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Making Magic -マジック開発秘話-
ストーム値:『ゼンディカー』『戦乱のゼンディカー』ブロック
ストーム値:『ゼンディカー』『戦乱のゼンディカー』ブロック
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年11月21日
2月に、私は諸君に(私のblogを読んでいない諸君に)ストーム値というものを紹介した。これは何か、通例ではメカニズム、がスタンダードで使えるセットに再録される可能性について語るために用いられるものだ。最初の記事で、『タルキール覇王譚』ブロックのメカニズムについて検証した。
5月の2つ目の記事では、『ラヴニカ』『ラヴニカへの回帰』ブロックのメカニズムについて検証した。
両記事とも好評を得たので、再びストーム値の記事を書くことにした。今回は、『ゼンディカー』と『戦乱のゼンディカー』ブロックのメカニズムを対象とすることにする。
最初の記事ではストーム値についての要約を掲載していたが、今回は短縮版にする。ストーム値は1から10まであり、そのメカニズムがスタンダードで使えるセットに再録される可能性を私の主観で判断している。ストーム値の値それぞれの意味は以下の通り。
1
次のセットででも再び使われることになるのは間違いない。
例:飛行、接死、占術
2
再び使われることになるのは間違いないが、すぐとは限らない。
例:キャントリップ、混成マナ、両面カード
3
おそらく今後何回も使われることになるだろう。
例:サイクリング、フラッシュバック、上陸
4
今後も使われることになるだろうが、確実と言うには問題がある。
例:変異、キッカー、刻印
5
再録する場所を探す必要があるが、私は可能性が高いと思っている。
例:進化、怪物化、陰鬱
6
再録する場所を探す必要があるが、私は可能性が高いとは思っていない。
例:貪食、忍術、生体武器
7
再録されるとは思われないが、ふさわしい環境があれば再録はあり得る。
例:氷雪マナ、回顧、刹那
8
再録されるとは思われないが、もしかしたらあり得る。
例:マッドネス、エコー、待機
9
ありえないとは言わないが、ちょっとした奇跡が必要。
例:フェイジング、スレッショルド、激突
10
ありえないとは言わないが、かなりの奇跡が必要。
例:ストーム、発掘
各メカニズムがどのストーム値に当てはまるかを決めるために、5つの分類を使っている。
人気
プレイヤーがこのメカニズムを好きだったかどうか。プレイヤーが好きなものは、再録される可能性が高い。そうでなければ、再録される可能性は低い。これは「楽しかったか」という質問が大きな基準になる。この評価は以下の4段階になる。
- 大好評 ― 市場調査で、史上すべてのメカニズムの中で上位25%に含まれているメカニズム。なお、これらの評価は現在のメカニズムと史上すべてのメカニズムとの比較になる(市場調査はずっと以前から始めていたのだ)。
- 好評 ― 市場調査で、平均以上で上位25%には至らなかったもの
- 普通 ― 市場調査で、平均以下で下位25%には至らなかったもの。ただし平均としてかなり好かれているものなので、平均以下といってもプレイヤーの多くが嫌っているわけではなく、それ以上に好かれているメカニズムがあるというだけである。この分類に入ったからといって再録の可能性が下がるわけではない。
- 不評 ― 市場調査で、下位25%のメカニズム。この区分に入ったものは、再録の可能性は低くなる。
デザイン空間
このメカニズムで作れるカードの枚数にどれぐらい余裕があるか。カードを作れる枚数が限られていれば、どれだけのプレイヤーが好んでいようと、どれだけデベロップしやすかろうと関係ないので、デザイン空間は重要である。この評価は以下の3段階になる。
- 広大 ― このメカニズムには非常に広大なデザイン空間がある。何度でも再録できて、新カードを作る上での問題はない。
- 中等 ― このメカニズムにはいくらかのデザイン空間があり、簡単に再録はできるが何度でもというわけにはいかない。
- 狭小 ― このメカニズムはこのセット内でデザイン空間の限界に来ている。再録したときに充分なカードをつくるのは難しい。
多用途性
このメカニズムと他のメカニズムの相性はどうか。このメカニズムには多くの前提が必要か、それともサポートはほとんどいらないか。言い換えると、このメカニズムのデザインは簡単か難しいか。この評価は以下の3段階になる。
- 柔軟 ― このメカニズムは使用が簡単で、サポートはほとんど必要なく、他のメカニズムと容易に相互作用する。
- 普通 ― このメカニズムは多少使用が難しく、いくらかのサポートが必要で、他のメカニズムと絡むのに問題がある。
- 硬直 ― このメカニズムの使用は難しく、かなりの前提が必要となり、他のメカニズムと混ぜるのには明確な問題がある。
デベロップ
このメカニズムのコスト付けがどの程度難しいか。バランスを取るのは難しいか。このメカニズムを仕上げるのが簡単かどうか。この評価では、メカニズムをデベロップする難易度を見ている。評価は3段階になる。
- 問題なし ― このメカニズムをデベロップする上での問題は存在しない。
- 普通 ― デベロップする上でいくらか問題は存在するが、大問題ではない。
- 問題あり ― このメカニズムをデベロップする上で、かなりの問題が存在する。
プレイアビリティ
このメカニズムの働きや他のメカニズムとの相互作用を、プレイヤーが理解する上で問題があったかどうか。このメカニズムを使う上で物理的な問題はなかったか。この評価はメカニズムをプレイする上での障壁があったかどうかを見るもので、2段階になる。
- 問題なし ― プレイする上で問題はなかった。
- 問題あり ― プレイすることに影響するような問題が存在した。
これを踏まえて、メカニズムの値付けを始めることにしよう。
上陸(『ゼンディカー』『ワールドウェイク』『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』)
人気:大好評
上陸は単に好評なメカニズムだというだけではなく、史上最も人気の高いメカニズムの1つである。『ゼンディカー』ブロックで初登場したときにも、その後『戦乱のゼンディカー』ブロックで再録されたときにも愛された。再録に関して1つだけ問題点があったのは、このメカニズムには速度状の問題があると判断して開発部がパワーレベルを多少引き落とすことにしたということである。こういうことをすると、必ず不平があがるのだ。
デザイン空間:中等
上陸にはまあまあのデザイン空間があるが、プレイヤーの多くが考えるほどは広くない。このメカニズムでは、何回も起こせて、かつ土地をプレイできる時に起こせる効果が必要である。そしてそういった効果は期待するほど多くないのだ。これは再録できて、その際には前回世に出たときと同じようなことをすることができる類のメカニズムだが、改革の余地はそう多くない。
多用途性:柔軟
上陸に必要なものは1つだけ、土地をプレイすることである。マジックの歴史上ほとんどのデッキでは土地をプレイしている(発掘はわかったから)。上陸はどんなデッキでもうまく働くのだ。
デベロップ:問題なし
上陸は、自分のターンに土地をプレイするようにするのでアグロ戦略に寄ることになる。デベロップで対応できることではあるが、環境に上陸がある場合にはいくらかの調整が必要になる。
プレイアビリティ:問題なし
上陸の人気の高さの理由の1つが、理解するのが簡単で、自分のやりたいことをして利益を得られるというところにあった。
ストーム値:3
この点数になったのは驚くことではない。上記のストーム値の例示にも載っているとおりである。上陸は人気があり、デザインも簡単で、プレイ感もいい。上陸は何度も再録されるメカニズムに名を連ねることになるのではないか。
キッカー(『ゼンディカー』『ワールドウェイク』)
人気:大好評
両『ゼンディカー』ブロックのメカニズムについてのみ語っているが、キッカーは他の多くのセットでも登場している。強力な効果を得るために多く支払えるようにするのを嫌う人がいるので、これは好きな人のお気に入りである。
デザイン空間:広大
キッカーほどにデザイン空間が広いメカニズムはほとんど存在しない。実際、キッカーの最大の問題点は、これを最初に作るべきでなかったということである。これはあまりにも汎用的すぎて、他のメカニズムを「ただのキッカーじゃないか」と思わせてしまうのだ。
多用途性:柔軟
私はデザイナーたちにキッカーの使い方を指導する必要があった。キッカーはあまりにも柔軟すぎて、他のメカニズムを真似るために使うことができてしまうのだ。
デベロップ:問題なし
追加マナの支払いという調整手段があるので、デベロップがキッカー・カードのバランスを取るために必要な道具は揃っている。
プレイアビリティ:問題なし
キッカーは非常に直截的だ。プレイテストの結果、プレイヤーもすぐに理解できる。開発部内で問題になったのは、追加コストとして書くほうが理解しやすいのか、それとも代替コストとして(つまり追加コストを中に含んだ新しいコストとして)書くほうがわかりやすいのかということだけである。
ストーム値:4
これも上記で例示に使っているので、驚きはないだろう。キッカーは愛されていて、デザイン空間が広く、非常に柔軟で、デベロップ的にも問題はない。ストーム値が3でなく4になっているのは、上記で言ったとおり、キッカーの存在によって他のメカニズムの特殊性が失われてしまいうるという問題のためである。キッカーは(ほとんどの)メカニズムがすることをできてしまうので、キッカーを使うのには多少ためらいがあるのだ。
多重キッカー(『ワールドウェイク』)
人気:大好評
多重キッカーはキッカーに複数回支払うという選択肢を持たせたものだ。プレイヤーはキッカーが好きで、多重キッカーも好きなのだ。
デザイン空間:中等
多重キッカーのデザイン空間が狭いのは、複数使える効果でなければならないという制限があるからである。この制限はそう厳しいものではないが。通常のキッカーのデザイン空間の広さとは比べものにならない。
多用途性:柔軟
多重キッカーにはキッカーよりも制限が多いので多用途性も低くなっているが、とはいえ充分に柔軟である。
デベロップ:問題なし
複数回キッカー・コストを支払えるとはいえ、1回ごとに支払わなければならないのでデベロップ的に問題のあるメカニズムではない。
プレイアビリティ:問題なし
複数回キッカー・コストを支払えるということによって多少複雑にはなっているが、取り立てて言うほどではない。
ストーム値:5
これはデザイン空間が少なく多用途性も低く、いくらか複雑になったキッカーである。それらを総合して、ストーム値は1高くなっている。
探索(『ゼンディカー』『ワールドウェイク』)
人気:好評
この分類については、メカニズムに関する市場調査の結果を見ている。探索は平均以上で上位25%には入っていない。プレイヤーは探索のことが好きだが、愛されているというほどではない。
デザイン空間:中等
探索は、何かの行動を何回もすることで探索カウンターを得て、そのカウンターを後に何かの効果に変換する、という条件だけなので非常に制限が薄くなっている。デザイン空間を狭めているのは、プレイヤーに何回もさせることができる行動には限りがあるということと、その行動と得られる効果の間にはメカニズム的、あるいはフレイバー的な繋がりが必要であるということである。
多用途性:普通
この分類について「普通」となっているのは、プレイヤーがしなければならない行動が何かに完全に依存するからである。戦闘ダメージを与える、というのなら多くのデッキはできるだろう。対戦相手のライブラリーを削れ、というなら、それを軸としたデッキを作る必要がある。
デベロップ:普通
積み上げることで強力な効果を得られるエンチャントは、直感的ではないので構築で狙いをつけるのは難しい。
プレイアビリティ:問題あり
ほとんどの探索はお互いに違う振る舞いをするので、他のメカニズムよりも理解力が必要になる。また、カウンターを用いるので、物理的な問題にもなる(とはいえ特に難しい問題というわけではない)。
ストーム値:5
探索はフレイバーに富んでいて比較的好評で、さまざまな機能を持たせられる柔軟性を持つが、ふさわしい環境が必要で、面倒なものだ。いずれ再録されるのではないかと思ってはいるが、ふさわしい場所を見つけるには時間がかかると思われる。
罠(『ゼンディカー』『ワールドウェイク』)
人気:好評
罠と探索は同程度に人気があり、その理由もおそらく共通している。これらは非常にフレイバーに富んでいるのだ。
デザイン空間:狭小
罠は、関係する誘発によって軽くなりうる効果が必要である。デザインするのは難しい。作ることができるとは思うが、簡単ではない。
多用途性:硬直
ゲームプレイの局面によらず使える誘発の数は限られている。罠は、狭く限られたサイドボードのカードで最もうまく働きがちである。
デベロップ:普通
一見して弱そうに見えるものを強化する際のバランス取りのために、さまざまな圧力が存在する。
プレイアビリティ:問題あり
罠は手札にある間に、ゲーム中に起こっている誘発を意識しなければならないカードである。それに加えて、右上に書いてあるマナ・コストが実際に意味を持つコストと異なることも多く、このメカニズムは混乱を招くものである。
ストーム値:6
罠は、基本的には探索と同じだと思っているが、デザイン空間が狭く多用途性が低いという問題がある。そのため、ストーム値は1大きくなっている。しかし、私は、罠を再録するに相応しいテーマの場所を見つけたいと思っている。
同盟者メカニズム(『ゼンディカー』『ワールドウェイク』)
人気:普通
市場調査を確認すると、大抵の場合はそのメカニズムの評価についてよく思い出すことができる。これは実際の調査結果よりも記憶の中で評価が高かったことになっていたものである。同盟者ファンは声が大きかったが、市場調査の結果、そのようなファンの数は多くなかったので25%~50%の範囲に位置づけられることになった。つまり、このメカニズムを好きなプレイヤーは本当にこのメカニズムのことが好きだったということである。
デザイン空間:狭小
『ゼンディカー』ブロックの同盟者では、このメカニズムは他の同盟者にだけ影響を及ぼしていて、デッキの全てのクリーチャーを同盟者で揃えることが強く推奨されていた。同盟者だけを見るということはこのメカニズムに大きな制約をもたらし、狭いメカニズムにしていた。
多用途性:硬直
このメカニズムは本質的に主軸的である。同盟者を1枚プレイするなら、同盟者デッキをプレイする必要がある。
デベロップ:普通
このメカニズムは拡大型の効果や基本的に自分のクリーチャーにだけ影響する全体的効果を持つことになるので、開発部語で「雪だるま的」つまりすぐに加速して制御できなくなる傾向にある。同盟者を再録したときには、『ゼンディカー』版の同盟者にはデベロップ的不安があったので、デベロップは改良のために尽力しなければならなかった。
プレイアビリティ:問題なし
同盟者は戦場にあるカード全体に影響を及ぼすようなことができるが、その集中する性質から比較的簡単に把握できる。
ストーム値:7
これは、すでに調整した形で再録したので、ストーム値を定めるのは幾分奇妙な話である(下記参照)。サプリメント商品で『ゼンディカー』型の同盟者を見ることはありうるだろうが、ストーム値はスタンダードで使えるセットに限ったものなので、かなり高い値になっている。
結集(『戦乱のゼンディカー』)
人気:普通
結集は『ゼンディカー』の同盟者に比べると少しだけ市場調査では好評だったが、ほとんど同レベルだった。ソーシャルメディアでは、『戦乱のゼンディカー』の同盟者は『ゼンディカー』の同盟者よりも全体として弱いという苛立ちが募っていたが、これは市場調査には現れていない。
デザイン空間:狭小
結集は元の同盟者とよく似た空間を持っている。理由も完全に同じである。
多用途性:普通
結集は自軍の同盟者だけでなく自軍のクリーチャーすべてに影響するので、特にリミテッドにおいて多少は多用途性を持つようになった。
デベロップ:普通
もとの同盟者への調整の副作用として、デベロップが多少簡単になったということがあげられる。ただし、強い主軸性を持つので、問題はまだ残されている。
プレイアビリティ:問題なし
もとの同盟者と同様、結集も理解したり把握したりするのは簡単である。
ストーム値:6
私は、いつかゼンディカーを再訪する日が来ると信じている。そしてそうなったら、同盟者はやはり存在するだろう。結集を使うか、新しいメカニズムを使うか、どちらになるかはわからないので、これのストーム値は6にしておこう。
盟友(『ゲートウォッチの誓い』)
人気:不評
この記事を書いている時点で、盟友はマジック史上、市場調査を初めて以来最低の人気となったメカニズムである。個人的には一番下ということはないと思うのだが、これは下位25%に含まれている。
デザイン空間:狭小
このメカニズムは、プレイヤーが毎ターン起動できる程度に小さく、クリーチャー2体をタップするのに見合う程度に大きい起動型能力のために作られている。その枠は狭い。
多用途性:硬直
このメカニズムには他の同盟者が必要である。
デベロップ:問題あり
何度も起動できる起動型能力で、強くしてデベロップが満足できるものは多くない。
プレイアビリティ:問題なし
新規プレイヤーにとって他のクリーチャーをいつタップできるのかという部分には少し混乱があるが、それ以外では盟友は非常に直截的である。
ストーム値:8
滅殺(『エルドラージ覚醒』)
人気:好評
滅殺は50%~75%の範囲にあった。プレイヤーは好きだったが、愛されているというほどではなかった。
デザイン空間:狭小
滅殺は巨大エルドラージにつくものであり、巨大エルドラージはそう多くない。
多用途性:普通
巨大クリーチャーにだけつくものなので、巨大クリーチャーをプレイできるようなデッキにしなければならなかった。それ以外では、滅殺はほとんどのゲームで有効であった。
デベロップ:問題あり
滅殺1でさえ非常に強力で、非常に苛立たせる可能性がある。メカニズムを持たせることでカードを強化する最小幅を考えると、カードを調整するために使えるバランス幅は非常に限られている。
プレイアビリティ:問題あり
このメカニズムは非常によく誤解されていた。プレイヤーはこれがいつ誘発するのか、そして誘発した時に何が起こるのかを理解していなかった。
ストーム値:9
このメカニズムはデザインが難しく、デベロップが難しく、対戦するのは不愉快だった。これが『戦乱のゼンディカー』で再録されなかったことが、このメカニズムが再録される可能性が低いという何よりの証である。
Lvアップ(『エルドラージ覚醒』)
人気:普通
Lvアップにはファンがいるが、その人数は多くはない。奇妙なカード枠が多くのプレイヤーには受け入れられなかった。
デザイン空間:狭小
Lvアップはクリーチャーにしか持たせられず、そのクリーチャーには関連した3つの姿が必要になった。デザイン空間は非常に限られていた。
多用途性:普通
これはカードごとに多用途性が大きく変動するメカニズムの一例である。色さえあっていればデッキに入れられるものもあれば、そのカードを軸にしてデッキを組まなければならないものもある。
デベロップ:問題なし
このメカニズムには強さのバランスを取るためにデベロップが調整できる調整箇所が多く存在する。マナ・コスト、Lvアップ・コスト、3種類のサイズ、能力。デベロップがいじれる場所が多いのだ。
プレイアビリティ:問題あり
このカード枠は、3種類のクリーチャーを1枚のカードに含むという非常に複雑な概念を表すための新しい試みだったが、その実装は顧客から好評を得られなかった上にこのメカニズムの働きについてもかなりの混乱を招いてしまった。
ストーム値:8
Lvアップは二度と見ないと思われるメカニズムだが、さまざまな要素が完全にかみ合った環境では理想的なものになることが想像できる(『イニストラードを覆う影』におけるマッドネスのように)。そうなったとしても、カード枠の大問題は残されている。
反復(『エルドラージ覚醒』)
人気:大好評
毎度のことだが、呪文を複数回唱えられるようにするメカニズムは人気が出る傾向にある。
デザイン空間:中等
反復はインスタントかソーサリーにしかつけられない。また、2回目について追加の情報があるとゲームプレイ上有意義になるような効果が望ましい。つまり、これと組み合わせられる効果は充分存在する。
多用途性:柔軟
通例、反復は全てのセットに存在するような基本的な効果と組み合わせる。つまりこのメカニズムはかなり多用途性を持つ。
デベロップ:問題なし
反復は、発生した時にデベロッパーが正当なコスト付けをできるので、非常にコントロールされているといえる。
プレイアビリティ:問題あり
2回目の効果については記憶の問題があるが、それ以外では反復は使いやすい。
ストーム値:3
これは人気があり、柔軟なメカニズムでプレイ感も楽しい。これは今後何度も登場することだろう。実際、すでに『タルキール龍紀伝』で一度再録されている。
族霊鎧(『エルドラージ覚醒』)
人気:好評
族霊鎧は50%~75%の範囲の上限ギリギリにあった。
デザイン空間:狭小
デザイン空間はかなり狭い。クリーチャー用オーラにしかもたせられず、それにさらに制限がかかっている。
多用途性:柔軟
族霊鎧にはクリーチャーが必要だが、この制限はかなり緩いものである。
デベロップ:問題なし
クリーチャー用オーラは伝統的にかなり弱いので、デベロップ的に強化する余地は充分存在する。
プレイアビリティ:問題なし
このメカニズムはそれほど混乱を起こさなかった。
ストーム値:5
このメカニズムはデザイン空間的には狭いが、人気が高くデベロップは簡単である。相応しい場所を探す必要はあるが、再録されることが期待できる。キーワードではなくなるかもしれない。
覚醒(『戦乱のゼンディカー』)
人気:好評
覚醒にはファンが多かったが、大好評の枠に入るほどではなかった。
デザイン空間:中等
覚醒は主にソーサリーにだけつくものだが、そのほとんどでは使える。
多用途性:柔軟
ほとんどのゲームでは土地が存在する(はいはい発掘ね)。そしてそれをクリーチャー化するのはほとんどの場合有意義である。
デベロップ:問題なし
デベロップ的問題から覚醒を多くのインスタントにつけるのを止めたが、それ以外ではこのメカニズムは問題を起こしていない。
プレイアビリティ:問題あり
土地をクリーチャー化したとき、どの土地がクリーチャーなのかをプレイヤーが把握しなければならない(+1/+1カウンターはもちろん助けになる)。
ストーム値:4
覚醒は充分人気があって充分柔軟なので、再録される機会はあるだろう。
収斂(『戦乱のゼンディカー』)
人気:不評
収斂は幸いにも盟友があったおかげで市場調査で最も評価が低いメカニズムにならずに済んだ。
デザイン空間:狭小
このメカニズムには拡大型の効果が必要で、いくらか制約がある。
多用途性:柔軟
このメカニズムに使用する効果は、どのゲームでも見かけられる基本的な効果であることが多い。
デベロップ:普通
リミテッドで収斂が使えるようにするためには、セットを歪めて色基盤を多くする必要があり、それには悪影響がありうる。
プレイアビリティ:問題あり
このメカニズムでは両プレイヤーが呪文を唱えるのに何色のマナを使ったかを覚えておかなければならず、対戦相手にとっては特に難しいことである。
ストーム値:6
収斂は、環境に合わないメカニズムだったと考えている。これがもし色が(無色でなく有色が)意味を持つブロックに投入されていたら、もっとずっとうまく行ったに違いない。上記の通りさまざまな問題があるが、私はいつの日か収斂に相応しい居場所を見つけることができると考えている。
欠色(『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』)
人気:普通
欠色は市場調査の結果よりもずっと評判が悪い。ほとんどの人はこれが下位25%に入っていると思うだろうが、実際のところは25%~50%の間に位置している。
デザイン空間:広大
このメカニズムに課せられている制限は、デザイン空間よりもむしろフレイバー的なものである。メカニズム的には、マジックに存在する全ての効果を欠色カードにすることができる。
多用途性:普通
このメカニズムを重要にしたければ、「無色関連カード」が必要になる。これはデザインにさらなる制限をかけることになる。ただし、「無色関連」の必要なしに欠色が意味を持つような環境もありうる。
デベロップ:問題あり
デベロップにとって、このカードが戦略として意味を持つだけの量をたった2セットで入れるのは難しい。特に、それらのセットで他のこともしたいならなおさらである。
プレイアビリティ:問題あり
色マナが必要なのにカード自体は無色であるというのは多くのプレイヤーにとって理解しがたいことだ。
ストーム値:5
欠色はメカニズムというより道具であるという意味で少し奇妙なものである。将来欠色が必要になることはあるだろうが、その場合はキーワード化せずに書き下すことになるだろう(キーワード化すると、欠色が満たせないような期待が発生してしまう)。
嚥下(『戦乱のゼンディカー』)
人気:普通
嚥下はかろうじて25%~50%の枠に滑り込んだ。
デザイン空間:狭小
嚥下カードを単体でデザインするのは難しくないが、フレイバー的に意味を持つようにデザインするのは難しい。
多用途性:硬直
嚥下で追放できる枚数では、昇華者のようなものが存在しなければ意味はない。
デベロップ:問題あり
嚥下は非常に狭く、いわゆる「A+Bデザイン」つまりメカニズムが有効に働くためには2種類のカード群(今回の場合は嚥下と昇華者)が必要となるデザインを使っている。これはかなりのカードを必要とする上に、バランスを取るのも非常に難しい。
プレイアビリティ:問題なし
このメカニズムは単体ではあまり問題はない。昇華者を使うことが必要となるが、こちらは問題がある。下記参照。
ストーム値:9
嚥下を再び見るかと言われると、疑わしい。
昇華者(『戦乱のゼンディカー』)
人気:普通
昇華者の人気は嚥下と非常に近い。
デザイン空間:狭小
昇華者は様々な理由でデザインが難しい。その中でも一番大きいのが、狭い条件に合う効果を見つけることである。
多用途性:硬直
昇華者は大量の追放効果がなければ存在し得ない。
デベロップ:問題あり
嚥下と同様、昇華者にはA+B問題が存在する。カードを追放するのが簡単な広いフォーマットにおいては、バランスは取れない。
プレイアビリティ:問題あり
このメカニズムでは両プレイヤーが追放領域全てに何が存在しているのかを把握する必要がある。
ストーム値:9
昇華者の未来については、嚥下の未来とほぼ同じことを感じている。
支援(『ゲートウォッチの誓い』)
人気:不評
支援よりも人気がないのは、盟友、収斂、大変異だけである。
デザイン空間:中等
このメカニズムはほとんどの呪文につけられて、クリーチャーがあるほとんどのデッキで有用な+1/+1カウンターを作る。デザイン空間は充分存在する。
多用途性:柔軟
クリーチャーと相性のいいメカニズムは多用途性を持つ。
デベロップ:普通
このメカニズム以外でパワーの高いゲームに影響を及ぼすカードを大量に作るのはデベロップ的に難しい。
プレイアビリティ:問題なし
このメカニズムはカウンターを用いるが、非常に直截的な方法である。
ストーム値:6
このメカニズムの最大の問題は不人気さである。デザイン空間は広く、柔軟で、デベロップ的にもそれほど問題はない。このメカニズムがうまくはまるセットで再録することはありうるだろう。
怒濤(『ゲートウォッチの誓い』)
人気:好評
怒濤はプレイヤーがプレイを楽しむが全体が気に入るわけではないメカニズムである(50%~75%に位置する)。
デザイン空間:広大
コスト減少は多くのカードに入れるのが非常に簡単である。このメカニズムはどのカード・タイプでも働くので特にそうである。
多用途性:柔軟
どのセットでも存在するタイプの呪文につけられるメカニズムであり、うまく噛み合う。
デベロップ:問題なし
2つの呪文を唱えることは十分な制約であり、このメカニズムは他のコスト減少メカニズムのようなデベロップ的懸念をもたらさない。
プレイアビリティ:問題なし
怒濤呪文が2つ目に唱えられているかどうかを認識する必要はあるが、これはそれほど難しいことではない。
ストーム値:4
怒濤はおそらく将来何度も登場することになることだろう。
無色マナ関連(『ゲートウォッチの誓い』)
人気:大好評
プレイヤーはコストとしての無色マナが大好きだ。
デザイン空間:狭小
無色カードだが、厳密にはそうではない。色の範囲に踏み込まない何かをする必要がある。無色マナ関連はデザインが非常に難しい。
多用途性:硬直
無色マナ関連は、充分な無色マナを生成する地盤が必要となる。そのため、これを全てのセットに投入するわけにはいかないのだ。
デベロップ:問題あり
他の強化が存在しないので無色マナ関連カードは単色カードよりも強力である必要があるが、有色カードをプレイすることに意味がなくしてしまってはならないので、デベロップ的に適正に仕上げるのは非常に難しい。セット内には土地からの充分なサポートが必要となるが、このバランスも難しい。
プレイアビリティ:問題あり
プレイヤーに、無色マナと不特定マナの違いを理解させるのは非常に難しい。新しい無色シンボルを作ったことで将来的に理解されやすくなることを期待している。
ストーム値:6
いつか無色マナをコストとして使う日はまた来ると思うが、それは相応しいセット、相応しいフレイバーが見つかったときだろう。
ストームで値を評価する
今日はここまで。いつものとおり、どのメカニズムがどれぐらい再録される可能性があるかという話を楽しんでもらえたなら幸いである。この記事に必要な情報を集めるために協力してくれたベン・ヘイズ/Ben Hayesとメル・リー/Mel Liに感謝する。さて、いつものとおり、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、マジックについて私が長年使っている比喩の話をする日にお会いしよう。
その日まで、あなたの好きなメカニズムのストーム値が低くありますように。
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