしました。その尊い宝物の最後の管理人であったエレンダという名の女性が、死亡したとみなされ聖域に取り残されました。ペドロンの軍勢が出発すると、翼をもつ存在が空から降下して彼らから不滅の太陽を奪い、その秘宝を西へ持ち去って行方をくらましました。

 しばしの間、教団の人々は崇拝対象である不滅の太陽を取り戻すという執念に引きずり込まれます。年月が過ぎ、ですが不滅の太陽は失われたままでした。執念は非難へと転じました。俗世の統治者らが内なる政治的紛争にかまける中、教会は不信心の者を咎めました。かつて物理的な崇拝対象であった不滅の太陽は、ただ物珍しい程度の伝説へと薄れてしまいました。

異統戦争

 軍団が統治する領土は今や大陸全土に広がっていますが、常にそうだったわけではありません。八百年前、トレゾンと呼ばれる山岳国家(後に大陸全体の名となります)が、統治者の死とともに三つに分裂し、それぞれをその子供が統べました。長姉が最大の領土を相続しましたが、年少の兄弟二人がそこへ軍勢を向け、分かたれた国を荒々しく再統一しようとしました。トレゾンの教会は三国でも強大な軍勢であり、その指導者らは反抗的な兄弟を異端の簒奪者と非難しました。恐らくは教会の影響力を強めようという狙いがあったと思われます。兄弟は異統の王子と呼ばれるようになりました。

 すぐにトレゾンの軍隊は宗教的熱情の波に乗り、猛烈な信仰心をもって異統の王子らとの戦争に突入しました。ですが王子軍の総合力はトレゾンの熱狂的な軍隊にすらも勝ることが明らかとなりました。戦争は三百年に渡って続き、統治者三人の子供と孫がその紛争を継ぎました。戦争の残虐行為によって全土の人口は減少しました。貴族は衰退し、騎士は数を減らし、ですがトレゾンの統治者と教会の司教らは敗北を受け入れませんでした。戦争が始まって三世紀目のこと、異統の軍は一連の勝利を満喫し、やがてトレゾン首都の尖塔を視界にとらえました。女王と教会の連合軍の残余は圧倒的な侵略軍と対峙すべく整列していました。

 敗北が目前となったその時、一人の見知らぬ女性が姿を現しました。波打つ黒い煙に包まれ、その乗り手は異統の王子らの儀仗兵へ突撃し、行く先の全てを殺戮しました。敵軍は崩れ、撤退しました。その女性はエレンダと名乗り、失われた秘宝の探索から数世紀を経て帰還したと告げました。女王と司教はその主張を疑いましたが、エレンダは捜索を続けるために吸血の祝福をその身に受けたことを告白しました。司教はエレンダの変質を、無私の自己犠牲であると解釈しました。すぐにトレゾン貴族の多くがエレンダの変質の儀式を受け、それは教会によって救済の儀式として知られるようになりました。

吸血鬼の征服行

 救済の儀式はまもなくトレゾンの貴族階級の間では受けて然るべきものとなりました。この吸血鬼となった貴族らの力をもって異統の王子らへ進軍し、王国とトレゾンの連合軍は速やかに勝利を収め、遂には国を再統一しました。ですが三世紀に渡る戦争を経たトレゾンの統治者らは古からの国境で満足はせず、大陸の征服作戦に乗り出しました。長年の戦場経験と、吸血性による超人的能力を得た貴族騎士とが合わさり、トレゾンの軍は大陸最強となりました。更に四世紀の後、熱烈な戦闘と短く不安な平和を交互に経ながら、トレゾンの軍はゆっくりと王国を一つまた一つと飲み込み、中央とする山岳地帯の故郷から外へ広がり、難民の群れを海へ押しやっていきました。

自由都市の陥落

 トレゾンが大陸の征服を目前にした頃、大陸の南岸にはそれでも僅かに都市国家が残されていました。それらを統治していたのは生きた人間であり、自由を手放すまいとしていました。彼らは航海技術を築き、都市間で盛んに交易を行い、短くも大いなる繁栄を享受していました。彼らは本土から離れた島々に居住地を建設し、その地域の豊富な資源を利用していました。その啓発の新時代に、芸術と技術が大いに発展しました。

 ですが無情にも、薄暮の軍団の影はこの自由都市にも届きました。大胆かつ不屈な自由都市の船乗りらは逃れ得ない敗北を受け入れるのではなく、自ら新たな人生へ漕ぎ出しました。薄暮の軍団が決してやって来ることのない、もしくはそう願った彼方の地へと。何よりも自由を愛するこの大胆不敵で強情な冒険者らは、海へ出て未知なる西方へと向かいました。

 水夫らの技術に魔法と技術が合わさり、小型ながらも整った彼らの船は完璧なものとなって危険な大嵐海を進みました。ですが彼らの才能と適応力の全てをもってしても、多くの船が巨大な嵐にのまれ、険しい岩礁に難破し、猛烈な大渦に巻き込まれ、もしくは海の怪物によって海面下に引きずり込まれました。最も頑健な乗組員だけが生き残り、満身創痍になりながらも生きてイクサラン大陸の岸に辿り着けたのです。


《難破船あさり》 アート:Wayne Reynolds

 船がイクサラン大陸に接近して岸へ向かうと、彼らは陸を発見した安堵とともに、太陽帝国の人々と交流しようとしました。そこで交易を確立し、持参した宝物を補給物資と交換し、そして平和の約束を交わすのが狙いでした。ですが太陽帝国は彼らを拒み、船乗りらを岸から追いやって危険な海へ送り返しました。

教会と聖職者

 薄暮教会は薄暮の司教を頂点とした厳格な階級組織です。トレゾンにおける教会の階級は高位の司祭や枢機卿からなる細密なものですが、イクサラン大陸での薄暮の軍団は聖職者の三階級だけが区別されています――僧侶を補佐する低位の助祭、教会の儀式のほとんどを執り行う僧侶、そして僧侶らを監督する主教です。

 教会の教えは比較的単純で、三つの点に要約できます。

  • 血は神聖なものである。生命をもたらすものである。活力の器である。死すべき運命を示すものである。血統を証明するものである。
  • 沈みゆく太陽。救済には代価を伴う。太陽が沈まねば新たな夜明けはないように、やがて救済をもたらすためには闇へと転じねばならない。
  • 血が流れ止まぬ、約束の時代。不滅の太陽の伝説は教会へと新たな観念を灯しました――その秘宝を取り戻せば、吸血鬼へと転じた者へと真なる永遠の生命をもたらすのだと。不死者として存在し続ける後ろ暗さを終わらせるのだと。

 あらゆる騎士団と征服者集団には少なくとも一人の聖職者が所属しています。彼らは多岐にわたる役割を満たします。使者となり、負傷者を癒し、教会の神聖なる怒りを下します。滑らかなローブをまとっていることから彼らを判別できます。

断血

 吸血鬼らは時に、断血と呼ばれる神聖な儀式から吸血を慎みます。長い間、断血中の吸血鬼が被る激しい飢えは実際に超感覚を引き出してきました。

 その状態の吸血鬼は非常に恐ろしく、高められた感覚は狂える怒りと化します、教会はそれを敬虔な信心の最も純粋な形であると宣言しています。

尊者の祈祷

 尊者とは教会が認めた聖者であり、教会の理想を体現するとされる死した吸血鬼です。敬虔な吸血鬼らはしばしば聖遺物を用いて尊者の力を喚起します。それらはかつてその尊者が所有していた武器、鎧の破片、または乾燥した髪の一束や歯、指の骨ということもあります。

賛美者

 賛美者と呼ばれる吸血鬼司祭は、信者を鼓舞するために教会の祝福を与える専門家です。彼らの祝福は重傷をも塞ぎ、信心を鼓舞します。彼らはその儀式において血を様々な用途で扱い、しばしば豪奢な杯に注いだ血をもって祝福を与えます。戦場では、彼らは戦闘で流れた血から力を引き出し、仲間にその力を分け与えます。

叱責者

 叱責者は教会の正当なる権威に背く者を罰する力を振るい、教会の全力の怒りを示します。彼らの呪言は肉体を萎びさせ、闇を呼び、大地を汚し、霊的な力を弱め、毛穴や涙管から敵の血を抜き取ることすら可能です。叱責者の中にはその凝視の力で無力にさせるほどの恐怖を与える者もいます。

 影縛りと呼ばれる叱責者の特殊部隊が存在します。彼らは漆黒の煙がしみ出す真鍮の器を用いて、暗闇からなる不死の精霊を捕獲すると魔法的に束縛します。これらの精霊は征服者が下船する際に船を守り、また吸血鬼の武器に封じられることもあります。

鉄面連合の誕生

 自由都市の船長らはただ別の帝国に頭を下げるために薄暮の軍団から逃れたのではありません。再びその熱い独立心を声高に、彼らは海こそが自分達の領土と主張し、海賊行為と略奪に転じました。彼らはそのような人生がもたらしてくれる自由から、海での生活を喜んで受け入れました。それぞれの船が国に等しい力を持ち、船長はその王となりました。カリスマ的な、もしくは圧政的な統率力で他を統べ、帝国を――つまりは艦隊を――築く船長すらいました。あらゆる国家と同じく、こういった船は競争の場となりました。反乱が起これば一等航海士が船長となり、船長は深海の怪物の餌となるのです。速さを望む船では朝に掲げられた旗が、夕には異なるものになっていることもあります。

 若き鉄面船長ベケット率いる「天罰」号と騒乱船長ジャーレス率いる「烏賊の目」号による壮絶な戦いを経て、ある程度の秩序が海賊船の間に確立されました。「天罰」号が「烏賊の目」号に衝突し、二隻の船はありえない程に絡み合いました。双方の船上で乗組員らの戦いが激化し、二隻が必然的に海の底へ沈みはじめると、それぞれが脱出用ボートを必死で確保しようとしました。ですが運命のいたずらか、二隻の船は浮いたままでした。やがて、どちらにも勝利はありえないと理解し、船長二人は交渉へ進むことに合意します。鉄面・騒乱の両船長はボートに数人と共に乗り込んで新たな旗艦を探しに向かい、他の乗組員はその間残されました。彼らは当初二隻の船を分離しようとしましたが、やがて沈没を防ぐために協力して働きました。後に彼らは孤高街の最初の住人を宣言しました――海賊が会合し、物品や道具や宝物や物語を交換する中立地帯です。以来、他にも遺棄船が孤高街へ寄せられ、もしくはもっと航海に適した船に引かれてやって来ました。そうして街は拡張され、やがて賑やかな小都市となりました。孤高街の存在は海賊船長の間に、好意と義理という稀な通貨を流通させました。

 この海上都市に並ぶマストや傾いだ甲板上で、一時的な協力関係や長く続く同盟が築かれ(もしくは壊され)、やがては複雑な結びつきが船長らを一つに繋げるのです。無論、対抗心や反目もまた存在し続けますが、共通の敵に対する協力こそ自分達の間のあらゆる対立よりも優先すべきと船長らは理解しています。特に、薄暮の軍団がイクサラン大陸へやって来た今は。海賊たちの間に永続的な関係が存在する限り、彼らは鉄面連合を名乗ります。それは今や連合最大の艦隊を率いる鉄面船長を称えてのことです。


《鉄面提督ベケット》 アート:Jason Rainville
鉄面提督ベケットと深海艦隊

 「天罰」号の船長、鉄面のベケットはカットラスの「リッパー」を振るう剣士としての技能と付与魔術の腕の両方で揺るぎない名声を得ました。有名な伝説いわく、「天罰」号の乗組員になればそれまで以上の幸運と速度と力を手にできるのだと。その評判は、舳先を飾る鉄の船首像によるものです。そこには船長の魔術が込められており、船上の忠実な乗組員へ祝福を与えると言われています。その魔法のおかげで、鉄面船長の乗組員は常に最高の宝物を発見し、ほとんどの敵船から略奪できるのです。多くの海賊がその乗組員の座を切望し、幾人かは自分達の船長を捨てて「天罰」号を見つけ出し、栄誉あるその乗組員の座を目指そうとしました。ですがその逃亡者が鉄面船長の乗組員の座を確保したとしても――もしくは「天罰」号を見つけられたとしても――決して抜けることは叶わないのです。この事実は船長とその船、魔法の船首像を取り巻く神秘を深めるばかりです。

 騒乱のジャーレス、「烏賊の目」号と呼ばれた船の航海士は真実を求めることに取り憑かれました。その技術の全てをつぎ込んで彼は魔法のコンパス、地図、六分儀、測径器を設計しました。その全てが一点を指し示しました――鉄面船長の居場所を。そして件の船首像を奪い、研究できたならその魔法の秘密をも幾らか手に入れられるかもしれないと自身の船長を説得しました。

 ですが追跡されていることを知ると、鉄面船長は信頼する一等航海士のレックス・ブリグスに頼りました。レックスは航海道具の魔法的な増強と妨害の専門家でした。彼女はその増強魔法で最大量の黄金を示すコンパスを、埋められた宝物の場所を示す地図を、他船の進路を示す海図を、そして乗組員がそういった約束された場所へ向かう最短距離を示す測径器を作ることができました。ですが同時に彼女の魔術は船の場所を曇らせ、地図をぼやけさせ、コンパスの針を軸から外すこともできたのです。

 鉄面船長の命令で、レックスは騒乱のジャーレスの術を乱す魔除けを少なくとも六つ製作し、「天罰」号は彼から永遠に逃れられると思われました――ゴブリンのいたずら者、モップがいなければ。モップの悪戯によってレックスの魔除けは壊れ、その隙にジャーレスは進路をとって遂に「天罰」号を発見したのでした。

 「天罰」号と「烏賊の目」号の文字通りの衝突は海上都市である孤高街を作り上げ、究極的には鉄面連合を成立させました。以来、鉄面船長は鉄面提督となり、深海艦隊として知られる有能で恐るべき船の連合を率いています。所属する船としては「絞首の紐」号(セデーン・ドレイ船長)、「魔女の策略」号(ファリエン・ゴス船長)、「風縛り」号(カリシャ・アバン船長兼舵魔道士)、そして鉄面提督自身が率いる「第二の天罰」号があり、その恐るべき名声を広めています。幾らかの自由と引き換えに、鉄面船長の旗のもとで航海する安全を選ぶ意思を多くの船長が示しています。

 深海艦隊の海賊らは衣服に織り込まれたロープの意匠で判別できます。それは艦隊と、鉄面連合そのものの絆を比喩すると同時に祝福するものです。


 更なる伝承と背景を知りたい方は、2018年1月2日発売の書籍「The Art of Magic: The Gathering――Ixalan」をお楽しみに!(英語)

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