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『モダンマスターズ 2017年版』をデザインする
『モダンマスターズ 2017年版』をデザインする
Sam Stoddard
2017年3月3日
『モダンマスターズ 2017年版』のリード・デザインの仕事を見て、「簡単そうだな。全部再録だし完成させるのに何が必要なんだ?」と言うのは簡単です。ええ、そうです――このセットのために新しいものを作る必要はありませんが、このセットのリード・デザインの重要な仕事はこのセットに何を再録するかと、リミテッド環境をどのように作るかを決めることから始まります。
リード・デベロッパーは全ての最終決定権を持っていますが、リード・デザイナーの目標はリード・デベロッパーが繰り返しをするための強固な土台を整えることです。デザインがビジョンを定めるのと同じように、私の目標はこのセットの足場を整えることと、リード・デベロッパーのアダム・プロサック/Adam Prosakがうまく具体化できるようなものを作ることです。
初代『モダンマスターズ』には多くのアドバンテージがありました――我々がそれを作っていたときに、『モダンマスターズ』やフォーマットとしてのモダンが成功するかどうか全く分からなかったので、一回限りのものになる可能性がありました。このセットは部族と組み合わさった多相、キッカー、鮮烈土地、待機、ストームなどをやらなければなりませんでした。つまり出し惜しみをしなくてもいいということです――なのでその時の最も楽しいリミテッドのメカニズムをすべて使い、それらで1つのセットが作られました。これは『時のらせん』方式でやや散らかっていましたが、今までにない素晴らしいものでした。
結局のところ『モダンマスターズ 2015年版』のリミテッドは、そのやり方を繰り返そうとしたのに同じ楽しさのレベルのメカニズムがなく、そのテーマを押し込めようとしすぎたので失敗したと私は確信しています。あのセットはより型にはまった経験と引き換えに、初代『モダンマスターズ』にあった楽しい個別のメカニズムやカードを失いました。我々が『モダンマスターズ』に求めるものとは対照的な、基本セットに近いものになってしまったのです。
再び『モダンマスターズ』に戻ることになったとき、我々はこの罠に引っかからないことを決意しました。我々は『イニストラード』と『ラヴニカへの回帰』の両ブロックの楽しいもののいくつかを『モダンマスターズ』の2017年のプールへ追加しましたが、私はこのセットをこれら2つのブロックの単なる「ベスト版」にはしたくありませんでした。
私はこれを以前の『モダンマスターズ』セットを新しいカードでアップデートしたものではなく、よりまとまりを感じさせる引き締まったテーマを持ち、それ自体が本当に目立つものにしたいと考えました。このことから見えてくるわかりやすいバージョンは2つあります――『イニストラード』からの墓地に焦点を当てたセットか、『ラヴニカへの回帰』の金色に焦点を当てたセットです。『イニストラード』に戻ったばかりであることを踏まえると、そのテーマを焼き直すのに適した時であるとは感じられず、そのことから私は『モダンマスターズ 2017年版』を金色のセットにするアイデアを得ました。こうすることで将来のマスターズのセットへのデザイン空間を多く残しながら、他のマスターズから取り除かれた一歩を作ることができました。
結局のところ、我々がこれらのセットを続けるために、最近やっていない楽しいカードが残されているのを良しとせず、それぞれが自立してそのセットにあるカードで最も楽しいものにするチャンスを持たせたいと思っています。
異なる構築
他のマスターズのセットと比べたこのセットの組み立て方の(少し)急激な変化は、いくつかのドアを開きました。たとえばスタンダードのほとんどのセットで行われている10の色のペアを、実際の金色のセットで試してみると多すぎたのでやらないことにしました。私は『タルキール覇王譚』にならって、このセットを友好2色と楔のデッキを作ることに焦点を当てたものにしました。ここで配られている金色のカードを見てみたなら、『タルキール覇王譚』で行ったことにかなり似ています。壊れていないものは、修正しないほうがいいのです。
各マスターズのセットで本当に苦労することは、マスターズのセットに期待されるレベルの深みと複雑さを維持しながら、(ほとんどの人々はこれを20回ドラフトしてこのセットの隅々まで探求したりしないので)わかりやすいドラフト戦略を持つものをどのように作り出すかということです。このセットでは、2色の戦略をわかりやすいものにし、3色目をドラフトすると複雑になるようにしたことでそれを達成しました。緑白居住で何をするべきかはすぐにわかります――しかし《翼の接合者》をパックから開けた場合、あなたならタッチしてそのデッキが機能するようにしようとしますか、それとも《議事会の招集》のようなより伝統的なカードで方針を維持しますか?
私はこれが『モダンマスターズ 2017年版』に加えたものの多くが、受けを広くしてグッドスタッフのカードを取り続ける時と、そして高いシナジーに向かうためにより単一のデッキに焦点を当てるべき時を知っているプレイヤーが利益を得る、とても強固なドラフト環境であると信じています。このセットは金色のセットであり、多くの強力な個別のカードとマナ基盤があるので、グッドスタッフ戦略をプレイすることは全くもって開かれた選択肢ですが、必ずしも最強の動きではありません。我々はこのフォーマットに掘り下げる余地があると信じていますが、私はこれが楽しいものになると信じていて、「Magic Online」でたくさんドラフトするのを楽しみにしています。
《議事会の招集》 アート:Terese Nielsen |
我々は『モダンマスターズ 2017年版』のデザインの最初の数週間をこのセットの仕組を整え――ほとんどは金色カードと後方互換に取り組むことから始まっていました――ファイルを埋めることに費やしました。全再録セットの課題の1つは、小さなことに頻繁に邪魔されるということです――2つのテーマが近すぎるマナ・カーブを持っていたり、このセットが実際に機能するために1つのメカニズムを持った十分に強いカードを得られなかったりします。
使うことのできるカードを全て見つけ、そしてそれらをこのセットに適応させる多くのGathererでの作業の後で、我々はプレイテストを行いました。最初のプレイテストはいくつか大きな問題(ほとんどは金色カードが多すぎることによる鮮明さの欠落)を抱えていましたが、楽しい土台があるのは明白でした。私は最終的にこのセットをリードすることになるアダム・プロサックからいくつか意見をもらい、それを我々に残された時間でセットの方向性を操作するために使いました。
約2か月の会議の後このセットは、デザイン・チームからこのセットを仕上げる2番目の視点と脳を持つデベロッパーたちへと渡される、適正な場所にありました。
デベロップへの引き継ぎ
デベロッパーにとっては、そのセットの引き継いだものは全てが揃ったものです。デザイナーにとっては少し違います。各デザイナーのすることは少しづつ違いますが、その究極の目標がリード・デベロッパーにプレイアブルなセットを渡すことである一方、デザイン・チームはいくつかのアイデアを繰り返し、彼らが機能すると信じているものとそうでないものを言うことができます。
通常のセットと比べて、マスターズのセットのデザインとデベロップの期間はかなり短く、それはセットが引き継がれるまでにかなり固まったものになっている必要があることを意味します。
引き継ぎの時点で、私はアダム・プロサックに以下のような色のペアのアーキタイプを提示しました。
- 白青明滅
- 青黒忍者/戦場に出たとき
- 黒赤湧血
- 緑白居住
- ジャンド死亡/墓地利用
- グリクシス墓地呪文
- ナヤ・トークン・ビートダウン
- バント明滅・戦場に出たときのトークン
- 白黒戦場に出たとき
- 青赤呪文
- 黒緑墓地
- 赤白高速アグロ
- 緑青5色(緑青は5色に加速する)
私は敵対2色のデッキで可能なものと、そんなに頻繁に起こるとは想定していないということを書いておきました。『ラヴニカへの回帰』や『ギルド門侵犯』でギルドではない2色が起こる割合よりは高いのですが、多分一回おきぐらいのドラフトにつき1人だけです。
またこの引き継ぎの中で、私は白青明滅と青黒が実際に機能しなかったことも書き留めました。我々は忍者を何度も試しましたが、どうにかして忍者をもっと印刷する方法を考え出すまでそれらをマスターズのセットに入れられるかどうかは分かりません。楽しいものがいくつか、特に《深き刻の忍者》がありますが、忍者はかなり浅く、『プレインチェイス』のものはリミテッドに多くのものを加えません――少なくともテーマになるには不十分です。
アダムはこの引き継ぎに大いに満足し、青黒を置き換える方法と明滅の色のペアを機能させる方法の両方を考え出す素晴らしい仕事をしました。完成版のセットの色のペアのアーキタイプはこれです。
- 白青明滅
- 青黒インスタント・コントロール
- 黒赤蘇生/生け贄
- 赤緑トークン横並べ
- 緑白居住
- エスパー・コントロール(とクリーチャー)
- グリクシス墓地
- ジャンド生け贄
- ナヤ・トークン・アグロ
- バント接合者
私は白青を機能させる秘訣は、明滅させるものとして一般的なトークン生成者ではなく接合者に焦点を重点的に当てることにあったと確信しています。
『モダンマスターズ 2017年版』はまもなく発売され、そして私はみなさんがこれをドラフトするのを待ちきれません。我々は意見を求めて、このセットと最初の2つ(と少ないかもしれませんが『エターナルマスターズ』)の間の戦略の変化がうまくいったかどうかを見つけ出し、そしてそれを将来のマスターズのセットの開発の方向性を決めるために使います。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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