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Magic Story -未踏世界の物語-
英雄の小心
英雄の小心
Matt Knicl / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori
2014年1月22日
私は、母と結婚したあの男が憎い。
父が事故で亡くなった時のことを、私は幼すぎたため覚えていない。何があったのかを母はいつも口にしたがらず、また農場の働き手達へも、その話をしないように告げていたのだろう。だが子供なりに私は知っていた、父は穀物の塊か、新たに開墾した畑から除いた岩か何かでの事故に遭ったのだろうと。かつて、収穫の後に満載になった荷馬車か何かのそばで私が遊んでいた時に、母が叫び声を上げて私の手を引いて走り去ったのを覚えている。父に何が起こったのかを母は語ってくれたことはなかったが、私は理解した。
私が八歳を少し過ぎた頃、母は再婚した。それは愛からではなく、農場のための結婚だと私はずっと信じたかった。農場にいる他の子供達は私の倍の歳だった。五人いて、全員が男だった。彼らの父親は私の父を知っていたが、その子供らは私の一家に何の忠誠も持っていなかった。彼らは私の母から農場を奪い取ろうという計画を囁いていた。ある夜、私は彼らがその話をしているのを聞き、馬小屋の背後で彼らを尾けた。私は見つかり、打ちのめされた。母へは丘から川へ落ちたと嘘をついたが、何があったのかを母はわかっていた。母が家庭へとその男を招き入れたのは、私の弱さからだろうか?
ヴィナックは世界中に知られた英雄というわけではなかった。私達の住む地域、アクロスと荒野との境界にある幾つかの村、そこで彼は伝説的な存在だった。母が結婚した時私は十歳で、当時は、私は彼が嫌いではなかった。彼は生ける彫像のようだった。短い黒髪に頑丈な肉体、様々な牙や鉤爪でできた首飾りを身に着けていた。更に沢山の装飾を下げる腕輪を作っていた。私は彼のような人物になりたいと思った。居酒屋では彼を讃える歌がうたわれ、功績を記した詩もあった。もちろん、上質な詩ではなかったが、その尊敬に溢れる雰囲気は韻の欠如を埋め合わせていた。
アート:Kev Walker |
ヴィナックが家に来た途端、農場にいる年長の子供達が私の母に逆らうことはなくなった。一人を残して、私達は新たな働き手を雇った。私が新たな家族に適応するのは、それも人生において新たな父親を迎えるというのは、母が考えたほどには難しくなかった。ヴィナックと私を互いに紹介し、そしてあいつが私達の家にやって来た時、母は間違いなく心配していた。十歳の頃、私はまだその首飾りと、ハーピーや無法者の物語に畏れを抱いていた。
英雄的だから英雄なのではない。そうわかるまで長くはかからなかった。英雄への真の試練は戦場にあるわけでも、無辜の者達を守ることにあるわけでもなく、どう生きるかにある。ヴィナックは農場の働き手達を苦しめた。あの男はかつて、新入りの若者へと畑を開墾するように言った。それが終わった後に彼は働き手へと、開墾したのは間違った畑だと告げた。何故そうしたのかと私が尋ねると、ヴィナックはただ笑って言った。働き手達は常に忙しくさせておかねばならない、その立場を忘れさせないためにと。彼はまた短気だった。私から離れて母とあいつが口論をしていた時、その怒鳴り声が聞こえた。母は農場を守るために、必要からあいつと結婚したのだと私は考えていた。だがそのうち理解した、母はあの男を愛しているのだと。母はあいつが怪物を倒す冒険に行くのを望まなかった。二人が口論していたのはそのことだった。母は彼に家にいて欲しいと求めた。だが私は、奴が母の言葉を聞き入れるとは思わなかった。母にとっては結婚だった。あいつにとっては必要性だった。怪物を戦わない間に、自由な家と食事を得られる場所。あいつは農場を出入りしながら、数年が過ぎた。
ある時、叫び声が上がった夜の後、私は母の顔に打撲跡を見た。私はヴィナックへと立ち向かった。奴は身の程をわきまえろと言い、私の頭を殴りつけた。周りには農場の働き手達がいたが、一体誰がヴィナックに立ち向かうだろうか? 奴の横暴から助けてくれる者がいるだろうか? 村はあの男を救い主として見ていた。横暴から無辜の者を守っても、罪は消えやしない。不道徳の者も英雄的に振舞うことができる、だがエイスリオス神はその者が河を渡ろうとする時に見分けて下さるだろう。子供の頃の私が見つけた真実がそれだった。ヴィナックは弱い男だった。人々にとって奴は何年にも渡って英雄だった。だが何故、常に崇敬を必要としていたのか? 最初に怪物と戦っただけで英雄として見られたのだろうか? 荒野で怪物に遭遇するどころか、怪物を探し求める者を何と呼ぶことができるだろう? その意図は行動よりも重大だというのだろうか? 私はヴィナックに、真に暗い光を見ずにはいられなかった――自分自身を英雄に仕立て上げた、自己中心的で粗野な獣。酷い男ではない、他の者は奴にそう言うのだろう。
私は奴にそう言った。奴は私の顔を、胸を、腕を殴った。母は奴を追い出した。奴は留まろうとしたが、その時農場の働き手達がその背後から現れた。少なくとも十人以上、奴に背くという意思をようやく決めた者たち。ヴィナックは怒りながら去った。村では、母が英雄へといかに不当な扱いをしたのか、いかに母が間違っていたかの噂が流れた。私にはヘリオッド神のやりかたは理解できない。なぜなら、間もなく母は病に倒れたからだ。その噂話と、私は理解していなかったとはいえ、ヴィナックへの愛から母は健康を損なった。私にできることは何もなかった。何日もの間祈り、ファリカ神の信奉者達へと治療法を求めた。だが何の助けにもならないように思えた。私が十七歳の時に母は亡くなり、そして私は農場を継いだ。
ミノタウルスがこの地を荒らし続けていた。そいつらはこの国境地帯、特に沼地の近辺では常に問題となっていた。行商は五、六隊で固まって村々の間を旅するのが好まれた。物品を携えて旅するそういった者達は攻撃を受ける危険が更に大きかった。サテュロスは自分達以外が収穫した作物を口にしたがった。時折ハーピーの攻撃があり、三つ向こうの村の農夫が一体のハイドラを見たと主張した。だが彼はまだ生きているため、その遭遇にはさほど注意が払われなかった。農場の穀物を他の街へと届けるのは危険を伴った。首都の近く、より大きな街へと北上することさえも。最近の村会議において、心配事が示された。この地域の街道にてミノタウルスが目撃されたと。
アート:Daarken |
ゼリーリという名の若い学者が、ミノタウルスと話をしたいと願っていた。彼は村人たちへと情熱的な演説をした、ミノタウルスも私達も何ら変わりないのだと。彼は信じていた、彼らは文明化した私達の社会に追いやられたために敵対するのだと。彼らが山賊や略奪者として行動するのは、私達が彼らをそうとしか見ていないからだと。彼は嘲笑を受けたが続けた。ミノタウルスは知性を持っている、そのため講和と取り決めに応じるだろうと彼は訴えた。ゼリーリが主張するには、ミノタウルスにも部族があり、文化がある――とはいえ彼らは犠牲者の骨から武器を作り出すというだけで、骨を棍棒として使用するという程度の潜在的な知性を想像させるに過ぎない。ゼリーリの主張は、世間知らずの考えだと言われた。だが学者は彼らの警告を気に留めなかった。そしてその週の遅く、若者は台無しになった屍となって発見された。両腕は上半身から引きちぎられて空へと向けられ、その上に彼の首が乗せられていた。この地域に寄越されたアクロス兵の一人は冗談を言った、いかにゼリーリがミノタウルスの文化表現を認識していたかの証拠だと。
ヴィナックと再会したのは私が二十七歳の時だった。最後に会ってから十年が経っていたが、あの卑劣な男のことを考えない日はなかった。奴は収穫の季節の遅く、ある日の午後に農場へと現れた。驚きだったのは、奴がまだ私を認識できたことだった。私はもはや、奴に打ち負かされた痩せこけた子供ではない。当時、私は畑で農場の働き手達に加わって仕事をしていた。実の父もそうしていたと聞いた。私は奴より背は高く、だが奴は私よりも逞しかった。そしてまだガラクタの首飾りと、牙でできた腕輪を三つ、身につけていた。更にいくつかの傷跡が増えていた。髪は白く薄くなっており、歳をとった顔を見て私は喜ばしく思った。私は奴がこう言わなかったなら、殴りかからなかったかもしれない。「手伝ってくれ、息子よ」などと。
長い間の格闘経験から、奴は素早く反応した。そして私を地面に倒した。
「すまん」 奴はそう言って、膝をついて私が立ち上がるのを手助けした。「俺が来たのは......俺が、いや、皆がお前の助けを必要としている」
奴は喋りながらも、私と目を合わせなかった。
「ここから出ていけ」
「聞くんだ。ミノタウルスが数を増やしているのは知っているだろう。お前の力が要る」
「あんたは英雄でなきゃいけないんだろう、いつものように」
「何だって?、違う。そういうんじゃない。ミノタウルスを止めないと駄目だ。あいつらはまっすぐ向かって来る」
「王に頼めよ、民兵を送ってくれって」
「王は助けなど寄越してくれん」 彼は顔を赤くして言った。「王は軍隊を送ってきたが、人々が全員死んでからだった。街の兵士がたった二人、なんの役にも立ちやしない。もし動いたとしても、ミノタウルスの数に対抗なんてできやせん」
アート:James Ryman |
私は、それは本当のことだとわかった。
「お前が俺を憎んでいるのはわかる。お前と母親には悪いことをした。俺は決して偉大な男じゃない、だけど英雄になる方法は知っている。お前が俺をどう思おうと、俺は皆を助ける」 彼は息をついた。「俺のためじゃない、お前の農場の働き手のために動け。もし街道があまりに危険になったら......」
「わかった」 私は言った。「手伝ってやる」
私は既にミノタウルスと戦うことを考えていた。私の農場の働き手達には家族がいるし、収穫物を出荷できなければ、彼らも私も飢えるのだ。
ヴィナックは私に、ミノタウルス達の中心を突く計画を語った。モーギス神の耳を持つと噂される、ある残酷な予見者がその凶暴な獣達を指揮し、彼らに集団で略奪をさせて人間の土地へと押し入ってきているのだと。ヴィナックの計画は、奴等の縄張りへと入ってその神託者を倒すというものだった。
そしてヴィナックは言った。「俺は獣とだけ戦ってきた、一対一で。気付いてないかもしれないが、俺はミノタウルスの角も牙も手に入れたことはない」
出発するのは朝と決まった。私のとは別の寝台が二つあったが、ヴィナックは馬小屋で寝た。
あの英雄が農場で初めて眠る間、私は迷わずゼリーリの家へと出かけた。私はヴィナックを信頼してはいなかった。ミノタウルスとやり合うという芸当にとって、私を選ぶのはいい選択ではない。街にならあの卑怯者を知る者や好む者、手助けをしたいと思う者がいるだろう。私はミノタウルスについて学びたいと思った。死んでしまったあの学者は村の中央に小さな家を残していた。彼の家族はその教育と家に気前よく金を出していたようで、あの学者は書物の内容について話す他に、村で働いている様子はなかった。もちろん、私は彼の死体にしか会ったことはなかったが、それは街の噂だった。「ゼリーリに貸したものを見つけられるかもしれないので、彼の所有物を探したい」、この遅い時間だったが、数枚のコインを渡すと彼の家主は私へと頷いた。中に入ると、家主は他の者にも似たような同意をしていたことがわかった――部屋の大半から価値のあるものが漁られていた。書物と、学者の記録は手つかずだった。
私が聞いたことのないようなものは何もなかった。そして調査はゼリーリの理想主義の目に汚されていた。ほんの一時間程の後、私は探していたものを発見した。ミノタウルスとの協定の意向は正当なものだとゼリーリが主張していた証拠。ミノタウルスが攻撃を減らすことと引き換えに黄金や作物を受け取っていたという、数十年前の街の元帳の記録だった。あの学者は協定が可能かもしれないと考えていた、以前それが存在したのだからと。何と愚かな学者だろう、彼は三十年以上前に見出される記録、その最後の評価を見逃していた。当時の指導者は記していた、「奴等は我々の安全に対し、あまりに高額を要求してきた」と。
思い出せる限り、私が生まれてこのかた襲撃はなかった。要求は作物と貨幣から鶏へ、そして牛へと増大していったとその元帳は示していた。遂にミノタウルスは人間を要求してきたというのは明白な結論だ。おそらくは子供を、彼らの暗黒の捧げ物として。村はそれらの捧げ物を秘密のうちに続けてきていた。私はあの「英雄」が私に何を望むかを知った。ヴィナックは私を死に向かわせるつもりなのだ。
その朝私達は出発した。私は父の剣を持って来ていた。更にヴィナックには見せないように、腰のベルトに短剣を隠し持っていた。もし生贄が必要になったなら、ゼリーリと同じ運命に遭うのは私ではなく奴だ。奴が首飾りと腕輪を外してきたのには驚いたが、それは理にかなっていた。煩い音を立てるのだろう。私達は無言で国境地帯を、ミノタウルスが頻出するという沼がちの湿原へと進んだ。
私は沼地へ行ったことは数度しかなく、それも常に集団でだった。南方、他の街へと近道をするために、もしくは行方不明の村人を探しに。
私達は遠くまで行かないうちに、あいつらの臭いを感じることができた。
あいつらの毛皮は糞尿まみれに違いない。村にこれほど近くにいるというのに、攻撃をしてこないことを選んだというのも恐ろしいことだった。ヴィナックと私は倒木の後ろに隠れて奴等の野営を窺った。けだもの達は十数体以上いた。周囲にはえぐられて内臓を失い、もはや面影もなくなった動物の残骸と、それらの骨がそこらじゅうに散らばっていた。ミノタウルス達は腰を下ろして食らっていた。捨てられた骨の上に座っているものもいて、感じているはずの痛みを忘れて食事に没頭していた。奴等はある洞窟の前に焚かれたかがり火を囲んで座っていた。
「俺はお前をここに、偽の口実で連れてきた」 枝の隙間から見ながら、ヴィナックは言った。
私の短剣は既に奴の背中に押しつけられていた。奴はわずかに振り返った。その目には涙があった。
「ガキ、何をしている?」
「俺を生贄にするつもりだろう、裏切り者」
ヴィナックは振り返ろうとしたが、私は短剣を奴の背中へと更に強く押しつけた。一撃でその肉を突き刺してしまえるほどに。
「お前が村長達の計画を知っているかどうかはわからんが」 今や再びミノタウルス達を見ながら、奴は言った。「知っていたのなら、俺は嘘はつかなかった」
「怪物はお前だ! 俺は死ぬつもりで一緒に来たんじゃない、お前が俺を欺こうとしなかったとしてもだ」 私は言った。怒っていたが、声を落とそうと努めながら。
「そうじゃない、息子よ」 奴は言って、首を横に振った。「生贄になるのは俺だ」
その言葉を私がどう思ったか、理解するのは自分でも難しかった。当初、私はそれもまた嘘だと思った、何か別の欺瞞だろうと。だがこれは真実であって欲しいと思った。私は奴に死んで欲しかった。「そうか」、私が言えたのはそれだけだった。
そいつは驚いて、だが頷いた。
「だからって、お前は英雄なんかじゃない」 私は冷たく言い放った。「お前のやった事が許されるわけじゃない」
奴は再び頷いた。「わかっている」
私達は少しの間立ちつくし、ミノタウルスの野営の方を見つめていた。そしてヴィナックが枝の間を通って進みだした。奴の剣は地面に置いたままだった。
私はそこに留まり、何が起こるかを見守る必要があった。
奴は両腕を挙げながらミノタウルス達へと近づいた、ほとんど嘆願するように。奴等はヴィナックを見ると、彼へと向かった。何体かは咀嚼の途中で。だが奴は声を上げた。「貢物だ!」
即座に、そのミノタウルス達は座っていた場所へとそそくさと戻った、全員の視線がヴィナックに注がれていた。彼は歩いていって洞窟の入り口近くのかがり火の前に立った。神託者が姿を現すのが見えた。そいつは他のミノタウルスよりも更に大きかった。体格だけではない。その神託者は実際に自身が狩ったよりも多くの食物を受け取っているとわかった。そいつは他のミノタウルスよりも更にゆっくりと動いた――老齢なのかもしれないが、私に知るよしはなかった。そいつは人間の頭蓋骨や骨でできた首飾りを身につけていた、そして鼻にも、おそらく人間の骨を通していた。
《骨の神託者》 アート:Greg Staples |
「俺自身を捧げよう、古の契約に従って、お前達の土地の北に広がるケンドラーキ地方の人間の村を守るために」 ヴィナックはゆっくりと言った、まるで言うべきことを思い出すのに苦労しているかのようだった。
その神託者は笑い出し、周囲のミノタウルス達が唸り声を上げた。儀式も何もなく、その呪師はヴィナックの頭へと拳を振り下ろした、身体にめり込むほどに。私は奴の背骨が砕ける音を聞いた。身体は地面へと倒れ、神託者は奴の背中を上にすると、少々苦戦しながらも半分にちぎった。血が雲のように吹き出し、蹄を踏み鳴らして咆哮するそのミノタウルスを取り囲んだ。真紅の霧がミノタウルス達それぞれの周りを渦巻きはじめ、そして血の霧が奴等の鼻孔に入った。奴等はその暗黒の魔法を深く吸い込んだ。私は次に起こったことを見たのか、はたまた困惑し、もはや真実を思い出すことができないのかもわからない。その神託者の背後にミノタウルスの姿を見たように思う、だがその姿は夜空でできていた。私はあのほんの一瞬、モーギス神を見たのだろう。
そこまでだった。神託者はヴィナックの残骸を拾い上げると、それを脇にある動物の残骸の山へと放り投げた。ミノタウルス達は疲れたように見えたが、儀式が始まる前と同じように食事を再開した。神託者は洞窟へと引き返した。私はヴィナックの剣を拾い上げて村へと戻った。
私は称賛を受けた。皆が偉大なる英雄ヴィナックの死を悲しんだが、その息子がミノタウルスの脅威を止めたことを喜んでいた。村の指導者達が、私が戻る前に何か嘘を広めたかのようにも見えた。私は思う、ヴィナックは私に英雄になって欲しかったのだと。息子か家族と呼べる最も近しい人物と、遺産とも呼べる何かを共有するために。
私はあの男を死へと向かわせた。それはミノタウルスを止めた、少なくとも今は。そして皆はこの行為を英雄的だと言う、だが彼らが語るであろう話とは裏腹に、私は英雄ではない。私はかつて、母と結婚した男をこの世の何よりも憎んでいた。だが今、私が最も憎むのは、私自身なのだ。
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