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モダンにおけるデベロップのリスク
モダンにおけるデベロップのリスク
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年5月22日
我々はどれぐらいモダンのプレイテストをしているのか、と尋ねる人が時々います。その答えは......えー、していません。少なくとも直接は。ある意味ではやっているとも言えますが、実際にやってはいません。我々のプレイテストのほとんど全てはリミテッドかスタンダードのどちらかですが、全てのモダンのカードはスタンダードを経なければならないので、我々はそれらのカードがモダンでどれぐらい強いかをかなり把握できています。
《宝船の巡航》や《死儀礼のシャーマン》のような、広いフォーマットで明らかに強力になるカードが存在しますが、我々はそのようなカードを作ることは止めません。結局のところ、我々はそれらのカードをスタンダードでちょうど良いと信じる強さにしており、その判断を用いてモダンで何でもかんでもイカれたことをしないようにもしています。
《死儀礼のシャーマン》 アート:Steve Argyle |
我々は時々間違いをするでしょうか? 確かにそうです。スタンダードにおける我々の目標は、禁止カードを10年に1枚だけにすることです。完全にゼロの可能性ではありませんが、かなり低い確率です。モダンにそのような数値的な目標は何も設定されていませんが、定期的に禁止カードを出さなくてもいいようなところに持って行きたいと願っています。スタンダードとモダンの環境を十分に多様性のあるものにして、十分なリスクを背負う必要があり、我々は壊れているものを完全に防ぐことはできません。さもなければ、皆さんがそのフォーマットをすぐに解明してしまう可能性がかなり高くなり、環境が停滞してしまうでしょう。我々は誰もが予期せぬカードが活躍して驚くことに満足しています。
また我々にとって重要なのは、モダンで問題を起こす可能性があるからといってスタンダードのデザイン空間を殺すことはないということです。最初からモダンで禁止されるだろうと確信するようなカードを印刷しようとはしませんが、印刷されてすぐに禁止される可能性のあるものは存在します――その可能性がわずかであっても。それはそうとして、スタンダードでの動きがとても気に入らず、モダンにも今以上に強い選択肢が必要ないと分かっているという理由で、スタンダードで印刷することをとても警戒している3種類のカードがあります。
軽くて効果的なドロー操作
モダンでコントロールを機能させるためには《定業》のようなカードが必要だという議論を聞いたことがありますが、実際にはこれらはコントロール・デッキよりもコンボ・デッキを大きく強化します。これが軽量ドロー操作のリスクの1つであり、そのようなカードをスタンダードから遠ざけている理由の1つです。我々は《予期》のようなカードを印刷しましたが、他に1マナでカードを選べるキャントリップをすぐに作ることはないだろうと私は考えています。それは我々が見たいと思わせるようなゲームを全く奨励しないのです。
《思案》と《定業》が禁止されて《手練》と《血清の幻視》がそうでない理由の一部は、後者のほうが単純に弱く、カードの引きをすぐに整えることに関して良い動きをしないからです。フォーマットにドロー操作が多すぎることの問題点は、それがゲームの展開を全く同じものにすることが多すぎる点です。いくらかの目新しさもありますが、私はそれがフォーマットの高い再プレイ性の楽しさを損ねていると思います。
これは我々が安定性を好まないと言っているわけではなく、セットに多くの2色土地を入れている理由にもありますが、安定性のためにそれなりの代償があるべきです。《マナの合流点》は厄介な「1点のライフを払う」の一節がなければスタンダード最強の土地でしょう。色の問題がないデッキがいいなら、赤単をプレイすることができます。3色のアグロ・デッキをプレイしたいなら、より強力な呪文がプレイできますが、その代償にライフを支払うことやタップ状態で土地を出してマナ・カーブが損なわれることになるでしょう。
例えば占術土地は、これまで印刷された中で私が気に入っている土地のサイクルです。最初はこれらを弱すぎると酷評していたプレイヤーもいましたが、私はデッキの呪文スロットを圧迫することなくドロー操作ができることがいかに強力であるかを時間が証明したと思います。私の考えでは、これは良い種類のドロー操作です。これらはプレイヤーがさらに土地をプレイすることを助け、そしてマナ・フラッドを回避します。また人々が土地が1~2枚の初手をキープして成功する確率を上げ、最終的に十分な枚数の呪文を引くことを可能にします。皆さんがこれからも、ゲーム全体を組み上げる、多くの小さいながら意味のある決断を目にしていくだろうと、私は思っています。それはプレイヤーにコンボ・パーツを速やかに集めさせるカードとは対照的です。
高速マナ
「なぜストームのカードを禁止して、高速マナを解禁しないのか」というような人々の疑問を耳にしたことがあります。まあ、これはストームを食い止める答えのようにも聞こえますが、これらの高速マナで具体的にどういうことをするのでしょうか? 私は具体的に何かフェアなことをするとは思えません。私は人々が1ターン目に「《炎の儀式》、《炎の儀式》、《煮えたぎる歌》、《アイノクの足跡追い》、どうぞ」をやりたいようには見えません。そのフォーマットの現状によってアンフェアなことの中身は異なりますが、人々が高速マナでアンフェアなことをしようとしているのは同じです。
確かに、それらの戦略は楽しいことがたくさんあります。私は昔の《ゴブリンの放火砲》デッキで知られていますが、それは具体的にトップメタとして我々が好むような戦略ではありません。モダンの超高速コンボ・デッキのほとんどは、3ターン目より早く勝ててしまいます。3ターン目は、ほとんどのデッキが容易に干渉できるようになると我々が想定している基準線なのです。感染デッキが序盤に素早く勝利できないとは言っていませんが、そのデッキは実際のゲームで《稲妻》、《流刑への道》、《四肢切断》に出くわします。それらは反撃の手段であり、やり取りが存在します。
その一方で、エクステンデッドで行われたプロツアー・ベルリン2008でラシャド・ミラー/Rashad Millerがトップ16に入ったデッキを見てみましょう。
18 《山》 -土地(18)- 4 《月の大魔術師》 4 《猿人の指導霊》 4 《復讐の亜神》 4 《災難の大神》 -クリーチャー(16)- |
4 《金属モックス》 4 《炎の儀式》 2 《尖塔の源獣》 4 《捨て身の儀式》 4 《血染めの月》 4 《煮えたぎる歌》 4 《巣穴からの総出》 -呪文(26)- |
3 《死亡 // 退場》 4 《破壊放題》 4 《虚空の杯》 2 《三なる宝球》 2 《粉砕の嵐》 -サイドボード(15)- |
このデッキには《巣穴からの総出》が4枚あるのである意味でストームですが、それだけがこのデッキの戦略ではありません。このデッキのやりたいことは、1ターン目に8~12体のゴブリンを出すか、1ターン目に《災難の大神》を出すことで、予備のプランとして《血染めの月》と、とても劣りますが《復讐の亜神》も含んでいます。
ある意味では、このデッキは本質的にアンバランスではありません――結局のところ、このデッキが名前の通りオール・インした1ターン目の脅威を対処することができるデッキは多くあります。そしてその結果として簡単にそのゲームに勝利します。しかし、これは我々がモダンで促進したいゲーム・プレイとは幾分異なります。1ターン目:でっかいプレイをする。捌ければ勝ち、捌けなければ負け。
私は高速マナがマジックからなくなってしまうとは予測していません――結局のところ、これは赤のカラー・パイの一部であり、私は赤がこれを使って火力とウィニーだけの色にならないようにする助けができると考えています。私は次の数年で、我々が単なるコンボ・カードにならない赤いデッキのマナ加速能力を作ることができると願っています。
超強力な対策カード
『第8版』はある意味でめちゃくちゃなセットである、と言わせてもらいます。適正なものもたくさんあるのですが、サイドボードのカードが入ると手加減なしです。マジックが若い頃には、私はこのようなものがもっと(バランスが取れていなかったので)不可欠で、もっと新しいプレイヤーにも理解できるものだと考えていました。私の白いデッキはどうやって友達の緑のデッキを倒していたのか?ええ、《緑の防御円》を持ってくるだけで、あとは勝ちです! これが最後の強力な対策カードのあった時代というわけではありませんが、その集中度と個別のパワーがかなり高いものだったと思います。
良いサイドボードでの解答は素晴らしいものですが、それがとても一般的に使えて特定の色や土地タイプに刺さる場合、カード・パワーは制限されるべきです。《氷固め》や《引き裂く流弾》などの『タルキール龍紀伝』の対策カードサイクルはとても強力ですが、対戦相手の単一の脅威に対してだけ効果があり、相手の戦略全てを無効にするものではありません。《引き裂く流弾》の目標の1つは、《欠片の双子》に対する強力な解答を提供することです。これが今までの全ての白と青のデッキのあらゆるクリーチャーを倒せたら、我々はあまり満足しなかったでしょう。サイドボード後に発掘に対して《虚空の力線》で決まるゲームの数を減らすのは素晴らしいことだと思いますが、モダンは環境をほとんどコントロールできていません。最強のカードの多くは野放しにされています。
我々は理論上はかなり弱いものの、対戦相手のデッキがそのカードの狙っているものならば脅威的に強くなる安全弁をセットにいくつか入れています。そして、それらはそのようなデッキにちょっと似ているデッキを使っている人々には大きな被害を及ぼしません――《安らかなる眠り》や《古えの遺恨》を思い浮かべてください。理想的には、これらのカードがあってもメタゲームの穴を突いて他の人々がサイドボードに有効な対策のないような、本当にクールなデッキを作りたい人々のための余地があるべきです。一方で、モダンのプレイヤーは全体として、それと闘うためにより全体的なサイドボードの選択に切り替えるか、単に彼らが使うサイドボードのカードを変えることができます。私はそれが「弱いけど全面的」な解答と「強いけど狭い」解答の間で、モダンのようなフォーマットが停滞してしまわないようにする役に立つと信じています。
今週はここまでです。来週はマジックのデベロップについてまた別のお話をします。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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