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中村修平の「ドラフトの定石!」
中村修平の「ドラフトの定石!」 第1回
中村修平の「ドラフトの定石!」 第1回
イントロダクション
ドラフトとは?
それがいつ生まれたかというと遥か遥か昔。
私が知っている話としてはマジック黎明期、まだ『アルファ』や『ベータ』といった伝説のセットの頃。
ルールは全くといって良いほど整備されておらず、60枚のスターターデッキをそのまま使っている人もいれば、20枚の《Black Lotus》と20枚の《Ancestral Recall》、20枚の《稲妻》が共存していた......。
そう、当時はフォーマットはおろか、デッキに特定のカードは4枚までというルールすら無かったのです。
そんな中、とあるマジック好きが
「ただパックを開けるのはもったいない。俺が考えたクールなゲームで遊ぼうぜ?」
と言ったとか言わなかったとか。
ともあれこうして始まったであろうそのゲームでは、当時ですら弱く見向きもされなかった《スケイズ・ゾンビ》、《灰色オーガ》といったクリーチャーたちが活躍し、《ハールーン・ミノタウルス》は強力クリーチャー、《丘巨人》に至っては4番バッターとして戦場を暴れまわったのです。
この何気ない遊びは多くの人の手を経て洗練、整備され、やがて数々の決まり事と定石とともに「ドラフト」という遊びとして確立していくことになります。
ここまでならばただの遊び方の1つとして終わってしまっていたでしょう。しかしそうはなりませんでした。ウィザーズ自身がこの遊び方に可能性を見出し、サポートを始めたのです。
これがドラフトの決定的な転機でした。
ほとんど同時期に組織されたプロツアーのフォーマットのひとつに指定されたばかりか、ウィザーズは新セットの開発に際して、このドラフトという遊び方を考慮に入れて調整をするようになりました。徐々に整備されていき、やがて確固たる競技として「ドラフト」が成立し、マジックに新たな世界が広がったのです。
とは言っても試行錯誤は色々あったようですね。今のように1つのブースターパックにカードが15枚入っているという形式に固定されるまで相当な年月が流れていますし、色によって大幅に強弱がある時期があったり、例えばコモンに2種類の《火の玉》のような「X火力カード」が入っていたりもしました。
そして現在、ウィザーズ開発部は構築フォーマットへの影響と同じくらい、そのセットが健全にドラフトができるかをチェックしています。
また、マジックの中でも最高峰の大会「プロツアー」でもその時の新セットによるドラフトが取り入れられています。
プロと呼ばれるプレイヤーの中にも「リミテッダー」と呼ばれる、ドラフトを最も得意とする人たちがいます。彼らに言わせると「ドラフトの方が圧倒的に面白いし、一瞬でデッキが広まってしまう構築と違ってリミテッドの技術は一朝一夕で習得できるものではない、だからこそやりがいもある。」とのこと。
私にはこの言葉はドラフトの面白さと同時に、その難しさを表していると思います。
構築フォーマットではデッキさえあれば、あとはマジックのルールを知ることでマジックを楽しむことができます。
ですがドラフトとなると、マジックのルールだけではまだ足りません。ドラフトにはドラフトだけにある決まり事があって、それを最低限知っていなければそもそもまともにゲームすらできないのです。
この記事では、これから全4回で、実際にドラフトを進行していく上で要所要所の考え方、そしてその考え方の集大成である定石を紹介・解説していきます。
あなたがこの素晴らしいゲームを楽しむ一助となれば幸いです。
- 第1回
- ドラフト前
- イントロダクション
- 定石
- デッキの組み方 前篇
- ドラフト前
- 第2回
- ドラフト中 前半
- 第3回
- ドラフト中 後半
- 第4回
- ドラフト後
- 第1回
- ドラフト前
- イントロダクション
- 定石
- デッキの組み方 前篇
- ドラフト前
- 第2回
- ドラフト中 前半
- 第3回
- ドラフト中 後半
- 第4回
- ドラフト後
定石
さて、いよいよ本題である「どうすればドラフトというゲームで強くなることができるか?」というポイントを、実際のドラフト進行に従って説明していきたいと思います。
......と言いたいところですが、この記事を進める上でその前にもう1つだけ触れておきたいものがあります。それは「定石」です。
定石とは何でしょうか? 辞書を引くと以下のように出てきます。
物事をするときの、最上とされる方法・手順 (『デジタル大辞泉』「定石・定跡」の項より引用)
長い歴史を持つドラフトというゲームでは、ルールが整備されていくにつれ、守ったほうが勝ちやすい約束事、定石というものが生まれてきました。例えばドラフトでとても有名な定石に、以下のようなものがあります。
「呪文は23枚、土地は17枚」
ドラフトを初めてやる上でまず経験者に言われる言葉はこれだと思います。
でもこれ、疑問符だらけではないでしょうか?
なぜ呪文は23枚でなければならないのか? なぜ土地は17枚なのか? そもそもどうしてデッキ枚数は40枚固定で話をしているのか?
この記事ではサブテーマとしてこのよく言われる「定石」を扱っていきます。
定石と呼ばれている言葉はどういう理由で定石となったのか?
定石と呼ばれているものは本当に正しいのか? 正しかったかもしれないが時間の経過とともに正しくなくなっているものもあるのではないか?
これらを解説した上で、本当に正しいものなのかを検証していきたいと思います。
それでは進めていくとしましょう。
デッキの組み方 前篇
前篇と名打ったのはもちろん後篇があるからです。
ここで取り扱うのは構築デッキでありがちなデッキの組み方、既にあるカードからどういう組み方をすれば良いのかではなく、どういう基準でカードをドラフトしていかなくてはならないか、ドラフトの最も基本的な考え方から始めていきたいと思ったからです。
とはいっても、なんのことはありません。極論してしまうと強いカードを取り続けるというだけです。
と言ってもわかりにくいですね。理解していただきたいのは、
ドラフトで作れるデッキは構築フォーマット視点で見ると非常に弱いレベルでしかない
ということです。
4枚制限があるとはいえ好きなカードを使っていい構築フォーマットに比べ、ドラフトで使用するカードは全体で14×3×8の336枚しかありません。しかもその大半が構築ではほとんどお呼びがかからないコモンカードなのです。
はっきり言って比較することすら問題外、そもそも勝負にすらなりません。どのプロツアーでも良いので、トップ8入賞したプレイヤーが使っている構築デッキと、そのプロツアーで公開されているドラフトで3連勝を記録したデッキを比べてみれば一目瞭然でしょう。プロツアーで1勝もできなかった構築デッキですら、負けなしのリミテッドデッキより強いのは間違いないでしょう。
ですがマジックは絶対的なデッキの強さを決めるゲームではありません。目の前の弱いデッキよりほんの少し強ければ良いのです。
ここではそのために、ドラフトが始まる前に知っておくほうが良い知識・定石を挙げていきます。
カードの種類の比率
デッキ構築の大きな指針となるのが、先ほどの「呪文は23枚、土地は17枚」という定石です。
デッキの枚数が40枚なのは、限られたカード枚数の中で少しでもデッキを安定させるため。
17枚と構築デッキより多い40パーセント弱の土地を入れるのは、低マナ域にカードを揃えることができず替わりに入れざるを得ない高コストのカードを唱えるため、安定して土地を並べるためです。
具体的な目安としては、初手に土地が3枚あるかどうかが焦点と言われており、確率上は土地17枚の40枚デッキならば初手7枚中に2.975枚、土地が18枚なら3.15枚。土地を引きすぎる場合との兼ね合いから17枚がより適正とされています。
そして23枚の呪文は......。実はこの部分では表現を曖昧にしていました。
私がドラフトを教わった10年以上前にはこう言われていたのです。
「クリーチャーは14枚、クリーチャー以外の呪文は9枚、そして土地は17枚」
ドラフト経験者の方はおや?と思うかもしれません。
クリーチャーが呪文より多く取られている理由は、やはり選択肢が弱いものであるからです。構築デッキのようにクリーチャー以外で勝てる選択肢を持つことが難しいので、クリーチャーで攻撃して勝つということを意識せざるを得ない。ドラフトでのデッキ構築の基本はクリーチャーを展開していって呪文でバックアップするなのです。
ですが最近ドラフトを初めた方はこういう風に言われませんでしたか?
「クリーチャーは15枚、クリーチャー以外の呪文8枚、そして土地は17枚」
場合によってはクリーチャーは16枚で呪文は7枚と教わったかもしれませんね。
ちなみに私が現在初めての方にドラフトを紹介する時は、クリーチャーは16枚程度が良いと言います。
これらは全て間違ってはいません。つまり、その当時においては正しかったのです。この10年でクリーチャーの質は大きく上昇し、クリーチャー以外の呪文の性能は低下したのです。
クリーチャー主体という戦略自体に変わりはありません。淀みなく土地を置き続けたいから土地は17枚が基本であることも同じです。
ですが大量の呪文でクリーチャーをバックアップするという方向から、少量の呪文でクリーチャーをバックアップするという方向へとドラフトスタイルは変化しているのです。
クリーチャーこそが主役
限られたカードの中からどうやりくりするか?
構築環境よろしくプレインズウォーカーを出して奥義が爆発!......なんてことができるならそれに越したことはありません。対処手段が潤沢ではないドラフトという世界では彼らは文字通り神レベルのカード。しかし出現頻度も残念ながら神話レア。出会えることに期待するのは神に祈るようなものです。
ごく限られたケースを除き、ドラフトを進めていくにあたってコモンにも多く存在しかつダメージ効率が良いカード、クリーチャーを集めていくことが重要になるのは必然ともいえるでしょう。
それではドラフトにおいてどのようなクリーチャーに価値があるのか? 簡単にまとめるとこのどちらかです。
- コスト比が優秀なクリーチャー
- システムクリーチャー
コスト比については特に説明の必要はありませんね。
数字が大きいカードが強いのは当たり前。
ドラフト戦では構築で見られるような「コストの数字よりパワーもタフネスも高い」といったクリーチャーのみばかりか、それよりか大幅に劣るカードでも充分使われます。
良く言われるのは2マナ2/2、4マナ3/3、5マナ4/4のラインがあれば合格。
また、戦闘をするクリーチャーのパワーは最低でも2は欲しい。これもまたコスト対効果の側面からです。最も低コストなのは当然パワー1ですが、単独で対戦相手を倒すのに20ターンもかかってしまいますし、3/3以上のクリーチャーを倒すのに3体以上のブロックが必要です。
一方でパワーが2であれば10ターンと大幅に短縮できますし、一気に4/4までのクリーチャーを2体で対処できるのです。
もうひとつのシステムクリーチャーというのは少し定義が広い言葉になります。
これは「戦闘以外で、戦場に影響を与える能力持ちのクリーチャー」と言えば良いでしょうか。
例えば「タッパー」、「自身をタップ+何か、によって対象のクリーチャーをタップする」能力持ちのクリーチャー、などがそれにあたります。同じように「対象のクリーチャーまたはプレイヤーに1点のダメージを与える」能力をもった通称「ティム」や、「対象のクリーチャーまたはプレイヤーへのダメージを軽減する」通称「ヒーラー」もまたシステムクリーチャーです。
こういったカードは標準よりさらに低いパワー・タフネスが割り当てられていることが多いですが、そもそも殴り合いそのものが目的ではなく、そのサポートが目的なのです。
単純にインフレしかないサイズとは違って、何気ないと見える効果でもゲームを支配する力があったりするので注意が必要です。ドラフトにおいては優先的に取るべきカードとも言えます。
ひな形(デッキアーキタイプ)
クリーチャーが16枚に呪文が7枚、そして土地が17枚という枠組みで構築する。これは構築デッキの作り方と似ていますね。土地が24枚で残り36枚に呪文を入れていく......では肝心のデッキの種類の方はというと、これも構築と同じようにいくつかの類型があります。
速いデッキならコストの低いクリーチャーでのビートダウン、遅いデッキならば戦場をさばき続けるコントロール。クリーチャーが主体としたならば、1体のクリーチャーをサポートし続ける?それとも数で押す?コントロールならばクリーチャーで戦線を維持し続けるのか、呪文によってそれをするのか?
ゲームに勝つためには?特定のカードまでに行き着くのがゲームの目的なのか、あるいは逆に相手の妨害をするのが目的なのか、それとも全く別の方法で勝とうとするか。
こういったことをドラフト中に青写真を描きながら、一方で局面、局面によって修正を加えていく。弱いカードの中からパーツを選び、組み上げていくのがドラフトというゲームの難しさであり醍醐味でもあります。
それでは実際にどのような類型があるのか?ここで解説していきましょう。
大まかに分けて、1つの基本形とそこから派生した3通りの応用があります。
マナカーブ重視ドラフト
リミテッド戦での命題、弱いカードプールの海でどうやって戦うのか、という問題に対して生まれた答えのひとつであり、全ての類型の基本形になったのがこのマナカーブという概念です。
かなり雑に言ってしまうと、
どうすれば最も効率的にカードを展開できるかというのを追求してみました。
というもの。
弱いカード同士の戦いならばなおさら先に無駄なくカードを唱えられた方が勝てるという考え方です。
簡単な例を出してみましょう。
この対戦は先手であろうとも後手であろうとも手順通りこなせば100%あなたの勝ちになります。なぜでしょうか?
鍵となる第4ターン。
あなたは4枚目の《島》を設置しマナを使いきって《珊瑚マーフォーク》を2体召喚できるのに対して、あなたの対戦相手は《島》がいつまでたっても3枚しかないために1体の《珊瑚マーフォーク》を出したうえで、1マナを使い切れないままターンを返さざるを得ません。
実際にはマナ域によってクリーチャーの性能は加速度的に上昇していくのでここまで極端なケースはありえませんが、例のような1マナ損の差でゲームが決まるというのならば、できるだけデッキ構築の段階でマナ損にならないように構成を考えよう、というのが趣旨。
それをマナ域順に並べてみると、ちょうどカーブを描いているかのような曲線になっているから「マナカーブ」と呼びます。
実際にマナカーブ理論に則ったデッキのクリーチャーのマナ域配分は以下のようになります。
3マナを頂点としてゆっくりと高マナ域が減っていくようになっています。
これは、7枚の初期手札と土地が17枚であればどこまでストレートに土地を伸ばせていくか、適切なターンに適切なマナのカードを唱えられるか、それができないようなら2枚カードを使うことによって補えるか、ということを考えたものです。
3マナが一番多いのはただ単にカードの取りやすさというばかりではなく、同時にカードを使うという点も含めた上で最も理に適っているからです。
マナカーブ理論はお互いに毎ターン土地を並べ続けあって、毎ターン同じレベルのクリーチャーカードの応酬をするという、単純なリミテッド戦であれば完璧に機能します。
残るはカードの質と方向性です。使用するカードの質を上げていけばそれだけでデッキが強くなっていきますし、どういう方法で対戦相手に勝つか、例えば飛行でブロッカーを排除して勝とうするのであれば、サイズよりもデッキに飛行を多くすることを優先すべし、といった具合に、方向性を統一することによって実質的にカード1枚1枚の役割をより強固にすることが可能です。
自分のデッキを回しやすく、より対戦相手を倒すターン数を短くするというのが本旨なので、対戦相手がどのような戦略を取っていたとしても自分の利益が最大化できる、いわゆる均衡点にあるドラフト戦略と言うことができるでしょう。
この後から紹介されるドラフト類型のほとんどはこのマナカーブを礎にして、この強固な理論をどうやって突き崩すかということに主眼を置かれています。
全てに通ずる基本形。
実際にこの基本をマスターするのか、以降に登場する発展形はこの形を倒すためにあるのだから概念だけを理解すればそれで良しとするか。
どちらが正解という訳でもないので、このどれかから自分にとってぴったり合うドラフト戦略を考えていくのがよいでしょう。
それではマナカーブ理論に対抗できる他のひな形について話を進めていきます。
怪獣(コントロール)ドラフト
先ほどマナカーブ理論を説明する際に、
「実際にはマナ域によってクリーチャーの性能は加速度的に上昇していくのでこんなケースはありえませんが」
と但し書きを入れて例を出した部分があります。
まさにその部分に踏み込んで発展を遂げたのが怪獣ドラフトと言われるアーキタイプ。
マナカーブ曲線に沿っての展開は安定して無駄がないのが強みですが、裏を返せば一定の動きしかしない、単調であるという意味にも取れます。
常に一定であるなら高レベルのカード連打に対して、それにだけ特化した低レベルの対策カードで抑えきる。そして長期戦になったところで、同じくカードとしてのレベルはそれほど高くないがマナコストが高いので比較してパワー・タフネスが大きいクリーチャーで止めを刺す。
それが怪獣ドラフトです。
使おうとするカードのどちらもが低レベルのカードというところがポイントです。
弱いカードを選別するゲームであるところのドラフトでは、強いカードというのは各パックの序盤でしか取れない。よって、相手の強いカードをこちらの弱いカードと相殺させるというのは、それだけで潜在的なアドバンテージが発生する。
これが怪獣ドラフトの基本思想です。
では実際にどんなカードが怪獣ドラフトでは必要となるのか?
それは大まかに言って、「壁」と「怪獣」です。
「壁」とはそのまま、タフネスが高い、防御的なクリーチャーのことです。
例えば3マナ3/3は、攻撃的であることが評価される通常のドラフトでは充分及第点を与えられるカードである一方、3マナ1/4は攻撃に向かっても1点ダメージ、ブロックされやすく通常では何か他に能力が無ければ落第点を押されてしまうカードです。
ところが戦場にこちらは1/4、あちらは3/3しかクリーチャーがいなければどうでしょう?
盤面は膠着してしまっていますね。1/4の壁が疑似的に3/3を除去している状況なのです。
この状態を維持しつつ、最終的に膠着を崩すのが怪獣の役割。レアのひたすら強力なクリーチャー、例えばドラゴンや天使でも良いですし、サイズは大きいですがコストが高く普通はあまりデッキに入れたくない類のコモンでも構いません。要は、膠着している戦場に一気に風穴を空けられるだけの大きさがあれば良いのです。
壁役を贅沢に除去で置き換えた純正コントロールデッキや、亜流としてはマナ加速カードからひたすら怪獣を出し続けるようなデッキ、多色デッキも発想としてはこの範疇、「いかに序盤を耐えて対戦相手のマナカーブより重いカードで勝負するか」という点を主眼にしています。
10 《森》 5 《山》 2 《平地》 -土地(17)- 1 《銅のマイア》 1 《金のマイア》 1 《鉛のマイア》 1 《生命鍛冶》 1 《銀のマイア》 1 《オーリオックの模造品》 1 《ヴァルショクの模造品》 1 《絡み森の鮟鱇》 3 《腐食獣》 2 《吠える絡みワーム》 1 《最上位のティラナックス》 1 《鋼のヘルカイト》 1 《飲み込む金屑ワーム》 -クリーチャー(16)- |
1 《感電破》 1 《恐慌の呪文爆弾》 1 《存在の破棄》 1 《粉砕》 1 《荒々しき力》 1 《転倒の磁石》 1 《ヴィリジアンのお祭り騒ぎ》 -呪文(7)- |
2マナ(ビートダウン)ドラフト
より重いという発想があるなら、より軽くという発想もあって良いはずだ。
それが2マナビートダウンドラフトの基本的な考え方です。マナカーブよりさらに早く、もっと手数を増やせば勝てる。もっともな話です。
この発想をした人が目を付けたのは2マナ圏。「百聞は一見にしかず」ということで、ある大会で優勝した2マナビートダウンデッキのマナカーブをお見せしましょう。
11 《平地》 5 《島》 -土地(16)- 1 《ゴールドメドウの侵略者》 1 《ゴールドメドウの重鎮》 1 《蚊の守り手》 4 《キンズベイルの散兵》 2 《主の後継ぎ》 2 《キスキンの大心臓》 1 《皺だらけの主》 1 《鳥の変わり身》 1 《キスキンの先触れ》 1 《キスキンの西風乗り》 1 《やっかい児》 1 《秀でた隊長》 1 《キンズベイルの風船使い》 1 《熟考漂い》 -クリーチャー(19)- |
1 《揃った連射》 1 《分散》 1 《思考の糸のうねり》 1 《良心の呵責》 1 《遠くの旋律》 -呪文(5)- |
なぜ2マナ圏か?
それは先ほどの「マナコストに比して~」を逆手に取った結果です。
重くなれば強くなるのはその通りだけど、それによって上昇する数値は一定ではないのではないか?
1マナ圏であれば1/1クラス、2マナ圏であれば2/2クラス、4マナ圏であれば3/3クラス、5マナ圏であれば4/4クラスというのが標準的なドラフトでのクリーチャーサイズですが、3マナ圏の標準サイズも概ね2/2と、2マナ圏との境目にが非常に曖昧です。そこを突いて強い2マナにデッキ構成を寄せれば勝てるというのがこの発想。
もう1つ、2マナに構成を寄せるのには利点があります。
それは手数、大量の《珊瑚マーフォーク》の例でも出てきたように2マナ圏のカードは4ターン目には同時に2枚唱えられます。
3マナ圏以降のカードがそれをするには最低でも6ターン目になることから、見た目以上に戦線に与える影響力は大きいのです。
このひな形を構築する際に重要なのは、言うまでもなく2マナ圏。ですがそれに加えて「回避能力」というキーワードも同じくらい重要となります。
怪獣ドラフトは手札を消化しきれず負けてしまうかもしれないというのが選択する上でのリスクだとすれば、こちらのドラフト戦略のリスクは手札を使いきってしまってプレイできるカードが無い、いわゆる「ガス欠」です。
実際のゲームでは永遠に相手の土地が3枚で止まってくれる訳ではないので、対戦相手はより高コストで高性能なクリーチャーを続々と戦線に加えていきます。
もちろんそれらに対してアドバンテージを失うカード交換を仕掛けて少しでもダメージを詰めていくというのが戦略の本意ではありますが、相手のカード全てに対処していたのでは普通のデッキならライフを0にする前にカードが尽きてしまいます。
後に残るのはカード構成で劣る自分のデッキと、これからどんどん強くなっていく相手の陣営。これでは勝てません。
そうならないようにするにはアドバンテージを失うカード交換をなるべく減らせるような構成にすることです。怪獣ドラフトの時に出た例であれば、ただの2/1ならば1/4の前に完敗してしまいますが、
その2/1が「回避能力」飛行持ちであれば、逆に相手のカード1枚を擬似的に無効化してしまえるのです。
どうやって「ガス欠」を防止するのか? ビートダウンを組むうえで常に考えていかなくてはいけないことです。
コンボデッキドラフト
さて、これまで何マナ圏というとそれは押しなべてクリーチャーのことを指していました。
繰り返しになってしまいますが、ドラフト戦のほとんどはクリーチャー同士の殴り合い、すり潰しあいとなるからです。
しかし稀とはいえ、それ以外の方法でのゲーム勝利手段、クリーチャーの戦闘ダメージ以外からの勝ち方であったり、ライブラリーアウトであったり、ゲームに勝つというそのもののカードを使っての勝ちであったりというのも戦略としてあるのです。
また特定のコモンやアンコモンの組み合わせ、コンボで戦場を封殺してしまい、あとはクリーチャーならなんでも良いから殴れば勝てる、という状況もドラフト戦の本来の姿からは少し離れていますからこのカテゴリーです。
これらのデッキは目的がその勝利手段へと到達できるか、という点がデッキ構成の主眼であり、もはやクリーチャー戦での優越や枚数差について考える必要はありません。極端な話、戦線が10対1になっていても問題はないのです。次の瞬間に別軸で勝てば良いのですから。
「次のターン攻撃されると私は負けますけど、その前にこの《不可視の忍び寄り》をブロックできませんよね?」とか、「攻撃されると死んでしまうけどこのターン中にあなたのライブラリーを0枚にするので戦闘フェイズは来ませんよ。」といった感じです。
それでもマナカーブ理論の影響から脱しているかと言われればそうではありません。
目的を到達するまでの守りを用意するために、怪獣ドラフトと同じような基準で壁役が必要なことがほとんどですし、勝ち手段がコンボだけのデッキを構築できることも稀です。
ある程度はコンボにとって不純物、通常の勝ち手段であるクリーチャーを入れたり、むしろコンボ要素がゲームに勝つためのサイドプランとしてデッキの中に組み込まれているというデッキ構築がほとんどです。
ここまでは変則的な「ドラフトスタイル」くらいの感じで考えてもらえればちょうど良いかもしれませんが、コンボドラフト的な発想をさらに進めた亜種として、「アーキタイプドラフト」というものがあります。
これはデッキの類型、ひな形という意味でのアーキタイプではなく、カードをはめ込むための「鋳型」と言った方が正しいでしょうね。
ドラフト中に完成するであろう形を模索するのではなく、ドラフト前の段階からデッキの完成形を決めておき、実際のドラフトはそれに向かって穴埋めをするかのようにカードを確保していくというスタイルです。
その時その時に現れるカードから強さを基準に取るのではなく、希少性でもマナ圏でもなく、ただ青写真に入っているから取る。
ここまでやればマナカーブという軛からは脱したとも言えるかもしれません。
マナカーブ理論の基盤になっているのは、雑多なカードの集まりであるデッキから常に一定の回りをするということ。
一方、アーキタイプドラフトは、コンボデッキドラフトを更に突き詰めて、構築デッキと同じようにカードを揃えて常に同じゲームをやろうとするものですから。
9 《島》 7 《山》 1 《ゆらめく岩屋》 -土地(17)- 1 《甲冑のスカーブ》 2 《要塞ガニ》 1 《アンデッドの錬金術師》 1 《燃え投げの小悪魔》 -クリーチャー(5)- |
6 《夢のよじれ》 1 《霊炎》 1 《静かな旅立ち》 3 《熟慮》 1 《収穫の火》 3 《燃え立つ復讐》 1 《大笑いの写し身》 1 《血まみれの書の呪い》 1 《幻影の掌握》 -呪文(18)- |
コンボデッキドラフト全般に言える弱点があります。上手くコンボが組めると強いのは間違いないのですが、失敗すると目も当てられないデッキが出来上がってしまうことです。
まあ特定の目的でしか使えないようなカードを優先して取っているわけですからね。
基本形から離れたドラフトをするというのは、成功した時の見返りは非常に大きなものになりますが、裏を返すと失敗した時のリスクもまた大きなものになります。
成功したコンボデッキが取りざたされる陰では、その何倍もの失敗してしまったコンボデッキがあることを忘れてはなりません。
その上で、ただ強力なレアカードか、コンボに必要なアンコモンやコモンカード、どちらを取るかはあなたの自由なのです。
ここまでのまとめ
- ドラフトをするにあたって
- どういうデッキを組むかイメージ作りが必要。
- デッキは土地17枚、クリーチャー16枚、その他呪文が7枚が基本
- それにマナカーブを意識してデッキを組む
- →早い、ビートダウン型
- →遅い、コントロール型
- →別軸、コンボ型
- どういうデッキを組むかイメージ作りが必要。
- ドラフトをするにあたって
- どういうデッキを組むかイメージ作りが必要。
- デッキは土地17枚、クリーチャー16枚、その他呪文が7枚が基本
- それにマナカーブを意識してデッキを組む
- →早い、ビートダウン型
- →遅い、コントロール型
- →別軸、コンボ型
- どういうデッキを組むかイメージ作りが必要。
第1回はドラフトが始まる前に考えるべきこと、定石についてお話ししてきました。次回はドラフト前半に言われる定石、その解説と分析に移っていきたいと思います。
それでは次回、またお会いしましょう。
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