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戦略記事

ReConstructed -デッキ再構築-

デッキ構築の上達法・トップ8

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デッキ構築の上達法・トップ8

Gavin Verhey / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing

2014年11月25日


 DailyMTG、トップ8特集へようこそ!

 本日は、トップ8リストとトーナメント向けのデッキ構築が交錯する場所へ君たちを連れて行こうと思う。君たちがデッキ構築の腕や大会に向けたデッキ選択の腕を磨きたいなら、今回はまさにうってつけだ!


増え続ける成長》 アート:Clint Cearley

 本日の記事では、「トーナメント・レベルのデッキを手がける上での私なりの秘訣トップ8」に迫っていく。早速飛び込もう!

#1――フォーマットを学ぶこと

 あるフォーマットのデッキを組むために効果的な考え方のひとつとして、そのフォーマット内のデッキ全てにおいて、どのように動くのかを知ることがある。

 新たなシーズンを迎えたトーナメント・マジックの世界に入る場合、私は必ず、自分のデッキを作るよりも、まずそのフォーマットに存在する様々なデッキを広くプレイすることから始める。それらの動きを把握するのだ。その強みと――そしてとりわけその弱点を。

 なんだそんなことか、と思うかもしれない。だが、あるデッキが敗北する傾向を知れば、そのデッキを打ち倒す方法が見つけやすくなる。環境内のデッキすべてをプレイするのに一度しっかり時間を割けば、それらに対する有効な立ち回りを知ることができるだけでなく、それらを意識しながら新しいデッキの作成に乗り出すことができるのだ。

 もうひとつ、軽視できない大きな利点がある。フォーマットを知ることで、デッキの乗り換えが容易になることだ。

 あるフォーマットに対してデッキひとつの使い方を学んだ場合、そのデッキと他のデッキとの関係を詳しく把握することができる。つまり、フォーマット内すべてのデッキそれぞれの関係を学べば、ほとんど苦労することなく別のデッキへの乗り換えが可能になるのだ。乗り換え先のデッキかあるいはそれに似たものをすでにプレイした経験があるなら、そのデッキの持つプランを理解しているはずだ。そうなれば、例えばグランプリで新しいデッキが登場し、来週末のプロツアー予選でそれを使いたいときに、その使い方や何に対して強いのかがわかるかもしれないのだ。

 ひとつのデッキを学ぶことも有効だ。しかしフォーマット全体を学べば、視点が変わるぞ。

#2――環境の上位デッキを使用するのをためらわないこと

 ああ、わかっている。ちょっと無粋かもしれない。だが、それこそが単純にして不可欠の真理なのだ。ベスト・デッキとして確立しているデッキを使用することは、大会で勝つために当然のことだ。

 親友であるダン・ハンソン/Dan Hansonが、私にある質問をしてきた。「君のマジックにおける目標って、対戦相手と比べてどれだけかっこいいかを証明することかい? それとも勝つことかい?」

 そのふたつは度々重なるものではあるが、しかし常に重ねる必要があるものではない。次の点を強調しておこう。今回はトーナメント向けの構築の話なのだ。フライデー・ナイト・マジックに向けた構築をするなら、何か面白く愉快な動きをするデッキを作っても何の問題もない。しかしプロツアー予選やグランプリの舞台で、そして君たちの目標が可能な限りすべてのマッチに勝つことであるなら、自身にこう尋ねなければいけない。「広く知られた『ベスト・デッキ』のひとつじゃなく、他のものを選択したのは何故だ?」

 ときは2008年の夏、『シャドームーア』が登場し、ブロック構築がシーズン最大の盛り上がりを迎えていた。当時の環境の「怪物」だったのは、その通り、あらゆる場所に現れた「フェアリー」デッキだ。《苦花》と《呪文づまりのスプライト》、そして《霧縛りの徒党》の組み合わせに《謎めいた命令》と《思考囲い》が添えられたこのデッキは、文字通り怪物デッキとして完成していたのだ。

 その中で「フェアリー」でないものを使用した私は、プロツアー予選突破に2回失敗し、ついに「フェアリー」を試すことを決意した。これだけ「フェアリー」が話題になるには、何か理由があるに違いない、そうだろ?

 それからわずか数週間後、「フェアリー」を使用した私はプロツアー・ベルリン2008の予選を突破したのだった。

 私はその後も革新的なデッキへの挑戦は続けたけれど、その強さを実証済みのデッキを選択し、それを私の力に合わせて最適化し、大会で使用することに対しての抵抗はもうなくなった。地位を確立しているデッキを選択することに、何も恥ずかしいことはないのだ。

#3――技術レベルに合ったデッキを使用すること

 マジックというゲームにおいて、滅多に話題にはされないが、しかし極めて重要な点がある。技術レベルに合わせてプレイすることだ。

 概して人間というものは、正しい自己評価を下すことに苦労する。マジックのプレイ技術についての自己評価も、かなり難しいことだろう。それでも、自分がどれくらいのプレイヤーなのかを知ることで、どのデッキを使うべきかについても多くを理解できるのだ。

 例えば、君たちが経験の浅いプレイヤーで、グランプリ参加を目指しているとしよう。その場合、私はどんなにクールなデッキだとしても、そのフォーマットで最も複雑なものを君たちに勧めはしない。グランプリの舞台にはそのデッキを君たちよりうまく使うプレイヤーがいるだろうし、君たちが複雑なデッキを使えばミスを犯す可能性がより高く、対戦相手に付け入る隙を与えてしまうのだ。多くのラウンドを戦う大会では、よりシンプルでまっすぐなデッキを使用することでミスの可能性を減らすことができるのだ。

 これは、デッキ構築におけるひとつひとつの判断にも当てはめることができる。君たちは強力なプレイヤーであり簡単に負けることはほとんどないけれど、対戦相手が《梅澤の十手》をプレイしてきたらその数少ない負け筋になる、と考えているかい? それならアーティファクト除去を追加してやれば、負けを減らす助けになることだろう。

#4――テストプレイ、テストプレイ、テストプレイ!

......そしてテストプレイが終わったら、もう少しテストプレイをしよう。

 使いたいデッキが決まったら、あとは可能な限りそれを使って調整するべきだ。私の経験でも最高の結果が出せた大会の多くにおいて、その勝因は自分のデッキを内から外まですべて知り、ありとあらゆる状況を想定したために、ほぼすべての選択を素早く行うことができたからだった。(これは、他にも無数にあるマジックの要素を判断する上で、選択肢をうまく絞り込む助けになる。例えば対戦相手の手札にありそうなカードとかね)。

 テストプレイは、そのデッキの戦い方を学ぶために大事であることはもちろん、デッキを調整する際にも同じくらい大切だ。プロツアー予選やグランプリのように長い大会では、デッキの小さな要素が大きな違いを生み出し得る。《破滅の刃》を4枚採用するか、それとも《残忍な切断》と2枚ずつに分けるか? 《嵐の息吹のドラゴン》と《龍語りのサルカン》のどちらを採用すべきか? これらの調整が成功を導くのだ。頭の中で頂点への道を思い描いていくのは魅力的だけれど――何よりテストプレイに勝るものはないのだ。

 私も膨大な数のテストプレイを行った。もし、あの時にもっとたくさんテストプレイをすることができていれば、私のマジックの戦績は変わっていただろう。今でもやり直せたら、と思う。テストプレイを「し過ぎる」ということは、まずないのだ。

#5――サイドボードに注目すること

 サイドボードは、ついメインの陰に隠れがちだ。それらに興味を惹かれることは滅多になく、控えのカードで埋まっていることが多い。

 だが実は、デッキ全体を見るとサイドボードが最も重要な部分のひとつなのだ。

 大会では、サイドボーディング前よりサイドボーディング後の方が行われるゲーム数が多い。つまり、良いサイドボードは試合全体を左右するのだ。対戦相手がどのようなサイドボーディングを行ってくるかについて何も知らないと、こちらのプランは総崩れになってしまう。サイド後はエンチャントを抜くという戦略が広く普及しているのに、わざわざエンチャントのために《自然に帰れ》を入れる必要があるだろうか?

 サイドボードには、大会ギリギリになって慌てて作られたり、カードを寄せ集めて偶然できたり、というものが多すぎる。私自身も、そういう間違いをたくさん犯してきた。しかし、真剣に取り組む時間を割くだけの価値は間違いなくあるのだ。

 サイドボード込みのテストプレイを行い、プレイの腕を磨くのに時間をかける。大会での成功はその先にあるのだ。

#6――マナ基盤をないがしろにしないこと

 サイドボードと同様に、やはりデッキ内で目立つのはこれから唱えることになる優れた呪文の数々だろう。なあ、見てくれよ――《包囲サイ》に、《太陽の勇者、エルズペス》、それから《風番いのロック》......などなど。

 だがしかし、それらのカードも土地がなければまともに機能しない。デッキに必要な土地の種類と数を知ることは――とりわけこの『タルキール覇王譚』の世界では――成功に繋がるのだ。

 私が土地の大切さを口うるさく言うようになってから、もう長い時間が経っているような気がするよ。

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「いいから、土地をもっと入れるんだ。」
画像元:ChannelFireball(リンク先は英語)

 概して初心者が最もやりがちなミスは、デッキに十分な枚数の土地を搭載しないことだ。

 通常、アグレッシブなデッキなら、マナ・カーブによって21枚から24枚くらいを見込むことだろう。ミッドレンジなら24枚から26枚の間。コントロール・デッキなら、私は普通26枚から始めて、増やしていく。

 とりわけ今は(『テーロス』ブロックの「神殿」など)追加効果を持った土地がたくさんあるため、君たちも選択肢に恵まれている。多くのゲームをこなし、デッキ内のカードの色の配分を確認し、そして適切なマナ基盤を用意しよう。

#7――革新を起こすならきちんと理由を持つこと

 私はまったく新しいデッキや、使われていないカードの活用法を生み出すのが大好きで、可能なときは必ず挑戦する。しかしながら、ちょっと「#2」の項へ戻ってみてくれ。何か革新的なことをする場合は、「ユニークでありたい」ということ以外の理由が必要だ。

 デッキに毛色の違うカードを加えるなら、必ず「それは本当に他の選択肢より良いものなのか?」と自身に問いかけるべきだ。その答えが「イエス」ならば、見事! 恐らく本当にクールな新カードを見つけ出したのだろう。しかしもし「ノー」だと思ったなら、まだまだ検討が足りないということだ。マジックの大会では、見た目でポイントは入らないのだ。

 デッキ選択についても、同じことが言える。仮に、君たちの作った新しいデッキがその環境にある他のデッキと同じような相性差なのに、結果が芳しくないとしよう。それなら、どうして他のデッキを使わないんだい? そこには理由があるのかもしれないが――それは、注目を集めるほどのものでなくてはいけないのだ。革新はマジックに欠かせないものであり、とても楽しいものだ――それでも、デッキを手にプロツアー予選へ突撃する前に、そうするに相応しい理由で革新を起こし、「他の人と違うものがいい」というだけでやっていないかどうかをしっかり確かめてから行こう。

#8――攻め手を複数用意すること

 ここまでデッキを手がけるときのアドバイスをたくさん述べてきたけれど、これが一番広く知られていて、そしてこれも大切なもののひとつだ。

 現代のデッキ構築においては、強力なデッキのほとんどが複数のゲーム・プランを持ち、必要に合わせて使えるようになっている。対バーン・デッキでも、コントロール・デッキを相手にしても、あるいは対戦相手がこちらのクリーチャーをすべて除去するプランを持っていたとしても、クリーチャーをひたすらに唱えるだけであっても、それらすべてに備える手段を確保しておくことが肝要なのだ。

 私の元には、あるひとつの組み合わせだけを中心に組み、それを引けなければすべてがダメになるようなデッキが多く送られてくる。そういう場合に私が施す主な変更は、他の部分に中心となる組み合わせを支えさせるのではなく、中心となる組み合わせ以外の部分がきちんと機能できるような方法を見つけ、中心部分が引けなくても強い構成にすることだ。

 デッキを組むときは、以下の極めて大切な質問を自身に尋ねてくれ。「もしデッキ内で最も重要なカードを引けなかった場合、一体何が起こるか?」そして「あらゆるタイプのデッキと戦うにはどうすればいい? どれかに対する備えが足りないのではないか?」と。これらの質問の答えは、きっと君たちのデッキが見落としているであろうことをたくさん教えてくれるだろう。


尊いラマスー》 アート:YW Tang

終わりに

 これを書くのは実に驚きだが、そうせねばならない。2014年は終わろうとしている。

 2週間後が、冬季休暇前の最後の「ReConstructed」記事となる!(実のところ、今年最後ではないのは『運命再編』プレビューが計画されているためだ。)その回の記事では書きたいと思っているプランがあるので、今週のデッキ募集はなしとさせていただく。

 その代わりに、この記事についての質問や考えたことがあれば、ぜひ皆さんからお聞きしたい! 気軽にTwitterTumblrで私までご連絡いいただきたい。皆さんの考えを聞くことは、何にも代えがたい喜びだ。

 次回は、ワールド・ウィークで見られる共同デッキ構築・スタンダードについて見ていこう。また来週お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

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