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アンコモンのデベロップ
アンコモンのデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年11月14日
何週か前の記事で、私はコモン――マジックで最も低いレアリティ――についてと、主にリミテッドに関連して我々がどのようにそれらのカードを作り上げているかをお話ししました。今回は目盛りを1つ上げて、アンコモンの役割と、アンコモンがどのようにリミテッドと構築フォーマットのそれぞれに影響を与えているかについてお話ししようと思います。
全てのレアリティの中で、私は大抵アンコモンが最も圧力をかけられ、そしてほとんどの場合空間を削られている感じがすると思っています。コモンはリミテッドを機能させるためにコスト、サイズ、そして効果が少し型にはまったものになる傾向があります。アンコモンは他のセットと違いをつける、リミテッドで本当にクールなものがある部分です。これらはレアよりも多く見かけられ、我々にそのセットの構造を多く置くことを可能にさせます。基本的に、リミテッドをプレイするときに他のセットと違う感覚をもたらす大部分はアンコモンなのです。
適正なパワー・レベルを見つけ出す
リミテッド向けのアンコモンに関して、我々はかなり厳しい制限を課しています。コモンの記事のときにも書きましたが、これはそれらのアンコモンが構築フォーマットでどれだけ強いかとは別の問題です。例えば『タルキール覇王譚』を見てみると、《宝船の巡航》はレガシーでもプレイされています。《僧院の速槍》はリミテッドでは問題ありませんが、レガシーでは強力であることを証明しました。構築フォーマットでは強力でもリミテッドでは圧倒的ではない低レアリティのカードを作ることが常に簡単だというわけではありませんが、そのようなカードを得るために我々はいくつかの仕掛けをまだ隠し持っています。
我々がコモンのパワー・レベルを《闇への追放》よりも下に維持しようとすることに同じように、我々はアンコモンのパワー・レベルを《マハモティ・ジン》よりも下に維持しようとし、大体はそれよりもかなり下になっています。実際には、我々はほとんどのアンコモンを《闇への追放》以下のパワー・レベルに維持しようとしています。これはすごく強そうには見えないかもしれませんが、しかし我々はリミテッドについてだけ話していることを考えてください。《闇への追放》はあなたが普通に呪文で見つけられる効果と同じぐらいの強さですが、構築フォーマットではほとんど見かけることのないものです。我々はしばしばシナジーのおかげで強い軽いカード、もしくは単に唱えにくいカードを作って構築レベルのアンコモンを得ようとします。例えば『タルキール覇王譚』の魔除けサイクルは、大体全てが構築レベルのカードですが、リミテッドでは唱えにくくすることでリミテッドのパワー・レベルにおける我々の目標を達成しています――構築フォーマットでは大量の強力な2色土地があるおかげで唱えることが容易です。《残忍な切断》はとてもシンプルなアンコモンで、リミテッドでとても強力ですが、恐らく構築フォーマットではもっと強いでしょう。《残忍な切断》は構築フォーマットで《マハモティ・ジン》よりもずっと使いやすいですが、《闇への追放》のラインは越えても《マハモティ・ジン》のラインよりは下になります。
リミテッドを見てみると、平均的なアンコモンは平均的なコモンよりも強力です。これの狙いはプレイヤーに毎回のドラフトをそれぞれもっと違った雰囲気にするために、出てくることが少ない高いレアリティのカードを早くピックさせるように推すことです。これは大したことには見えないかもしれませんが、そのセットのドラフトを10回、20回、30回としたときに、トップ・カードが全てコモンだった場合には繰り返しになってしまうことが多くなります。自分のデッキがとても似たようなものになるだけでなく、ほとんどの相手のデッキもとても似たようなものになってしまうでしょう。
さてそれでは、アンコモンのパワーを定義する用意ができたので、いくつか強いカードがどう見えるかを見てみましょう。
天使とエレメンタル
我々が作るアンコモンの最初の分類のカードは《セラの天使》と《大気の精霊》です――デカくて回避能力を持っているクリーチャーは自然にセットのかなりの除去をかわしますが、全部を回避できるわけではありません。これらのクリーチャーの狙いはギリギリのゲームを押してかなり簡単に勝てるようにすることですが、不利すぎる場合にはまず不可能です。
これらのカードの重要な部分は、リミテッドのゲームでダメージ・クロックを提供することを助けることです。当たり前のことですが、この分類のカードのいくつかはマジックが当然の結末を迎えるようにするために存在しています。我々のやり方でコモンを作っていると、ゲームが膠着することはとてもよくあることになります。そのため、我々は各人がデッキに入れられてゲームの決着をつける何枚かのカードを必要とします。
我々は全てのクリーチャーが「ゲームを盗み去る殺されない脅威」となることを求めてはいませんが、ゲームの展開の中でテンポを重視して除去を使うか、爆弾カードに対処するためにその除去を温存するかという興味深い決断のために、十分な強さのアンコモンのクリーチャーをいくつか必要としています。その決断を興味深いものにするために、ほとんどのリミテッドのゲームで一般的に得られる以上の情報がなく、その結果どれが正しいプレイか分からない時でも、両方の選択が十分正しくある必要があります。
強力なウィニー
その対極として、我々は最も効率の良い1~2マナのクリーチャーをリミテッドでのアグロ・デッキの働きを助けるため、しかしそれらが多すぎて強すぎにならないようにアンコモンに入れる傾向があります。多くの基本セットに収録されている《先兵の精鋭》や『テーロス』の《苛まれし英雄》などはこの手のカードの典型例です。
これらのカードをコモンにしないのは、複雑だからでも、また必ずしもそれ自身が強力だからでもなく、クリーチャーの集団としての強さ、そして大量にそれらがあることでリミテッドに与える影響によるものです。《先兵の精鋭》のようなカードはリミテッドではたいていの場合、例えば《風のドレイク》などよりも後回しになりますが、似たようなカードを多く取れば取るほどより強力になります。極めてアグレッシブなデッキがマナ・カーブをこれらのカードで埋めることができる場合には素晴らしい働きをしますが、多数のゲームが《先兵の精鋭》、《先兵の精鋭》、《先兵の精鋭》のような動きで決まってしまうならば、それは我々が満足のいくものではありません。その戦略は大きく不利になる可能性の上にあり、そしてリミテッドの働きの性質の一部によってプレイヤーを罰することになります。
我々は構築フォーマット向けにこれらのカードを少数推そうとしており、私はいくらかのゲームが上で書いた《先兵の精鋭》、《先兵の精鋭》、《先兵の精鋭》でゲームが決まってしまうことになるのは構わないと思っています。リミテッドは与えられたものでベストを尽くすものであり、そしてやり取りができずにやられてしまっては基本的に楽しいものではありません。構築フォーマットは自分のゲーム・プランを一貫して押し進めるだけでなく、考えられる他の様々な戦略に対して備えることのできるデッキを作ることがとても重要です――そのうちの1つに、極めてアグレッシブなデッキがあります。
強い除去
我々は強い除去のほとんどをアンコモンにしようとしており、その結果ドラフトの卓内にそれらの数は少なくなります。プレイヤーが対戦相手の爆弾カードに対処するのに十分な数の除去があるべきではありますが、その場合、個々のクリーチャーの質はそれほど重要ではなくなってしまいます――これは除去の数が脅威的に多かった、いくつかの古いリミテッド・フォーマットの見られたものです。
この点における目標は、様々な形とパワー・レベルにおいて、プレイヤーがそれをドラフトするときと使うときの両方で興味深い決断を下せるだけの十分な数の除去を用意することです。人々はしばしば、爆弾、除去、回避能力、普通、ゴミ、という順番に沿ったドラフト戦略の話をします――しかしその順番にぴったり当てはまるぐらい単純ならば、ドラフトはあまりにも型通りすぎるものになるでしょう。我々は爆弾カードではないものの、いくらかの除去よりも優れた回避持ちを求めていますし、かなり重たくて理想的ではないものの、対戦相手がとても強力なクリーチャーを使っている時にサイドボードから入れるのに十分な除去も求めています。
コモンとアンコモンの除去の違いは基本的にその効率の良さです。「クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する」というテキストはとりわけ高いレアリティに見合うものではありませんが、「点数で見たマナ・コストが3以下」ならば急に見合うものになります。コモンの除去はしばしば小さなクリーチャーを殺すのには効果的で、大きなクリーチャーを殺すのには不向きです。5マナでクリーチャー1体を殺すことと、3マナでそうすることの差は、対戦相手のプレイするクリーチャーの大多数を対処する上で重要ですが、《シヴ山のドラゴン》に対処する場合はさして重要ではありません。我々は問題に対する選択肢をゼロにしないために、対戦相手の強力だが爆弾ではないクリーチャーを殺すための十分な欠点を加えたいと考えました。我々はプレイヤーが他のもののために除去の温存を考慮してクリーチャーをブロックしようとすることを望んでおり、そして除去の総量の制限とその質はそのような決断を助けます。
殴ることと通すこと
次にあなたが見かけるであろう種類のアンコモンは膠着を打破するものです。最も古典的なバージョンのこのカードは《踏み荒らし》ですが、我々はそれらの効果のほとんどはアンコモンとなり得るが《踏み荒らし》よりもう少し弱くするべきだと判断しました。別のバージョンのこのタイプのカードは、少し前に印刷された《睡眠》や《猛火》などです。この点における目標は、ゲームの序盤ではいくぶん限定的で、しかしゲームが実際に膠着した場合にはそれを終わらせる方法となる、大きなエンド・カードを供給することです。
上記の《大気の精霊》などは、我々がリミテッドのゲームを終わらせる方法を必要としたために存在しています。コモンだけのゲームをしている場合、多くのゲームが土地の引きすぎか、膠着した盤面で回避能力を持った小さなクリーチャーが多くのターンをかけて決着をつけるかのどちらかになってしまうでしょう。コモンのパワー・レベルは他のレアリティに比べると比較的平坦になっており、そして同じようなパワー・レベルのカードを多く持っている場合、我々はコモンで2対1交換を取れるカードを少ししか印刷しないので、しばしばそれらのプレイされる順番は引いた土地の枚数と比べて重要ではありません。限られた状況でとても強力であるが、不利な状況では強くないカードを入れることによって、我々はデッキ間である程度の相互作用を作り、そしてエキサイティングな引きと、状況次第のカードを良くないときに引いたときの落胆の両方を考慮に入れます。また既に膠着を打破するカードを引いているプレイヤーにはゲームを膠着させるように仕向け、そうすることでそのプレイヤーはそのカードを最も有効に使うことができます。
軸にしたくなる感覚
恐らくリミテッドで最も象徴的な種類のアンコモンは、デッキの軸となるアンコモンです。最も有名なこの手のカードの例は《蜘蛛の発生》、《稲妻の裂け目》、《思考の鈍化》などです。軸となるカードは、我々にそのセットのテーマをプレイする多くの興味深いカードを作る機会を与えてくれ、そして人々には実に簡単に、ほとんどの普通のドラフトのアーキタイプとは異なる雰囲気の横道戦略を可能にさせます。脇道戦略はライフではなくライブラリーを攻めることを可能にしたり、ドラフトの時に平均的なデッキよりも高いレベルのシナジーを持つデッキを作れるような、異なるピックをすることを促す一連のカードがあるようにします。
軸となるカードは多くの質感をリミテッド環境に提供し、経験のあるプレイヤーに多くの新しいものを与えますが、それらはまた新しいプレイヤーに重要であるべき事柄を明白に伝えます。例えば《燃え立つ復讐》は典型的な「このセットのテーマを行えば、ただで《ショック》が打てる」エンチャントです。このようなカードを新しいプレイヤーが開けることの素晴らしいところは、そのプレイヤーが「墓地から呪文を唱えることは『イニストラード』で意識するべきことだ」とすぐに理解できるところです。そのことは、プレイヤーがリミテッドや構築フォーマットでデッキを作るときに新しいことを試そうとする理由を与えます。
最初の方で書いた極めてアグレッシブなクリーチャーの例と同じように、これらのカードが低いレアリティに多くありすぎるとそのゲーム・プレイはとても苛立たしいものになりますが、高すぎるレアリティだと量が不十分になってしまうでしょう。何回かに1回、誰かが何とか《蜘蛛の発生》デッキを作れて、それぐらいの頻度でそれと対戦したなら、それは楽しいものです。もし毎回のドラフトで、場合によっては複数回相手することになれば、突如可愛げがなくなってしまいます。
サイドボード戦略
多くのセットで見かける最後のタイプのアンコモンは明確にサイドボード向けに作られたものです。その明確さは《死の印》のような分類から、《蔑み》や《自然に帰れ》のようなあまり明らかではないものまで様々です。これらのカードは脅威的な強さですが、それはとても狭い範囲の状況に限られます――これらをコモンにすることは理想的ではありません。我々が「防御円」をコモンに入れていた時代を見返すと、あなたのデッキ全体を封殺するためにサイドボードに十分な防御円を持っている白いプレイヤーとの対戦が起こることは実に苛立たしいものでした。
我々はこれらのサイドボード向けカードを作るとき、構築に対する考えを反映する傾向にあるので、そのサイクルがリミテッドでバランスが取れていることは稀です。《瞬間凍結》のようなカードは構築フォーマットでは良いカードですが、リミテッドでは《焼却》に劣ります。我々がこれらのカードをアンコモンにするのは、それらが人々にドラフトでサイドボードのための興味深いピックを奨励するためと、ドラフトで多くのゲームがどれだけサイドボードの強力な対策カードを引けたかで決まってしまうほどには十分な数がないようにするためです。
今週はここまでです。来週はマルドゥ特集ということで、リミテッドでのビートダウンの役割についてお話ししたいと思います。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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