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金子と塚本の「勝てる!マジック」
金子と塚本の「勝てる!マジック」 第10回:マナバランス その1
金子と塚本の「勝てる!マジック」 第10回:マナバランス その1
by 金子 真実 & 塚本 樹詩
登場人物:
金子 真実
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの人。塚本に押しかけられ突然弟子をとることになった。
好きな元素記号はプロメチウム(Pm)。神話の「プロメテウス」が語源だなんてかっこよすぎる。「Pm」という文字も午後っぽくてもうすぐ仕事が終わる感が出てて素晴らしい。塚本 樹詩
マジック初心者。マジックの大きな舞台での活躍を夢見て、金子に弟子入りした。とにかく元気。
好きな元素記号はイッテルビウム(Yb)。言葉の響きがやばすぎる。完全に塚本。前回の勝てマジ!
他の人がどんなデッキを使っているのか?情報収集のために『デッキリスト』の探し方を教わった塚本。
しかし、突然話の途中で故障?してしまった金子。本編とは関係なく続けてきたこの流れ、一体どうなる!?
塚本「金子さんからメールが来ていたけど、前回あんな様子だったし、本人か怪しいな......。」
金子「お待ちしていました塚本さん!例のデッキは作ってきましたか?」
塚本「作ってきましたけど......金子さん、体は大丈夫なのですか?」
金子「大丈夫です、私は3人目ですので。」
塚本「え?3人目?便利そうですねそれ! それよりも言われたとおり、前回教えてもらってたくさんデッキを見れたので、それを参考にデッキを作ってきました!」
金子「早速見せてください!」
金子「『アブザン・アグロ』、《羊毛鬣のライオン》や《ラクシャーサの死与え》、《先頭に立つもの、アナフェンザ》《包囲サイ》などの強力なクリーチャーでビートダウンするデッキですね。良いデッキじゃないですか......って、土地が全部基本土地じゃねーか!!」
塚本「土地なんてどれでも変わらないですよ! それにマナを出すだけでダメージを受けたり、タップ状態で戦場に出たりする土地ばっかりで弱そうでした! 他のデッキを見ていたら赤単のデッキリストの土地が全部《山》だったのでそっちを参考にしました!」
金子「あんたバカー?」
金子「あれは単色だから成立するのであって、3色のデッキを基本土地だけでまわそうなんて言語道断です!」
塚本「金子さん、頭の中の2人目出てきてますよ。それより、3色のデッキを基本土地でまわすのってそんなに難しいのですか?」
金子「そうですね......例えば《先頭に立つもの、アナフェンザ》。デッキのエースですよね。このカードを安定して先手3ターン目に召喚したいとします。」
塚本「はい!3マナ4/4!ちょうつよい!ひゅー!」
金子「さて、あなたのデッキには基本土地だけしか入っていません。アナフェンザを唱えるためには、{W}{B}{G}が必要ですが、この3色を先手3ターン目に安定して揃えようとした場合、それぞれの基本土地が何枚くらい必要だと思いますか?」
塚本「デッキとのシンクロ率さえ高ければ、ぜんぶ1枚ずつで大丈夫です!それでこそ真のデュエリストになれるんです!」
金子「この企画はそういう企画ではありません! あくまでデジタルに、『勝てるマジック』を目指しますよ。マジックを勝つために、確率という考え方は絶対に必要です。感覚で理解してしまっている人もいるかもしれませんが、ここではきっちり計算してみましょう。」
塚本「計算......うっ、頭が......!」
金子「ここでは、《先頭に立つもの、アナフェンザ》はすでに引いていることを前提にします。このカードを先手3ターン目に安定して唱えたいとして。まず、『安定して』を定義しなくてはいけませんね。ここでは仮に80%としましょうか。」
塚本「シンクロ率80%! ヤバいですね!」
金子「先手3ターン目、初手の7枚と引いてきた2枚、合計9枚中に《平地》《沼》《森》がそれぞれ1枚以上含まれている必要がありますよね? それでは順番に計算していきましょう。まず、デッキの枚数が60枚の時に、『特定のカードを、1枚以上引ける確率』はこの表の通りです。」
引いた枚数(状況) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
7(初手) | 8(2ターン目) | 9(3T目) | 10(4T目) | 11(5T目) | ||
デッキに投入した枚数 | 1 | 11.7% | 13.3% | 15.0% | 16.7% | 18.3% |
2 | 22.1% | 25.1% | 28.0% | 30.8% | 33.6% | |
3 | 31.5% | 35.4% | 39.1% | 42.7% | 46.2% | |
4 | 39.9% | 44.5% | 48.8% | 52.8% | 56.6% | |
5 | 47.5% | 52.4% | 57.0% | 61.2% | 65.1% | |
6 | 54.1% | 59.3% | 64.0% | 68.3% | 72.1% | |
7 | 60.1% | 65.4% | 70.0% | 74.1% | 77.8% | |
8 | 65.4% | 70.6% | 75.1% | 79.0% | 82.4% | |
9 | 70.0% | 75.1% | 79.4% | 83.1% | 86.1% | |
10 | 74.1% | 79.0% | 83.1% | 86.4% | 89.1% | |
11 | 77.8% | 82.4% | 86.1% | 89.1% | 91.5% | |
12 | 80.9% | 85.3% | 88.7% | 91.3% | 93.4% | |
13 | 83.7% | 87.7% | 90.8% | 93.1% | 94.9% | |
14 | 86.1% | 89.8% | 92.5% | 94.6% | 96.1% | |
15 | 88.2% | 91.6% | 94.0% | 95.8% | 97.0% | |
16 | 90.1% | 93.1% | 95.2% | 96.7% | 97.8% | |
17 | 91.7% | 94.3% | 96.2% | 97.5% | 98.3% | |
18 | 93.0% | 95.4% | 97.0% | 98.0% | 98.8% | |
19 | 94.2% | 96.3% | 97.6% | 98.5% | 99.1% | |
20 | 95.2% | 97.0% | 98.2% | 98.9% | 99.3% | |
21 | 96.0% | 97.6% | 98.6% | 99.2% | 99.5% | |
22 | 96.7% | 98.1% | 98.9% | 99.4% | 99.6% | |
23 | 97.3% | 98.5% | 99.2% | 99.5% | 99.8% | |
24 | 97.8% | 98.8% | 99.4% | 99.7% | 99.8% | |
25 | 98.3% | 99.1% | 99.5% | 99.8% | 99.9% | |
26 | 98.6% | 99.3% | 99.6% | 99.8% | 99.9% |
※デッキ枚数は60枚
※小数点第二位以下四捨五入
金子「デッキに入れた枚数と、ターンの経過(引いた枚数)によって『1枚以上引ける確率』が上がっているのがわかりますね?」
塚本「つまり、先手3ターン目合計9枚のときに《森》を80%以上の確率で1枚以上引くためには、デッキに10枚入れれば良いんですね! だったら全部10枚ずつ入れれば大丈夫ですね!」
金子「塚本さんが見たのは表の緑のところですね? いい線ついています。ですが、残念ながらそうではありません。確かに《平地》《沼》《森》を10枚ずつ入れれば、それぞれ『先手3ターン目に1枚以上引ける確率』は80%を超えました。」
塚本「......? それで良いんじゃないんですか?」
金子「いいえ、違います。塚本さんが必要としているのは{W}{B}{G}ですから、《平地》《沼》《森》を全て引いている必要があります。結果、この確率はさらに下がります。0.831の3乗で、なんとたったの57%ほどに落ちてしまうのですよ!」
塚本「えっ......そんな......。」
金子「この『3種類の基本土地全てを1枚以上引いてくる確率』が80%を超えるためには、なんとそれぞれ15枚ずつ必要なんです! つまり、土地がデッキに15×3=45枚入りますね!」
塚本「えっ......。今の僕のデッキ、土地が24枚しかないですけど。」
金子「そして同じく、《ラクシャーサの死与え》や《羊毛鬣のライオン》のような2色必要なクリーチャーを先手2ターン目に80%以上の確率で安定して召喚するためにも、それぞれの基本土地が14枚ずつは必要です。《先頭に立つもの、アナフェンザ》よりは枚数が少なくて済みますよ! やったね塚本さん! 正確には必要な枚数の土地を引いているかの確率計算も必要なのですが、ここでは色マナ計算のほうのみ実施しています。」
塚本「何を、金子さんが何を言ってるのか全然わかりません! 金子さん!」
金子「わかりました。じゃぁ実際にデッキの形でお話ししましょう。」
塚本「はい!」
金子「塚本さんはこの強力な『アブザン・アグロ』を使いこなして、勝てるようになりたい。だから、この《先頭に立つもの、アナフェンザ》や《ラクシャーサの死与え》、《羊毛鬣のライオン》といったエースたちをばっちり唱えたい。そうだね?」
塚本「勝ちたいです!ばっちり唱えたいです!」
金子「でも、いろいろな種類の土地がありすぎて、どんな土地の配分が良いのかわからない。」
塚本「分からないです......。」
金子「そこで、僕が基本土地だけで上のカードをばっちり唱えるのに必要な枚数を計算する。」
塚本「基本土地だけで必要な枚数を計算する。」
金子「ほら、これができたデッキだよ!」
塚本「やった!これでエースたちも唱えられます!このデッキを使いますね!」
15 《森》 15 《平地》 15 《沼》 -土地(45)- |
4 《羊毛鬣のライオン》 4 《ラクシャーサの死与え》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 3 《包囲サイ》 -クリーチャー(15)- -呪文(0)- |
塚本「やった!嬉しいです!これで勝てますね!」
金子「勝てるわけねェだろぉォォォ! いいですか、塚本さん。土地の枚数が45枚。呪文の枚数が15枚。デッキの枚数のうち3/4が土地。呪文はたったの1/4。どのゲームでも土地ばっかり引いちゃいますね。」
塚本「そ、そんな......。」
金子「さらに、ここでは『80%』を安定して出せるラインに置いてますが、80%というのは、言い換えれば『5回に1回は失敗する』ということです。可能ならもっと可能性を高めたいですよね?」
塚本「もちろんです......そのためには一体どうすれば......?」
金子「そのための、いろいろな種類の土地なのです。例えばそうですね、『アブザン・アグロ』の土地構成のサンプルはこんな感じなのですが、ちょっとそれぞれの色マナが出る土地が何枚あるか数えてみましょう。」
2 《森》 2 《平地》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《ラノワールの荒原》 3 《疾病の神殿》 2 《コイロスの洞窟》 3 《静寂の神殿》 4 《砂草原の城塞》 1 《マナの合流点》 -土地(25)- |
塚本「えっと......。」
金子「ね、土地の合計枚数は25枚なのに、上でお話しした、『それぞれの色が15枚以上』を満たしているでしょう? このように、《砂草原の城塞》のような複数の色マナの出る土地は、多色デッキの色マナの事故を防ぐために、できる限りデッキに入れたいのです!」
塚本「だからみんな、あんなにいろんな種類の土地を使っていたんですね!」
金子「そうなんですよ。中には土地としても使えて、さらに土地以外の用途でも使えるような土地もあるので、そういう土地は積極的に入れていきたいですね。」
塚本「こんな便利な土地があるなら使いたくなりますね!」
金子「そうでしょう! このように、デッキ内の土地の種類と枚数はとっても大事なんですよ!」
塚本「でも、これだけ便利な土地がいっぱいあるなら、基本土地を使う理由ってあるんですか?」
金子「はい、基本でない土地は、多くの色マナが出せたり便利な能力を持っていたりする分、相応のデメリットは持っています。例えば『タップ状態で戦場に出る』というデメリット。そのターンにはマナを出すことができないので、実質1ターン遅れますね。他にも『色マナを出す際にダメージを受ける』『伝説の土地なので、同時に2枚以上戦場に出せない』などデメリットがあったりしますし、さらに『基本でない土地カードの対策カード』というのが存在したりもしますね。」
塚本「なるほど! やっぱり基本土地も大切なんですね! 僕も土地の選択の大切さがわかってきました......! クリーチャーや呪文も重要ですけど、それらを唱えるのには土地が無いと、ですもんね!」
金子「おお......僕は塚本さんが日に日に成長していって嬉しいです!」
謎のモブA「僕もです!」
謎のモブB「僕も!!」
謎のモブC「オレもオレも!!」
謎のモブD「私も!」
塚本「み......みんな......」
みんな「おめでとう(ぱちぱちぱち)おめでとう(ぱちぱちぱち)」
金子「おめでとうございます! これで掴みは大丈夫そうなので、次は『コントロール』のような長いゲーム展開を予想したデッキの場合について教えますね!」
塚本「これで終わりじゃなかったのかよ! 急にたくさんは頑張れないよ!」
金子「今までいろいろ頑張ってきた塚本さんならきっとできます。今回は『ビートダウン』を組んできたので、次回は『コントロール』デッキを組んできてください。」
塚本「急に褒められると挙動不審になります。それに......こんな時、どんな顔すればいいのかわかりません金子さん。」
金子「笑えばいいと思いますよ。」
続く!
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