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Magic Story -未踏世界の物語-
溺墓の寺院
溺墓の寺院
Mel Li / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori
2016年4月6日
前回の物語:マルコフ荘園の謎
ソリン・マルコフを探すジェイス・ベレレンの旅は危険に付きまとわれ、解答よりも更に多くの謎を生み出している。彼はマルコフ荘園のよじれた残骸へと調査に赴き、そこで瓦礫の只中に一冊の日誌を発見した。彼はその中にあった謎の石の描写に注目し――マルコフ荘園内で見た、よじれた石――それらがイニストラード次元に出現した別の場所へと向かった。
ガヴォニーに到着した時、まだ夕暮れは続いていた。荒れ野を覆う霧雨の向こうから、狩人月が睨み付けていた。
ジェイス・ベレレン、ラヴニカのギルドパクトの体現者にして類稀なる精神魔道士は、無言で雨の中を歩いていた。無類のテレパス能力者でも、ぬめる小道を半ば滑り半ば落下するように進むことはどうにもできなかった。だが彼はそうしながらも、マルコフ荘園の緊張に満ちた悪夢から解放されて幾らか楽になっていた。落ち着き、思考は澄んでいた――少なくとも今のところは。
霧の中に、魔法の光が前方わずか数フィートほどの視界を提供していた。彼はそれ以上進めなかった。
「影と幽霊だらけの世界......俺はそれを追いかける愚か者、か」 雨にずぶ濡れになった靴の中を足で押し潰しながら、ジェイスは隠すことなく黙想した。
信頼のおける仲間に導かれたゼンディカーの行軍、それを彼はふと切望した。今ここに彼らの道探しの技術はなく、彼らの姿はなく、ジェイスの旅は沈黙と孤独の中で重苦しいものになり始めていた。彼らの思考、彼らの声。ジェイスは馴染んだそれぞれのパターンを思い返し、不意に口元を歪めた――彼らがいないことを寂しく思った。
外套をしっかりと身体に寄せ、彼の手はポケットの内の日誌の重みを支えていた。小奇麗で手頃な大きさの頁が暗い色の革で束ねられ、繊細に作られた金属の留め具で閉じられていた。マルコフ荘園で垣間見たあの空民の明るい色の顔、それが脳内にひらめいた。紙上の同行者さん、彼は顔をしかめてそう思った。
《タミヨウの日誌》 アート:Chase Stone |
彼は指先を注意深く表紙に走らせ、留め具に触れた。すると日誌は開き、入り組んだ記述の下、剥かれたリンゴのような薄い色の頁が広げられた。途方もなく小奇麗な字が頁を満たし、網目状の表の中には数字が整然と並んでいた。
ジェイスはゆっくりと息を吐き、霧雨から本を守るようにフードを深く引き、丁寧に気をかけながら頁をめくった。
手の込んだスケッチが次の頁を満たしていた。天使の翼――羽根の一枚一枚までが丹精込めた細やかな線で描かれていた。「白鷺月の成分構成」と四角く囲まれた題、その下には優美に陰影をつけた円のスケッチと格子の表。そして頁全体に一部は人間、一部は狼の絵が詳細に描かれており、ジェイスはすぐさま認識した。彼の不幸な案内人、あの夜の生物の同類。
「よし、異邦人さん。君の秘密を教えてくれ」 ジェイスはそう言って近くの岩から泥を払い、座り、読み始めた。
記載433、収穫月:
今朝、思いがけないことに一人の冷静な乗り手が斑芦毛の馬に乗って研究室を訪れてきた。最高に興味深い荷物を持って。その荷物は人間一人よりもゆうに大きく、黄麻布で包まれていた。持ち上げて観測所の玄関に入れるには私達二人の力を要した。その乗り手は口数少なく、だが土の着いた爪先で荷札を示した。「即座の調査を要する標本」とジェンリクの字が殴り書きされていた。
包みを解くと私は息をのんだ。見えたのは毛皮、鉤爪、そして狼の喉輪。狼男。大まかに検査し、過去に取り扱ったこの種のどれよりも遥かに大型でずっと完全なものとわかった。とても驚いたことにこの屍は氷のように冷たく、死んでしばし時間が経過しているようだった。獣人の屍が死後に人間姿へと反転するのはよく知られた事実だが、目の前の標本は辛辣に正反対を示していた。作業を始めたいと心から思ったが、私は配達時間を確認する受領書を求め、乗り手は簡素に署名をした。「R・カロラス」。
標本を洗浄し、残存物を排出し、ラベルを付けて左上半身から始めた。まず大量の分厚い毛皮を取り除き、標本の真皮が露わとなった。
こういった作業においては標本の頭部を覆い隠すのが習慣になっている。検査の間の損傷を防ぎ、またもう少し繊細な理由のために。とはいえ私はその感情を名残惜しく思わずにはいられなかった。見開かれて凝視する両目、口はその最期の瞬間、目の前の処刑者の向こうの何かを呼ぶように開いたまま固まっている。最も可能性が高いのは、私も以前に何度も目にしてきたように、狂喜とともに月を見つめていたというもの。
その獣の感情はジェンリクの言葉を思い出させる。「ある人物が獣性の呪いにさらされる、その正確な原因はわかっていない」彼はそう言っていた。「とはいえそれはあらゆる獣人の基本的性質と密接に繋がっている。月の姿が彼らを抑えられない獰猛さと力で満たす。だが月の銀の接触は毒となる」
初めてイニストラードを訪れた頃を今も鮮やかに思い出せる。終わりのないような冬の夜が続く場所――月の研究の舞台としては最高の場所。その白鷺を見上げると、真の満月は澄みきって、星の光を飲み込む明るさで、狂喜しそうなほどに......私の心にも野生が花開いた。もしかしたら、それは雲の中に置いてきた世界の鮮やかな記憶だったのかもしれない。もしかしたら、その野生を掴んで引き寄せることを怖れない獣人への妬みだったのかもしれない。もしかしたら、彼らは私達が決して知り得ない恍惚を知っているのかもしれない。彼らの血管には月の魔法が銀の満ち引きとなって流れているのだから。
ペン書きの線が上の三段落をこすり消そうとしていた。だがジェイスの魔法の光の下、読めるほどの筆圧が残っていた。記述は続いていた:
ガヴォニー州の吼え群れに特徴的な毛色は上顎に顕著に表れている。この部位は歯の周囲を覆う筋ばった結合組織の存在によって損なわれている。死の苦しみの中では、顎を閉じることはほぼ不可能。
祝福された銀のメスを三本破損し、最初の胸孔切開の試みは更に重厚な器具を必要とした。具体的には伐採用の鋸を一本、隣町のアヴァシン教の伝道師から緊急で紋章を描き祝福を施して頂いた。多大なる努力を要しながら胸郭が開かれ、標本は鎖骨から骨盤まで分割され、その内容物が露わとなった。
私は何度も獣人の整然とした体内に感服してきた。内臓は膜組織の中に巧妙に詰め込まれ、細く枝分かれした血管が至る所までを完璧に繋げている。木々の間を疾走し、距離を隔てた仲間との意思疎通を可能にする大きな肺。獲物の肉をたちまちのうちに消化する、容赦ないほどに有能な肝臓。多数に枝分かれした副腎腺はその内容物を血流へと流そうとしている。理想的な捕食者へと高められた、人間の姿の遠回しの映し身。
だが、この一体は。この一体は......見たことのないものだった。事実これには、この内には人間の姿が、全くと言っていいほど残っていなかった。
腹膜内には強靭な腱が張り巡らされて満たされていた。それは様々な太さで、内臓の多くを押しのけるように伸びていた。この獣は外見も大型だったとはいえ、この巨体の大部分はこのような物質から成っていたらしい。それらは幾つかの部位を太い節で繋ぎ、また塊と化していた。
最大の塊はかつてこの獣の肝臓だったものの内に座していた。肝臓は通常のほぼ二倍の大きさに膨れ上がっていた。
その内臓は悪臭を放っていた――塩辛い腐臭は私の分厚い実験用マスクを通してもたやすく感じられた。私はこの検査に気が進まずにいる自身に驚き、とはいえ好奇心が素早く吐き気を征服した。
肝臓が二つに分かたれた。半身に埋まったそれは固く丸い物体で、輪切りの桃に似ていなくもなかった。海綿状の塊となったよじれた腱の中には折れた歯らしきものが三本、そして太い灰色の毛皮の破片があった。
その穴は半身の一つの中央に埋まっていた。私はそれを上方の顔に向けて回転させた。
違う。「穴」ではない。見えていない、黄色い、狼の瞳。瞳が一つ、まるで空を見つめていた。もしかしたら、その頭部に座す姉妹のように、天の月を。
ジェイスは無意識に顔をしかめ、読み進めるのを中断して顔を上げた。内容に没頭するあまり、彼は頭上で霧が晴れていたことに気付いていなかった。月が前方を照らし出し、浅い沼地に反射して、よじれた石柱の影を投げかけていた。
《奇妙な森》 アート:Jung Park |
それはおおよそ彼の身長ほどの高さで、基礎部は地面から引き出された未加工の石、そして尖った先端を持つねじれた形状へと急激に変化していた。その先端を見つめると、石の構造は数百メートル離れたまた別の石を指していることにジェイスは気が付いた。木々そのものもその石柱の向きを鏡写しにしていた。それは別の石を指し、更に別の石を指し、やがて視界から遥か遠くに消えた。
イニストラードに到着してから初めてだろうか、ジェイスは歯を見せて笑った。安堵の波が彼を洗い流した。もしかしたら何かが判明し始めたのかもしれない。
その石柱は間違いなくマルコフ荘園で見たものと同じだった。日誌の中に見たものと同じだった。
「さて君、紙上の同行者さん、この石について何を知っていたんだ?」 彼はその石が描画された頁を熱心に探した。ある記述が続いていた。
記載643、狩人月:
荒れ野に点在する謎の石の形態についての錬金術的分析は本日完了し、受け取った標本は尋常でない特徴を幾つも持つことが示された。表面の硬度は高く、よじれた軸に沿ってエネルギーが指向性を持って流れていた。興味深いことに、石そのものはごく最近地面から引き出されたことが推測された。だが結晶学的調査では対照的に、標本はこの地域内で見られるあらゆる地層よりも遥かに古いものであると示していた。
ジェイスは頷いた。「方法はよくわからないけれど、君がここでやった事は気に入った」 詳細な記録を拾い上げながら、彼は心を読むことの手軽さと便宜を懐かしんだ。
各石柱内の磁場の強度はこの地域の磁力と磁極をねじ曲げるほどだ。私達は何度もこれらの構造について追加の報告を受け取り、その結果やや沖合へと磁極の位置を移動することになった。この石の破壊的な性質は同時に地域全体でのマナの流れをねじ曲げていると推測され、純粋なマナで構成される存在へと深刻な影響を与える可能性を示唆した――特に、この次元の天使達へ。
ジェイスは手の甲で石柱の底に触れた。それは冷たく滑らかで、表面には光沢のある鉱物が堅固な網目状に広がっていた。
上向きの面の先端に閃きがあり、彼の目をとらえた。触れようと手を伸ばすと、弾ける音とともに火花が石柱の先端から彼の手に走った。ジェイスは素早く手を後ろへ引っ込めたが、細く白い煙が手袋から上がった。何か鮮やかな活力と明晰さが意識に開き、そして素早く消え去った。
「って! アゾール、何だよ!」 彼はすぐさま日誌を思い出し、片腕にそれを抱えこんだ。「大丈夫か......?」 彼は焦げ跡を見て日誌に尋ね、外套の端で表紙を慎重にこすった。
「よし、君はこれを見たことがあるのか、実際にこれが......やってるのを? どう思う? 俺はただ誰かの足跡を追っているのか、また別の策略か罠か、それとも......」 ジェイスは日誌の頁へと突き刺すような視線を定めた。
「それとも、君に起こったのか?」 日誌は、無論、何も言わなかった。
荒れ野は静かだった、沼地の昆虫が立てる羽音以外は。ジェイスは再び読み始めた。
記載735、狩人月:
ガヴォニー人口調査局から先週送られてきた報告は、狼男関連の死者が増加し続けているというものだった。それは各処刑者によって確認され、そしてジェンリクとロクタの基準的な捕食者-餌食相関予測の数を遥かに上回っていた。
ジェイスは幾つもの呼び名に慣れてきていた。だがその中でも「餌食」は彼の内で居座りが良いものではなかった。
以来、観測所への道は封鎖され、更なる情報収集は困難になっている。同僚の多くが自宅に閉じ込もり、調査を断念した。物資の蓄えは少なくなっているが、彼らのために記録を続けるという私の決意は変わらない。
イニストラードの超自然的住人の捕食行動は白鷺月の規則的な動きと密接に関係している。天上の指揮者として、月は満ち引きの移り変わりを用いて原初の心の神秘的な動きを支配し、変身や殺戮へと導いている。
ケッシグにいる同僚が獣人の新たな凶暴性を報告してきたが、ここネファリアで私達も月の揺らぎの兆候を記録してきた(表6-32を参照)。潮流の方向に加えて満潮時の海面も最高記録を越え――
ジェイスは前頁に記録されていた表を、極めて評論的な編者の目でじっと見つめた。ラヴィニアも誇らしく思うに違いないだろう、ギルドパクトとしてのジェイスがそうするのを何度となく見てきていた彼女も。
......実験を三度繰り返したにもかかわらず、測定誤差に含めるには多すぎる。潮流の動きを支配する重力的な力は、月そのものから海にとても近い場所の何かへと動いているように思われる......
「待て。ちょっと待て」 ジェイスは手書きの頁へと腹を立てながら言った。「俺はキオーラがハリマー海をそっくり動かすのを見たぞ」(もしくは少なくともそうしようとしたのを、彼はそう付け加えた)「それに......もし潮流を動かせる何かがあったとしても、とてつもなく巨大なはずだ。そんなものが気付かれないなんてありえない!」 彼は読み進める前に、警告するように本を睨みつけた。
近頃、月の相の持続期間を測定した所、不均等な変化が表れている。それは月の軌道そのものが何らかの方向に引き寄せられていることを意味している。何かとても巨大な、すぐ近くにある、今も人の目には不可視の物体によって。
ジェイスは夜空を見渡した。一つだけの、孤独な月がぼんやりとした星空の寝台から彼を見返した。彼は幻影魔術の痕跡を探った――何もなかった。「君は......君は確信しているのか? それが次元の表面に達した時、何が起こるんだ? 俺達はそれが向かってくる間、ただ待って、見守って、願うしかないのか?」
興味深いことに、潮流の方向と磁場の歪みの両方が同一の集中を見せており、同一の座標を示している可能性がある――ネファリア沿岸の大規模な岩礁へと。
ペンの向こうで蝋燭の炎が揺らめき、新月の空民の儀式の光を思い出した。私達は先祖代々の様式で祝祭の灯篭を掲げ、雲海から昇る新月を導く標とした。その岩礁はこの次元のために何の果実を抱くのだろう?
研究が進むごとに、更なる探究が現れる。すべての問いは答えを3体で記すことができるだろう。
更なる問い。終わりのない問い。
手掛かりは増え、されど解答はない。苛立ちのエネルギーに満たされ、ジェイスは拳を閉じては開いた。憤慨したくなるような物証――自分自身では何も聞いておらず、把握せず、知ってもいない。自身の目すら役立たずに思えた。日誌に導かせる以外に選択肢はなかった。
「何故君はここにいないんだ、なあ? 俺は疑問だらけだ......」ジェイスは日誌へと物憂げな溜息を投げかけた。返答はなかった。「そうだよな。希望的観測をするしかないか」
その頁の本文が彼を見返した、最後の言葉をもう一度読んでみろと。「わかってる、わかってるって。俺達は石の中に手掛かりを見つけた。俺は――じゃない、俺達はそれを追おう。俺はただ......自分が何を探しているのかをよく知りたい、のかな。道なのか罠なのか、君は俺に何を残していったんだ?」
ネファリアへの道はその海食崖のふもとで途切れており、尾根のすぐ上には港町セルホフの屋根が見えた。険しく狭い小道が崖の側面を登っており、ジェイスはすぐに急坂で息を切らす羽目になった。
ジェイスは小道を曲がろうとして、一人の女漁師と衝突しかけた。
「わ! すみません、見てなくて――」
彼女の両眼はジェイスに張り付いた――見開かれて空ろな、瞬きをしない凝視が。
「そう......またあのお方の呼び声を聞きにきた者ね、ふん?」 彼女は尋ね、その言葉はゆっくりと震えるように発せられた。「あんたもあのお方に会いに?」 その声には不気味な歓喜の面影がひそんでいた。「今日だけでもこんなに沢山!」
「あのお方? 誰です?」
「あのお方がついにここに! 翼を持つものたちを空からもたらし、そして潮はあるべき流れに! 堤防を壊して、何もかもを洗い流す!」
ああ、そうか、ジェイスは思った――日誌は海面の上昇について言及していた。「あなたも潮流の変化を見たんですか?」
「ああ、もうそんなものは全然いらない――私達は見つけたんだもの、何ていうか......私達よりもっと凄いものを! 私達がしがみついているものを、私達を押し付けているものを考えてみなさいよ。心配事を持ちながらこの肉の殻の中で生きて、毎日毎日とぼとぼ歩き続ける。もうあのお方はすぐそこにいて、私達を待っている。私達から全てを奪い、新たな世界をもたらす時を待っている!」
「落ち着いて下さい......『あのお方』? 『あのお方』って誰なんです? 何をもたらすんですか?」
その女漁師は吼えるような、とても長く続く笑い声を弾けさせた。「私も前はあんたみたいだった。とんでもない重荷、そうわかってた。疑問だらけで答えなんてない! 今や私はそれを手放して、心から洗い流した。でも前は私も知りたかった......色々と。沢山のことを! 馬鹿げたことを。私のもっと壮大な目的は何なの、私はそれを成し遂げられるの? 私はどうやって死ぬの? 冬はいつ終わるの? その目はどこを見つめているの? 目は何個あるの? 何本の月の脚がやかましく――?」
意味のない言葉が彼女の口から流れ出し、やがて水から上げられた魚のように息をしようと喘ぐまで続いた。
ジェイスは十分に聞いた――この会話をずっと続けるつもりはなく、だが彼女の心が保持しているかもしれない何らかの情報が必要だった。とても慣れた動きで、ジェイスは自身の心を伸ばして彼女の思考を掴もうとした。
最初に掴んだものは接触と同時に青い蒸気の雲と化して消えた。それぞれが奇妙に空ろで形がないものに見えた。彼は眉をひそめ――もっと集中して同調する必要があるようだった。ジェイスは自身の思考を開き、自分達二人の精神を繋げた......
《ジェイスの精査》 アート:Slawomir Maniak |
......そしてくすんだ、灰色の静寂を見た。その静寂そのものが、完璧に滑らかな、緩やかに湾曲した壁を成していた。ドーム状の屋根も同様に滑らかで特徴は無かった。扉はなく、入口もなく、出口もなかった。彼は女漁師の両手を見ることを予測して視線を下ろした。だが彼が見たのは自身の湿った両掌と青いローブだけだった。ジェイスは無言で悪態をついた。
どうしてか、彼の姿は何者かの精神に囚われていた。彼は何者かとして生き、心的虚構を呼吸しながら、それらの脳内に囚われていた。恐慌に陥りかけ、辺りの静寂は耳の中で甲高い鐘の音となった。深呼吸しろ。これは......予測できなかった。
ジェイスは壁に裂け目や欠陥がないかどうかを探りながら、ドームの外縁をゆっくりと歩いた。部屋を取り囲む完璧な円は何の手掛かりも示さなかった。増大する恐怖を抑えつけようとしながら、彼は壁に寄りかかって部屋の中心を一瞥した。
不明瞭な何かの......覆いが宙に浮いていた。違う、何かではなく、何もない。見えない点が空中に残っているように見えた、どうやってそれを見ようとしたのかはともかく。
部屋の中央の盲点に同調し、こめかみの血管が脈動した。彼の汗ばんだ掌は今や滑らかな壁に押し付けられ、とはいえそれは動くことを拒んでいた。
彼は以前にも他者の精神を改ざんし、荒々しい洞察と歪んだ真実を浸透させた。だがこのような歪みに遭遇するのは初めてだった。違う、今も自分は現実と真実の中にいる。それを確信していた。証明できるはずだった。
彼は深呼吸をし、足を広げてしっかりと立ち、ギデオンが辛抱強く強調したように親指を「外側」に拳を握りしめ、そして壁へと殴りかかった。
その衝撃は身体に反響し、神経を伝って彼を後方へと吹き飛ばした。壁は音叉のように震え、ジェイスの痛む脳に音波が騒々しくわめいた。
ジェイスは拡大鏡の下の蜘蛛のようにドームに捕われていた。素早く両目を部屋の中央にやると、視界の盲点は膨れ上がってジェイス自身よりも遥かに巨大な一つの「物体」と化していた。床と天井に触れるほどだった。
彼は両目を固く閉じ、頭を掴んだ。落ち着き、集中しなければ。
「ずいぶん頑丈に建てられてるな」
ジェイスの両目が勢いよく見開かれた。別の人影が立っていた。フードをかぶり、湿った青いローブは薄く透明な光に包まれて、顎をこすりながら、その「物体」を思慮深く見上げていた。それはまるで......ジェイスのようだった。もしくは、もっと正確に言えば、彼の幻影の映し身の一体のようだった。
「こんな場所を見るのは初めてだよな? 思考は混乱して、場所はただ空っぽ。だけど興奮するなあ! 中に何があると思う?」
ジェイスはそのフードの映し身を見て唖然とした。言葉が形を成し始め、だが舌の上ですぼんだ。これを召喚したのではないことは確信していた。それとも本能的に召喚したのだろうか? 思い出せなかった。他者の心に囚われた影響だろうか?
「なあ、行かないのか? もうすぐそこだ!」また別の声が主張した。ジェイスは振り返ると自身の映し身がもう一体いた。この一体はフードを脱いでおり、月のような淡い色の肌が見えた。「この可哀想な女性にかまけてる時間はない――そっとしておけ。溺墓は近いぞ!」
フードの映し身は二体目へと氷の視線を投げかけた。「それでどうするんだ? こういう例外をもっと追うのか? 俺はもうこの袋小路を全部除外していくのは疲れた。このあたりに全部把握している者がいるはずだよ!」
フードの映し身は両手を額にあて、その「物体」を真剣に見つめた。その顔が紅潮し、額には血管が二本滑稽に浮き出て、沢山の汗が浮かび始めた。
ジェイスは顔をしかめ、無防備かつ苦々しい自意識とともに自身を見つめていた。
「本当にそうするんだな、わかってるくせに」 その声は三体目の幻影の映し身のものだった。この一体は紫色の目をして意地悪く笑った。それは淡い二体目の耳へと何かを囁くと、今も深く集中している一体目を指差して何かを企むように含み笑いをした。
淡い映し身はその心を落ち着かせると、真剣な面持ちでジェイスの肩へと手を置いた。
「物理的な研究、調査、測定。それを数か月、いや数年も続けてきた! 君はこんなにも親身になって俺の記録が完成するのを手伝ってくれた!」 熱心に急かすように、薄い映し身がジェイスの腕を引いた。
その「物体」は、今や途方もなく威圧的な巨大さで、ジェイスを見下ろしていた。部屋の滑らかな壁はその「物体」の引力に歪んで曲がり、そして大きなひび割れ音とともに裂けた。壁の破片は更に自ら砕けて「物体」へと吸い込まれ、その下の蜘蛛の巣のような格子構造を露わにした。格子の壁に埋め込まれた無数の目が開かれ、躁的な狂喜をもってジェイスと女漁師を、そしてその先の「物体」を見つめた。壁の背後から白い雑音とともに声が響き渡り、ジェイスの感覚を突き刺して彼に膝をつかせた。床もまたひび割れ、その音を聞くことはもはや叶わないながら、彼の体重に屈することは曖昧に意識し、そして落下していると知り――
――両目が勢いよく見開かれた。両手は頭を抱え、身体は地面に丸められていた。木々の間を見渡すと、筋ばった壁の姿と「物体」はまるで幻肢のように、視界に居残っていた。
女漁師は意識を取り戻してよろめき、一瞬ジェイスと目を合わせた。知っているのだと。聞き取れない言葉をいくつか呟いた後、彼女は耳障りなうなり声とともに急ぎ立ち上がり、小道を駆け下りて海岸から離れていった。
彼女が去ったことをわずかに気にしつつも、考えに没頭しながらジェイスは登り続けた。
道は小さな漁村近くの岩礁、そのすぐ北で終わっていた。あの女漁師が言及していた防波堤は確かに水面下1フィートほどにあり、腐敗した分厚い軟泥の層が月光に輝いて、かつては桟橋とその船だったものを覆っていた。
靴の中に軟泥と砂が混じり、ジェイスは浅瀬へと渡って波に足を洗わせた。それが引くのを待っていた時、彼は気が付いた。海水は海岸から離れるのではなく、平行に動いていた。
砂浜の向こうの何かが、波の通常の動きを確かに変化させていた。
村の南で、尖った構造物の巨大な輪が海面から突き出し、月光に照らされながら、波と通過する船に爪を立てていた。
「溺墓か」 ジェイスは息をのんだ。「これだ! 謎の石は全てここを向いているんだ!」
尖った輪の上には......やはり何もないのか? その上空高くに浮かぶのは、見慣れた白鷺の月以外には何もなかった。
彼は多くの物事に備えてきた。だが何もないとは? 「君はここに何かがあるって約束してくれたと思ったのに! 俺は何かを見つけられるだろうって言ったじゃないか!」 ジェイスは急ぎポケットから日誌を取り出し、勢いよく開いた。
この最初の一連の観察を要約すると、私達の最良の解釈は、天空に巨大な「物体」が突然出現し、徐々にイニストラードへ向かって近づいてきているというものだ。
彼は空っぽの、石の不完全な輪を疑わしく見下ろした。巨大、だが「天体」とみなせるほど大きくはなかった。そして輪の上の空間は見たところただ、何もない空間だった。「さて、君はその物体が具体的にどのくらいの大きさだと考えてたんだ?」
まとめると、この調査で明らかになった発見は著しい質量を持つ物体の存在を支持している。最も可能性が高いのは新たな天体、潮流と魔法エネルギーの正常パターンを共に攪乱する重力的作用をもたらすほどの規模を持つ異界の月と思われる。
「天体? 月の大きさほどもある?」 ジェイスは輪の上の空白地帯を見つめた。近くに別の幻影使いが潜んでいる? そのような兆候は何も感じなかった。
この先、更なる研究のために現地調査が手配される予定だ。
ジェイスは頁を先へとめくったが、その題目についてはそれ以上記されていなかった。「止めるなよ! こんなに近づいたのに! 教えてくれよ! 意味を教えてくれよ!」 彼は革の背表紙を掴み、意図したよりも強い力で日誌を振るった。
一瞬の動きが彼の目にとまった。分厚い雲が頭上で渦巻き、そしてよろめき歩く人型生物が長い列を成し、肩の深さの凍える海から現れた。もっと具体的には、ネファリアの岩礁内に残されていた、死して長い船乗り達の水死体が。
《溺墓での天啓》 アート:Titus Lunter |
ジェイスは幾らかの嫌悪とともにわかった。その腐肉の悪臭は魚のものではなく、十分に塩水に浸かった不死の労働者達のものだと。
あの冷たく腐った手が気管を掴む。リリアナのゾンビの鮮明な記憶が彼の心に不気味に現れた。
ジェイスは警戒して動き、三体の映し身が周囲に現れた。
ゾンビ達の姿にリリアナの言葉が思い出された。「行き止まりなのよ。ジェイス、家に帰りなさい!」 彼女はそう言っていた。
「断る――!」彼は大声で主張した、その熱には彼自身が驚いた。
彼の思考はとてもうるさかった。落ち着け、ベレレン、彼は自身に言い聞かせた。
断る。背を向けはしない。今はまだ。この日誌すら知らない謎も解けないうちは。
ゾンビの行列の詮索好きな視線と距離を保ちながら、ジェイスは進んだ。海水の凍える冷たさに歯が鳴った。ここでの石の配列は荒れ野に見たそれと同じ、とはいえ全体的にずっと大規模で、エネルギーにうなっていた。それらのよじれた形状は次第に細くなって点となり、それぞれが輪の中央を向いていた。
数本の石が浅瀬から飛び出しており、輪の中心からそれた方角を向いていた。ジェイスはその一つへと近づき、わずかな光の中でその石が示す方角をなぞろうと手を伸ばした。
大きな弾ける音とともに、エネルギーの衝撃が石の表面からジェイスへと跳んだ。彼の耳と脳内に覚えのある音が鳴り響いた。
彼はゆっくりと頭を上げた。記憶がよじれた。
あの盲点が、「物体」が、彼の視界の中で不気味に、遠くの石の輪のすぐ上に浮遊していた。その下の石柱の表面を血管のように覆う輝く網と同じリズムで魔力を脈動させていた。これはイニストラードの曲げられた力線の要、そのエネルギーが吸い上げられる中心。
「ベレレン、君は絶対手を出さずにはいられないんだよな。またしてもこれに触って痺れに行くなんて」 その声は肩越しに聞こえてきた。
同じ顔がジェイスの肩越しに覗きこみ、強調するようにその紫色の瞳を動かした。「素敵で明敏な魔道士さん、もっといいやり方があっただろうに」 そしてまるでジェイスの鼻先をつつくように、その幻影の指を伸ばした。ほんの数分前の、精神的罠から出てきた、紫目の気まぐれな映し身。背後には他にもいた――フードの映し身と淡い映し身が。
「ここで何をしているんだ?」 ジェイスは吐き捨てるように言った。「俺はお前達を......」 彼は非難するように他の映し身たちを指差して続けた。「......あの狂った女の馬鹿げた妄想の中に置いてきたのに! お前達がここにいても嬉しくはない、そしてあれを対処する役に立たないのなら」 憤りとともにジェイスは悪臭を放つゾンビの群れを示した。「送還されると思え!」
「受身になる必要はないさ。見なよ、君はもうよく手懐けてるじゃないか!」 紫目の映し身が配列の中央を指差した。淡い映し身とフードの映し身が脇目もふらずに石の輪の中心へと向かっていた。二人は目の前にうろつくゾンビの群れに気付いた様子も、気にする様子もなかった。
『戻れ! 動け!』 ジェイスは声をひそめて罵った。『戻れよ、お前ら!』
「やっと測定が完了するんだ! この石の標本の寸法をどう見積もる?」 淡い映し身の姿がゆらめき、身体はすらりと細くなって優雅な曲線を描き、もつれた髪は兎の耳のような小奇麗にまとめられた二本の房となった。淡い映し身は完全に姿を変えた。一人の空民へと――神河のムーンフォークへと。あれと同じように思えた、マルコフ荘園で彼が幻視の中に見た、これを書いた――
「――日誌。これは......」 ジェイスは混乱し、ポケットの中の日誌を掴んで唾を飛ばした。「これは......君が見せたのか?」
「著しい質量を持つ物体の存在を支持しています。最も可能性が高いのは新たな天体、潮流と魔法エネルギーの正常パターンを共に攪乱する重力的作用をもたらすほどの規模を持つ異界の月と思われます」 その空民の幻影は思いがけない真面目さで告げた。「集中して下さい。私達は調べねばなりません――そして貴方の指針はどちらに?」 確固たる目的を持って石へと歩きながら、それはジェイスへと声を返した。
フードの映し身は既に「物体」の根元に到着しており、そこで彼は立ち止まり見上げた。「まるであの狂った女性の心の中にいるみたいだ! どうして君は俺達をあの女性の中に置いてきたんだ? あの人が何を知っていたかはもうわからないのに!」 映し身の声は甲高く、ゾンビ達が反応した。「ジェイス、見ろ!」 それは叫んだ。「来たぞ!」
ジェイスが我に返ると、何かが頭に当たって海へと落ちた。そしてもう一度。雨粒? 彼は手を掲げ、次に落ちてきたそれを掴んだ。
それは......羽根? 頭上の濃い雲から落ちてきた。彼はやぶにらみで見た。違う、あれは雲じゃない、動くものでできている。巨大な翼の姿。天使。
彼女らは輪の中央の上空に群れ、数体は耳障りな鳥に似た声で呼びかけながら、まるで蛾が炎に向かうように謎の石付近を旋回していた。彼女らの翼の巨大なはためき音は崖に、そしてジェイスの痛む頭の中に反響した。
ああ、そうだ、これは前にも見たことがあった。謎の石を最初に記述していた頁に、同じ筆跡でアヴァシンが描かれていた。目印。手掛かり......それは何か、何か重要なものに違いなかった。
「見た目は綺麗だけど役立たずだね。鳥の翼に鳥頭だ」ジェイスの肩にもたれながら、紫目の映し身が嘲った。
その群れの下では、フードの映し身が「物体」の無情な引力と頭上に旋回する天使に立ちすくみ、ただ空を見上げていた。「潮流を引き寄せるのは何だ?」 ジェイスはその呟き声を聞いた。「ゾンビか、天使か? 俺の目的は何だ、どうやって終えればいいんだ? 疑問ばっかりだ......」
その映し身はよじれた石の輪の中央へ向かって歩いた。その首まで冷たい海水につかりながら、頭をもたげ、両目はそれでもしっかりと上空へ定められていた。それは根気強く前進し続け、水がその頭に迫り、水面下にうずもれた。その映し身の顔が、彼の顔が、ゆっくりと見えなくなるのを、ジェイスは黙って見守っていた。
ジェイスの肩越しに声がした。「彼女が言ってくれたことを覚えてるかな?」 紫目の映し身が片眉を上げて尋ねた、誠実とは程遠い大きな笑みを浮かべながら。
「どういう事だ?」 ジェイス・ベレレンはしわがれた声で言った。喉が乾いていた。
「彼女に会いにきたあの夜に」 映し身のその声は変わった。それは今や......よく知ったものだった。
その幻影の輪郭が月光の下で揺れ、ゆっくりと見覚えのある姿に作り直された。リリアナ・ヴェス。
「俺はあいつに会いに来たんじゃない! 俺は――俺はソリンを探しに来たんだ!」
「彼女はあなたの事をわかっている。ここに来るようには言わなかったでしょう、何せ取り囲むのは死者と......」 彼女は片手を頭上に振り上げた、無愛想な嫌気とともに。「......空飛ぶ害虫」 リリアナの声は熟達の奏者が弦を爪弾くように、ジェイスの生の神経に鳴り響いた。
ジェイスは進みかけて止まった。当たり前だ。ずっとわかっていた、そうじゃないか?
「君なんだろ! こいつらを連れてきたのは! だからグールに俺を追わせたんだろ、だから最初に訪ねていった時に天使について警告したんだろ!」 ジェイスは顔が紅潮するのを感じた。自身の声が聞こえてはいたが、彼女の平静に反してそれは軋んで辛辣だった。
彼はリリアナへと進み出て対峙した。「君の仕業なんだろ! 君はいつも天使を嫌ってた。そしてこれをずっと計画していた、違うか? 君が石の向きを操って天使をここに集めてその心をねじ曲げたのか! 子羊を殺戮するみたいに全部一緒に集めて一度に殺す。どうやったんだ? 何を計画しているんだ? どんな力で遊んでいるかわかってるのか?」
血がこめかみに脈打ち、汗の粒が額に浮いた。「答えろ! 俺のいない所で馬鹿な真似はよせ!」
「私の助力は要らないんでしょう、ジェイス。そしてあなたは......あなたはもっとよく知っているのではなくて?」 幻影でありながら、リリアナの両目は本物と同じように年を経て、ジェイスが覚えている通りの底のない紫色だった。それらは無慈悲な人生から作り上げられた、恐るべき秘密に縁どられていた。
微笑むリリアナの幻影を見つめると、憤慨と告発の言葉がジェイスの喉に積み重なった。だが話し始めると、それは冷たい夜の大気の中へと唐突に消え去った。
ジェイスは海岸へと戻り、独り座って、暗闇の中で震えていた。彼のローブは骨に凍みる寒さを全く防いでいなかった。そして麻痺した足は感覚を取り戻そうとしなかった。外傷はなく、だが震えていた。前方ではジェイスを気にすることなく、グールの行軍が続いていた。
彼は石の輪へと視線を戻した。「物体」は消え去っていた。
彼は震える手で日誌に触れ、だが表紙を開こうとして手を止めた。疑問が今も心に溢れていた――リリアナがどうやって潮流を、もしくは石をこんなふうに動かした? 日誌が主張している星の配置とは一体? 日誌の文章が心に引っかかっていた。「すべての問いは答えを3体で記すことができるだろう。」
違う。鈍く、低くうなる声が彼の心に反響した。尋ねるのは止めだ。答えのない疑問ばっかりだ。その本と謎の底なし井戸は必要ない。お前はここまでやって来た。答えはわかっている。探すのは止めだ。
彼は何度も何度も繰り返し、心で映像を繰り返した――リリアナの顔とその挑発の笑みを消すことができずに。
「天使。ゾンビ。行き止まり......」
狩人月は空に独り、心待ちに浮かびながら、その銀の光は照らし出した大地と海を清めているように思えた。ジェイスはやるべき事を知っていた。
《溺墓の寺院》 アート:John Avon |
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