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十二の難題
十二の難題
Ken Nagle / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年1月20日
2月1〜2日に皆さんのお近くのお店で開催されるプレリリースで、いよいよ『神々の軍勢』が皆さんのお手元に届けられることになります。皆さんがパックの中で皆さんを待っている、楽しさ、興奮、そして思い出に出会えれば何よりです。新しいことをする新しいカード、探求、そして発見が待っています。
私が初めてカードを手にしたのは『アイスエイジ』のブースターでしたが、神々からの贈り物のように感じたモノでした。新カードが如何にして作られたのか、そしてどうやってこの形に仕上がったのかには気求めませんでした。私はただもっともっとカードが欲しくなったのです。世の中には私の知らない、触れたことのないカードが何千枚もあったのです。
私はプレイし、学びました。そして、カードが完全な形で天からの授かる物などでないことを知りました。カードは定命の者の意志で、定命の者の手で作られていたのです。
10年ほど経ち、私はカードのデザインを始めました。私はかつて思いも寄らなかった神々の力を手に入れたのです。
リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldの最初の予想には魔法じみたものがありました。マジックのプレイヤーはお互いを探し、どちらも存在を知らないお互いのカードを探求するだろうというのです。その魔法の一部は現代の情報共有の中で失われていますが、私は皆さんが存在を知らないカードをお見せできます。そう、プレイテスト・カードです。デザイン中だった1年前のプレイテスト・カードを、今日この日にお見せするために取っておいたのです。
『神々の軍勢』のリード・デザイナーとして、私は皆さんに皆さんがブースターから手に入れるであろうカードの数枚のデザインに関して12の知られざる物語をお見せします。中にはクリエイティブの側からそのまま生まれたカードもありますし、デザイン中に姿を変えたものもあります。そして、デザイナー、デベロッパー、コンセプター、アーティスト、エディター、ルール・マネージャーの手によって闇に葬られたカードも無数にあるのです。
それでは、『神々の軍勢』デザイン・チームからの12の難題をご紹介します。
難題1:謙虚な育ち
1枚目のカードは生まれに関するものです。『テーロス』はギリシャ神話をモチーフにしたトップダウンの次元ですので、デザインの源泉はクリエイティブに求められます。このカードは、『テーロス』のデザイン・チームにいたジェンナ・ヘランド/Jenna Hellandが作った「可能性のあるカード名」のリストに挙げられたカード名からデザインされました。
水路 | 見世物小屋の膨張 | 不死の妨害 | 無分別 |
秘儀の薬袋 | 帝国の膨張 | 不死の復讐 | 死者の領土 |
生命の矢 | 目抉り | 不死化 | スフィンクスの謎 |
予言の芸術 | 信心深い伝書使 | 傀儡の王の就任 | 正義の怒り |
競技者の武勇 | 名声 | 夢中にさせる力 | 双蛇のロッド |
鳥の変身 | 名声/評判 | 知識による陰謀 | [トロイ]の袋 |
都市包囲 | 相応の結果 | 巡業詩人 | 聖なる城塞 |
海を越えて | 欠陥のある人格 | 投げ槍 | 聖なる火 |
盲目の愚行 | 荒野への逃亡 | 嫉妬 | 凶暴な感情 |
盲目の預言者 | 肉食いの馬 | ヘラクレスの難題 | 凶暴な風 |
敵の盲目化 | 愚行 | 法典制定者 | 運命探し |
血の罪 | 前兆の栄光 | 癩病 | 漂流 |
人肉食 | 狂乱した熱情 | 稲妻 | 難破 |
焼灼 | アブ | 獅子革の鎧 | セイレーンの歌 |
祝福された戦い | 雲の門 | 搭乗員喪失/危難 | 狩りの技術 |
天界の軍馬 | 百目の睨み | 海難 | 知恵の歌 |
岩への繋ぎ止め | 巨大津波 | 海への迷子 | 謎掛け言葉 |
神々の戦車 | 剣闘士の闘技場 | 人食い鳥 | 狩りの戦利品 |
都市の壁 | 黄金時代 | 海の達人 | 星見の航海士 |
礼儀 | 金の手綱 | 風使い | 拷問の状態 |
栄光の要求 | 豪奢な贈り物 | 精神的強さ | 神の力 |
征服者の旗 | 大いなる行い | 伝書神 | 意志の力 |
デルファイの礎石 | 大いなる未知 | Xの寄せ集め | 太陽の宮殿 |
抜け目ない解法 | グリフィンの黄金 | ナルシシズム | 超人的な力 |
欺瞞的話法 | 門の守護者 | 徹底抗戦 | 石飲み |
亜神 | 罪 | 北風(など) | 最期の歌 |
貪る炎 | わがまま | パンドラの箱 | 禁忌 |
恐るべき予言 | 英雄の掟 | 永久の泉 | 黄泉の世界 |
隠蔽 | 戦からの帰還 | 根気 | 大嵐 |
神聖なる忠告 | 帰郷 | 柱石 | 誘惑 |
鷲 | 角付き盾 | ヘラクレスの柱 | 稲妻鍛冶 |
こだま | 雄牛の角 | 猛毒吐きのハイドラ | 悲劇的崩落 |
海の精のこだま | 恐ろしき苦悶 | 不死の世界への門 | トロイの木馬 |
終わりなき労苦 | もてなし | 秘薬 | 並ならぬ機知 |
忍耐 | 一家の祭殿 | アマゾンの女王 | 制御不能な力 |
勇壮な旅 | 傲慢 | 償いのための探索 | 戦士王 |
油断なきドラゴン | 人間の運命 | 敏速な思考 | 血に染まった波 |
高貴な終わり | 不幸な運命 | 狼育ち | 海蛇の輪 |
この一覧から私達が取り上げた名前の1つが、「狼育ち」です。このカード名の元になったロムルスとレムスの物語はギリシャ神話ではなくローマ神話なので、異論はありました。しかし、私は、『テーロス』で使われなかった全てのトップダウン・カードを求めていたので、『神々の軍勢』で私はこんなデザインをしました。
〈狼育ち〉 |
このカードはより良いマナ・コストで印刷に至りました。これが『神々の軍勢』のブースター・パックに入っているカードです。
このリストからデザインしたカードは他にもありますが、それは後で紹介します。
難題2:あなたの運命を築け
歴史には2通りあります。実際の歴史と、語られた歴史と。ギリシャ神話は何度となく改作されていて、『テーロス』もまたその改作の1つとなります。マジックには物語を描くカードが必要ですが、行きすぎることもあります。
〈レオニダス王〉 |
このカードは、ゲーム・プレイ上は強烈ですが、あまりにもポップカルチャーに毒されています。マジックはギリシャ神話にマジック独自のひねりを加える必要があって、他のひねりを流用すべきではないのです。最終的にこのカードはこうなりました。
難題3:神の祝福を集めよ
『神々の軍勢』には『テーロス』から引き続き英雄的メカニズムが存在します。
怪物化能力を貢納能力に差し替えましたから、英雄化はそのまま残す必要があると感じました。英雄化の「入力」(あなたのクリーチャーを呪文の対象とする)を変えるのは直観的ではないですが、出力(通常、そのクリーチャーに+1/+1カウンターを置くこと)を変える方には限界がありません。白と緑にはこのテーマが存在し、白の英雄的クリーチャーは+1/+1カウンターを1個、緑は複数個置くことになっています。
緑白でドラフトをすれば、英雄的であることへの報賞を得られます。
従って、『神々の軍勢』では白にも緑にも少なくとも1体ずつ、+1/+1カウンターを置く英雄的クリーチャーが必要となります。私たちは、高いレアリティでの白のクリーチャーを試してみました。
〈英雄的修道士〉 |
まず、デザイン時、私が印刷されたテンプレートを提案するまで、英雄的の誘発型能力は少し違っていたことがおわかりでしょう。次に、このカードがもたらすボーナスは少しばかりずるくなっていて、+1/+1カウンターを置くのはこれ自身だけではなく、クリーチャー1体を対象としてそれに置くようになっています。この技は多くのプレイテスターにも気付かれなかったので、私たちはよりわかりやすいように書き換えました。
〈英雄的レオニン〉 |
このカードは、『テーロス』のデベロップ中に授与(デザイン中は鼓吹と呼ばれていました)のコストを調整しているときに、授与コストが比較的高かったときにファイルに入れられました。このカードの目的は、授与カードに対する《コーの精霊の踊り手》系のロードになることでした。デベロップ中に、1マナで{2}軽くするのは授与カードに限ったとしても強すぎるということがわかりました。
そこで、このカードは他の方法でオーラを助けるものになりました。
〈英雄的レオニン〉 |
そして、最終版がこれです。
最終的にこのカードは授与クリーチャーも含む全てのオーラに役立つものになりました。特に、最大3枚のエレボスの試練》++《ヘリオッドの試練》++《ナイレアの試練》++《パーフォロスの試練》++《タッサの試練》">試練と第3ターンにコンボを決めることができます。
難題4:海図にない水域を航行せよ
自然災害は竜巻や地震で表される、神々の口論や衝突の結果です。ある時、私達はスキュラやカリュブディス(その他『テーロス』に存在しないギリシャ神話の存在)を探していました。
このトップダウンでデザインされた自然災害をファイルに入れたのは、デベロッパーのビリー・モレノ/Billy Moreno(BM)でした。
KEN 6/13/2012: BMからの新しい渦巻きです。防御クリーチャーを無力化できるので、オーラをつけて攻撃できますよ。
〈渦巻き〉 |
このカードの最終版はここではお見せしませんが、代わりにマルチバースでのコメントをお見せします。
KEN 6/25/2012: CCと防御が多すぎます。
TML 8/3/2012: !
KEN 8/20/2012: 小さくしてコモンの擬防御呪文枠に移動します。
TML 8/28/2012: これは何かをトップダウンしたものなの?
KEN 8/29/2012: これは何でもなぎ倒す竜巻です。
KEN 9/4/2012: 機能を変更して、もくろみ通り働くようにしました。戦場に残っている限り凍らせるのではなく、1ターン凍らせるようにしました。これで私の1/1軍団は大変です。
KEN 9/6/2012: タップして保持、ではなく、対峙したクリーチャーを{U}か{3}支払わない限りオーナーのライブラリーに入れて切り直すようにしました。キオーラの能力と似たものです。
BM 9/11/2012: こんなコモンがあるか。代償をなくして、これもライブラリーに戻るようにするというのはどうだろう?
KEN 9/11/2012: これと対峙したクリーチャーの両方を戻して切り直すようにしました。
TML 9/17/2012: これはいいアイデアだ。{G}で1/1の接死クリーチャーでこれを殺せる?
TML 9/26/2012: 現時点ではNO。アンコモンに差し替え。
TML 11/14/2012: 積極的に待ち構えて打ち倒せるようになった。
TML 11/26/2012: 複数回起動する状況がどれぐらいあるか不安だ。
Mark Gottlieb 12/12: 『テーロス』には青のエレメンタル・ロード(2/0トークンを出す)が存在する。それと組み合わせたときに何が起こるか。『テーロス』に存在するエレメンタルはそれだけだ。唯一のタイプにする必要があるかな?
TML 12/13/2012: コストを{1}{U}に。
Dan Emmons 1/3/12: レアっぽい気がする。《虚無の忍び寄り》とか。
TML 1/4/2012: これはむしろ《ゴーマゾア》のほうが近いんじゃないか。そしてこのセットはオーラがテーマなので、《麻痺の掌握》を作る訳にはいかない。他の青の除去のレアリティを下げないと。
実際にブースター・パックに入っているカードは、1月24日にカード・イメージ・ギャラリーで公開されています。
難題5:夢を織り成せ
『神々の軍勢』は新メカニズム「神啓」を導入します!
神啓メカニズムのフレイバーは、クリーチャーの想像が現実になるというものです。これは、神々がこの次元を支配するようになったのは、この次元の住人が「存在を信じている」からだという『テーロス』を貫く理念に通じるものです。神の魔法はエンチャントで表されているので、神啓カードの多くはエンチャントであるパーマネントを作り出します。彼らの信念や思想、あるいは恐怖が神啓であり、それが実体化するのです。誰かが充分熱心に神を祈り、あるいは何かを充分熱烈に信じたなら、神、女神、あるいはニクスの自然そのものも実在するようになるのです。彼らの神啓は――神々の軍勢なのです。
繰り返しを重ねて、デザインは現在の神啓にたどり着きました。
- 自分のクリーチャーにエンチャントをつける英雄的能力以外の理由が欲しい。
- 英雄的能力は呪文ごとに1回なので、差を付けるために複数回発生する能力が欲しい。
かなり初期に、タップされたクリーチャーに注目することになりました。通常、クリーチャーで攻撃するにはタップする必要があります。オーラ(や授与クリーチャー)はクリーチャーを攻撃できるように強化します。
私たちは、「夢編み」というフレーバー的な単語からスタートして、様々な「タップ状態に注目した」メカニズムを試していきました。
〈物質化した商人〉 |
〈夢編みの商人〉 |
〈夢編みの商人〉 |
{Q}は、『シャドウムーア』で導入されたアンタップ・シンボルで、コストの一部としてタップ状態のこのクリーチャーをアンタップする必要があるということを示しています。アンタップ・シンボルは、出力から入力が作り出せるようであれば(《エルフの逸脱者》+《暗黒のマントル》のように)無限に回る「エンジン」になってしまうので危険です。
「デヴァイン」(デザインとデベロップの合間のわずかな時期)の間に、リード・デベロッパーのトム・ラピル/Tom LaPilleは《虚賢者》の「アンタップ状態になる」ことを見る文章を使うことを提案してきました。
〈夢編みの商人〉 |
この能力にマナ・コストを持たせることが可能ですから、適正なコストであらゆる効果を持たせることができます。横道テーマを何度も何度も繰り返し、ようやくメカニズムの適正な形を見付けることができることもあります。
難題6:壊れていないものを壊せ
マジックの見方の1つに、あらゆるカードは道具であり、デッキはある目的を果たすために道具を集めたものだ、というものがあります。セットの空きカード枠のほとんどには成すべき役目があります。呪文を打ち消すとか、クリーチャーを殺すとか、土地を探すとかです。
しばしば、その役目のための道具が既に存在していることがあります。そう、再録すべき時です。結局の所、再録とは既にデザインの工程を乗り越えたカードなのです。
こうして試された再録の1つが、これです。
《火の力》 |
普通、私は、対戦相手のタフネス1クリーチャーを何体でも殺せるような《放蕩紅蓮術士》系のカード(「ティム」)には興味がありません。無力感に囚われるようになるからです。ええ、私が初めて作ったデッキには《Norritt》と《ズアーの投呪士》、《放蕩魔術師》、《海賊船》がたっぷり入っていました。
しかし、『神々の軍勢』に《火の力》を入れるのには充分な理由があります。
- 少なくとも英雄的クリーチャーを誘発するためにオーラのサイクルが必要だ。
- オーラのプレイ感がセット内の様々な授与クリーチャーとは違うようにする必要がある。
- 授与カードはタップ能力を与えない(オーラをタップするだの何だのは不格好だ)が、それらのオーラはタップ能力を与えることができる。
- タップ能力があれば神啓クリーチャーを戦闘のリスクなしでタップ状態にすることができる。
- タップ能力は比較的明瞭で単純で、使い道も広い必要がある。
《火の力》は上記の大枠に沿うものでした。特に神啓クリーチャーがトークンを生み出すような状況では、《火の力》がゲームを支配してしまう危険はあります。究極的には、楽しめるというには起こりやすぎるという意味で、これは《火の力》の問題です。
最終的にできあがったカードは、《火の力》がやってきたことのほとんどをやりながら、ゲームの局面を繰り返す問題を回避したものになっています。私は何度も1点のダメージを与えるということが嫌いなので、このカードがより楽しいものになったと感じています。
このカードの最終形は、1月24日にカード・イメージ・ギャラリーで公開されています。
難題7:死の国から脱出せよ
良かれ悪しかれ、デザイナーはプレイヤーと同じようにカードに惚れ込んでしまうものです。そうでなければ、何か間違っていると思います。私たちが熱烈なゲーム・デザイナーでなければ、熱烈なプレイヤーを作ることはできないでしょう。この難題は、うまく作れなかった私のお気に入りの『神々の軍勢』のカードに関するものです。
『テーロス』をギリシャ神話をモチーフとしたトップダウンのものだと真面目に言うには、ブロック内の各セットに充分な量のトップダウン・カードが必要です。黒、緑、あるいは黒緑で、墓地と戦場を入れ替え、そして戦場にある間は夏を、墓地にある間は冬を感じさせる、ペルセポネーのカードが必要でした。
KEN 7/10/2012: ペルセポネーが元ネタのカードです。
〈ペルセポネー〉 |
最初の版では、このカードはあまりにも支離滅裂でした。物語を語ることからはほど遠いものです。
KEN 7/19/2012: 接死を与えるものはもう存在しています。《罰する者、ゾーズー》の能力を試してみましょう。プレイヤーが、この土地0つ→2つという繰り返しを冬と夏というように感じてくれればいいのですが。1/2→0/2に。これは無限にブロックできてしまいますから。
〈ペルセポネー〉 |
プレイテストの間、しばしばプレイヤーは土地を2枚プレイし、それからプレイしないという手順を取っていました。さて、これが夏/冬だからでしょうか、それとも単に奇妙なカードのせいなんでしょうか?
TML 8/3/2012: このカードの意味がわからない。
Mago 8/28: 私も。文章が長くて(しかもテンプレートが奇妙で)メリットもそう多くない。
DH 8/29: 私もわからないね。
CAD 8/30: 混乱するよ。
KEN 9/6/2012: 土地プレイから呪文を唱えることに改良しました。「夏」のプレイヤーはカードを引き、「冬」のプレイヤーはカードを捨てるんです。
KEN 9/10/2012: 引く/捨てるの代わりにライフを得る/失うを試してみます。伝説のエンチャント・クリーチャーは神々だけなので、伝説のパーマネントではなくしました。{B}{G}→{1}{B}。
TML 9/17/2012: ケン、ちょっとこのカードを使うデッキの例をいくつか挙げてもらえないか。
AF 9/27: 何の意味も無い遊びをやっているように感じる。
Mago 9/28: トップダウンのペルセポネーのカードをセットに入れるのはネーグルにとって重要だ。その目的はいいが、このカードはそれじゃない。
SPS 10/1/12: 意図するところはいいと思うんですが、やりかたがよくありません。ターンの一部だけ戦場にいるという発想は好きですが、今書かれている他の能力はちょっと。
TML 10/5/2012: 何がどうなっているのかやっぱりわからん。ペルセポネーがやるべきことは何だ?
MJG 10/10/12: 変なカード。嫌いだね。
MLG 10/11: ペルセポネーのデザインという目的を果たしたら、黒緑じゃない理由はあるかな? ペルセポネーは死の国に囚われた自然の女神で、生の世界(夏)と死の世界(冬)を繰り返す運命にあるんだ。黒緑そのものだと思う。
TML 10/11/2012: 現在存在する神話レアは、白、黒、赤、緑青、5色、それから友好色だ。そこは気に入ったよ。どんなデザインにするかもう一度考え直そう。
TML 10/24/2012: ケンが作った新デザインだ。ゴットリーブの承認印つきだぞ。
〈ペルセポネー〉
{1}{B}{G}
伝説のクリーチャー・エンチャント ― スピリット
0/2
あなたのアップキープの開始時に、あなたの墓地にある土地カードを1枚戦場に戻す。そうできないなら、[カード名]を生け贄に捧げる。
あなたのアップキープの開始時に、[カード名]があなたの墓地にある場合、あなたは土地を2枚生け贄に捧げても良い。そうしたなら、あなたの墓地にある[カード名]を戦場に戻す。
BM 10/30/12: 気に入った。より広いフォーマットで根本的に面白いことになりそうだ。
DH 10/30: 《不毛の大地》を踏まえると、これはスタンダードの《世界のるつぼ》にならないか?
KEN 10/30/2012: M14の4マナタップの《不毛の大地》は《世界のるつぼ》系の登場の前触れになりますね :(
Mago 10/30: 問題があるなら「基本土地」にすればいい。
Mago 10/30: 私はこのカードが気に入った。黒緑だったらいいと思う。
SPS 11/27: 「基本」をつけるべきだと思う。M14の《不毛の大地》とあわせると強すぎる、うん、《露天鉱床》的な感じ。
TML 11/27/2012: 土地を破壊できないとした。ヤッホー! それからこれはいかにも多色なので多色にした。これで全ての神話レアが多色になった。
〈ペルセポネー〉
{1}{B}{G}
伝説のクリーチャー・エンチャント ― スピリット
0/2
土地は破壊不能を持つ。
あなたのアップキープの開始時に、あなたの墓地にある土地カードを1枚戦場に戻す。そうできないなら、[カード名]を生け贄に捧げる。
あなたのアップキープの開始時に、[カード名]があなたの墓地にある場合、あなたは土地を2枚生け贄に捧げても良い。そうしたなら、あなたの墓地にある[カード名]を戦場に戻す。
ID 12/11: 奇妙なカードだ。《忌まわしい回収》や《神々との融和》と組み合わせるとホントに奇妙だ。レガシーでは強すぎるように思うし、少なくとも《聖遺の騎士》デッキでは《緑の太陽の頂点》の的だ。
SPS 12/12: 一番不安なのは、これがモダンのジャンドで暴れることだ。毎ターンフェッチを戻して、しかもクリーチャー・土地が破壊されなくなるんだから。
TML 12/12/2012: 評価を変えることはできるけれど、この時点でモダンに影響を与えるカードは非常に印象的だな。
TML 12/13/2012: 両方ともアップキープ誘発にした。伝説のパーマネントにしたほうがいいだろう。
ID 12/14: 破壊されない《変わり谷》はスタンダードでもかなり面倒だ。でもそれで全部じゃないあたりどうよ?
TML 1/3/2012: 面倒なものを残しちゃいけない。何か問題があれば言ってくれ、直そう。そうそう、伝説のパーマネントにした。
KEN 1/4/2012: 《死儀礼のシャーマン》で終わりですね。
TML 1/25/2013: 新カード。
最終的に、〈ペルセポネー〉は取り除かれることになりました。彼女はきっと死の国で、次に季節が移り変わるのを待っていることでしょう。多分。
難題8:迷宮に挑め
『テーロス』の続編ですから、『神々の軍勢』はそのテーマのほとんどを引き継いでいます。黒赤のテーマはミノタウルスで、『ホームランド』からひっそり登場していた部族です。『テーロス』のデベロップ中に、私と私の協力者はミノタウルスをドラフトしました。ミノタウルスは、今日のようなものではありませんでした。緊急に強化が必要だったのです。マナ・カーブは不格好で、誰もデッキに入れたがらないようなバニラの山でした。そして一般に、他の人がより良いカードをプレイしているのに、自分は黒赤の最悪のデッキを使っていると感じさせるものだったのです。
『神々の軍勢』では、私たちはミノタウルスをドラフトすることに強い動機付けをおこないました。
〈死体角のシャーマン〉 |
このカードは可能な限り強くミノタウルス部族を主張するものです。
- ミノタウルスである
- 両方ともミノタウルスの色である黒赤である
- 第2ターンに登場できる。ミノタウルスには他に2マナが存在しない。ミノタウルスは2/3以上であるという「ハールーン」のルールが存在したのでコストが2マナで弱点のないものを作るのは難しかった
- あなたの他のミノタウルスのコストを{1}下げるので、2マナ・ミノタウルスには強い助けとなり、他のミノタウルス・部族全体の鈍重さを解決する
- パワーの値がミノタウルスの数に応じて増えるので、ミノタウルス・部族デッキは有利になる。〈死体角のシャーマン〉を終盤で出せば、マナ軽減能力が役に立たなくても巨大な5/3クリーチャー(あるいはパワーはそれ以上)が手に入る
一般に、これのようなロードに何らかの長所をつけることは、その部族全体を強化するので有効です。『テーロス』そして『神々の軍勢』がミノタウルスという部族全体を強化した結果、『神々の軍勢』のブースター・パックにはこんなカードが入ることになりました。
難題9:未来を見よ
神啓クリーチャーには、戦闘以外でより安全にタップする方法が必要です。英雄的クリーチャー寄りも神啓クリーチャーを助ける装備品は、この役目のために相応しいものです。フレイバーを組み合わせて、こんなカードをデザインしました。
〈目玉〉 |
ブロックの第2セットですから、『神々の軍勢』のデザインは『テーロス』のデベロップ中に行われました。通常、デベロップ中にカードが取り除かれ、穴が残されます。そして早く世に出る商品は印刷が迫っているので、優先権があります。
しばしば、後のセットから略奪が行われます。はっきり言ってしまえば、私の目玉は私のセットから盗まれ、そして『テーロス』に入れられました。いいように言えば、私のカードは非常にクールだったので3ヶ月早く印刷されることになり、そして『神々の軍勢』には他のカードが充てられたのです。
『テーロス』のブースター・パックに入ったカードは、これです。
これはカードが最初に準備された商品ではない商品の一部として世に出ることの一例です。
難題10 ― 足跡を辿れ
クリエイティブ・チームはキオーラをこのセット唯一のプレインズウォーカーにするということを最初から知っていました。『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ2012』にいたキオーラのデッキは、人気の高い緑青のエルドラージ・デッキだったので、彼女の実際のカードを求める声は高かったのです。
キオーラに「出番」を与えるために、デザインは彼女に垂直サイクルのカードを与える必要がありました(コモン1枚、アンコモン1枚、レア1枚、神話レア1枚)。アンコモン枠はキオーラが召喚する、専用のマーフォークとしてデザインされました。
〈キオーラの信奉者〉 |
プレインズウォーカーに独自性を持たせるため、キオーラを緑青の「怪物召喚」プレインズウォーカーにすることにしました。最終的に、キオーラは4マナのプレインズウォーカーとなり、キオーラを第3ターンに唱えられるようにとその配下のマーフォークは2マナの強力な加速クリーチャーとなりました。
さらに加えて、キオーラの配下は好きなときにアンタップすることによって神啓を誘発させることができます。あるいはキオーラの信奉者が2体と《催眠の宝珠》があれば好き放題の始まりです。あなたがアンタップしたいパーマネントは何ですか?
試練11:過去から学べ
このカードの話は『新たなるファイレクシア』のデザインに遡ります。私は『新たなるファイレクシア』のリード・デザイナーで、そしてデザイン・チームはマジックの歴史に名を刻む敵を新しい本拠地となる次元に根付かせるという使命を受けました。私は「邪悪」そして「侵害」、そしてクールな極悪非道の、そして決して住みたくないような次元というイメージを出したいと思いました。
そのために、私たちは多くの悪いことを起こさせました。デッキに何を入れるかはプレイヤーの選択ですから、ほとんどのマジックのカードは次のいずれかに分類されます。
- 自分にとって良いことをする
- 相手にとって悪いことをする
- その組み合わせ
『新たなるファイレクシア』において、ライフを得るとかクリーチャーを強化するとか土地を増やすとか、自分の変数を有利なように操作することは邪悪というイメージにはなりません。プレイテストの後、何かを破壊したり何かを感染させたりダメージを与えたりライフを失わせたりすることには飽き飽きしました。何か自陣を伸ばすカードが必要でした。結局の所、破壊にインパクトを持たせるには、破壊されるものが良いものでなければならないのです。
経験豊富なデザイナーのデイブ・ガスキン/Dave Guskinは、「ファイレクシアのスリヴァー」というアイデアを持ってきました。お互いに強化しながら、相手の妨害もするのです。「精鋭」と呼ばれたその一例をお見せします。
〈精鋭の巨人〉
{3}{G}
クリーチャー ― 精鋭・ホラー
4/3
あなたの精鋭はトランプルを持つ。
あなたの対戦相手がコントロールするクリーチャーはトランプルを失うとともにトランプルを得られない。
こうして、このカードは「自分にとって良いこと」と「相手にとって悪いこと」を同時にするものになりました。最終的には、クリーチャー・タイプの制限を取り払い、マナ・コストを上げ、そして『新たなるファイレクシア』を支配する法務官の神話レア・サイクルになったのです。
話を『神々の軍勢』のデザインに戻しましょう。(授与を持たない)クリーチャー・エンチャントを作ったのですが、これを「足の着いたエンチャント」らしくしたいと考えていました。つまり、パワー/タフネスの欄を取り除けば、それでエンチャントだと見えるようにしたかったのです。
〈ニクスのケンタウルス〉 |
このカードは、「エンチャントでもあり得る」という条件は満たしていますが、他にもっと大きな問題がありました。この類の「動くエンチャント」なクリーチャーならいつも作っていたのです。最近でさえ、こんなカードがありました。
そこで、何かより特徴的なものが必要でした。最終的には、『新たなるファイレクシア』から、対戦相手を妨害する精鋭メカニズムを再利用することにしました。トランプルを呪禁に変えて、こうなりました。
難題12:究極の贈り物
『神々の軍勢』にも授与メカニズムは存在します。そして私は自分のチームに、「神話レアの鼓吹」カードを作るように指示しました。デザイナーのライアン・スペイン/Ryan Spainとデベロッパーのビリー・モレノ/Billy Morenoは、それぞれが同じようなカードを提出しました。
〈空飛ぶスパゲッティ・モンスター〉 |
このカードは{W}{U}{B}{R}{G}のマナ・コストと5色それぞれのキーワードを持つという構造は失いませんでした。赤のキーワードは速攻でしたが、授与によって速攻を与える必要はまずありませんから変更されました。さらに奇妙だったのは、〈空飛ぶスパゲッティ・モンスター〉が、それのついているクリーチャーが戦場を離れたときにも速攻を必要としないということでした。私たちはこういった無意味な能力をカードに書かないように注意しています。
ある時点で、これはすべての元型のキーワードを持つようになっていました。
エンチャントが呪禁を持ったり与えたりすることの奇妙さから、これは巧く行きませんでした(上記参照)。オーラである間に対象に取れるのでしょうか。多分取れませんが、はっきりは言えません。そういうわけで、呪禁は外されました。
エディターがこの長い文章を持つカードに挑んで、接死といくつかの組み合わせがカードに入らないということを言ってきました。もう一度調整を重ね、FFLによるプレイテストを経て、ブースター・パックに入っている〈彩色マンティコア〉ができたのです。
〈彩色マンティコア〉デッキを組みたいなら、まずよく似た名前のこのカードから始めてみてはどうでしょうか。
凱旋
この12枚のカードがいかにしてブースター・パックに入り、あるいは入らなかったのかという話を楽しんでいただけたなら幸いに思います。すべてのカードにそこに至るまでの意識があるのですが、ゲーム・デザインというものはどれだけ強くて高貴なカード・デザインにとっても苦難の道なのです。是非、Twitter(@norrytt)でご意見、また『神々の軍勢』の中で気に入ったことについてお聞かせください。
お楽しみはこれからです。私も、『神々の軍勢』のパックを開けて才能ある定命の者が作り出したカードでプレイするのが待ちきれません。
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世界の頂点に悪魔が来る!加虐者型ディミーア・デーモン(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
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2024.11.2広報室
先行リリースキャンペーンも復活!11月8日~14日はWPN店舗で『ファウンデーションズ』プレリリースを楽しもう|こちらマジック広報室!!
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BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事