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Magic Story -未踏世界の物語-
プレインズウォーカーのための『タルキール覇王譚』案内 その1
プレインズウォーカーのための『タルキール覇王譚』案内 その1
Magic Creative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori
2014年9月3日
全二回からなる「プレインズウォーカーのための案内」は合わせて七つの項目に分けられる。今回その1では導入と、アブザン、ジェスカイ、スゥルタイについて述べる。
氏族が統べる世界
かつてタルキール次元には龍が繁栄していた。彼らは力強いエレメンタルの嵐から産まれ、空をその破壊的な吐息で満たし、古からの五つの戦士氏族に恐れられていた。だが遠い昔、龍達は死の運命に直面した。長い間、氏族達は生き残るために、また優位に立つ何らかの方法を求めながら龍と戦ってきた。そして千年以上昔、重要な転機が起こった。龍の嵐が止み、新たな龍は産まれなくなった。彼らは数を減らし、戦争の潮流は変化した。
アート:Andreas Rocha |
最終的に、氏族の戦士達は空の獣の最後の一匹を狩り落とし、彼らを滅ぼした。その次元においてドラゴンは絶滅させられ、戻ってくることはなかった。それ以来数世紀、五つの戦士氏族はタルキールに覇を唱え、今日の強大な氏族へと成長した。現在、五人のカン(覇王)に率いられ、氏族は互いに相争い、凄まじい戦で大地を踏み荒らしている。各カンは他から領土を勝ち取ろうとしている――そして何人かは、全ての支配を願っている。
龍相
氏族は龍を絶滅に追いやったが、各氏族は今もなおドラゴンの性質の一つの相を取り入れている。アブザン氏族、砂漠に生きる打たれ強い戦士達はその忍耐で知られており、倒れたドラゴンの鱗から作られた彼らの鎧がそれをよく示している。ジェスカイ、湖の修道院に住まう僧と賢者達は神秘の技を学び、ドラゴンの狡知を崇める。スゥルタイは密林の暗闇に豪奢な宮殿を建造し、不死者の下僕の帝国にドラゴン種の冷酷さを響かせている。マルドゥの恐るべき乗り手達はドラゴンの素早さをもって高地の荒野に激突する。そしてティムールの巫師と生き残り達はドラゴンの残忍さを模して危険な氷の荒野を征服してきた。ドラゴン達はもういないかもしれないが、彼らの記憶は各氏族の文化、戦闘の流儀、魔法の中に生き続けている。
アブザン家
氏族の概要
アブザンはドラゴンの忍耐を取り入れ、彼らの象徴は鱗である。彼らは、世界は暴力的な地だと理解している氏族であり、その中で生き延びるために彼らは信頼できる存在となり、同時に周囲の人々を信用しなければならないとしている。その結果、義務と家族がアブザン社会の柱となっており、それゆえにそれらを破壊しようとする者を破壊すると堅く誓っている。アブザンは自身を石臼のような存在とみなしている。ゆっくりと動き、常に目的を持って、目の前のものを全て押し砕く。
アート:Mark Winters |
氏族の価値観
アブザンの文化は乾燥した岩砂漠に生きるという苦難に耐えることを中心として築かれている。
家族 アブザンは何よりも家族に重きをおく。家族は彼らに持続と、繁栄さえももたらす制度である。氏族の一員が別の一員へと寄せる信頼の高さは概して血筋の近さが関係する。そういった信頼を裏切ることは儀式的縁切りという結果になり、そこでは当事者双方が血を炎に零す。対照的に、もし氏族のある者が他の者を兄弟姉妹のようにみなすのであれば、それは高い尊敬の証である。
アイノクの信頼 アブザンは氏族外の者に対しては非常に狭量で疑い深くなっている。この基本的原則の唯一の例外は犬人種族アイノクの地位である。長い世代に渡って、アイノクの遊牧民達はアブザンの生存を手助けしてきた。彼らは今もアブザンの都市内にて寛大な目で見られている。とはいえ彼らは一般的に、人間の支配する社会の外縁に住まう。
アート:Wesley Burt |
家族の樹と祖先の霊 オアシスの中であっても、資源の欠乏からアブザンの各家庭はそれぞれ特定の果樹を世話する責任を負う。それらは族樹と呼ばれている。長子はその樹の管理人や世話人となり、他の子供達は兵士や商人、職人となる。そして家族を持った時には、両親の樹の種とともに自身の樹を植える。家族の一員が死ぬと、彼らは家族の樹の下に棺に入れられずに埋葬される。その死体は樹へと栄養をもたらし、将来の世代のための果実となる。墓石の代わりに、族樹に直接名字が彫りこまれる。この発想はアブザンの、家族への義務の理想を反映している。事実、死者の霊は彼らの樹に強く繋がっており、有事の際には呼び寄せることができる。
戦略 アブザンは戦略の達人として知られている。彼らは、戦争のほとんどは軍隊が戦場で交戦する前に終わっていると信じている。規律の取れた兵士達、高い城壁、そして十分な糧食がその日の勝利をもたらすのだと。アブザンは彼らの強さを最大限に活用できる戦場を選び出す能力に重きをおく。そしてしばしば、戦略的な地の利を手にするために勝利の後に敵の追撃を諦めることもままある。しかしながら、彼らは過酷な砂漠の地形を武器として、敗北しつつある状況を逆転させて優位に立つことを学んできた。アブザンの多くの将軍が敵軍を移ろう荒野へと導いた。その地では最終的に、砂漠が勝利を手にする。
氏族の構造
アブザン氏族は網の目のように相互に繋がった家系で成り立っており、それぞれが最年長の者に率いられている。他所者からは、この氏族は単一の存在に見えるかもしれない。現実にはアブザンの組織構造は動的で、家族は他の家族と縁を成すために政治的工作を行いつつ、同時に別の家族を遠ざけようとする。とは言え、その不和によって他の氏族の獲物となりかねないとアブザンの者は皆十分すぎるほど承知している。彼らは氏族の防衛を組織し、戦時には軍を率いるためにカンを選出する。各家族はアブザンの大軍勢へと兵士を提供する義務を持つ。
家族の関係
- 血族の関係:近縁か遠縁かに関わらず、直接血で繋がった家族。
- 盟族の関係:誓いによって繋がった家族(「君は私の妹のようなものだ」)。クルーマ(後述)はこの中に含まれる。
- 氏族の孤児:アブザンの者は家族が無くとも氏族の一部である。孤児達は家族の養子として育てられる。
- 縁を切られし者:儀式的な縁切りを受けた者達。法により、彼らは養子となることができない。アブザンの居住区の外には縁を切られし者の居住地がある。縁を切られし者の中には放浪者、冒険家、傭兵となる者もいる。
- クルーマ:アブザンが戦争と行うと、彼らは敵の中に多くの孤児を作る。クルーマはアブザンに引き取られた敵氏族の子供達であり、彼らは兵士として育てられる。クルーマを引き取ることはアブザンが掠奪者であった時代の伝統に遡り、今日も強い制度として残っている。アブザンに引き取られたクルーマは法によって盟族の関係として扱われ、多くのクルーマが、彼らを守ると誓った家族に引き取られる。沢山のオークがクルーマとしてアブザンに加わってきた。
アート:Kev Walker |
氏族の魔術
精霊語り アブザンの人間の魔術は祖先への崇拝を中心とするもので、それらはアブザンの家の族樹への崇敬と繋がっている。各家の族樹は祖先の霊へと繋がる結節点である。アブザンの中にはそれらの霊と交信する術を学んだ者がおり、子孫を守る、また敵を害するためにそれらを呼び出すことすらできる。アブザンは琥珀、樹脂、樹液が精霊魔術の力となることを発見してきた。アブザンの家には琥珀の防護魔術が見られ、またアブザンの兵士は戦争に琥珀を持っていく。精霊語りは蒸留した樹脂を焼き、精霊と繋がる助けとする。倒れた家の族樹から造られた武器は祝福を受けたものとされている。
悪意の霊 縁切りされたアブザンの者が死亡しても、彼らの霊に行き先はない。アブザンの魔道士の中にはそれらの迷える霊を探し求める者がいる。これは骨の折れる技である、何故ならそれらの霊は復讐に燃え、悪意に満ちているからだ。しかしながら、戦時には悪意の霊はアブザンの魔道士によって呼び出され、敵に対して解き放たれる。
アート:Zack Stella |
アイノクの砂呼び アブザンの中にはアイノクと呼ばれる犬人種族の者達がいる。アブザン家のアイノクは砂漠と深く結びついている。彼らは常に水への道を見つけ出し、移ろう荒野の常に変化する風景の中でもまず迷うことはない。事実、アイノクの中には砂そのものを操る者がいる。彼ら砂巫師は密かに移動することに長け、砂嵐とともに敵を偵察し、もしくは単純に敵を絶望的に迷わせる。アイノクの盟族の教えによって、人間の中にもこの魔術を学んだ者達がいる。
氏族の役割
- 龍鱗:アブザンの軍隊の大部分を締める重装歩兵。アブザンの家族から召集された部隊であり、彼らはドラゴンの鱗の盾を持つ。
- アイベックス騎兵隊:アブザンの重騎兵、もしくは装甲騎兵。彼らは槍と弓を持ち、アイベックスに騎乗する。
- クルーマのオーク:オークの家族から連れ去られ、アブザンの家番として育てられたオーク。彼らは家族として扱われ、アブザンの居住区には沢山のオークの家族が住まう。戦時には、彼らは突撃隊として従軍する。
- 斥候:情報収集の達人であり、しばしば敵の軍勢の移動を妨害するために配置される。
- 樹の管理人:おそらくは最も熟達した戦士達。彼らの家の族樹をどんな犠牲を払おうとも守る、というのが彼らのただ一つの任務である。
- 精霊語り:祖先の霊を召喚し霊媒となる。
氏族の重要人物
アナフェンザはアブザンのカンであり、二頭の貴重なアイベックスが引く重戦車に乗って戦闘に赴く。彼女は前線から戦闘を指揮し、兵は常に彼女が突撃を率いる姿を見ることができる。エイヴンの精鋭隊が常に彼女の傍を固めている。
アート:James Ryman |
アナフェンザはアブザンの領土の中央、アラシン市を防護するマー=エク要塞から統治している。彼女は征服のために戦を起こすことはせず、交易路を維持するために、氏族が機能するために、そして人々と土地をスゥルタイやマルドゥの戦団の侵入から守るために戦う。
「我々は敵の骸骨を積み上げることも、それを装身具とすることもしない。我々はそれらを塵へと削る。敵の家族が涙を流すための何も残さない。子孫に誇る何も残さない。」
――先頭に立つもの、アナフェンザ
ガヴァール・バーズィールはクルーマの指揮官であり、アブザンにおいて彼ほど尊敬を集めるオークは他にいない。彼は戦闘でクルーマを指揮し、その姿は常に最も過酷な戦闘の中にある。彼はほとんどのオークより背丈は低いものの、頑健である。彼は正式に養子となった日に家族から贈られた、祖先の巨大な斧を振るって戦う。彼はその血筋をマルドゥへと辿るが、彼は養子となった氏族を誇っている。ガヴァール・バーズィールはマルドゥを野蛮人であり、自分の運命はいつの日かマルドゥのオークのカン、ズルゴと戦場にて対峙することだと信じている。
氏族の重要地点
始まりの木と琥珀の玉座 始まりの木はアブザンの聖なる樹であり、氏族が興った時に植えられたものだと多くの者が信じている。アブザンは始まりの木を首都から首都へ、世代を経ながら移してきた。そして今それはマー=エク要塞に守られた丘の上に植えられている。始まりの木の広場はその名の通りの場所であり、そこに氏族のカンが法廷を置く。始まりの木は広場全体を影で覆うほどに大きく育ち、屋内にいるような印象を与えている。その樹の根元には始まりの木の樹脂だけによって作られた琥珀の玉座が置かれている。それがカンの玉座である。
マー=エク要塞とアラシン市 アラシンはアブザン氏族の中心である。移ろう荒野を曲がりくねって貫く交易路は全てこの都市を通過し、アブザンの領土やその先から富を運びこんでいる。アラシンは砂漠の砂から飛び出た岩がちの丘の頂上に座し、始まりの木とカンの家である。ここはアブザン最大の都市ではないが、氏族の象徴かつ行政上の中心となっている。都市はマー=エク要塞の巨大な砂岩の城壁に囲まれ、守られている。
砂草原の門 マルドゥの領土との境界近く、砂漠が起伏した砂草原へと変化するあたりに巨大な「砂草原の門」が鎮座している。アブザンの土地の外から流れる河が隔てる二つの山峡にかかる要塞橋である。
見張りの休息地 比較的人口の多いアブザンの土地とスゥルタイとの国境となる山脈の間に、乾燥しきってひび割れた土地が広がっている。アブザンはこの完全に荒れ果てた地の中に、見張りの休息地として知られる監視塔を建てた。それは赤色の石で建造され、宙に四百フィートも伸びている。遠くからは、それは大地に突き差さった巨大な銅の杭のように見える。アナフェンザとアブザンに忠誠を誓った禿鷹エイヴン達が、監視のために休息地へと送られている。
アート:Jack Wang |
ジェスカイ道
氏族の概要
ジェスカイはドラゴンの狡知を取り入れ、彼らの象徴はその目である。この氏族の人々は格闘家、神秘家、放浪の戦士である。ジェスカイにとって、究極の目的は発見と悟りである。氏族の者はかつてない高水準の達成を手にするために、そのエネルギーを学びと「上昇」へと向ける。幼い頃から肉体と精神の厳しい訓練を始め、その者の一生を通して続けられる。氏族は伝統、名誉、尊敬の意識を強く持つ。戦闘における狡知と戦略はドラゴンの目に繋がるもので、ジェスカイにおいて高く尊敬される。ジェスカイの文化は中央都市や権力の座ではなく、一連の孤立した要塞に基礎を置く。これらの要塞は独自の儀式や思考の学院を保持しているが、彼らはジェスカイの伝統と価値で繋がっている。他所者はその厳しい道への献身を証明することができれば氏族に加われる可能性がある。年齢は名誉の証であり、年長者は敬われる。
アート:Dan Scott |
氏族の価値観
ジェスカイ道の四つの柱は規律、悟り、精励、伝統である。
規律 ジェスカイは格闘と武器の技に身を捧げている。農夫であろうと漁夫であろうと僧侶であろうと誰もが武器を選択する。この武器の練習と鍛錬はその者の人生を通して続く。ジェスカイにとって訓練を行わない日は無益な日である。武器の訓練に加え、この氏族の者達は一日に数時間を肉体的瞑想に、戦闘の型を緩やかな動作で練習することに捧げる。これは神秘的な儀式でもあり、ジェスカイの魔道士達はこの訓練を呪文と組み合わせる。だが神秘主義が必須というわけではない。魔術を全く使えない人々にとっても、この肉体的瞑想は老化を遅らせる。ジェスカイの人々の平均寿命は他の氏族の倍以上である。
- 伝授の階段 この階段は宙高くにそびえる白色岩の峰の表面に削り込まれたもので、峰を曲がりくねって囲み、頂上へと向かっている。そこには簡素な寺院と並ぶもののない眺望がある。この階段を登ることはジェスカイの若者の通過儀礼と考えられている。登ること自体は難しくはない――その手で登らなければいけないこと以外は。この技を成し遂げるには途方もない持久力、強さ、平衡感覚を必要とし、転ぶことなく一五七八段全てを登らなければいけない。ジェスカイの子供達は何年もかけて準備をし、早ければ四歳には始める。階段を登りきった者は成人とみなされる。
- 武器の手腕 ジェスカイは多様な種類の武器を学び、作り出す。棒、杖、短剣、折り畳みナイフ、金属の鉤爪、剣、先端の割れた曲刀、長紐、殻竿などがある。ジェスカイのエイヴンはまた長細い網を武器として使用し、敵を殺すのではなく無力化して運び去るために使用する。
アート:Johann Bodin |
悟り ジェスカイは自らを、他の氏族よりも悟った者とみなしている。世界の真の性質を学ぶことができるのは自分達だけであり、それゆえに正義の唯一にして真の調停者なのだと彼らは信じている。複数の悟りの道を追うことができるとジェスカイは信じており、各要塞にはどの道が最良かについてのそれぞれの考えがある。悟りは最終段階とはみなされていない。そして悟りとは何かと尋ねられた時、ジェスカイの僧はただ謎めいた反応......「悟りとは思索不可能な思索である」といったような答えを返すかもしれない。好奇心と発見は知恵を獲得する本質的要素とされている。その者がどの道を選ぼうと、彼/彼女は知恵と哲学的手段を得ることを期待される。世界の根本の力、全ての「火」を操ることを含めて。
- 沸血 ジェスカイにとって、沸血は根本の炎のうち最も重要なものである。戦闘において、戦士は論理と憐れみを捨て去って沸血に身を投じなければならないと彼らは信じている。その状態では、怒りは正当な行動と考えられている。長年の訓練と鍛錬を通してのみ、戦士は沸血の神秘を得ることができる。多くのジェスカイが、沸血が「超人」状態を呼び起こし、その者は武器や他の攻撃からも無敵となると信じている。
- 慈愛 ジェスカイは名誉に重きをおき、しばしば虐げられた者や貧者を助けに出る。彼らは抑圧者や暴漢を素早く判断する――そして素早く殺す。ジェスカイにとって、慈愛は生まれつき存在するものではない。それは学び、鍛錬、経験を通して手に入れるものである。最終的に、慈愛は自己の基礎本能に取って代わりうる。
- 石投げ 尊敬を受ける修道僧にして古のカン、シュー・ユンは石を何千回と水へ投げた――湖、河、海へ。伝説曰く、彼は岸にて、さざ波が消え去るまでをじっと待ち、そして水が彼に知恵を授けたのだと。これは一人の人物が悟りへと至る道の、ただの一例に過ぎない。ジェスカイにはそういった物語が何千とある。各人の悟りへの道は独特でその個人によるものであり、要塞の学者達はそれらの物語を魔法の巻物に記し、永遠に保存する。
精励 ジェスカイは富と快楽主義をこれ見よがしに誇示することを激しく嫌う。彼らの要塞は質素で実用的なものである。彼らの長い寿命から、職人はその商売に熟達するまでの徒弟期間に長い年月を費やす。彼らの工芸品は色彩豊かで、一見誤解してしまうほどに単純なものだが、その背後にある技術は完璧である。ジェスカイは独創的な水車技術を発達させてきた。それは力を生みだし、最も僻遠の山頂にある要塞までも真水を送り届ける。職人達は六分儀や他の素晴らしい金属加工品を作り出すが、それらは少量である。
- 絶妙なる手 賢者眼の要塞に住まう職人達。それぞれが季節に一つだけ、壁掛け、手彫りの横笛、巻物の絵画といったものを作り出す。彼らの作品は全てこの上ないほどに美しく、遠く離れた都市にて高値で取引される。
- 水路 要塞に付属する村以外は、ジェスカイのあらゆる村は事実上、タルキールの水路に沿って位置している。巨大な水車が河の流れのエネルギーを捕え、氏族の勤勉な事業に役立てられている。
伝統 それぞれの要塞に、いかにして悟りの最高「段階」へ到達するかについての秘密の手引きと伝統が存在する。何十もの独自の学院が存在し、多くが古の龍の伝説に集中する一方で、幾つかはエイヴンを取り入れている。多くの鍛錬があり、それぞれを学ぶためには人生の長さを費やす。そのため多くのジェスカイはただ一つの道を行く。誰もが――ありふれた職人であっても――苦難と困苦を経験し、神秘の知識と肉体的熟達を手にするべきだとジェスカイは信じている。
- 賢者眼の年報 これらはジェスカイのカンによって守られてきた、何百年も昔へと遡ることのできる記録である。ジェスカイの指導者だけが――現在はナーセットという名の女性が――年報を読むことを許されている。年報は古の時代を、そして龍の衰退を記している。またそれらは年代を通しても僅かな人々だけが知る、数えきれない呪文と儀式の秘密を保持している。
- 真珠の学院 これは真珠の闘士と呼ばれる信徒達による格闘技の流派である。彼らは村々の間の紛争を調停する放浪者であり、その戦法には敏速な格闘と厳格な規律を伴う。戦闘の間、真珠の闘士達は何千もの真珠を魔術で取り出して操り、それらを攻撃と防御の両方に使用する。彼らは何千もの真珠を波のように宙に舞わせ、また敵を大きな雲の中に捕える。真珠の闘士と無法者の一団との大きな戦いの後には、地面は雪が積もったように白い真珠で覆われる。子供達はそのきらめく残骸を集めて売ろうとするが、それらは戦闘の後数時間で蒸発してしまう。
- ケイシャムの放浪者 この戯れ者の学院は「笑わせ」、もしくは他所者への悪戯を修める。これらの悪戯は人々の信念へと疑問を投げかけ、もしくは人生の不条理さを楽しむことを学ばせる。この学院は要塞を持たないが、その代わりに荒野のただ中で定期的に会合をもつ。ケイシャムは師と弟子との小さな一団で移動し、しばしば生計を請う。不幸にも、他所者から彼ら戯れ者への暴力は珍しいものではない。盗賊はしばしば彼らを楽しみのために狙う。時に彼らは放浪の中で親切な行動に遭遇するが、現金や贈り物とみなされるものは拒否する。多くのジェスカイのイフリートがこの学院の一員となる。彼らは他のイフリートとのみ旅をする傾向にあり、戯れ者となる。ジェスカイのイフリートはその悪ふざけで名高く、その評判はかなりの遠方にまで及んでいる。幾らかのイフリートは悪意のある、ほとんど残酷と言ってもいい戯れに携わり、そしてナーセットによってジェスカイを追放された。
アート:Chris Rahn |
氏族の構造
ジェスカイ氏族は動き続ける放浪者の連合体である。彼らは水の流れとともに移動し、人々が集まり、そこに要塞が置かれるか水路沿いの村となる。要塞の多くはその城壁の中に複数の村を擁し、要塞の神秘家と学者は人生を通して一つの場所に居座る傾向にある。氏族にとっては要塞内部の村が最も安全ながら、ほとんどのジェスカイは河の民として、水の畔に住まう。複数の家族からなる小規模な旅団は一年の幾らかを村から村へと移動するが、しばしば定住もする。自立はジェスカイの人々の特徴である。
要塞と小砦 ジェスカイには四つの主要な要塞が知られている。それらは古くから存在し、到達は容易ではない。それぞれに尊敬を集める学院があり、伝統と悟りへの信念を持つ。また多くの小規模な砦があり、それは比較的最近に建てられて到達も容易である。小砦の幾つかには学院が属しているが、大抵それらは主要な要塞の分派である。小砦はわかりやすい道に沿って建てられ、旅行者は温かい食事と雨風をしのげる屋根を求めて一日か二日で歩いて旅することができる。時折、ジェスカイでない者がジェスカイの領土に砦を設置しようとするが、それらは放浪の戦士達によってただちに崩される。
統治 ナーセットがジェスカイのカンとして認識されているが、各要塞と小砦は日常的な自治が認められている。ナーセットは戦争の問題と外交における権威とみなされているが、ジェスカイは日々の物事については「葦の規則」に従う。それは氏族員をどのように扱うかという単純な規定であり、告発を受けた無実の者の推定、論争を越えた調停の権利、殺人罪に問われたジェスカイへの裁判が含まれている。ジェスカイは他所者が公正な行動と名誉からなる氏族の規則に従うと思っていない。一人のジェスカイが別のジェスカイと取引をする際、彼らは葦の規則に基づいて扱われることを念頭に置く。もし何かが上手くゆかない時は、放浪の戦士達が彼らの利害関係を守ってくれると信頼している。
アート:Chase Stone |
道 ジェスカイの伝統には三つの主要な「道」が存在する。ある学徒が青年期に達すると、その若者は「職人」「神秘家」「放浪の戦士」の三つの道から選択することができる。ほとんどの学徒は氏族の生まれだが、ティムールの若者や他の氏族の孤児がジェスカイによって教育される例もないわけではない。
- 職人の道 この道を選択したジェスカイの子供達は、商売を学ぶことでその教育期間を終える。ジェスカイはあらゆる種類と素材の武器製作で名高く、あらゆる商売に武器製作の要素が含まれる。鍛冶師は鍋と剣を作る。織り手は掛け布と編み上げ鞭を作る。大工は木箱と矢を作る。また水車、船、その他ジェスカイの人々のための道具を造る職人の一団がある。要塞の多くがジェスカイの成長する家族へと頑健な船を贈るために、船職人達に資金を供給して船を作らせる。
- 神秘家の道 この学徒達は秘術と格闘術の訓練を続け、ついには学者、教師、要塞の僧となる。
- 放浪の戦士の道 この学徒達は年長の放浪者の弟子となり、荒野で多くの時を過ごす。そこで彼らは斥候、間諜、放浪する正義の調停者となる。
重要な地点
要塞 ジェスカイの領土のそこかしこに、古の要塞が張り巡らされている。各要塞に教師、格闘術の学院、神秘の教えが存在する。時折、要塞の間で紛争が起こる。ジェスカイのカン、ナーセットは、氏族員や学院間のあらゆる紛争の最終的な調停者である。彼女は氏族員から大いに尊敬を得ており、彼女の統治下、約十年の間ジェスカイは比較的平和を享受している。主要な要塞を以下に記す。
- 賢者眼の要塞 ジェスカイ氏族の主要要塞にして中枢要塞は入江の端の山腹に建造されている。この入江は山に囲まれ、その要塞は船でのみ――もしくは素晴らしい登山技術を持つ者が――到達可能である。この要塞の伝統的格闘を修める信徒は隠密性と素早さと狡猾さで知られている。
- ディルガー要塞 巨大な湖の中央の島に建造されたこの要塞は、木橋が張り巡らされた水上の村に囲まれている。湖のすぐ外にある自然岩の山頂(そしてドラゴンの肋骨)が、それらの橋の錨となっている。ここは主要要塞の中でも最も到達が容易で、塩路として知られる主要交易路の交差点の近くに位置する。その道ではジェスカイがアブザンの商人達と幾分平和に交易を行っている。ディルガーの伝統的格闘術は攻撃的なことと、その信徒は刃の武器の技術として知られている。この伝統の最強の戦士は精霊魔術に集中し、沸血の戦士となる。
- コーリ山要塞 この巨大な要塞は古のカルデラ湖の中に築かれている。巨大な、そして良く保存された龍の骨格が柵のように要塞を取り囲んでいる。この要塞の象徴はドラゴンであり、その伝統的格闘術は龍の動きが元となっている。噂によれば、コーリ山の地下深くに、ある龍の魂が入った神秘の器が埋もれているとされる。
- 河水環要塞 この白い城壁の要塞は崖の中腹に埋もれるように建造されている。巨大な滝が中央砦を貫いており、塔の間に下げられた木製の水車が、要塞本体の中心を流れ落ちる滝の水を受け止めている。この河水環要塞の伝統的格闘術は水の流れを模し、鞭や細長い刃剣や布といったしなやかな武器を用いる。
アート:Jack Wang |
道路と街道 好奇心旺盛なジェスカイは放浪に重きをおく。ジェスカイの領土を貫く街道があり、それはジェスカイのみが知るものと、馴染みのない人々にもよく見える街道との両方が存在する。ジェスカイの道路は山々を貫いて複雑な水路を通り抜ける、通常は最も安全な通行路である。道路の多くに、魔道士でないものには見えない古の魔法がかけられている。エイヴンの魔道士は空中からそういった道の幾つかが、絵のように見えると言っている。その道と絵は特別な意味を持ち、それらは学院や要塞の秘密の書物だけでなく賢者眼の年報にも記録されている。だがその意味は道そのものよりも遥かに知られていない。
- 死せる皇帝の小路:高くそびえる白色の石で記された、山々を貫く道。
- 死者の航路:不幸な噂に満ちた危険な沼沢地帯を通過する道。
- 塩路:これは複数の氏族の領土を貫いて伸びる大きな街道の一部である。ジェスカイの領土を通過する付近には氏族最大の交易所があり、彼らの武器の多くが他所者によって売買される。その交易所はプルギールと呼ばれ、張り出した岩の下の峡谷に位置しているために決して雨に濡れることはない。アブザンもまた塩路を使用しており、時折ジェスカイと紛争が勃発する。
氏族の魔法
実用的なものとして、ジェスカイは不意打ちの類を成し遂げるために隠蔽の魔法を使用する――動きを覆い隠し、変装し、他所の土地を偵察し、敵を待ち伏せする。哲学的水準においては、ジェスカイはエレメンタルの力、「火」を崇敬している。魂火(白)、霧炎(青)、屍炎(黒)、沸血(赤)、生命火(緑)。ジェスカイは屍炎と生命火の存在を認識しているが、それらをジェスカイの伝統の一部とは考えていない。ジェスカイの教えによれば、死の魔術はあらゆる代償を払ってでも避けるべき忌まわしきものである。生命火は抑えられないものと考えられている――それは自然の構成要素でありながら心を持たず独立し、操作できないものだとされている。
ジェスカイのエレメンタルの魔術には多くの面が存在する。エレメンタルの召喚、時間と空間を歪めるもの、癒し、防護、そして戦闘にて優位に立つためのものなど。三つのジェスカイの火を修めた者は存在の次段階を探求し、六番目の炎「幽霊火」へと繋がるに十分な知恵を得る。これまでに幽霊火を制御できたのは僅かな人々に留まっており、彼らは自然の要素を超越し、その基本的性質と存在を変化させることができると信じられている。
氏族の役割
風物見 これはジェスカイのエイヴンが担う一般的な役割である。通常、エイヴンの氏族員は僻遠の高地に位置する孤立した居住地に住まう。だが神秘の道を選択した者は、塔や要塞の上階に住まう。ナーセットは賢者眼のエイヴン達と強い繋がりを持ち、定期的に彼らを他の氏族への偵察任務へと送り出す。時とともに賢者眼のエイヴン達は信頼関係を築き、ジェスカイと他氏族との間の使者となっている。
アート:Johann Bodin |
沸血の戦士 幾つかの学院では自然の要素を操作する術を専門としている。特にディルガーの学院は炎を創造してその力を操る方法、そしてエレメンタルの兵士を召喚する方法をその学徒に教えている。沸血の戦士達は最も恐れられた――そして最も血に飢えた――ジェスカイの戦士である。
放浪の執行人 放浪者の中には、村の執行人としての役割を担う者達がいる。彼らは盗賊から人々を守るために、もしくは他の居住地から不公平な扱いを受けた時に働く。これらは通常短い期間の契約であり、一箇所に長く留まるジェスカイの放浪者は稀である。
無限の神秘家 要塞に住まう人間はしばしば瞑想に至る。時にその期間は何年も続き、その神秘家が強力な戦闘魔術を会得することで終わる。神秘家はジェスカイのエイヴンのもう一つの役割である。隠者として山の中で数年を過ごす者もおり、彼らは瞑想の一つの形として、悟りを得るまで山頂の周囲を難解なパターンで飛行する。それは常に彼らを更に強い戦士へと変える。ジェスカイの間では「戦争に勝ちたければ、神秘家に従え」と言われている。
氏族の指導者
ナーセットがジェスカイのカンである。格闘術の達人であり学者であり神秘家でもあるナーセットは洗練された精神的鍛錬を経て、また目ざましい肉体的技術を得るに至っている。彼女は若い頃を放浪の中に過ごし、荒野で戦闘術を磨いた。彼女は慎重に他の氏族の土地を通って旅をし、彼らの文化を好奇の目で学んだ。他所者に対する彼女の実践的な知識はほとんどのジェスカイの学者とは異なるもので、指導者として彼女はそれを役立たせている。
アート:Magali Villeneuve |
ジェスカイのカンとして、ナーセットは人々の安全に油断なく気を配っている。彼女はジェスカイの中枢、賢者眼の要塞から氏族を導いている。ナーセットはその内に秘密の可能性を秘めていると言う者もいる。それは力、もしくは彼女を偉大な目的へと駆り立てる呼び声だと。だが彼女は氏族を導くことに専念している。
「宇宙の真の理解は自身の理解からやって来る。見せかけと悪意はその理解を曇らせる。我々はそれらを消し去るために努力せねばならない。我ら自身と、世界から。」
――悟った達人、ナーセット
氏族のクリーチャー
イフリート イフリートの故郷はジェスカイの領土の外、炎の縁カダットと呼ばれる人里離れた山岳地帯にある。ほとんどのジェスカイとは異なり、イフリートは氏族の中に生まれてこない。その代わりに、成人後に彼らは故郷を離れることを選択し、ジェスカイの領土へとやって来る。ジェスカイ道を修めることを選択したイフリートは彼らの種族からは追放され、もはや炎の縁で歓迎されることはない。ジェスカイとなることで、イフリートはその人生を何よりも格闘の鍛錬へと捧げる。彼らはかつての生き方について語ることはなく、そのためカダットは謎に包まれたままとなっている。
アート:Raymond Swanland |
イフリートはジェスカイの沸血の概念に引き寄せられるとジェスカイの学者は主張している。だが彼らは同時に、それを獲得するために必要な鍛錬は完全に彼らの本質の外にあると信じている。それらの学者達によれば、イフリートは真に悟りを追い求める前に、その本質的な破壊的性質を捨て去らなければならないとされる。ジェスカイのイフリートは非凡な戦士であり戦闘魔道士である。他の氏族との時折の戦いにおいて、彼らはしばしば攻撃の先陣に立つ。ジェスカイ道を奉ずるイフリートは常に存在していたが、近年彼らの数は増加しつつある。過去、ほとんどのジェスカイのイフリートは戯れ者の学院に引き寄せられていた。それは変わりつつあるようで、今日ナーセットは個人的な護衛にイフリートを置いており、彼らは賢者眼の要塞にて頻繁に見かけるようになっている。
カマキリ 孤立した高塔要塞に、ジェスカイの領土近くの山頂に生息する野生のカマキリを訓練し騎乗する僧達がいる。彼らの乗騎は乗り手に何の忠誠も抱いていないことをカマキリ乗りは知っている。何年も人を乗せてきたカマキリでさえ、乗り手が一瞬集中を欠いた隙にその者を食べてしまう。
スゥルタイ群
氏族の概要
スゥルタイはドラゴンの冷酷さを取り入れている。彼らの象徴は牙である。過去、スゥルタイは人々と土地の資源を搾取して富を蓄え、力をつけた。
彼らの力の主要な源は屍術である。スゥルタイは疲れを知らない不死者達による巨大な労働力を支配している。シブシグと呼ばれるそれらは、鉱山や農場で働き、海や川底を漁って食糧やドラゴンの骨を得る。タルキールは争いの世界であり、スゥルタイはその軍隊を補充する新鮮な死体に不足することは無い。これによって、スゥルタイへと攻撃することは士気をくじく汚れ仕事を意味している。
アート:Karl Kopinski |
スゥルタイは恐るべき代価にて大いなる力を提供する無慈悲な猫のデーモン、強大なラクシャーサ達と取引をした最初の氏族である。スゥルタイはまもなく更に致死的な魔術に熟達し、またそれを使用することを厭わなかった彼らは更に恐るべき存在となった。スゥルタイはナーガの血統が統べている。扇動の達人として、ナーガはその血統を古の龍の力を結びつけるべく、龍を祖に持つと主張してきた。それは彼らが征服した領土の中でまた別の心理的優位性となった。
氏族の構造
スゥルタイの不死者の軍勢は複数の氏族と種族の雑多な集まりからなる。軍隊の大半は通常、ただ死んだ時の衣服のままである。首都に置かれる不死者は適切に、目を楽しませる衣服で着飾らせられている。シブシグのゾンビの身体は強大な屍術にてよく保存されているが、他の不死者の軍は腐るに任せられている。
社会的役割
- 魔道士――ナーガ、人間、ラクシャーサからなる彼らは通常ケルゥ寺院もしくはウクドの死滅都市にて学ぶ。
- 戦士と暗殺者――人間、ゾンビ、ナーガからなる彼らは通常グルマグ沼地、マラング要塞、もしくはサグ森林の中にて訓練を受ける。
- 人間の商人――パンジャーシと呼ばれる彼らはスゥルタイの交易を担う商人である。彼らの多くが魔道士であり暗殺者である。
- ゾンビ――スゥルタイの至る所で使用人として見られる。
氏族の魔術
第二の皮膚 スゥルタイは創造した不死者を「第二の皮膚」と呼ぶ。蛇が皮を脱ぎ棄てて比喩的に生まれ変わるように、死者が蘇ることも同じ目で見られる。現実には、これはナーガの上流階級の中で言われる残酷な冗談である。彼らは人間の死者に一切の敬意は持たない。そのため彼らは人間の死者を家財のように扱い、最もありふれた仕事をさせるために死体を改造する。
遺物 スゥルタイは儀式魔法を唱えるために死体を用いる。死体の部位は魔法を呼び、払いのけ、魔法で敵へと強襲するために用いられる。腐った指、踵、手、足はしばしばスゥルタイの魔道士の首飾りやベルトにぶら下げられて彼らの儀式に用いられる。
精神操作、催眠、蓮の芳香 スゥルタイのナーガは催眠と魅了の魔力を持つ。彼らは取引を有利に進めるため、もしくは他者の精神を徹底的に支配するためにこれを用いる。同じ効果を求めて、スゥルタイの人間の魔道士は蓮の芳香に頼る。それは夢のような睡眠、麻痺、そして――究極的には――死をもたらす。
ナーガの魔術 ナーガの魔術は肉体を歪めることに長けている。そこには変身と、屍術後の修正の両方が含まれる。ナーガは人間をひどく嫌っており、彼らが飼い慣らす攻撃ヒヒと同程度の動物と考えている。ナーガの残酷さは彼らが古に失った人間性の憤りから来ていると言われている。ナーガはまた強力な毒に精通しており、それは象をも一刺しで殺すことができる。
アート:Izzy |
スゥルタイの人間の魔術 彼らの魔術はエレメンタルの使役と巫術から成っている。彼らは土地の力を崇拝し、スゥルタイを人間が統べていた頃に生きていた祖先との接触を秘密裏に試みている。彼らの魔術はまた彼ら自身をいっそう強くすることに基礎を置いている。強さ、成長、そして癒しの魔術は彼らが優越者の中で生き残ることを助け、そしてスゥルタイの商業世界において彼らに価値を与えてきた。
ラクシャーサの魔術 ラクシャーサはスゥルタイでも最も攻撃的かつ危険な魔術を振るう。それは暗黒と死者の強力な霊が渦巻くもので、彼らの魔術は土地の広範囲を不毛化させる、もしくは軍勢一つを塵と化す類のものである。彼らはホラーと忌まわしきものを召喚し、都市を飲み込み国を貪る。
アート:Nils Hamm |
氏族の重要人物
シディシ女王 ナーガのシディシがスゥルタイのカンであり女王である。彼女の権力はその代々の富とラクシャーサから教わった魔術によるものである。彼女は傲慢にして残酷、そして悪賢く、敵対した者を単純に殺戮することで知られている。彼女の目に映る死とは、彼女が統べる不死者の軍勢を強化するための道に過ぎない。彼女はタルキールの氏族を再統合させ、ただ一つの、彼女の旗印の下に新たな帝国を築くことを望んでいる。
アート:Karl Kopinski |
シディシは危険な密林の奥深くにあるケルゥ寺院から統べている。彼女の帝国は生者と死者の両方からなる膨大な数の働き手によって動かされている。彼女はカルシ宮殿に宮廷を構え、スゥルタイは豪奢な小船でそこを訪れる。それらの小船の上で、シディシは伝説的なスゥルタイの豪奢さを経験したいと願う客人達を眩惑し魅了する。そして彼女は策略を通じて、力づくでは達成できないことを行う。
「他の氏族には感謝しておる。我らが征服する時に備えて、土地を手入れしてくれているのだから。彼らの働きは報いられるであろう、我らの宮殿にて宝石に飾られた下僕となることによって。」
――血の暴君、シディシ
フェイオムシ この恐るべきラクシャーサの魔術師にして屍術師は、ほとんどが人間からなる忠実な魔道士の一団とともにウクドの死滅都市内に住まう。彼らはその呪文を用いて、またシディークーとして知られるデーモンを召喚して死滅都市を守っている。フェイオムシはシディシへと暗黒の魔術を教授したラクシャーサの長であることから、彼女からかなりの自由裁量を与えられている。
テイガム テイガムはシディシの使節として相当な権力と影響力を手にした人間の男性である。彼は強大な魔道士であり、スゥルタイの同類の中で権力を求める以前はジェスカイの達人に学んでいた。今、彼はシディシの冷酷な右腕として、彼女の命令を忠実に行う。
キラダ 強大な魔道士キラダはカルシ宮殿の管理人を務める人間の女性である。彼女は船着き場傍の賭博場から高層の歓楽ドームに至るまでを動かしている。彼女はサグ密林の生まれで、宮殿の監督官の役割を引き受ける以前は謎に包まれているが、その森の主であり恐るべき戦士であったと言われている。彼女はしばしば訓練されたヒヒを連れており、それらは彼女の命令があればいかなる者へも攻撃を行う。彼女はまた様々な毒と麻薬に長けている――それは裕福な顧客との取引を終えたいと、もしくはとりわけ腹立たしい障害を取り除きたいと願う時に重宝する技術である。
氏族の重要な地点
スゥルタイは巨大な都市寺院、死滅都市、そして領土に点在する歓楽宮殿に住まう。
ケルゥ寺院 ケルゥはナーガとスゥルタイにとって、崇拝の中心地の名称である。シディシはその統治のほとんどをこのケルゥ寺院にて行っており、ゾンビの群れや運河の小船、急使コウモリ、そして人間の使用人を通して命令を発する。彼女は宮廷を構え、伝説的なスゥルタイの歓楽に浸りたいと願う者達をカルシ宮殿にて歓待し、彼らを眩惑させまた魅惑している。
アート:Adam Paquette |
ウクドの死滅都市 これはスゥルタイの土地にて最も印象的な建築様式の建物であり、何百年と遡る彼らの祖先の墳墓が鎮座している。シディシはフェイオムシの意見を聞く必要がある際にウクドへと向かう。そこで彼女はグルマグ沼から最大の力を引き出し、そのラクシャーサと彼の信奉者達から更に暗く更に強力な儀式を学ぶ。
カルシ宮殿は運河の上に広がる、豪奢な密林の楽園である。ここには歓楽の小船が停泊し、色とりどりの紙灯籠の明りが夜遅くまで水にゆらめく。蝋燭に照らされた小路が密林の遥か深くまで曲がりくねって続き、そこではあらゆる類の歓楽が、その奔放の世界を求める者達を待っている。
グドゥルは巨大な三角州に点在する諸島である。水中と島の両方にあらゆる種類の怪物と不死の忌まわしきものが潜み、無謀にもスゥルタイの領土へと侵入しようとする船と侵入者から内なる水路を守っている。
グルマグ沼はスゥルタイの領土を帯状に取り囲む、危険な沼沢地帯である。そこはシブシグ――スゥルタイの放浪するゾンビの大群に満ちている。それらはタルキールの他氏族の死した兵士の合成物である。
マラング川要塞 ここで密林は狭く急勾配の道を通り、マルドゥの山岳地帯に接している。山からの雪解け水はここから壮大なマラング川となる。スゥルタイは最も恐ろしいクリーチャーとぞっとするような霊にこの場所を監視させている。彼らは決してマルドゥの軍族に連れ去られることはないために。
サグ これはナーガの先祖代々の故郷であり、広大で瑞々しい密林は今もほとんどが未知のままである。多くの巨大な獣がここに住まい、既知の彼方にある。
苔牙の滝 スゥルタイの聖地、苔牙の滝はシルムガルとして知られる古の龍が倒され、マラング川に墜落した地点である。その龍は若く残忍なスゥルタイのカンによって殺された。そしてスゥルタイはスゥルタイの冷酷さと龍への勝利への敬意を払うために、しばしばこの地に巡礼する。
クロコダイルの穴 スゥルタイの機嫌を損ねた者は午後の軽食のようにクロコダイルの穴へと送られる。様々な種類と大きさのクロコダイルが、五十エーカー程の「穴」のそこかしこに広がる巨大な池の中に満ちている。数体の大型クロコダイルは名前を与えられており、それらは古の心なき龍の遠い子孫と言われている。
アート:Greg Staples |
氏族のクリーチャー
シディークー シディークーはスゥルタイにおけるデーモンの呼び名である。彼らは様々な姿形、大きさ、そして物腰を持つ――背丈の低いもの、ずんぐりしたもの、翼のないものから凄まじい力を持ち、巨大で、コウモリの羽根を持つものまで。彼らを召喚し、束縛するための知識はラクシャーサからもたらされたが、彼は考え無しにシディークーを召喚する無謀な魔道士から多くの黄金を強要するべく、束縛呪文を伝えなかった。
アート:Seb McKinnon |
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