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Making Magic -マジック開発秘話-
開発部語辞典2016
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年11月7日
2005年1月、私は「開発部語辞典(リンク先は英語)」という記事を書き、そこで開発部内で使われているスラングを諸君に紹介した。最近その記事を読み返し、11年前から今日までに開発部語が大きく変わっていることに気がついた。そこで、私は新しいスラングを含む新版を書くことに決めたのだ。
《ギラプールの案内人》 アート:Scott Murphy |
新しい語彙に触れる前に、前回の記事のスラングについての現況に触れておこう。
前回の記事から全く変わらず使われている語彙
(訳注:元記事より解説を引用・翻訳しています)
FFL
デベロップが翌年のマジックがどうなるか判断するために行っている内部リーグの名前。フューチャー・フューチャー・リーグの略である。なぜ「フューチャー」を2回重ねているのかというと、かつて開発部はFL、フューチャー・リーグと呼ばれるリーグを行っており、これは6か月先の環境であった。6か月では問題を見付けられても解決できないと言うことからこのリーグは解散することになったのだ。その後、FFLという語は元の語からほとんど関係ないものになっている。
追加分/incrementals
各セットで、開発部はプレイテスト用デッキを作る時に使うために各カードを何枚かずつ準備する。これはミラージュの頃から始まったので、《Black Lotus》や《Mox Sapphire》は置いていない。
ルーター能力/Looter ability
(主に青に見られる)クリーチャーの起動型能力で、1人のプレイヤーがカードを引くこととカードを捨てることを両方行うもの。由来は『エクソダス』の《マーフォークの物あさり》である。
範囲打撃/rangestrike
「{T}:攻撃クリーチャー1体かブロック・クリーチャー1体を対象とする。〜はそれにN点のダメージを与える」の開発部での通称。(白のクリーチャーがよく持っている)
再利用可能/repeatable
将来何度も再録することができると感じているカードを指す開発部語。
ルートワラ能力/Rootwalla ability
パワーやタフネスを強化する起動型能力の中でターンに1回しか使えないもののこと。
セプター能力/Scepter ability
(通例タップを伴う)、プレイヤーにカードを捨てさせる起動型能力を指す開発部語。《破裂の王笏》に由来する。
セクシー/sexy
プレイヤーの大半に強烈にアピールするだろうと思われる特定のカード。得に、ある種のプレイヤーがずっとこだわりを持つようになるようなカードのことを指す。
魅力的/splashy
特定のカードがプレイヤーの大多数の心を大きく動かすだろうという意味の開発部語。魅力的なカードは非常にいい第一印象が期待できる。
ティム能力/Tim ability
クリーチャーやプレイヤーに(大抵は1点の)ダメージを与えるクリーチャーの起動型能力のこと。由来は、映画「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」から由来する《放蕩魔術師》のあだ名である。
調整/tweak
昔のカードにちょっとした変化を1つ加えたカードのこと。これは動詞としても使われ、そういったカードを作ることを意味する。例:「コモンで使えるように《石の雨》を調整すべきだ」。
対象不能性/untargetability
「呪文や能力の対象にならない」の意味の開発部語。
バニラ・クリーチャー/vanilla creature
ルール文章を持たないクリーチャーのこと。例外として扱われているのは飛行である。飛行を持つだけで他の能力を持たないクリーチャーのことを「バニラ飛行クリーチャー」などと呼んだりする。
WUBRG
発音は「ウーバーグ」。これは各色1マナのことを意味し、「《スリヴァーの女王》のコストはWUBRGだ」というように使う。WUBRGは5色を開発部内でファイルする順番で並べたものである。
Johnny/ジョニー、Johnny card/ジョニー・カード、Spike/スパイク、Spike card/スパイク/カード、Timmy/ティミー、Timmy card/ティミー・カード
これらの心理分析は用語的には変わっていない。変更点としては、それぞれに対応する女性名を付け加えたことが挙げられる。ティミーにはタミー、ジョニーにはジェニー、スパイクは男女両用である。心理分析について詳しくは別記事(リンク先は英語)を参照のこと。
近年ほとんど使われていない語彙
必要があれば使うことはできるが、現在の開発部では馴染みがなくなっている単語である。
"Bah-roken," clever card, discriminator card, hat trick, promotable, pseudo-repeat, sticker stock, sucker card, Wyluli ability, sleeper card
使われなくなった単語
The candle, mad farmer, Mark's donut, Nth Edition, packing material, wombo combo, WotC time
引越しに伴い使われなくなった会議室名
前回の記事以降にウィザーズは引っ越しており、これらの会議室名がついていた部屋はもはや存在しない。開発部関連の新しい会議室については、この記事の中で紹介する。
Bag-End, East One, Focus One, Focus Two, The Lab, Leomund's Tiny Hut, The Library, The Mana Pool, The Old War Room, Wapner
引っ越し後にも同じ名前がつけられた会議室名
部屋の中には、強い意味を持っていたために引っ越し後にも名前が引き継がれたものがある。それについてもこの記事の中で紹介する。
The Bridge, Danger Room, Free Table, Grand Central Station, The Pit
公式な名前がついた能力
Celerity
速攻
Serra ability
警戒
Spirit Link
絆魂
同じものを示すのに別の用語が充てられたもの
C, D, Multiverse, Ophidian ability, WotC
古いスラングの話はここまでにして、現行のスラングの話に入ろう。
身近な/Accessible
この単語は、新規プレイヤーにも十分使えるカードのことを指す。我々は、どのセットにも身近なカードが充分にあって、その新商品でマジックを始めるプレイヤーを受け入れられるようにしようとしている。古いスラングでは、これらのカードが「M-set」(「M10」=『基本セット2010』以降の基本セットが「マジック」の後に年号をつけた名前だったことから、基本セットのことを指すスラング)に入れることができるものだ、という意味で「M-tenable」と呼ばれていた。このスラングは、響きが悪いということ、そして基本セットがなくなったということから変更された。
総員会議/All-hands
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの全従業員が参加する会議。年に3~6回開催される。
友好色/Ally colors
カラー・ホイールにおいて隣り合わせの2色のこと。白青、青黒、黒赤、赤緑、緑白(この順番は色の組み合わせの表記順でもあり、マナ・コストに含まれるマナ・シンボルの表記順でもある)。
開封比/As-fan
平均的なブースターを開封した時に、特定のカード群のカードがどれぐらい出てくるかを意味する単語。通例、ブースター1個から平均して何枚のカードが出てくるかという意味で用いる。例えば、多色のセットでは、古典的な多色カードは2.3の開封比を持つ。つまり、そのセットのブースターには、15枚のカードの中に平均で2.3枚の古典的な多色カードが入っているということになる。開封比の数字が重要なのは、それによってそのカード群のカードがどれぐらいリミテッドに存在するかを決める助けになるからである。
後方互換/Backwards compatible
そのカードが過去に印刷されたカードとうまく噛み合うという性質を表す単語。『カラデシュ』の《パンハモニコン》は後方互換カードの好例である。戦場に出た時に誘発するカードを扱っているが、そういったカードはこれまでのセットに何百枚も存在している。この逆が「孤立的/parasitic」である。
熊/Bear
2マナで2/2のクリーチャーすべてを指す単語。『アルファ版』の《灰色熊》に由来する。例えば、「白にもう1体熊が欲しいな」というように使う。
The Bridge
ウィザーズ本部の中で最も豪華な会議室で、トップレベルの会議の殆どはここで行われる。カード技術、世界技術の両会議はここで開催される。The Bridgeは通例現在のマジックの舞台となっている世界を描いた巨大な絵が飾られており、そのブロックに登場するプレインズウォーカー2人が描かれ、風景が3枚の絵に渡って描かれていることが多い。この部屋の名前はスタートレックに由来している(ウィザーズの会議室のほとんどはオタクっぽい名前がつけられている)。
C
無色マナ・シンボルを示すために用いられる文字。例えば、「《太陽の指輪》をタップしてCCを出す」というように使う。以前「C」で表していた内容については、「M」を参照。
Candlekeep
これはダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ開発部の近くにある会議室である。その大きさと場所がちょうどいいのでマジック開発部もよく使っている。この名前は(ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ世界の)フォーゴトン・レルムの大図書館のある城塞都市に由来している。
カード技術/Cardcrafting
デザインとデベロップがややこしい技術的問題を掘り下げる、週1回の会議。カラー・パイ、テンプレート、ルールについて話し合う。マジックを作る上での技術的なあり方を変更したいと考えた場合、ほとんどはこの会議に最初に提示される。
特徴的/Characteristic
通常コモンに存在する小型クリーチャーの代表であるクリーチャーを示す語。レアに存在する大型クリーチャーの「象徴的クリーチャー」の対義語である。現在の特徴的クリーチャーは、色ごとに次の通り。
- 白 - 人間
- 青 - マーフォーク
- 黒 - 吸血鬼、ゾンビ
- 赤 - ゴブリン
- 緑 - エルフ
特徴的クリーチャーはすべてのブロックに存在するわけではないが、半数以上のブロックには存在している。
好奇心/Curiosity
クリーチャーが戦闘ダメージを与えたときにそのコントローラーがカードを1枚引けるというクリーチャーの能力の通称。好奇心能力を持つクリーチャーの例としては、《泥棒カササギ》がある。この語の由来になったのは、この能力を与えるオーラの《好奇心》である。以前は(前の記事では)この能力は「知恵の蛇能力」と呼ばれていたが、その後の由来になった『ウェザーライト』の《知恵の蛇》はカードを引く場合には戦闘ダメージを与えられないので変更された。
Danger Room
旧Danger Roomはリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldのオフィスだったが、彼は必要としていなかったので会議室として提供し(表に入っていなかったので誰も予定を入れることはできなかった)、開発部がゲームをする場所となった。我々が道向かいに引っ越したとき、我々は敬意を表して一番小さな会議室にDanger Roomと命名した。このDanger Roomは表に入っており、社内の誰でも会議室として使うことができる。
威圧/Daunt
「パワー2以下のクリーチャーによってはブロックされない」というクリーチャー能力を示す開発部語。『カラデシュ』にはこの能力を持つカードが3枚存在する。
落葉樹/Deciduous
常磐木ではないが、セットに必要だと考えた時に開発部が使える能力/メカニズム/道具を指す語。落葉樹なものの例としては、混成マナ、両面カード、プロテクションなどがある。
Dominaria
ウィザーズ本部の1階にある巨大会議室。ほとんどの場合、リクリエーションスペースとして用いられている。昼食をとったり(ときには昼食が提供されることもある)、卓球やボードゲームに興じたり、単にくつろいだりする。また、大規模な会議や総員会議の会場としても用いられることがある。社員プレリリースはこのDominariaで開催される。Dominariaには、Ravnica、Zendikar、Tomb of Horrors、Waterdropの4つの会議室が併置されている。前者2つはマジックの次元に由来しており、後者2つはダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの場所に由来している。Dominariaは社内全員の投票によって命名されている。
ドレイク/Drake
マジックの新しいデータベースの名前。以前は「マルチバース/Multiverse」と呼ばれていた。
敵対色/Enemy colors
カラー・ホイールにおいて隣り合わせになっていない2色のこと。白黒、青赤、黒緑、赤白、緑青(この順番は色の組み合わせの表記順でもあり、マナ・コストに含まれるマナ・シンボルの表記順でもある)。
ETB
「戦場に出る/Enters the battlefield」の略。カードを書く時に省略形を使うだけでなく、この種の誘発型能力について話し合うときにも用いる。例えば、「《パンハモニコン》はETB効果と相性がいい」。『基本セット2010』で「戦場/battlefield」という用語が導入される以前は「場に出る/Comes into play」の省略形のCIPという書き方をしていた。
ETBT
「タップ状態で戦場に出る/enters the battlefield tapped」の略。これは土地でもっともよく見られる文章だが、クリーチャーにこう書かれていることもある。
回避/Evasion
盤面の膠着状態を打開する助けとなるクリーチャー能力のこと。飛行、威迫、トランプルが回避能力の例である。
常磐木/Evergreen
ほとんどのマジックのセットで使わえれているメカニズムや要素のこと。先制攻撃、接死、絆魂などが常磐木能力である。
Eye of Ugin
マジックのクリエイティブ・チームの近くにある会議室。長年に渡り、Safe Havenと呼ばれ、静かに仕事をしたい人が逃げ込む隔離室だったが、会議室を増やす必要があると気がついたので、部屋の名前が変更されて隔離室ではなくなった。
炎のブレス/Firebreathing
マナ(通例赤マナ)を消費して、一時的にクリーチャー1体のパワーを強化する(通例+1/+0)能力の通称。この名前は、初めてこの能力を使った『アルファ版』のカード《炎のブレス》に由来する。
ちらつき/Flicker
戦場からパーマネント(よくあるのはクリーチャー)を追放し、それを戦場に戻すという白や青に存在する能力。この能力には2種類あり、クリーチャーを即座に戻すものと、ターン終了時に戻すものがある。開発部では即座に戻すものを「瞬間ちらつき」と呼ぶことが多い。この名前は、初めてこの能力を持った『ウルザズ・デスティニー』の《ちらつき》に由来している。開発部の中には、これを「瞬き/Blinking」と呼ぶものもいる。
Free Table
以前のオフィス(現在のオフィスの道向かい)では、開発部の近くのキッチンにテーブルがあり、そこに不要になったものを置いてよいことになっていた。Free Tableの狙いは、クールなものを手に入れ、必要なくなったものをFree Tableに置いて他の人が利用できるようにする、というものだった。道をまたいで引っ越してからは、各キッチン(各フロアにキッチンがあるようになった)にそれぞれのFree Tableが設置されている。
フレンチバニラ/French vanilla
バニラ・クリーチャーとは、ルール文章を持たないクリーチャーのことである。フレンチバニラ・クリーチャーとは、クリーチャー・キーワードだけを持つクリーチャーのことである。フレンチバニラ・クリーチャーは複数のクリーチャー・キーワードを持つこともありうる。この用語がデザインやデベロップにおいて重要なのは、セットの複雑さを意識しようとしているからである。バニラ・クリーチャーやフレンチバニラ・クリーチャーは、他のクリーチャーに比べると複雑さが低いことが多いのだ。
Grand Central Station
プロダクション・チームは伝統的に、彼らの使う最大の会議室に、ニューヨーク・シティの巨大駅の名前をつけている。壁には、グランド・セントラル駅の絵が掛けられている。開発部のある3階で最も大きい会議室なので、開発部は時折この部屋を使っている。
灰色オーガ/Gray Ogre
3マナで2/2のクリーチャーの通称。点数で見たマナ・コストが3のバニラの2/2クリーチャーである『アルファ版』の《灰色オーガ》に由来する。
共感する/Grok
デザイン・チームがよく使う語。ロバート・ハインラインの小説「異星の客」に出てくる語で、何かの概念全体を即座に理解できるということを意味する。デザインでは、新しいアイデアをプレイヤーが簡単に把握できるかどうかという話の時に用いる。
確定カウンター/Hard counter
何の条件もなしであらゆる呪文を打ち消せるものを指す語。《対抗呪文》と《取り消し》がその例である。「不確定カウンター」という語もある。詳しくは後述。
対策カード/Hate card
他のカードやメカニズムや戦略を止めるためにデザインされたカードのこと。通例、対策カードは手に負えなくなった要素への対応として作られる。特定の要素が制御できなくなった場合に備えて、事前に作られることもある。
Helvault
マジック・クリエイティブ・チームの近くにある会議室。マジックと無関係のさまざまな名前を経て、最終的にHelvaultに落ち着いた。中には、(旧『イニストラード」うロックのストーリー上)《獄庫》に閉じ込められていた有名な存在であるアヴァシンとグリセルブランドの巨大な絵が掛けられている。しばしば、登場人物が閉じ込められた場所に由来する我々の会議室はいくつあるか、という冗談のタネにすることがある。
高空/High flying
飛行を持つクリーチャーで、飛行を持たないクリーチャーをブロックできないもののことを指す開発部語。《雲の精霊》と《天空のアジサシ》が高空クリーチャーの例である。
丘巨人/Hill Giant
4マナ3/3のクリーチャーを指すスラング。『アルファ版』の《丘巨人》に由来する。
H
「H」は実際の色を特定しない形で混成マナを示す場合に用いる文字である。例えば、「『ラヴニカ』ブロックでは、ギルド魔道士はそれぞれマナ・コストがHHだ」というように使う。
象徴的/Iconic
レアで魅力的な象徴として用いる、各色のクリーチャーのことを指す。象徴的クリーチャーが確定するには長い時間がかかっており、中でも一部の色(青と緑)は何年も掛けてさまざまなクリーチャー・タイプを試した。象徴的クリーチャーは以下の通り。
- 白 - 天使
- 青 - スフィンクス
- 黒 - 悪魔
- 赤 - ドラゴン
- 緑 - ハイドラ
衝動的ドロー/Impulsive draw
「カードをN枚追放し、ターン終了時までそれらを唱えてもよい」を意味する開発部語。この能力は、赤にカードを引く類の能力を与えたかったことから考え出された。《紅蓮の達人チャンドラ》と《反逆の先導者、チャンドラ》が衝動的ドローの例である。
Ivory Tower
開発部に一番近い会議室の1つ。『アンティキティ』の人気の高いカード、《象牙の塔》に由来する。なぜかこの部屋はいつも寒い。
レンズ状/Lenticular
一見すると単純に見えて、プレイヤーが腕を上げるにつれて発見できる類のプレイの深みがあるデザインのこと。見方によって2つ以上の絵が見えるような印刷技術に由来する。レンズ状のデザインについて詳しくは、こちらの記事を参照。
主軸的/Linear
特定の他のカードと組み合わせてプレイすることを推奨するようなカードのこと。《ゴブリンの酋長》はゴブリンに+1/+1を与えるため、ゴブリンと組み合わせてプレイすることを強く推奨することになる。これが主軸的なカードの例である。主軸的の逆に当たるのが部品的である。この概念について詳しくは、こちらの記事(リンク先は英語)を参照のこと。
Lost Temple
the Pit近くで最大の会議室。何かのゲーム(多分ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ)に由来していると思うが、私は詳しくない。我々が大規模な会議を開きたいときに使う部屋である。
M, N
デザインは「M」を特定の種類の色の意味で用いる。最もよく用いられるのは、サイクルについて話すときに、どのマナが用いられるかを示す記号が必要な必要な場合である。例えば、「3Mで3/3のクリーチャーのサイクルがこのセットには存在する」というように使う。この場合、白なら{3}{W}、青なら{3}{U}という意味になる。マナ・シンボルが2つ必要な多色カードでは、「N」を用いている。以前は「C」(と「D」)を用いていたが、『ゲートウォッチの誓い』で不特定マナと無色マナを区別するようになり、「C」が無色マナを表すようになった。開発部内でもこれの表記については割れており、デベロップは今でも「C」を用いている。ただしこれが使われるのはデザインのほうがずっと多いので(デザインでは構造企画をやることが多く、2つの文字を分けないことは混乱を招くので)デザインは「M」に移行している。
マナ安定化/Mana smoothing
各セットに、慣れたプレイヤーがデッキ内の土地をうまく使えるようにする方法を入れることが多い。マナ安定化は通例、プレイヤーが土地を絶え間なく手に入れられるようにするか、ゲームの後半でマナを使う方法をもたらしてデッキ内の土地の割合を高めることができるようにするかのどちらかである。
Meditation Realm
4階にある大きな会議室。長い間The Matrixと呼ばれていたが、会議室の名前をウィザーズのゲームに由来するものに変更していく中でMeditation Realmに変更された。壁の一面に、巨大な《ボーラスの瞑想領土》の巨大な絵が掛けられている。
メル/Mel
メルは美的分類2種のうち1種である(もう1種がヴォーソスである)。メルとは、マジックへの評価がマジックのメカニズム的な組み立て方を分析するところから来ているプレイヤーのことである。メルについて詳しくは、こちらの記事を参照のこと。メルはもともとメルヴィンと呼ばれていたが、両性に適用できるように変更された。
削る/Mill
ライブラリーの上にあるカードをそのプレイヤーの墓地に置くことを指すスラング。(英語は)この効果を持つ最初のカードである、『アンティキティ』の《石臼》に由来する。
Mishra's Workshop
開発部内にある小型の会議室だが、デザインの会議はここでよく行われている。
部品的/Modular
他の特定のカードと組み合わせてプレイすることを推奨しない類のカードを指す。部品的カードは、それ単体で問題なく完結した機能を持つ。《巨大化》は部品的カードの好例であり、クリーチャーさえ入っていれば、どんな緑のデッキにも入れることができる。部品的の反意語が主軸的である。この概念について詳しくは、こちらの記事(リンク先は英語)を参照のこと。
新世界秩序/New World Order
開発部内での、コモンに存在できる複雑さを制限し始めたという大きな変化を表す語。これは、カードをあまり多く買っていない新規プレイヤーにとってマジックを単純にし、同時に熟練プレイヤーには複雑さを提供するという目的で行われた。これについて詳しくは、こちらの記事を参照のこと。
孤立的/Parasitic
自身の存在するセットあるいはブロックに特有のものを参照するという性質。『神河物語』の《恩義ある侍》は孤立的カードの好例である。このカードを最大限活用するには、デッキには『神河物語』ブロックにしか存在しないクリーチャー・タイプである侍を大量に入れなければならない。これの反意語は後方互換である。
Ravenloft
開発部の近くにある会議室の1つ。この名前はダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの世界に由来する。なぜか、壁の絵はプエルトリコの地図である。
リアニメイト/Reanimation
墓地からクリーチャー・カードを戦場に出すカードのこと。
かき回し/Rummaging
先に捨ててから引くという赤のルーターを表すスラング。
サボタージュ/Saboteur
戦闘ダメージを対戦相手に与えた時に効果が誘発するクリーチャーを表すスラング。
断片/Shard
カラーホイール上で並んだ3色の組み合わせを示す語。マジック史上初めてこの3色の組み合わせに注目した『アラーラの断片』に由来する。5つの断片は、緑白青(バント)、白青黒(エスパー)、青黒赤(グリクシス)、黒赤緑(ジャンド)、赤緑白(ナヤ)である。『アラーラの断片』までは、これらの3色の組み合わせは開発部では「弧」と呼ばれていた。
卑屈/Skulking
「潜伏/skulk」と混同しないこと。これは、対象になったら生け贄に捧げなければならないというクリーチャー能力を表すスラングである。この能力を持つ最初のクリーチャーである『ミラージュ』の《卑屈な幽霊》に由来する。この能力は黒から青に移り、今は幻影と関連付けられているので、開発部の中には「幻影能力/Illusion Ability」と呼ぶものも出始めている。
不確定カウンター/Soft Counter
特定のカード群のカードだけを打ち消せる打ち消し呪文や、ある条件下でのみ呪文を打ち消せる呪文のこと。《否認》や《マナ漏出》が不確定カウンターの一例である。上記「確定カウンター」を参照のこと。
忍び寄り/Stalking
「2体以上のクリーチャーによってはブロックされない」というクリーチャー能力を指す語。『ミラージュ』の《忍び寄る虎》に由来する。
ストーム値/Storm Scale
私のブログで使い始めた道具だが、メカニズムがスタンダードで使えるセットで再録される可能性を評価する記事でも使うようになっている。詳しくは、こちらの記事を参照。
T
「T」は、デザインとデベロップでタップ・シンボルを表すために用いられている。
閾値1/Threshold 1
特定のカード群に属するカードが1枚あれば強化される類のカードのこと。『ゲートウォッチの誓い』の《攻性エルドラージ》は閾値1カードの好例である。
火曜マジック会議/Tuesday Magic Meeting
毎週火曜日の午後に開催される、マジック全体の話をする会議。マジックに関心のある社員全員が参加できる。
UEOT
「ターン終了時まで/until end of turn」の略。カードを書くとき、この省略形を用いることが多い。
実質バニラ/Virtual vanilla
戦場に出たターンが終わったらバニラ・クリーチャーのように機能するクリーチャーのこと。同様に、実質フレンチバニラという用語も存在する。これは、戦場に出たターンが終わったらフレンチバニラ・クリーチャーのように機能するカードのことである。
ヴォーソス/Vorthos
ヴォーソスは美的分類2種のうち1種である(もう1種がメルである)。ヴォーソスとは、マジックへの評価がマジックのフレイバー的な組み立て方を分析するところから来ているプレイヤーのことである。ヴォーソスについて詳しくは、こちらの記事を参照のこと。
楔/Wedge
カラーホイール上で、1色と、それの敵対色2色からなる3色の組み合わせのこと。この用語が有名になったのは、マジック史上初めてこれらの3色に焦点を当てたセットである『タルキール覇王譚』以降である。5つの楔は、白黒緑(アブザン)、青赤白(ジェスカイ)、黒緑青(スゥルタイ)、赤白黒(マルドゥ)、緑青赤(ティムール)である。
ウィザーズ/Wizards
マジックの初期には、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストはWotC(ウォッジー)という省略形で自称していた。数年後、その通称の使用をやめて、今は省略形を使う場合には単に「ウィザーズ」と名乗っている。
世界技術/Worldcrafting
技術的なデザイン・デベロップの話ではなくクリエイティブの話であるという点を除いてカード技術と同じように働く、週に1回の会議。通例、この会議はthe Bridgeで行われる。
スラング10/10(まあ、実際は10よりずっと多いが)
今日はここまで。すべてのスラングを網羅したわけではなく、私が日常接しているデザイン中心のスラングに焦点を当てたものである。いつもの通り、諸君からのこの記事の感想をメール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、私が戦いに挑む時にお会いしよう。
その日まで、あなたが開発部語を楽しめますように。
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