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FFLの目標達成のための『破滅の刻』のカードのデザイン
FFLの目標達成のための『破滅の刻』のカードのデザイン
Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年7月7日
「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今日はわたしたちがフューチャー・フューチャー・リーグの要望と目標を達成するために、どのように『破滅の刻』のカードをデザインしたかについてお話ししようと思います。この記事(そしてその前の「Latest Developments -デベロップ最先端-」)の読者の皆さんの多くは以前FFLについて読んだことがあると思いますが、その意味がはっきり分からない人もいるかもしれません。FFLは「フューチャー・フューチャー・リーグ」の略です。何年も前に、開発が将来のスタンダード環境をテストするためにもともとのフューチャー・リーグが作られました。この2つめの「フューチャー」は、もっと後になってからより多くのセットをこのリーグに追加することに決まってからつけられました。
フューチャー・フューチャー・リーグ(Future Future League)
フューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)とは、楽しくバランスが取れた多様性に富むプレイ体験を作り出すことを目標とした、マジック開発部で将来のスタンダード環境のテストを専門で行うリーグのこと。
もともとのフューチャー・リーグは完成したセットにだけ焦点を当てていて、意味があまりありませんでした。問題を修正できないときに将来のスタンダードをテストして何になるのでしょうか? 次の反復工程で、このリーグはフューチャー・フューチャー・リーグに改名され、まだ変更できる将来のセットをテストするようになりました。変更を行えることができれば、開発部は壊れていたり圧倒的な相互作用に気づいて修正できるので、これは大事なことでした。
最近のFFLはもはや「リーグ」ではなく、わたしたちが将来のスタンダードをプレイテストする専門の時間でした。プレイデザイン・チームは週のうち多くの時間を、FFLでプレイし、デッキを作り、このフォーマットがどんな風に見えていて、変更する必要があるものが何か、を議論するために会議に参加することに費やします。
わたしたちは1週間を通してたくさんのデッキを作り、デベロップのこの段階ではそれと同じぐらい頻繁にカードが変更されるので、わたしたちが調べるものがなくなることはありません。わたしたちは一人もしくは複数人で協力してデッキを作り、それをフォーラムに投稿して、みんながお互いのデッキに意見を出します。カードの変更はセットの完成までにたくさん、そして迅速に行われるので調査中に何かを見逃してしまう可能性はありますが、常にみんなのデッキに全員の目を向けていれば、その確率はとても少なくなります。
FFLの目標は楽しく、バランスが取れていて、多様性のあるスタンダードを作ることです。わたしたちはプレイヤーが選択肢を持てるようにしたいと思っています。あるデッキが支配的になった場合、わたしたちはその支配的なデッキと戦うためにプレイヤーが頼ることができるさまざまな戦略があるようにしたいと思っています。わたしたちはあらゆるタイプのプレイヤーに合うアーキタイプと戦略を求めています。
『破滅の刻』では、わたしたちはこのセットのテーマがスタンダードで現れるようにしたいと考えましたが、あまりに長い間支配的になりすぎないようにそれらのテーマに対する回答も求めました。わたしたちがプレイテストをして特定の戦略が強すぎることを見つけたとき、その戦略に明確に立ち向かうためのカードを作ります。たとえば、マルドゥ機体が最強デッキの1つになる可能性が高いことが分かっていたので、わたしたちはマルドゥ機体が繰り出す多種多様な脅威に対する明確な回答を作りました。わたしたちはアーティファクト1つかアグレッシブなクリーチャー1体を破壊するための《削剥》と、盤面の脅威を全て一掃するための《破滅の刻》です。
これらの目標を達成するために作られたもう1つのカードが《栄光の刻》です。わたしたちは『アモンケット』の神々に対処できるものを求めていました。クリーチャーを追放する方法はいくつかありましたが、わたしたちはそれでは不十分で、そして黒にも何かあげたいと感じました。
もともとの《栄光の刻》は大量の-1/-1カウンターをクリーチャー1体に置いていたのですが、それは-1/-1カウンターのメカニズムの満足のいく使い方ではないことがわかりました。-1/-1カウンターはクリーチャーを弱らせることを目的にしていますが、クリーチャーが一度に大量の-1/-1カウンターを乗せられてただ死亡するだけなら、わたしたちが意図したとおりのメカニズムの使いかたをしているようには感じませんでした。またこのバージョンのこのカードは《スカラベの巣》と組み合わせると超強力でした。
わたしたちが『破滅の刻』の神々を作ったとき、両方のバージョンの神に対処できるカードが欲しいこと、そして-1/-1カウンターはこの新しい神々に対処できないことに気づきました。わたしたちは《栄光の刻》を戦場にある神を永久的に対処するとともに、手札にその神を他に持っているプレイヤーを咎める追放呪文にすることに決めました。
《破滅の刻》はFFLのバランスのために作られたもう1枚のカードで、コントロール・デッキ向け全体除去がもっと必要だと判断されたためのものでした。最初このカードはインスタントで、全てのクリーチャーに4点のダメージを与えていましたが、《奔流の機械巨人》と組み合わせると強すぎました。わたしたちはこれをソーサリーに変えて1点ダメージを追加しました。
この時点でもこのカードはうまくプレイされていましたが、わたしたちは依然として神々や《無私の霊魂》、《大天使アヴァシン》に苦しめられていたので、「破壊不能を失う」の一文をつけました。その後このカードがグリクシスがニコル・ボーラスをプレイする邪魔をしていることが発見されました。わたしたちはこの「ボーラスでない」の一文を追加して、これをフレーバーとメカニズムの両方で機能させようとしました。フレ―バーの観点からは、ボーラスの得意呪文が彼自身を傷つけないことは納得がいくものでした。
わたしたちがやりたかったもう1つのことは、自色の対策カードのサイクルをFFLに加えることでした。色対策は自己訂正のメカニズムを作り出し、スタンダードのバランスを保つ方法の1つです。
もしあるデッキが支配的になりすぎた場合、そのデッキはサイドボード(そして時にはメインデッキ)のスロットを自分自身(ミラー)を倒すために割き、その結果他の組み合わせに対する勝率が下がることになります。デッキがミラーに有利になろうとすると、他のデッキが浮上してくるチャンスが生まれます。この敗北サイクルはこのタイプの対策としていいところまで行っているように見えます。
対策といえば、『破滅の刻』は対策カードが足りないわけではありません。わたしたちはプレイヤーに前のブロックで支配的になりすぎた戦略と戦う選択肢を与えたいと思いました。自色対策サイクルに加えて、墓地、エネルギーやその他のカウンター、そしてアーティファクトのような、『カラデシュ』ブロックや『イニストラードを覆う影』ブロックと戦うカードを収録しました。エムラクールや『戦乱のゼンディカー』の高コストのカードと戦うために《機略 // 縦横》を作りましたが、『破滅の刻』が完成した後のある時に、エムラクールはこのフォーマットを去ってしまいました。
今週は以上です。この記事がわたしたちがスタンダードのバランスをとるためのカードの作り方の思考過程に関する洞察となればうれしいです。来週はMファイルでさらに『破滅の刻』の物語をご紹介します。
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
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