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世界選手権2015への「オリジン・ストーリー」:欧州編1
世界選手権2015への「オリジン・ストーリー」:欧州編1
Mike Rosenberg / mtg-jp.com staff
2015年8月20日
編集より
マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015が、8月27日・28日・30日の日程で、アメリカ合衆国・ワシントン州シアトルにて「PAX Prime」と併催されます。
本大会に先立ち、参加選手全24名それぞれのはじまりの物語、「オリジン・ストーリー」を選手への取材をもとに英語記事として制作、数回に分けて翻訳を掲載いたします。
第3回はヨーロッパ編その1として、スウェーデンの「王者」2人と、チェコの新鋭プロプレイヤーの「オリジン」をお届けします!
ヨエル・ラーション/Joel Larssonの「オリジン・ストーリー」
招待事由:プロツアー『マジック・オリジン』優勝
プロツアー『マジック・オリジン』に臨むスウェーデンのヨエル・ラーションは、プロ・プレイヤーズ・クラブの「ゴールド」レベルを確定させることに照準を合わせていた。来シーズンもすべてのプロツアーに招待されること。それは十分に達成可能な目標だった。
時は進み、プロツアー『マジック・オリジン』終了後。ヨエル・ラーションはゴールド・レベルどころかプラチナ・レベルまで確定させ、来シーズンのプロツアーすべてにおいて航空券や宿泊場所、それから参加褒賞を得ることになった。さらに、彼は40,000ドルの賞金にプロツアー優勝トロフィーと、すべてを勝ち取っていた。そして彼は、突然8月の予定を空ける必要に迫られた。シアトルにて行われる世界選手権で戦うために。
プロツアー『マジック・オリジン』にて、23歳にしてすでに驚くべき戦績を持つラーションは生涯2度目のプロツアー・トップ8入賞を記録することになった。極めて短い期間で達成している彼の戦績には、目をみはるものがある。
「マジックを始めたのは14歳の頃、『神河救済』の頃だったかな。親友のエリック/Ericと一緒に始めたよ」とラーションは振り返る。「兄のカードバインダーを拾い上げたのが、マジックとの出会いだった。このゲームのことを学びながら、どれだけ強いカードが中に入っているのだろうと思いをめぐらせていたよ。そのときからマジックが好きになったけれど、本当に夢中になったのは近所の店で初めてドラフトをやってからだ。毎週ドラフトをやって、もうマジック一筋だった」
そんなラーションだが、プロツアー初参戦はマジックの初体験から何年も後のことだった。
「初めてのプロツアーは、プロツアー・サンディエゴ2010。結果は散々だった」と、ラーションは思い出す。「でも、《時の篩》を使ったひどいドラフト・デッキで3戦全勝したことは覚えているよ! あのときは構築が全然ダメだったんだけれど、プロツアーのレベルの高さに感銘を受けて、来年もまた強くなってここに戻ってきたいって思った。2011年からは、ずっと鍛え続けているよ!」
ラーションはその鍛錬を投げ出すことはなかった。初のプロツアー参戦から5年、彼はプロツアー王者となった。今、彼は自身を歴史に残すべく、世界選手権王者のタイトルに挑む。
マグナス・ラント/Magnus Lanttoの「オリジン・ストーリー」
招待事由:2014 Magic Online Championship 優勝
スウェーデンのマグナス・ラントは、今年のMagic Online Championshipに優勝し25,000ドルもの賞金を獲得した。だがこのイベントの優勝者には、もうふたつ賞品が贈られる。そしてそれこそ、ラントが最も欲していたものだった。
もちろん、ひとつは今年の世界選手権への招待だ。34歳のラントはここにきて、マジックで最も刺激的な舞台で世界中のベスト・プレイヤーと競い合う機会を得た。そして、長年追い求めてきたマジック人生の集大成へと手を伸ばすチャンスを。
だがふたつ目の賞品こそ、彼にとってより大きなものだった。Magic Online Championshipで優勝したラントには、プロ・プレイヤーズ・クラブ「ゴールド」レベルのステータスが授与される。これで、彼は来年のシドニーから1年を通してプロツアーに参加できるようになった。旅を楽しみ、訪れたことのある国で新たな場所の食事や文化を楽しむという彼の欲求は、もう1年間満たされることになったのだ。
ラントは今年、彼の人生で最もマジックに通じた1年を過ごした。それは、脈々と続くこのゲームの歴史に刻まれることとなったのだ。
「マジックを始めたのは1996年か1997年だったかな」と、ラントは記憶を探る。「友だちがゲームの大会で手に入れたって『第4版』のスターターを持ってきたんだ。最初はルールがまったく分からなかったけど、それでも超面白いってことは伝わってきた。私たちはたまにそれで遊び、そうこうしているうちに転機がやってきたんだ。それから何年も経っていなかったと思う。私はこのゲームの大会を目にして、一気に惹きつけられた。自分の中にある競争心の高さが、マジックを通してわかったんだ。そして、自分はそっち側に行くのが得意だってことも」
それからというもの、ラントの競技的な志向はプロツアーへ向けて彼を駆り立てた。
「2000年代の前半に、何年かプロツアー予選を渡り歩いたよ」とラントは振り返る。「プレイヤーの仲間には恵まれたし、何度もプロツアーの権利に近づいた。でも、優勝ができなかった。それでもあるとき、サイドイベントのドラフトで勝ちまくって、リミテッドのプロツアー予選と、そこで行われた他の小さな大会でも負けなしの勢いを続けていたら、気づけば自分のレーティングが多くのプロ・プレイヤーのレベルまで上がっていた。当時は、レーティング上位25人のプレイヤーがプロツアーへの招待を得ることができた。ついにチャンスが訪れたんだ! 再びプロツアー予選へ行き、毎ラウンド計算をした。そして、無敗のまま3勝した時点で十分な手応えを感じ、そのイベントをドロップした。旅費の補助は出なかったけれど、プロツアーへの招待以外はみんな二の次だ。とうとうプロツアーでプレイできる機会を手にしたんだ」
「私が招待されたのは、プロツアー・ニース2002だった。フォーマットは得意のリミテッド。だがいざそのときを迎えると、気楽さとはほど遠いものだった。緊張はひどく、チームもなく、練習も満足にできなかった。プロツアーは、地元のトーナメントやグランプリともまったく違うレベルの舞台なんだってことを、身をもって学んだよ」
ラントの灯は燃え尽き、彼は少しの間このゲームから離れることになった......復帰したのは最近になってから、彼は古い友人とグランプリを旅するようになったのだ。
「競技マジックから長い間離れていた私を引き戻したのが、その旅だった」とラントは語ってくれた。「昔から仲のいい友だちとグランプリに行って、最高の旅のひとときを過ごす。でも一度戻ったら、私の競技マジックへの熱い灯が再び点ったんだ。それから、私はまた頂点を目指して努力を続けた」
その努力は報われた。ラントは昨年12月のグランプリ・ミラノ2014にて自身初のグランプリ・トップ8入賞を成し遂げ、そしてそのまま自身初のグランプリ優勝を果たした。そして、その後間もなくしてMagic Online Championshipで優勝したのだ。
今、ラントの競技マジックへの灯は彼をシアトルまで導いた。マジック最高の栄誉を求めて競い合う、24人のプレイヤーのひとりとして。
アンドレイ・ストラスキー/Ondřej Stráskýの「オリジン・ストーリー」
招待事由:ヨーロッパ地域プロ・ポイント上位
世界選手権2015には、マジックというゲームより若いプレイヤーが3人いる。そのうちのひとり、アンドレイ・ストラスキーは、東ヨーロッパの新世代を代表するプレイヤーだ。彼の所属するチーム「Cabin Crew」には、殿堂顕彰者フランク・カーステン/Frank Karstenやストラスキーと同郷のマーティン・ジュザ/Martin Jůza、スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaといった、ヨーロッパの強豪たちもいる。
そんなチームの中で、プロツアー『タルキール覇王譚』とプロツアー『タルキール龍紀伝』でトップ8に入賞し、今シーズン「プロツアーの山頂をうろつくもの」として大活躍したのがストラスキーだった。記録的なシーズンを送ったストラスキーはヨーロッパ地域のプロ・ポイント上位3名に入るのは確実と見なされ、そして彼は見事にその期待に応えたのだ。
ではそんなストラスキーの「はじまり」はどこにあるのか? 彼のマジックとの出会いは、多くの者と同じ小学生の頃だった。
「『時のらせん』ブロックの頃に、クラスメイトと一緒に始めました」と、ストラスキーは思い出を語った。「カード・ゲームにお金を費やしたくなかったので、その輪の中に入るのは僕が最後でした。幸運にも、友だちのひとりが僕を強く誘ってくれたんです。今の僕があるのは、その友だちのおかげです」
「最初に使ったデッキは、構築済みの『黒緑ファンガス』デッキでした。そこに、持っているカードで使えるものを片っ端から入れて、『The Rock』みたいな感じに『調整』したんです。初めて大会へ持ち込んだのもそのデッキでしたね。その後僕はすぐに、『マーフォーク』でレガシーを始めました(地元では一番遊ばれていたフォーマットだったんです)。そうしたらすぐに、マーフォーク使いの子どもがいる、と国内で有名になってしまいました」
ストラスキーがトーナメント・シーンで頭角を現すのに、時間はかからなかった。彼は国内有数のマーフォーク使いとしての名声を得るだけでなく、やがてレガシーで行われたグランプリでの活躍によりプロツアーへの道も見出したのだ。
「初めてのプロツアーはとても楽しかったです」と、ストラスキーは当時を思い出す。「レガシーで行われたグランプリ・アムステルダム2011でトップ16に入って、プロツアーへの権利を獲得しました。不幸にも――見ようによっては幸運なことなのですが――、そのプロツアーの会場はハワイでした。飛行機のチケットはものすごい値段だし、参加するにはあまりに遠いように感じました。それでも家族全員が協力してくれて、10代の僕はひとりでプロツアーへ旅立ったんです。予算はかなり少なかったので、プロツアー直前の水曜日に現地入りし、直後の月曜日には出る予定でした」
「それまでひとりで旅をしたことがなかったため、それはもう緊張しました。さっそく最初に乗る飛行機が遅れて乗り継ぎができず、アムステルダムの空港で一晩を過ごすことになりました。幸運にも最終的には、木曜の夜に無事ホノルルに到着しました。練習の時間はもうなかったため、スタンダードのデッキは一番簡単な『白青人間』を選び、ドラフトを3回だけやりました。準備万端とは言えず、結果的にも賞金圏内がかかった最後の試合に負けてしまいましたが、たぶんこのときが人生最高のプロツアーの思い出です。何もかもが初めての経験で、大興奮でした」
ストラスキーが高いレベルのマジックを味わうのは、それが最後ではなかった。目覚ましい活躍を見せる2014-2015年シーズンより前に、彼は2013年のMagic Online Championshipに若手プレイヤーのひとりとして参戦し、より小規模で限られたプレイヤーによる大会を初めて経験しているのだ。
ストラスキーは今、月末に開催される24人で争われる大会に臨んでいる。プレイヤーたちはみな、莫大な賞金と「マジック:ザ・ギャザリング世界選手権王者」の栄誉をかけて、戦いを繰り広げることだろう。
マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015 イベント特設ページ
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