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Beyond the Basics -上級者への道-
飛行という発明
飛行という発明
Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing
2017年2月3日
飛行。マジックに最も欠かせないメカニズムの1つであり、あらゆるセットに採用されている。これまでに生み出されたメカニズムの中でも最高のものだ、と言っても過言ではないだろう――単純なルールで芳醇なゲームプレイを生み出す大きな助けとなっている。
飛行は、クリーチャーの攻撃を通すための回避能力だ。そして、マジックが誕生して以来、常盤木能力(訳注1)として登場し続けている。当たり前すぎる存在のため、飛行というものは語るに足らないものとして認識されがちだ。
(訳注1:常盤木能力/さまざまなセットで使われる定番の能力を指す、開発内部の用語)
しかし飛行にも、他の能力が持っているように独自の要素があり、実際に直面した時に判断しなければならない飛行ならではの評価基準を持ち合わせている。
デッキに飛行を持つクリーチャーがいるのといないのとでは、どの程度の差があるだろうか? 戦場に出ている飛行クリーチャーを、どの程度の評価とすべきだろうか?
今日はこれらの問題について取り扱っていこう。
航空学校
クリーチャーの攻撃を確実に通すための手段であり、対戦相手の飛行クリーチャーをブロックするための手段、というのが飛行の本質だ。これはつまり、飛行クリーチャーの価値は、自分のデッキよりも対戦相手のデッキによって決まる、ということを意味している。
極端な例だが、クリーチャーが1枚も入っていない《パラドックス装置》コンボ・デッキと対戦しているとしよう。
そう、飛行は全く関係ない! 対戦相手がクリーチャーを絶対にプレイしないのであれば、そもそもこちらのクリーチャーはブロックされない。この考え方は、ほとんどのコントロール・デッキに対しても当てはめることができる。たいていのコントロール・デッキには、クリーチャーは少数しか入っていないからだ。
だが、対戦していて飛行の意味が薄いデッキは、クリーチャーが入っていないものだけではない。1マナや2マナの軽量クリーチャーを並べる赤単「スライ」デッキのような、素早くこちらを倒そうと考えるアグレッシブ・デッキに対しても、飛行はあまり役に立たない。(もちろん、それらが飛行クリーチャーで攻撃してくる場合を除いてね!)その種のデッキが、こちらのクリーチャーをブロックしているような状況になるなら、それはもう勝っているだろう。
では、飛行が実際に役に立つのはどんな時だろうか? そうだな、両方のプレイヤーがクリーチャーを展開していて、地上が膠着している時の飛行は素晴らしいね。相手が出したプレインズウォーカーを倒したい場合も、回避能力は嬉しい。
これらを踏まえると、アグレッシブ・デッキが地上を攻めあぐねる状況でも攻撃してダメージを通し続けるための方法として、あるいはミッドレンジ・デッキが他のミッドレンジ・デッキとの対戦時に膠着したとしてもダメージを通し続けるための方法として、飛行はとても役に立つ、と言える。
どちらをデッキに入れようか考えている、類似のカードが2つあるとしよう。例えば、この2枚だ。
もしどちらか1種類しか採用できないのであれば、飛行がどれほど重要であるかを自分自身で判断しなければならない。1マナの差は大きい! メタゲーム(どのようなデッキと対戦する可能性が高いか)と、自分のデッキがどのような方向性かについて考える必要がある。
自分のデッキがかなりアグレッシブなものであれば、おそらく2マナ域を選択するだろう。ミッドレンジ・デッキ寄りであれば、攻撃を通せて相手の飛行持ちもブロック可能な3マナ域を選ぶ可能性が高い。
これはデッキ構築時に飛行の価値を判断する方法のひとつだ。
ドラフトにおいても、この種の判断は繰り返し行う必要があり――自分のデッキを理解することは極めて重要だ。一般論を言えば、リミテッド環境は誰もがクリーチャーを並べ、戦線が膠着する傾向にあるため、飛行はかなり有効だ。(対戦相手の飛行クリーチャーへの回答が必要になることは言うまでもないだろう!)
しかし、だからと言って常に飛行を利用するということでもない。ドラフトでアグレッシブなデッキを狙っている場合、通常は4マナの2/2飛行クリーチャーよりも2マナの有用な地上クリーチャーを優先するだろう。自分のデッキに必要なものを――そしてそのフォーマットの傾向を――理解することが、勝利への道に繋がるだろう。
敵の飛行船
ここでは、リミテッドで遭遇することになる、飛行に関するさまざまな状況を考えてみよう。
対戦相手は、2/2の飛行クリーチャーと4/4の地上クリーチャーをコントロールしている。こちらは手札に《殺害》があり、使うところだ。どちらを倒すべきだろうか?
まあ、想像の通りだとは思うが、どちらにするかは状況による。
ゲームが長引き、対処する方法が無いとすれば、飛行が問題となるだろう。
自問しなければならない問いは3つだ。4/4は現状でどの程度の脅威なのか? 残ったほうへの対処はいつごろ可能だろうか? そして、攻めているのはどちらのプレイヤーだろうか?
まずは、現状の脅威について判断していこう。
単純な例としては、こちらのライフが4で、両方のクリーチャーがこちらを攻撃している場合、《殺害》は4/4に使ったほうが良いだろう。そう、このあと回答を引けなければ飛行クリーチャーにやられてしまうが――《殺害》を飛行クリーチャーに使うと100%負けだ!
判断の質をより深めるために、こう考えてみよう。4/4が1ターンに与えるダメージは、2/2が2ターンで与えるダメージに相当する。こちらのライフが8だとして、2/2を除去すると猶予はあと1ターンしかないが、4/4を除去すれば猶予はあと3ターンとなる。自分のライフに合わせて先々の状況を考えれば、どちらがより大きな敵であるかがわかるだろう。
次は、残ったほうへの対処はいつごろ可能だろうか? についてだ。
今はクリーチャーを出していないが、次のターンに《地下墓地のナメクジ》を出せるとすれば、この4/4はもはや何でもない。逆もまたしかりで、《雲の精霊》が手札にあるなら、相手の飛行クリーチャーは無力化できるが4/4に対処できない。
基本的に、ゲームが長引くほど、より多数のクリーチャーを無視できる結果となるため、飛行がもたらす問題は大きくなる。一方、そのうちに2体以上でブロックして倒せるようになるため、地上の4/4クリーチャーの対処はずっと簡単になる。ライフが20の時に両方が攻撃してきたとして、どちらかに《殺害》を打ちたい状況だとしよう。長期的視点で見れば、《風のドレイク》のほうがはるかに恐ろしい、ということになる。
最後だ。攻めているのはどちらのプレイヤーだろうか?
ここまでは、対戦相手がこちらを攻撃していると仮定していたが、そうではないかもしれない! 相手が守りを固めている側だとしよう。この場合は、ダメージを通すために《殺害》を積極的に使っていきたいはずだ。
どちらを除去するかの結論は、端的に言ってこちらのクリーチャーに依存する。クリーチャーの群れをすり抜けて飛行クリーチャーで攻撃したいのであれば、除去したいのは相手の飛行クリーチャーだ。とは言え、飛行クリーチャーを地上クリーチャーのブロックに使う状況というものは、効果的な飛行クリーチャーの使い方ではない。であれば、地上の巨大クリーチャーを除去して攻勢に出たいと考える状況も多いだろう!
これは、対戦相手の飛行クリーチャーの価値を推し量る方法だ。例えば、戦闘で相打ちを取れる場合に、それらとの相打ちをどの程度の価値だと判断するだろうか? 相手の視線から質問に答えて、その逆を突いてやればいい!
対戦相手の飛行クリーチャーは、どの程度脅威的だろうか? それに対する他の回答は何かあるのか、そしてゲームはどの程度続くだろうか? 自分は攻勢に回っているのか、それとも劣勢でとにかく防御に徹しているのか?
これらの基本的な考え方に基づくことで、飛行クリーチャーの影響力を見積もる時に正しい判断が下せるようになるだろう。
飛行免許
飛行についての考察は完了した! 読者の飛行分析力を最高にまで高められたのなら幸いだ。
メカニズムを深く考察する話を気に入ってくれたなら(あるいは気に入らなかったら!)、そのことをぜひ聞かせてほしい! 今回の記事を楽しんでもらえたのなら、同様に記事にできる常盤木メカニズムはいくつもある。あなたの感想こそが、私をさらに先へと導く重要なものとなるんだ。
TwitterやTumblr、あるいはbeyondbasicsmagic@gmail.comに英語でメッセージを送って感想を教えてほしい。
また来週!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
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